第7戦 チャン・インターナショナル・サーキット

2016/01/01

GAINER TANAX GT-Rは序盤のアクシデントを挽回して4位入賞
連勝の期待もかかったSUBARU BRZ R&D SPORTは無念のリタイア

10月8〜9日、SUPER GTシリーズ2016の第7戦、「BURIRAM SUPER GT RACE」がタイのチャン・インターナショナル・サーキットで開催された。ダンロップはGT300において、昨年ダブルタイトルを獲得したGAINERの「GAINER TANAX GT-R」(アンドレ・クート/富田竜一郎)と「GAINER TANAX AMG GT3」(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)、そしてR&D SPORTの「SUBARU BRZ R&D SPORT」(井口卓人/山内英輝)の3台を引き続き走らせ、さらにAudi Team Hitotsuyamaの「Hitotsuyama Audi R8 LMS」(リチャード・ライアン/藤井誠暢)も陣営に加えることとなった。前回の鈴鹿サーキットでの第6戦では「SUBARU BRZ R&D SPORT」が今季初優勝。この勝利はダンロップユーザーとしても、昨年の第5戦鈴鹿以来であり、井口と山内は一躍ランキングのトップに浮上することにもなった。さらに「GAINAR TANAX GT-R」も3位に入って表彰台を奪う、誇らしい結果ともなった。日本から約4500kmも離れた常夏の国でも、引き続きの活躍が期待された。

タイでは10月はまだ雨季にあたることもあって、土曜日の未明には激しいスコールに見舞われたが、公式練習が始まる頃にはすっかり路面は乾いて、一部に水たまりを残すまでにコンディションは回復していた。その公式練習では、前回無念のリタイアを喫していた「GAINER TANAX AMG GT3」が、まだ40kgとハンデもそう厳しくないこともあり、ダンロップユーザーのトップとなる3番手につける。その一方で、ランキングトップで94kgを積んでいる「SUBARU BRZ R&D SPORT」は20番手と対照的なスタートとなっていた。

続いて行われる予選を前にして、サーキット上空には黒い雲が浮かぶようになり、再びスコールの予感が胸をよぎるも、幸いにしてポツリポツリと降っただけで、コースを濡らすまでには至らなかったのは何よりだった。Q1で躍進を遂げたのは、公式練習では苦戦を強いられていた「SUBARU BRZ R&D SPORT」の山内だった。一気に順位を上げて6番手につける。そして、これをひとつ上回ったのが「GAINER TANAX GT-R」の富田だ。「前回、久々の表彰台に立てたので、今回はチーム全体が優勝を意識して臨んでいたので、この結果は良かったです」と、苦戦が続くFIA-GT3勢ながら気を吐くこととなった。

さらに「GAINER TANAX AMG-GT3」のビルドハイムは10番手ながらQ1をクリアする。これに対し「Hitotsuyama Audi R8 LMS」の藤井は「気温が想定外で」と20番手に甘んじ、4台揃ってのQ2進出は果たせずに終わる。
Q2ではすっかり勢いづいた感もある「GAINER TANAX GT-R」が、クートも奮闘して3番手に浮上。奇しくもトップ3は昨年のレースと全く同じ並びになっていた。そして、6番手は「GAINER TANAX AMG GT3」の平中が獲得するが、「今の僕らに出せるベストだと思います。メルセデス勢の中ではベストですし」と、納得はいかぬよう。
同じく不満そうなのは「SUBARU BRZ R&D SPORT」の井口だった。「せっかくQ1で山内選手がキレキレの走りを見せてくれたのに、Q2ではまわりが速過ぎました。ただ、94kgのウエイトを感じつつも、クルマのフィーリングは悪くないので、気持ちを入れ替えて、決勝ではひとつでも順位を上げていく方向を考えます」と、これも王座獲得の試練のうち、と考えているようでもあった。

日曜日になると、このレースウィークで一番と言ってもいいほど日差しが強くなり、よりタイらしさを醸し出すようになっていた。合わせて温度も上昇したことで、コンディションも変化したためか、決勝を想定した走りという以上に、全体的にタイムが低下する。そんな中、朝のフリー走行で3番手につけたのが「GANNER TANAX AMG-GT」だった。しっかりセットの合わせこみができていたあたりが、今年は苦戦続きとはいえ、さすがはチャンピオン候補の常連だと思わせた。「GANNER TANAX GT-R」も6番手につけた一方で、他の2台は中団に沈んでおり、一抹の不安を残す。

決勝が始まる頃には気温は33度、路面温度は44度と、ついに想定どおりの温度にまで上がってきた。グランドスタンドからの声援は、スタートが近づくにつれ高まっていき、それがドライバーたちのボルテージを上げる。これにさっそく応えたのが「GAINER TANAX GT-R」のクートだった。グリーンシグナルの点灯と同時に、トップに迫らんばかりの勢いを見せ、オープニングラップの逆転こそ果たせなかったが、ピタリとトップ集団に食らいつく。そして、7周目には2番手に浮上する。

その直前にはアクシデントも発生していた。「Hitotsuyama Audi R8 LMS」のライアンが、3周目の接触でリヤセッションにダメージを負い、緊急ピットインを強いられていた。

パートナーの藤井はスタート前に「タイヤが保つか保たないか分かりませんが、僕らは絶対にタイヤ無交換でいきます。それで絶対に順位を上げてみせます」と宣言していたが、それも果たせず、早々とトップから周回遅れにされていた。逆にじわじわと順位を上げてきたのが「GAINER TANAX AMG-GT」のビルドハイムで、8周目には4番手に浮上、どうやらダンロップのタイヤには、より高温が適していたようだ。
そのことを証明するかのように、「GAINER TANAX GT-R」のペースも徐々に上がってくる。そしてトップの「B-MAX NDDP GT-R」と激しいトップ争いを演じるようにまでなった。一時は1秒を切るまでとなり、トップ奪取も時間の問題かと思われたのだが、その最中に勢い余ってしまったのか、クートはGT500車両と接触し、左のフロントフェンダーを痛めてしまう。走行にはそれほど支障を来たさなかったが、やがて修復を命ずるオレンジボールが出されるのは確実と、チームは判断。26周目には早々とピットに呼び戻すこととなる。

富田選手に交代すると、一旦は11番手にまで退いていた「GAINER TANAX GT-R」だが、ペースには衰えがなかったことから、全車がピットストップを終えると、5番手に浮上。さらに52周目には3番手を走行していた車両が、やはりGT500車両と接触してリタイアを喫していたこともあり、4番手にまで順位を戻すこととなった。
しかし、そこから先の間隔はあまりに大きく、それ以上のポジションアップを「GAINER TANAX GT-R」は果たせず。それでも今季5回目の入賞を果たし、ランキングでも7位にまで浮上した。「一見した印象では、かなりダメージが大きそうですが、意外にそうでもなくて。ただ、あのアクシデントがなければ、個人的な記録ですけど、タイで3年連続のファステストラップはきっと獲れたと思いますし、表彰台も狙えたと思います。今回はクルマ、タイヤ、ブレーキと、すべてのパフォーマンスがハイレベルなところにあったので、最後の2戦も頑張ります」と富田。

「GAINER TANAX AMG-GT」が依然として苦境に立たされている状況の中、9位でゴール。序盤に遅れをとった「Hitotsuyama Audi R8 LMS」は24位で完走。その一方で惜しまれるのは、「SUBARU BRZ R&D SPORT」が33周目にターン7での単独スピンの後、縁石にフロア下のスキッドが当たり、コントロール不能になってクラッシュ、リタイアしてしまったことだ。そのため、ランキングのトップから4位に落ちてしまう。「決勝になったら、トルクのあるFIA-GT3勢も速くて、思いどおりのレースができなくなってしまいました。しかも僕がスタートで順位を落としてしまったこともあって、山内選手に無理もさせてしまったし、流れを作れず残念に思います」とパートナーを気遣う井口。
さらにこうもつけ加えた。「ランキングのトップは奪われましたが、大きくポイントも離されたわけではないので、次は2回レースもあるので、いいレースができれば、まだチャンスがありますから、また頑張ります」と、諦めない姿勢を引き続き見せてくれた。
「300クラスに関しては残念ですね。みんな決勝重視で硬いタイヤを選んでいても、それぞれ予選はあの順位だったので、決勝は追い上げていくだろうと思ったんですけど、今回のレースは接触がすごく多くて、そこで不運が重なってしまいました。ちょっともったいないですね。それでも61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)には、最後のもてぎ2レースでシリーズチャンピオンがかかっているので、なんとしてもいい結果を出してチャンピオンが取れるように頑張っていきたいと思います」(ダンロップモータースポーツ/斉脇課長)