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2010年 D1 GP 第7戦 富士レポート



1号車(緑号)でセットアップしていきます

車両について
 前回エビスラウンドでのクラッシュにより・・・2号車(通称青号)は残念ながら使用することができなくなってしまったので、最終戦富士はスペアカーとして使っていた1号車(通称緑号)で参戦することになりました。実はコイツ…元々シルバーだった初代D1マシンなので、同じような外観でも事実上はかなりの中古車…。さすがに今時のD1で使うには色々と改善しなければならないところが多く、基本的には全て造り直す位の勢いです。
 エンジンも新規、ミッションもオーバーホール、インテークやターボ周り、リアメンバー等々、全て造り直しと言う具合で、気づいたら丸々一台造るのとあんまり変わらないかも…と言う感じでした。但し、新規の車両製作と言っても、全くの新車と言う訳ではないので、基本的には同じセットアップで対応できるはず?です。テスト走行を行う時間も無く、完全にブッツケ本番の状態でしたが、今までのデータと勘だけを頼りに・・・車両製作を進めて行きました。
 車が完成したのはギリギリの前日の夜…。
 とにかく何事も無く、全てが上手く行くはずだと、自分に言い聞かせるしかありません・・・。

リアウイングも無事に交換

15日(金)任意参加による練習走行日 
 最終戦は基本的に1DAYイベント(日曜日はエキシビジョン)の為、いつも以上に練習走行の時間がありません。この日も30分×2回の走行枠しか無く、事実上シェイクダウンの僕らには非常に厳しい状況です。翌日の決勝に向けて短時間で車のセットアップを決めなければなりませんでしたが、ここで手痛いプチトラブルが…。3周程走ったところで、MoTeCのラムダセンサー(A/F測定用)が不調になり、これ以上エンジンセッティングを進めることができなくなりました。インジェクターの開弁率を基に安全マージンを見越したセッティングで走らせるしかなく、初回の走行枠は足まわりの確認をメインで行うことになりました。幸いにも全体的なセットアップは良好だったので、大幅な変更点は無さそうです。後はエンジンのセッティングさえ決まれば…と言う所でしたが、スペアのセンサーは持ってきておらず、会社に取りに行かなければなりません。どうやっても次の走行枠には間に合わないので、エンジンのセッティングだけは決勝当日の朝にやるしかない…と思っていましたが、同じDUNLOPチームのフレンズ猪瀬徹選手がスペアを持っていて、貸してくれることに!!やったーっ!・・・と言うことで、2回目の練習走行枠で無事にエンジンのセッティングも終わらせることができ、何とか前日の練習走行のうちに全体のセットアップ決めることができました。(猪瀬君、ホントに有難うございました!)
 2回の走行も無事に?終わり、翌日に向けての作戦会議を行ったところ、野村さんから「さすがに富士は・・・やっぱりリアウイングがあった方がイイかも。300Rでプリっと行き過ぎたバイ」と、コメントが・・・。
 メカニックの鷲尾君が会社にラムダセンサーを取りに行っていた(スマン)ので、ついでにリアウイングも持ってきてもらい交換することになりました。リアウイングを交換後、セットアップがどっちに転ぶかは分かりませんが、今までの実績もあるし、野村さんなら大丈夫でしょう!!

とりあえず燃料を多めに入れ1回戦へ

16日(土) 第7戦 決勝
 決勝日当日は天候も良く、終日ドライコンディションで行われました。
 最終戦は1DAYイベントなので、あっという間に本番当日…と言う感じです。しかも練習走行は朝一の20分しか無いので、短時間で最終的な車の確認と走行ラインの確認を終わらせなければなりません。
 前日に交換したリアウイングについては良い方向に行き、これで車のセットアップはほぼ完了っ!後は走りの仕上げを!と思ったところで…野村さんからヘアピンの立ち上がりでエンジンが息つきすると言う報告がありました。緑号はタンクがノーマルだったこともあり、どうやら燃料の片寄りが起こっているようです。燃料を追加して改善されるか確認したかったのですが、ここで時間切れに…。通常よりも燃料を多めに入れて1回戦に臨みますが、もし他の原因で息つきが起こっていたとしたら??…1回戦はまともに走れないかもしれません。

いよいよベスト16追走へ
1回戦単走
 もし車が直っていなかったら??と言う予想とは裏腹に、野村さんは300R進入、かなり手前から物凄い角度で飛び出してきました。そのまま審査基準通りのラインをトレースして振り返し、アウト側のクリップ、ヘアピンのアプローチから立ち上がりまで完璧っ!!1本目から99.83点を獲得し、暫定1位となりました!
 あべ:「いやぁ、エンジン吹けて良かったー!野村さん、ウマイっ!!」
 のむ:「いやいや、ごっちゃまでした。…でも、良かったー!!」
 続く2本目、野村さんはスタート地点のモニターで、斎藤太吾選手と川畑選手に順位を抜かれた事を知ったようです。
 のむ:「おや、あいつらも上手いこと走っとるねぇ」
 あべ:「まぁ まぁ、ベスト16進出には変わりないので、次はリラックスして行きましょう!」
 1本目と同様に手前から振り出し、300Rの迫力は抜群です。審査員席前までは完璧なラインでしたが、ヘアピンに向けて若干小さなラインになってしまい、残念ながら1本目の得点を上回ることはできませんでした。
 野村さんは前日の夜に「寝ながら300R進入のラインが見えた」と言っていましたが(笑)、その言葉通りの完璧な走りを披露して、3位と言う好成績で1回戦を突破しました。

スタート前に和やかに歓談
追走トーナメントベスト16
 追走トーナメントベスト16は久しぶりの組み合わせとなる、チームオレンジ熊久保選手との対戦です。熊久保選手と野村選手はお互いに信頼し合い、全く駆け引きの無い状態で常に全力の勝負を見せてくれます。1本目、野村さんの先行で、熊久保選手は300R 進入からビタビタです。お互いそのままの状態で上手く振り返しましたが、ヘアピンのクリップに差し掛かったところで熊久保選手は若干失速してしまいます。ここは野村さんがアドバンテージとなりました。続く2本目、今度は野村さんが後追いです。熊久保選手を完全に信頼している野村さんは、300Rから同じ様にビタビタで飛び込んで行き、そのまま最後まで食らい付いて行きます。…非常に僅差ではありましたが、1本目のアドバンテージを守り、野村さんはベスト8に進出となりました!

高山選手と接触した左リアフェンダー
追走トーナメントベスト8
 ベスト8の対戦相手はチームRマジックの高山選手です。今年の高山選手は常に上位に食い込んできており、常に安定した走りを見せています。野村さん先行の1本目、単走と同じ様に300R進入から物凄い角度で飛び出して行き、ノーミスの走りでヘアピンを立ち上がりました。車に慣れてきてドンドン走りが良くなってくる野村さんでしたが、高山選手も負けずに食らい付いて来ます。この判定は五分となり、お互い一歩も譲れません。続く2本目、野村さんは後追いです。300Rからビタビタで飛びだしてきて、審査員席前で振り返した時…車速を合わせ切れずに高山選手をプッシングしてしまいました。これは当然高山選手がアドバンテージとなり…残念ながらここで敗退となってしまいました。
 のむ:「ちっくしょー!・・・やり過ぎたバイ(涙)」
 あべ:「…惜しかったっすねぇぇぇぇ」

高山選手とのスタートを待ちます
第7戦 総括
 前回のエビス戦から約2カ月、長いようであっという間に時間が過ぎて行きました。青号の修復も考えましたが、予想以上に各部にダメージが及んでおり、スペアカー(緑号)への部品の移植を余儀なくされました。僕らは車両製作からセッティング、練習走行と非常に時間の無い中での戦いとなり、常にプレッシャーとの戦いでした。丸っきり別物になってしまった車、しかもブッツケ本番と言う厳しい状況の中、野村さんは気負いすること無く最後までしっかりと走ってくれました。走れば走る程に良くなっていくその姿に、「もしかしたら今回はイケるかも」と言う気持ちがチーム内にも広がりましたが…最後は本当に惜しかったです。(涙)

2010年D1グランプリ総括
 早いもので…2010年シリーズも幕を閉じました。いつも思うことですが、本当に長い様であっという間の一年間でした。シリーズ戦での優勝こそ逃しましたが、決勝進出2回、ランキング4位と言う結果は非常に立派な成績です。又、今年は車両面でも色々なことにチャレンジした一年間でした。エンジンパワーを上げただけでなく、フロントメンバーやリアメンバーの変更等、シーズンの途中で足まわりのセットアップを大幅に変更したのは初めての試みであり、同時にこれらによって野村さんの走りも見違えるほど良くなって行きました。・・・エビスラウンドのクラッシュはシリーズチャンピオンを争う上でも非常に手痛い出来事(涙)でしたが、野村さんの体が無事?(そうでもなかったですが)だったことが本当に何よりでした。こう言うことも、レースに参戦している以上仕方のないことであり、今後も常に危機感を持って臨まなければなりません。
 今年も本当に色々なことがありました。笑いあり、涙あり、ドラマあり・・・。
 応援してくれたファンの方々、そして各スポンサー様の多大なるご支援の御蔭で、今年のシリーズ戦も最後まで戦い抜くことができました。
 皆様、一年間、本当にありがとうございました!!
 また来年、全国のサーキットでお会いしましょう!!