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2010 D1GP 第3戦 富士 レポート



NEWターボチャージャー導入!

車両について
 シリーズランキング6位と言うポジションで迎えた第3戦富士は、今後のシリーズ争いにおいて非常に重要な戦いとなります。ここで如何にポイントを稼げるか?と言うことが課題になり、それにはマシンのパワーアップが必須となりました。前戦のオートポリス戦で投入したニューエンジンに加えて、今回はタービンを大型化してピークパワーとトルクを上げ・・・僕らも遂に700PSオーバーの領域に突入ッス(汗)
足まわりもバネレートとアライメントを富士スペシャルのセッティングに変更し、ファイナルはBNR34の3.545をベースに新品のLSDを入れた物を使用しています。 

データロガーで確認作業を行います

4日(金)練習走行日
 いつものように、初日はマシンのセットアップに専念します。タービン変更後に実走するのは初めてだったので、ロガーでブーストと排圧を見ながら少しずつ燃料を合わせて行きます。ある程度エンジンのセッティングが決まったところで足まわりとギア比の確認に移り、次はマシン全体のセットアップを確認します。足まわりに関しては、今までのデータ通りの動きをしてくれたので、早い段階でベストな状態を出すことができました。全体のセットアップも決まったので、残りの練習走行は実際に野村さんの走りを審査員席から確認します。野村さんは初日からキレのある走りをしており、最後の走行では単走で100点を狙える程の走りを何度も見せてくれました。やっぱり、富士が苦手なんてのは気のせいですよっ!

ミドルラインから審査員席前に直線的に

5日(土)第3戦予選日
 今回も初日の時点でセットアップを決められたので、2日目は本番に向けた練習走行に切り変えます。基本的な審査基準は例年通りとなり、300Rをミドルラインで抜けて振り替えし、審査員席前アウトクリップに向かって直線的に飛んでくるラインが高得点を獲得できます。野村さんは300Rの振り出し位置を気にしていたようでしたが、スピードを乗せてやや奥目から振り出すラインの方が後のリズムを取りやすく、見た目の迫力も上がります。よって、今回は手前から振り出すライン取りは狙わず、とにかくスピード感のある走りを目指して練習を行いました。
 予選終了後の練習走行時、野村さんから「4速の入りが悪いよ」と連絡がありました。
何だか嫌な予感がしますが、ここは落ち着いて車両の点検です。色々調べてみると、確かに4速への入りが良くありません。シーケンシャルのシフトドラムの動きが悪くなって入り辛くなっているようだったので、プランジャーを外してオイルを給油し、スプリングの調整を弱くしてみたら・・・おや、スコスコ入るじゃん♪
と言うことで・・・とりあえず今回はミッションの分解は行わず、そのまま翌日の決勝を走ることにしました。

テンションロッド破損で交換作業を行う事に
6日(日)第3戦決勝
 前日の夜に降った雨も上がり、朝から天候に恵まれて終日ドライ路面での戦いとなりました。野村さんはここまで常に絶好調の走りを見せており、1回戦突破は勿論のこと、マジで今回は上位入賞を狙えるかも!?・・・と予感させる程でした。
 ところが・・・朝の練習走行で予期せぬマシントラブルに見舞われます。
 コースインして直ぐに野村さんから「右前から変な音がする」と連絡が入ります。
 急遽ピットインして各部の増し締めを行いますが、どこにも不具合は見当たりません。とりあえずもう一度コースインをして様子を見ることにしましたが、「やっぱり駄目だよ!何これ??・・・この感じはテンションロッドかも」!と連絡が・・・。何とかピットに戻ってきた車は右フロントタイヤが明後日の方向を向き、フェンダーやサイドステップを破壊しています。やはり・・・テンションロッドです。
 何とかスペアのロアアームとテンションロッドに交換し、練習走行残り15分の時点でコースに復帰できましたが、今度は「4速もやっぱりダメだよ!入るけど、加速すると抜けちゃう!」との連絡が・・・。とりあえず4速飛ばしで走れるか試してもらいましたが、ここで時間切れに・・・。1時間の練習走行枠の中、実質1周しか走れない状況(しかも4速無し)で決勝の1回戦を迎えることになってしまいました・・・。

見事1回戦を2位で通過し、追走前に話しこみます
1回戦単走
 練習走行終了後から1回戦単走のスタートまでは、1時間しかありません。さすがに1時間ではミッションを降ろすことはできたとしても、分解して修理し、再び搭載することは不可能です。既に成すすべは無く、4速を飛ばして加速し、そのまま走るしかありません。現状でできることは、ブーストを2.0kまで上げ、少しでも車を加速させることだけです・・・。
 この時、チーム内は絶望の空気に包まれていました。
 あれだけ好調な走りをしていたにも関わらず、まさかここへ来てトラブルで敗退とは・・・。
 何で富士ではトラブルが・・・。
 ・・・ところが、野村さんだけは違いました。
 「大丈夫やって。何とかなるよ。何の根拠もないけど、やれる気がするバイ。任せときんしゃい。」
 そう言い残し、1回戦へ向かいます。

 1本目、300Rを飛び出してきた野村さんは、トラブルを抱えていることを全く感じさせない程の勢いです。審査員席前のアウトクリップも綺麗に取り、5速から3速へ上手くシフトダウンしてヘアピンを抜けていきます。この渾身の走りは文句の付けようもなく、見事に99..9点を獲得して暫定1位となりました。

 続く2本目、ゼッケン7番の斉藤選手が更に上に行き、この時点で野村さんは暫定2位です。
 のむ:「おっと、大吾にやられたねぇ。次は120点を狙うよー」
 1本目とおなじように全開で300Rを飛び出してきましたが、さすがに4速無しでは審査員席前で流され気味になってしまい、ヘアピンの立ち上がりで若干アウトにはらんでしまいました。

 のむ:「いやぁ、やっぱり流されるバイ」
 あべ:「そりゃそうですよね・・・。でも本当にありがとうございました!!感動したっす!!」

 トラブルを抱えたままではありましたが、2本共に渾身の走りを披露し、見事に2位で1回戦を突破することができました。
 「タイヤの使い方を良く考えた」と言う野村さんの走りは本当に素晴らしく・・・(涙)
 その集中力とドライビングテクニックに大きく助けられた1回戦となりました。

ベスト16走行後に高橋邦明選手と
追走トーナメントベスト16
 ベスト16の初戦は高橋選手との対戦です。800PS近い高橋選手相手に4速無しでは、加速勝負でどうしても不利になってしまうのは仕方ありません。お互いに話し合い、加速区間で若干前に出させてもらって、相手との距離をうまく合わせるしかありません。
 1本目、野村さんが先行です。4速が無いので3速から5速にシフトアップする時にどうしても一瞬失速してしまいます。「思ったよりも加速しなかったので、合わせきれなかった」と言う高橋選手は、300Rの振り出しのリズムが狂ってしまい、角度も浅くなってしまいます。ここは野村さんが若干のアドバンテージです。
 2本目、野村さんは高橋選手に大きく離されて300Rに進入しますが、4速の使えない野村さんは最初から離れることは分かっていました。ここは落ち着いて単走の走りを披露し、ヘアピンの立ち上がりで若干距離を縮めます。厳しい状況の中ですが、野村さんの集中力は途切れません。この2本目の判定は、ほぼ五分と言う結果となりました。
 非常に僅差ではありましたが、どうやら1本目のアドバンテージによって野村さんのベスト8進出が決まったようです。今回から変更になった「追走時のサドンデスの定義」により、1ポイント以下の得点差の場合のみサドンデスが行われる、と言うルールにも救われた結果となりました。

ベスト8は佐久間選手と対戦

追走トーナメントベスト8
 続くベスト8はチームTOYOの佐久間選手との対戦です。非常に僅差でベスト16を勝ち上がった野村さんはここでも苦しい対戦を強いられることになります。
 1本目、野村さんは後追いからスタートし、先ほどの対戦と同じ様に佐久間選手にも大きく離されて300Rに進入します。ところがここでも野村さんは落ち着いて単走の走りを披露し、佐久間選手にわずかなアドバンテージしか付きません。
 入れ替えて2本目、野村さんは持っている力全てを出し切って加速していきますが、佐久間選手も300Rの振り出しでうまく合わせきれずにアンダー気味で出てきてしまいます。そのままリズムを崩して小さいラインになってしまい、2本目の判定は野村さんが大きく取ります。この戦いも非常に僅差となりましたが、野村さんは見事に逆転してベスト4に進出しました!

野村さんに無線でマシンの状況を聞きます

追走トーナメントベスト4
 ベスト4の相手は、ゼッケン1番を付ける末永正雄選手との対戦です。相変わらず4速が使えない状況なので、ここでも当然辛い戦いが続きます。ただ、幸いにも僕らのマシンは末永選手のマシンよりも若干馬力があるので、加速区間でうまく付いて行くことができれば何とかなるかもしれません。
 1本目、野村さんは後追いからのスタートです。末永選手にも4速が無いことを理解して頂き、加速区間で若干先行させてもらいます。一度は互いのタイミングが合わずに仕切り直しとなりましたが、再スタート後、野村さんは末永選手の真後ろに付いたまま300Rを飛び出してくることができました。そのままの距離で審査員席前からヘアピンまで駆け抜け、見事に後追いでアドバンテージを獲得です。
 入れ替えて1本目、末永選手は合わせ辛い状況の中でも懸命に食らい付いてきます。ところが、末永選手は振り返してから審査員席前で完全にインに入りきれません。この結果、先行でも若干のアドバンテージが野村さんに付き、富士で初めての決勝進出となりました!

決勝はDUNLOPユーザーの今村陽一選手と対戦

追走トーナメント決勝
 野村さんの技術と集中力に助けられ・・・気づけば、見事に決勝戦まで来ることができました。
 4速が使えないと言うトラブルを抱えたまま決勝へ進出できるとは、チーム内の誰も予想していなかったはずです。とにかくここまで来ることができれば悔いは残りません。決勝の相手は強敵今村選手ですが、最後まで諦めずに全力で戦います。
 1本目、野村さんは後追いからのスタートとなります。この戦いも4速が無いことを理解して頂き、加速区間で若干先行させてもらいます。今村選手との対戦でもお互いのタイミングが合わずに仕切り直しとなってしまいましたが、再スタート後も焦らずに野村さんは全力で付いて行きます。やはり若干離されて300Rを飛び出し、必死にインへ入ろうとした野村さんはヘアピンのアプローチにかけて後へ回り込んだ形になってしまいました。ここは当然今村選手のアドバンテージです。
 続く2本目、加速区間で一瞬失速してしまう野村さんに対して、今村選手は300Rから綺麗に合わせこんできます。そのままヘアピンを抜けるまで完全にインに入り続け・・・最後は完敗となりました。

岡山も頑張ります!

第3戦総括
 今回のラウンドは、本当にトラブルに悩まされる結果となってしまいました。
 野村さんの技術と集中力に助けられ、結果的には非常に良い成績を収めることができましたが、チームとしては完全に0点のレースとなってしまいました。土曜日の時点でミッションを降ろし、分解、点検、修理を行っていれば、最後までもっと良い状態で走れていたはずです。その判断ミスもあり、結果的には最後まで野村さんや対戦した皆にも迷惑を掛けることになってしまいました。
 次戦岡山では野村さんにこの恩返しをしなければなりません。
 時間はあまりありませんが・・・マシンを完璧な状態に仕上げ、次は快勝!を目指していきたいと思います!!