第8戦 ツインリンクもてぎ

2016/01/01

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Hitotsuyama Audi R8 LMSが予選8番手から、4位でフィニッシュ!
ランキング3位を獲得し、FIA-GT3勢の最上位に。

11月11〜13日、SUPER GTシリーズ2016の第8戦、「MOTEGI GT GRAND FINAL」がツインリンクもてぎで開催された。ダンロップはGT300において、昨年ダブルタイトルを獲得したGAINERの「GAINER TANAX GT-R」(アンドレ・クート/富田竜一郎)と「GAINER TANAX AMG GT3」(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)、そしてR&D SPORTの「SUBARU BRZ R&D SPORT」(井口卓人/山内英輝)の3台を引き続き走らせ、さらにAudi Team Hitotsuyamaの「Hitotsuyama Audi R8 LMS」(リチャード・ライアン/藤井誠暢)も陣営に加えることとなった。
今回は熊本地震の影響で中止になったオートポリスの第3戦代替レースと、この最終戦が併せて行われる、シリーズ初の2レース開催となり、土曜日のうちに最初のレースの予選と決勝が終了。その余韻を残したまま、日曜日に今季最後の戦いに挑むこととなった。

泣いても笑っても、これが今季最後の戦いとなった。土曜日に行われたレースによって、14チームから一気にチャンピオン候補は7チームに絞られて、ダンロップ勢として権利を3チームが残した一方で、「GAINER TANAX AMG GT3」は完全に失ってしまっていた。トップから一番近い立場にいる、「Hitotsuyama Audi R8 LMS」でも9ポイント差とあって、勝ってなお相手が何位でゴールするかによって、明暗は大きく分かれることとなる。

最終戦の予選も15分一発勝負。しかも、前日に走ったドライバーは連続して走れないため、誰がアタックするか自ずと決まってくる。そして、ダンロップ勢は決勝のタイヤ無交換策を想定して予選に挑んでいたため、選択した硬めのタイヤが低い温度にマッチせず、いずれも苦戦を強いられてしまう。

最上位は「SUBARU BRZ R&D SPORT」の山内英輝で7番手。優勝を飾ったばかりの「Hitotsuyama Audi R8 LMS」の藤井誠暢が8番手で、一台を間に挟んで「GAINER TANAX AMG GT3」の平中克幸が10番手となった。「GAINER TANAX GT-R」の富田竜一郎にいたっては19番手で、今季ワーストポジション。ただ、もともとGT-Rはもてぎを苦手としているので、前日の予選ではいかにダンロップのタイヤがカバーしていたかも分かることとなった。

決勝レースは爽やかな秋晴れの下で行われた。レースウィークに入って間もなくは秋どころか、冬の気配さえ漂わせていたのが、まるで嘘のよう。気温は20度まで達し路面温度は27度と、むしろこの時期としてはありえないほどでもあった。
王座獲得に向けての望みを託し、まず斬り込み隊長となったのは「SUBARU BRZ R&D SPORT」の山内だった。オープニングラップのうちにふたつ順位を上げて、トップグループの真後ろにつけたからだ。しかもランキングトップの車両が順位を落として、入賞圏内にギリギリ入るという位置関係。そして、その後方では「Hitotsuyama Audi R8 LMS」のリチャード・ライアンと、「GAINER TANAX AMG GT3」のビヨン・ビルドハイムが8番手を争っていた。

8周目に、3番手を走行していた車両が突然スローダウン、それぞれひとつずつポジションを上げる。レースも1/3を経過してドライバー交代が可能になると、上位を行くダンロップ勢では20周目に「GAINER TANAX AMG GT3」が平中へ、24周目には「SUBARU BRZ R&D SPORT」が井口へ、そして25周目には「Hitotsuyama Audi R8 LMS」が藤井にバトンタッチ。このうち井口だけが左側2本を交換し、平中と藤井は4本交換でコースに送り込まれた。無交換のような我慢を強いられずに済むため、そのまま3台が順位を上げて行くものと予想された。

スタート時より高まっていた温度が、全体のペースを鈍らせる中、最も気を吐いていたのが藤井だった。

自身も「タイヤのマネージメントは考えずにフルプッシュ」と、ピットストップの間に大きく順位を落としていたものの、前を行く車両を抜き続けて35周目には7番手に、そして38周目には3番手の車両のリタイアで6番手に浮上する。まだまだ「Hitotsuyama Audi R8 LMS」のオーバーテイクショーは終わらない。42周目にはもう一台を、さらには47周目のV字コーナーでは同点で並んでいたGT-Rをも、藤井は抜くことに成功する。その結果、4番手に浮上。それ以上のポジションアップは果たせず、表彰台にも届かなかったが、ダンロップ勢とFIA-GT3勢では最上位となるランキング3位を獲得した。
なお、「GAINER TANAX AMG GT3」は10位でゴールし、ランキングは9位。左右のタイヤのバランス悪化に苦しんだ「SUBARU BRZ R&D SPORT」は13位でゴールし、ランキングは6位。そして最終戦では最後まで中位に留まった「GAINER TANAX GT-R」は15位で、ランキングは8位と、4台すべてシリーズでトップ10に入ることに成功した。「予選を硬めのタイヤで行って、朝の気温では正直苦しくて8番手に留まったんですが、決勝では路面温度が上がったことで内圧が上がりすぎて、やむを得ず無交換をやめて、早めに4本交換をしました。無交換で行けないなら、柔らかいタイヤで行っていれば予選も、もっと上の順位だったでしょうし、そのあたりは反省点ではありますが。出て行ったら、当然順位は下がっていたんですが、昨日4本交換のクルマに追われたことを知っているので、とにかく最後までフルプッシュすれば、チャンスあるかなと思って本当にプッシュしました。何台も抜き続けているうちに、残り数周というところでGT-Rの3号車が見えてきて、何が何でも抜いてやろうと、最後はタイヤがなくなってもいいからとプッシュしたら、少しリスクもあったんですが、抜くことができました。終わってみれば、ランキング3位、FIA-GT3勢に苦しいシーズンで最上位は、すごくいいシーズンだったと思います」(藤井)
「山内選手の前半スティントがすごく調子良かったので、チャンピオンは難しくてもチャンスがあると思っていました。本当は4輪交換で行くはずだったんですが、急きょ作戦を切り替えて2本交換にしたら、温度が予想以上に上がってしまったのと、バランスが取り切れなくて終盤がすごく厳しくなってしまったので、残念な結果になってしまいました」(井口)

「結果的にHitotsuyama Audi R8LMSがシリーズ3位で終わりまして、我々としては初めてのクルマで、しかもFIA-GT3の中ではトップだったので、タイヤ的には良かったのかな、と思っています。ただ、無交換を意識せず予選で柔らかいタイヤを選んで、前の方からスタートしていたら、少しは歴史も変わっていたかもしれないと。そのあたり中途半端ではありましたし、今回だけの結果で言えば、他の3台は苦戦していて残念でした。でも、メーカーとしては年間2勝できて、全車表彰台争いができたので、そういう意味では幅の広いタイヤが作れた感じもします。タイトルを逃したのが悔しいです。」(ダンロップモータースポーツ/斉脇課長)