D1グランプリ第3戦 6月5日(土)・6日(日) 富士スピードウェイ(静岡県)
今村陽一優勝、野村謙準優勝のダンロップ勢がワンツー!!

現在、シリーズランキングは今村陽一選手2位、古口美範選手3位、日比野哲也選手4位、野村謙選手6位と、好位置をマークしている。この勢いで富士スピードウェイも戦いたいところだ。

2010年のD1グランプリシリーズは、第2戦のオートポリスを皮切りに富士スピードウェイ、岡山国際と、ハイスピードステージ3連戦というスケジュールが組まれた。富士スピードウェイは第3戦と最終戦がおこなわれる。シリーズチャンピオンを占ううえでこの第3戦は前半の重要な位置づけであり、好成績を収めておきたいところ。もちろん、野村謙選手、今村陽一選手、古口美範選手、日比野哲也選手の4名はいずれも優勝圏内にいる。ぜひ第3戦富士をダンロップのフラッグで埋めてもらいたいものだ。
富士スピードウェイはオートポリスと同じくハイスピードバトルが風物詩。進入速度が200km/hにもおよび、ハイアベレージでドリフトを維持するスリリングなステージとなる。オートポリスから連戦するとはいえ、丸1ヶ月以上のインターバルがあり、高い速度域の走行感覚をいかに早く取り戻せるかという、選手たちの適応力も問われる戦いとなった。
シードは野村選手、今村選手、古口選手、日比野選手の4名。予選が免除され、決勝日の1回戦・単走からの出場となる。

昨年の最終戦でも予選を通過、16位の成績を収めている松川和也選手。今回も予選を通過し、富士スピードウェイとの相性のよさを見せる。単走・1回戦を通過して追走トーナメントに残りたいところ。

富士は、300Rからヘアピンコーナーへかけて逆走するステージだ。左コーナーとなる300Rへ進入し、振りっかえして、今度は右のヘアピンコーナーを目指すという、ちょうどSの字を逆からなぞって走るようなコースレイアウト。300Rの進入速度とライン、振りっかえし地点、振りっかえしてからのヘアピンまでのライン、アウト側のクリップ、さらにヘアピンのクリッピングポイント、通過速度と角度、エンジンの音まですべてが審査対象となる。車速が低いとヘアピンのクリッピングポイントまでドリフトを維持できず、クリッピングポイントを外したり(速度が高い場合はよしとされた)、インカットも減点の対象だ。理想とされるのは、300Rの立ち上がりから車速を落とさずに審査員席までを直線的なラインで振りっかえしつつ、ヘアピン外側に位置した縁石へ寄せていく、勢いのある走り。そして、審査員席側からヘアピン内側のクリッピングポイントを目指して、アウトインアウトのラインで立ち上がっていく。高得点を出すには精度の高いドリフトが求められる。D1ドライバーといえどもなかなか成功しない。
そんなハイスピードステージの予選にエントリーしたのは32名。20台が予選通過となる。ダンロップ勢は福田浩司選手、加藤貴也選手、松川和也選手、箕輪慎治選手の4名が、本戦をかけて出場した。審査は単走でおこなわれ、結果として松川選手、福田選手、箕輪選手の3名が通過した。700psオーバーのSC430に乗る松川選手は1本目のヘアピンでややイン側へ入り込むラインとなったものの、そのほかはうまくまとめて99.16点で17位通過。シルビア(S15)の福田選手はベテランらしい安定感のある走りで1本目が99.13点。オートポリスに続いて本戦出場をきめた。650psのマーク2に乗る箕輪選手の1本目は、300Rの立ち上がりでややイン寄りのラインと指摘されたものの、そのほかはスピード、ラインともうまくまとめた迫力のある走りで99.13点。3選手とも1本目で高得点をマークしての予選通過だった。加藤選手は1本目に失敗、2本目はまとめたものの、惜しくも23位となり、本戦への出場は叶わなかった。

オートポリスに続いての追走トーナメント進出が残念ながら叶わなかった福田選手。しかし、ベテランらしい安定感が光る。岡山での奮戦を期待したい。

決勝日は日差しのある穏やかなイベント日和で迎えた。前日に夕立があったが、その影響もなくコースコンディションは良好。大勢の観客が富士スピードウェイに訪れた。
野村選手をはじめとするダンロップ勢はマシンとコースのコンディションを確かめつつ、1回戦・単走をイメージして何度も練習走行を重ねる。さすがにシードの4選手は高速ステージを得意としているようで、安定性の高さを披露していた。しかし、野村選手のスカイライン(ER34)にトラブルのあることが判明。急ピッチでメンテナンスがおこなわれた。さらに、古口選手のマシンもメンテナンスしており、ひな壇に姿を見せなかった。波乱含みで第3戦の1回戦がスタート。今回は外国人選手招待枠が設けられ、全部で33名が1回戦へ挑んだ。
最初に登場した箕輪選手は1本目で見せてくれた。300Rの進入速度と振り出すタイミング、角度とも文句なしで、アウト側のクリップまでの振りっかえしとライン、ヘアピンも完ぺきといえるドリフトで、99.53点でこの組のトップに躍り出た。2本目はさらに勝負に出たが、振りっかえしてからの角度が深すぎて、ヘアピン手前でドリフトを戻してしまう。しかし、1本目の高得点が生きて、みごと追走トーナメントへの出場を決めた。
次に出てきたのが福田選手。1本目は300Rの手前から振り出し、立ち上がりもよかったが、振りっかえしてからヘアピンまでのラインがやや小さくなり、99.1点。2本目も300Rの立ち上がりまでよかったが、振りっかえしのあとで一度姿勢がフラついてしまい、さらに失速を指摘され、1本目を上回ることなく、ここで敗退が決まった。
そして、最後は松川選手。その1本目は300Rの立ち上がりでやや流されてしまうものの、その後はスムーズな振りっかえしと直線的なラインでアウト側にクリップを通過し、ヘアピンもうまくまとめて、99.5点をマーク。2本目は300Rを大きく振ってしまうラインとなり失敗。1本目を上回る得点を出すことができなかった。それでも1本目の高得点でシード組の単走まで16位で踏ん張っていたが……、最後に逆転されてしまい、惜しくも17位で追走トーナメントへ進出を果たせなかった。

朝の練習走行中に足まわりにトラブルを抱えた古口選手。思い通りの走りにならない1回戦であったが、辛うじて追走トーナメントへ残った。


最終組に登場したシードの4選手。最初に登場した野村選手がいきなり魅せた! 高い速度から300Rを進入し、角度、ラインともに理想で、さらにアウト側のクリップに寄せ、速度を維持したままヘアピンをキレイに立ち上がる。みごと99.9点で全体のトップに躍り出る。100点を目指した2本目は振りっかえしてからのラインが大きくなってしまい、残念ながら失敗。しかし、堂々の2位で1回戦を通過した。じつは、練習走行で見つかったマシントラブルはミッションで、4速が使えない状態で1回戦に挑んでいたのだった。手負いの状態での99.9点は称賛に値する。しかし、不利な状態であることに変わりない。追走トーナメントの戦いがどのように影響してくるのだろうか。
そして、富士の優勝経験もある古口選手が練習走行中に抱えたトラブルは足まわりだった。修復を試みたものの、そのまま1回戦へ挑み、どうにか2本目で99.56点をマーク。スピードに乗せた300Rの進入と、要求通りのライン取りで速度を維持したままヘアピンまでを決めた。しかし、足まわりの不安を残したままでの追走トーナメント出場であることに変わりはない。
ゼッケン3で富士スピードウェイに乗り込んできた日比野選手。NA(自然吸気)エンジンのトレノ(AE86)はさすがにハイスピードステージでは厳しい。しかし、ゼッケン3は伊達ではなく、1本目こそ速度に乗れない走りとなってしまったものの、2本目でパワーを使い切る気迫の走り。99.7点をたたき出し、終わってみれば8番手で1回戦を通過した。ハイパワーのターボ勢を押しのける実力に加えて、安定感にもますます磨きがかかってきた。
最後に登場したのは、ディフェンディングチャンピオンで、現在ポイントランキング2位の今村選手。2本とも高い速度からの進入で、ライン、角度ともまさにミスのない走り。それは2本目でセオリーどおりと評価されるほどの走りで99.76点を得た。5位で進出が決まった。
結果、5名が優勝をかけて追走トーナメントへ挑むこととなった。

厳しいとはいいつつ、確実に追走トーナメントへ駒をすすめる日比野選手。ターボ勢を相手に8位で1回戦を通過したが……。


追走トーナメントは1位通過の選手が16位通過の選手と対戦するというように、上位VS下位で山がつくられる。この結果、初戦で5位通過の今村選手と12位通過の古口選手が当たるカードができてしまった。野村選手は高橋邦明選手、日比野選手は川畑真人選手、箕輪選手は末永正雄選手。これが初戦のカードだ。
まずは、日比野選手VS川畑選手。川畑選手は2007年のチャンピオンであり、さらに昨年の富士では第7、第8戦とダブル優勝を遂げた強豪の一角。ターボで600psの180SX(RPS13)の川畑選手に対して日比野選手がどんな戦いを見せてくれるか。先行は日比野選手でスタート。が、その直後に日比野選手が走行を中止。デファレンシャルにトラブルが発生しため、無念のリタイヤとなってしまった。
「さあ、追走だという段階で、ウォーミングアップしているときにデフがおかしくなりました。そのまま行こうということになったんですが、スタートしたら案の定すぐに壊れてしまいました。残念です。次の岡山はドルーピーさんの地元なんで、応援もいっぱい来ていると思いますから、ぜひよい成績を残したいですね。応援にも呑まれないようにしたいです!!(笑)」

これまで富士では納得できる成績を残していない今村選手だったが、余裕を持っているかのような安定感ある走りが印象的。5位で1回戦を通過した。追走トーナメントでも着々と駒を進める。

続いて、ダンロップ勢同士という過酷な戦いとなってしまった今村選手VS古口選手のカード。今村選手は前回のオートポリスで野村選手と当たっており、2戦連続の初戦同門対決に。先行は今村選手。300Rを角度のある進入で挑む今村選手に対して、古口選手は角度が浅い状態での進入となった。ヘアピンの立ち上がりで今村選手がややドリフトを戻してしまうも、今村選手がアドバンテージを得る。入れ替わって古口選手が先行の2本目は、今村選手が振りっかえしたあとで古口選手にビタビタに寄せる走り。これで決着がつき、同門対決は今村選手が征した。
「練習走行で、左フロントのロアアームを壊してしまい、単走の直前まで修理しましたが、完ぺきに直すことができず、ベストな走りができませんでした。単走の2本目で何とか帳尻を合わせられましたが、自分としては50点以下の内容です。岡山ではこんな小さなミスをせず、思い切りいけるようにしたいですね」(古口美範選手)

5年ぶりに追走トーナメントへ出場した箕輪選手だったが、本来の実力を発揮できずに追走トーナメント初戦で敗退となった。しかし、次戦へとつながる走りであったに違いない。

箕輪選手は2005年のオートポリス以来、5年ぶりに追走トーナメントへ出場。対戦相手の末永選手が先行で始まった。さすがにブランクを隠すことができず、後追いの箕輪選手は末永選手に合わせられず、また、振りっかえしてからドリフトを戻してしまうなど、本来の走りができない。先行になってようやく単走で見せたミスのない走りではあったものの、末永選手もミスなしであり、1本目の大きなアドバンテージを覆せず、ベスト16で敗退が決まった。


ミッショントラブルを抱えつつも、そこをテクニックでカバーし、強豪の末永選手を下して、ついには決勝へと進出した野村選手。その対戦相手は同じダンロップの今村選手となった。

野村選手は練習走行で起きたミッショントラブルを抱えたまま、初戦で高橋選手と対戦した。4速が使えない状態であり、4速を使う審査員席前では5速となり失速も否めない。しかし、それを感じさせることのない走りが圧巻だった。先行の1本目、300Rへ勢いよく角度をつけて飛び込んだ野村選手。インをあけた正々堂々のラインで高橋選手を迎える。しかし、高橋選手はインに入り切れず野村選手のアドバンテージとなった。入れ替えての後追いで、高橋選手に300Rの進入で離されるも、ヘアピンの立ち上がりでその差を縮め、アドバンテージを保ったまま、野村選手がベスト8へ進出した。
手負いの状態で挑んだベスト8は、調子を上げている佐久間選手との対戦となった。後追いでスタートした1本目、野村選手は300Rで離されてしまい、さらにはヘアピンも佐久間選手にインに入れない走りで、ついにギアの使えない状態を露呈してしまう。アドバンテージは佐久間選手。もう後がない野村選手は、入れ替わっての先行で手負いとは思えない走りで角度をつけて300Rへ進入。振りっかえしてからヘアピンまでも気迫が伝わるドリフトだ。いっぽう、佐久間選手はヘアピンまでの区間でアンダーステアを出し、ラインが小さくなるミスをおかす。野村選手のインに入れない。この先行では野村選手が大きくアドバンテージを得る。この結果、なんと、佐久間選手のアドバンテージをひっくり返し、ベスト4へ進出!!「本当にギア(4速)が使えないの?」と審査員が不審がるほど。それほど、野村選手の走りには安定感と同時に勢いがあった。
そして、この野村選手の勢いを、ベスト4の対戦相手となった、富士の優勝経験もある末永選手でさえ抑えることができなかった。野村選手は後追いの1本目で、末永選手に対して300 Rからビタビタに接近する。これが決め手となり、アドバンテージを得る。先行でも野村選手は果敢に攻める走りで、末永選手にインをとらせない。アドバンテージをさらに広げて決勝戦へと駒を進めるのであった。

2度のシリーズチャンピオンに輝き、優勝の回数も最多である今村選手だが、逆走の富士での優勝経験が未だなく、決勝戦進出も今回が初となった。

今村選手のベスト8の対戦相手は、藤中学選手(RX-7)。先行の今村選手は、300Rに角度をつけて進入。対して藤中選手は振り出し遅れとなる。今村選手は、そのまま速度を維持、安定したドリフトで藤中選手にインをとらせない。全員が6:4の判定で大きなアドバンテージを得た今村選手。後追いでは300Rから藤中選手に接近するドリフトを見せ、振りっかえしてからヘアピンの立ち上がりまでキッチリと合わせる。みごとベスト4へ進出した。
そのベスト4は川畑選手との対戦カードであった。先行の川畑選手に対して、300Rの進入こそ角度で川畑選手に上回ることができなかったものの、そこからインに食い込もうとする今村選手。そして、川畑選手に、審査員席前でダートへはみ出すミスが出た。今村選手が大きなアドバンテージを得る。入れ替わった先行では、300Rの進入で川畑選手がビタビタに合わせられるも、アドバンテージを覆されることなく、今村選手が決勝戦進出を決めた。


富士は2003年以来7年ぶり、逆回りのコースとなってからは初の優勝。これでシリーズランキングも再びトップへと返り咲いた今村選手。次戦、岡山は一昨年の大会で優勝もしており、当然優勝候補の一角だ。


決勝は、勝っても負けてもダンロップが優勝、準優勝となる最高のかたちで迎えることができた。第1戦・お台場のまさに再現だ。カードは今村選手VS野村選手。この対戦カードは15回目で、D1グランプリなかで最多だ。そして、野村選手は富士スピードウェイの優勝はもちろん、決勝への進出も今回が初めてであり、今村選手は2003年に富士で優勝しているが、逆回りのコースになってからは優勝しておらず、野村選手と同様に決勝を迎えるのが、今回が初となった。
1本目の先行は今村選手。勢いよく角度をつけて300Rへ飛び込んできた今村選手に対して、やはりミッショントラブルが影響してか、離れての進入となった野村選手。ヘアピンの立ち上がりまでに差を縮めたい野村選手であったが、そこは今村選手。距離を保ったままでフィニッシュした。アドバンテージは今村選手。入れ替わって先行は野村選手。こんどは野村選手が300Rで角度をつけた進入を見せる。しかし、今村選手がしっかり合わせてミスのない走りを披露。結果、第3戦は今村選手が勝利をモノにした。
「今回、じつはミスが多かったんですよ。反省しなきゃいけない部分も多かったです。でも、昨年のチャンピオンだからとか、富士ではあまりいい成績を残せていないといったことを考えずに、リラックスして戦いに挑めたのがよかったと思います。どこのサーキットでもそうなんですけど、決勝まで残れば勝てるぞと自分にいい聞かせ、それがいつもよい方向へつながっている感じです。今回は野村さんのマシンの調子が悪かったのが残念ですが……。岡山ではミスをしないように、練習を重ねて、さらに気を引き締めて挑みたいです」(今村陽一選手)
4速ギアがない状態で最後まであきらめず、果敢に戦った野村選手。この走りに対して土屋圭市賞が贈られた。そして、ポイントランキング3位に浮上。マシントラブルを抱えたにせよ、その状態での準優勝は快挙だ。運も味方につけて、次戦岡山の奮闘に期待したい。
「運がよかったですよ、今日は。毎戦、もうだめだと感じながら走っていましたから。ほんとうに運で準優勝できたようなものです。次の岡山は、岡山だけを見に来るお客さんがたくさんいるので、ベスト以上の走りでお客さんを楽しませたいですね」(野村謙選手)

■藤岡和広監督のコメント
「オートポリスから戻ってきて、パワーアップしたニューエンジンを積んでいます。パワーは実測値で700psというところです。今回はドライバーがミスをせず、タイヤのグリップもとてもよかったです。うまく行ったという感じですね。まわりのパワーも上がっていますし、岡山ではさらにパワーを上げて挑む予定です」
■阿部成人監督のコメント
「今回、幸いにも富士の最高成績となる準優勝になりましたが、ミッショントラブルがあり、僕自身の点数としては0点ですね。昨日の夜の時点でミッションが渋い感じにはなっていたのですが、まさかギアの歯が抜けたようになっているとは思わず、見落としてしまいました。僕の判断ミスですね。タービンを大きくしてエンジンのパワーもオートポリスより30psぐらいアップしています。ミッション以外、あとはエンジンもすべて絶好調でしたから。とても残念です。修行してきます……」

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ニュルブルクリンク2014