第5戦 富士スピードウェイ
2016/01/01
Hitotsuyama Audi R8 LMSが2位、SUBARU BRZ R&D SPORTが3位と、
揃って表彰台へ念願の4台すべて入賞が、富士スピードウェイで果たされる!
予選を前に、土曜日の早朝に行われた公式練習ではヒヤリとさせられる光景があった。開始から間もなく、井口卓人の駆る「SUBARU BRZ R&D SPORT」がコース脇でストップしていたのだ。そのため、赤旗が出されて、マシンはピットに戻されることになる。ただ、幸いにして原因は電気系であることが判明し、やがて走行を再開することができた。この公式練習で好調だったのが「Hitotsuyama Audi R8 LMS」で、3番手のタイムを記録する。FIA-GT3勢がストレートパフォーマンスに優れることもあり、「SUBARU BRZ R&D SPORT」らJAF-GT勢は苦戦を強いられるものと思われた。
実際、Q1では上位を多くのFIA-GT3勢が占めて、公式練習の勢いそのままに「Hitotsuyama Audi R8 LMS」の藤井誠暢は2番手につける。その一方で、「SUBARU BRZ R&D SPORT」の山内英輝は7番手につけ、「GAINER TANAX AMG GT3」のビヨン・ビルドハイムを僅差ながらも従えた。唯一、Q1突破を果たせなかったのは「GAINER TANAX GT-R」のアンドレ・クートで、19番手留まり。これはどうやらGT-Rのウィークポイントであるようで、あまりもの猛暑にターボに備えられるインタークーラーが十分機能しなかったのが原因のようだ。実際、Q1突破を遂げたGT-Rは一台もおらず。
続いて行われたQ2では、「Hitotsuyama Audi R8 LMS」のリチャード・ライアンも2番手を獲得、「僕が富士を走るようになって、いちばん暑いんじゃないかな。これは想定外だったけど、ダンロップのタイヤがいい方向に機能してくれた。2番手だったけど、残念じゃない。今回は表彰台、いや優勝も狙えるんじゃないかな」と力強いコメントをくれた。
そして4番手は「SUBARU BRZ R&D SPORT」の井口卓人が獲得し、これは言うまでもなくJAF-GT勢の最上位だ。「ロングランには自信があるので、チームと一緒にいちばん速くゴールする方法を見つけたいと思います」と、こちらもコメントが頼もしい。その一方で、「GAINER TANAX AMG」の平中克幸は、走路外走行があったため当該ラップタイムが削除されてしまう。ただし、順位は変わらず、11番手から決勝に挑むこととなった。
日曜日の富士スピードウェイは、土曜日に負けず劣らずの猛暑に見舞われ、普段ならば心穏やかにする青空が、なぜか恨めしく見えたほどだった。早朝に行われたフリー走行では、ダンロップ勢のトップを「SUBARU BRZ R&D SPORT」が獲得、3番手につけて、4番手の「Hitotsuyama Audi R8 LMS」をも従える。「比較的柔らかめのタイヤを選んでいるんですが、この時期にものすごく合っていて、ひとりで走れば、まぁ行けちゃいます(笑)。でも、レースはまわりにクルマがいるんで」と、井口は笑顔で語る。一方、「GAINER TANAX AMG」は10番手、「GAINER TANAX GT-R」は下位に沈んで、未だ苦境から脱せずにいた。
スタート進行が始まる頃は、ちょうど太陽が真上にあって温度は、このレースウィークのピークに達していた。気温は33度、路面温度は54度。ここまでの上昇は正直想定外でもあり、中にはタイヤの対応温度域から外れてしまったメーカーもあったようだ。そんな中、GT300のダンロップタイヤは、この猛暑にもしっかり対応した。その最先鋒となったのが「Hitotsuyama Audi R8 LMS」の藤井だった。
スタートからしばらくはトップに離されもしたが、周回が進むごと徐々に差を詰めて10周を過ぎた頃にはテール・トゥ・ノーズ状態にまで持ち込んでいく。しかし、トップのBMWはストレートが速く、藤井がコーナーやブレーキングで詰めても、抜くまでには至らない。
一方、その藤井とはやや間隔を置いて、3番手につけていたのは「SUBARU BRZ R&D SPORT」の井口だ。3周目のダンロップコーナーで一台をかわした後、上位陣の隙を待つこととなる。そんな中、コース上に落ちたパーツを回収するため、セーフティカーが17周目から22周目にかけて入り、バトルはいったんリセットされる。そして、再開後にはピットレーンがオープンとなり、中団では早くもドライバー交代を行うチームも現れるが、上位陣は揃ってコースに留まっていた。
ダンロップ勢では、「GAINER TANAX AMG」が最も早く、27周目にビルドハイムから平中に、「SUBARU BRZ R&D SPORT」が28周目に山内に、そして29周目には「Hitotsuyama Audi R8 LMS」がライアンに代わる。「GAINER TANAX GT-R」が30周目に、アンドレ・クートから富田竜一郎に交代、ここまで視界が開けてペースを刻めるようになっていたことが、後に福音をもたらすことになる。
そして、全車がドライバー交代を終えると、トップ3の順位は変わらなかったが、ピットに留まっていた時間がやや長かったこともあり、トップと「Hitotsuyama Audi R8 LMS」の差は広がってしまっていた。しかし、ゴールが近づいてもタイムの落ちないライアンは、ラスト2周でプッシュをかけてトップに急接近、チェッカー目前ではすぐ背後につけたのだが……。「もう1周、早くプッシュしていたら、どうなっていたか。そう考えると残念でもあるけど、2位という結果にはすごく喜んでいます」とライアン。その言葉を受けて、藤井は「僕らドライバーにとっても、チームにとっても、まだ優勝したことのないアウディで勝つのが目標。ダンロップもいいタイヤを作ってくれたので、絶対に今年、何があっても勝ちたいと思います」と高々と宣言してくれた。
そして、3位は「SUBARU BRZ R&D SPORT」が獲得、2戦連続で表彰台に立つこととなった。「富士で3位は、ちょっと奇跡かと思いました。僕の地元、オートポリスのレースがなくなったのは残念ですが、その間のテストでものすごくいいパフォーマンスを引き出せまして、ストレートで苦労すると思った富士で、まさかこんな順位になるとは……」と、井口は感動に浸っていた。
そして「GAINER TANAX AMG」は7位で、「GAINER TANAX GT-R」は10台抜きとなる9位でフィニッシュ。その結果、ついに全車入賞を果たすことになった。
「勝てなかったのは惜しかったですが、SUGOでも、鈴鹿でもテストをやって、タイヤの開発も含めて、クルマのセットアップもタイヤに合うようやってもらえて、それが結果に表れて良かったです。この流れにGAINERの2台も続いてくれることを期待します」とダンロップモータースポーツの斉脇課長。目標はひとつずつ達成されていく、次は表彰台の中央にどのチームが立つのだろう。