第3戦 ツインリンクもてぎ

2016/01/01

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GAINER TANAX AMG GT3が今季初のPP
Hitotsuyama Audi R8 LMSが予選2番手から、逆転で初優勝!

11月11〜12日、SUPER GTシリーズ2016の第3戦代替レース、「MOTEGI GT GRAND FINAL」がツインリンクもてぎで開催された。ダンロップはGT300において、昨年ダブルタイトルを獲得したGAINERの「GAINER TANAX GT-R」(アンドレ・クート/富田竜一郎)と「GAINER TANAX AMG GT3」(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)、そしてR&D SPORTの「SUBARU BRZ R&D SPORT」(井口卓人/山内英輝)の3台を引き続き走らせ、さらにAudi Team Hitotsuyamaの「Hitotsuyama Audi R8 LMS」(リチャード・ライアン/藤井誠暢)も陣営に加えることとなった。

前回のタイ、チャン・インターナショナル・サーキットでの第7戦では、「GAINER TANAX GT-R」が4位入賞。序盤の接触で右フロントのフェンダーを損傷し、その修復に時間を要しながら挽回しての結果だっただけに表彰台も夢ではなかったはず。そして、「GAINER TANAX AMG GT3」が9位につけた一方で、「Hitotsuyama Audi R8 LMS」は序盤の接触でリヤセクションにダメージを負い、24位での完走を果たすに留まり、また「SUBARU BRZ R&D SPORT」は無念のリタイアを喫している。

今回はシリーズ初の2レース開催で最大42ポイントの加算が可能とあって、ダンロップユーザー4台すべてにチャンピオン獲得の可能性が残されていた。特に「SUBARU BRZ R&D SPORT」はランキングこそ4位に後退したとはいえ、トップとの差はわずか7ポイントでしかなく逆転も夢ではない。揃って上位入賞を果たして、ランキングを一気に上げることが期待された。

熊本地震の影響で本来なら、オートポリスで行われるはずだった第3戦が中止になり、代替レースが最終戦と併せて行われることとなった。土曜日に第3戦の予選と決勝を、日曜日に最終戦の予選と決勝を開催するため、公式練習は通常とは異なり金曜日に行われた。その公式練習は午前、午後に2回、1時間ずつ行われるため、どのチームも第3戦代替レースは今季7戦目に相当することから、半減されるウエイトハンデを想定したセットを1回目に、そしてノーハンデの最終戦想定のセットを2回目に試す予定としていたが、金曜日はあいにくの雨に見舞われてしまう。

そんな中、トップタイムを記していたのは「GAINER TANAX AMG GT3」の平中克幸だった。ここまでメルセデス勢は苦戦を強いられていたこともあり、恵みの雨となることを願っていたに違いない。天気は2回目が近づくにつれ回復していくこととなり、路面も徐々に乾いていく。そんな状況において、序盤のトップは「Hitotsuyama Audi R8 LMS」の藤井誠暢だった。これをやがて平中が上回ることとなる。

より一層のタイムアップが終盤には期待されるも、残り20分間を切ったあたりから、再び雨が降り始めてしまう。それでも「GAINER TANAX AMG GT3」は3番手、「Hitotsuyama Audi R8 LMS」は4番手につけることとなった。

土曜日は天候が一転して、青空が広がっていた。今回の予選はドライバーひとりで15分間の一発勝負。その予選を前に路面はまだ濡れたままで、雨の公式練習で好調だった、ダンロップ勢は迷わずウェットタイヤの装着を決断する。中にはドライタイヤを履いた車両もあったが、路面の乾きは予想外に遅く、途中でウェットタイヤへの交換を強いられていた。そんな中、序盤からトップに立って、最後までその座を明け渡さなかったのが「GAINER TANAX AMG GT3」のビヨン・ビルドハイムだった。
これに「Hitotsuyama Audi R8 LMS」のリチャード・ライアンが続き、3番手は「SUBARU BRZ R&D SPORT」の井口卓人で、一台を挟んで5番手には「GAINER TANAX GT-R」のアンドレ・クートと、ダンロップ勢が上位を独占する。

「ポールを獲れてすごく嬉しい。もともと僕らはこの時期のもてぎを得意としていたけれど、この難しいコンディションにどう対処するかエンジニアやチームメイトとミーティングして、ウェットタイヤを2セット使おうと。それがバッチリ決まりましたね。タイヤは素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれましたし、僕も会心のアタックができました」(ビルドハイム)

「走ってみないと分からない状況だったから、最初のうちは手探り状態で、最後に良くなっていったけど、良くも悪くもなくという感じで、本当はポールが獲りたかったね。でも、すぐに気持ちを切り替える。前だけ見て決勝を戦うよ」(ライアン)

「ダンロップに有利なコンディションだったと思うんですが、その中でも後半にコンディションが良くなるという確信があったので、硬めのタイヤで行きました。予想以上に11号車(GAINER TANAX AMG GT3)が速くて、柔らかいタイヤを選んでいても、あのタイムは見えなかったんですが、決勝に向けてはいい流れになったと思います。ちょっとワクワクしているんですよ」(井口)

予選終了から4時間も経たずに、決勝レースのスタート進行が開始され、その頃には路面は完全に乾いていた。初めて全車がドライタイヤを履いて走行するのは15分間とされたウォームアップ走行から。

それでも決して長くはない時間を有効に活用して、最終チェックが行われた。そして、誰もがぶっつけ本番にも等しい状態で、決勝レースのスタートが切られることとなる。

まずは「GAINER TANAX AMG GT3」のビルドハイム、「Hitotsuyama Audi R8 LMS」のライアンはポジションキープで1周目を終えたのに対し、「SUBARU BRZ R&D SPORT」の井口はひとつ順位を落とした。揃って上位につけ、激しいバトルの始まりを予感させるも、2周目に入って2カ所でアクシデントが発生したため、5周にわたってセーフティカーがコースイン。仕切り直されるとビルドハイムはスパートをかけ、これに着いていけるのはライアンだけとなっていた。

トップを争う2台のうち、先にピットに入ったのは「GAINER TANAX AMG GT3」で24周目に、タイヤ無交換で平中をコースに送り出す。これを見ていた「Hitotsuya Audi R8 LMS」もまた、無交換で藤井を送り出して、ロスも最小限としていたことから、平中の前に出ることにも成功する。一方、「GAINER TANAX GT-R」と「SUBARU BRZ R&D SPORT」のドライバー交代はそれより早く、それぞれ21周目と23周目に、富田竜一郎と山内英輝にステアリングは委ねられていた。

全車がドライバー交代を済ますと、やはりトップに立っていたのは藤井で、続いていたのが平中だったが、差は徐々に広がっていく。気温の上昇は予想外に著しく、硬めのタイヤをチョイスしていた「Hitotsuyama Audi R8 LMS」には絶好の状況となっていたものの、他の3台にとっては状況はやや厳しかった。そんな中、ピットでの作業違反があったため「SUBARU BRZ R&D SPORT」がドライビングスルーペナルティを命じられ、38周目に大きく順位を落とす。そしてペースを思うように上げられなくなった平中が、最後は4位に順位を落とした一方で、藤井は難なく逃げ切って優勝を飾る。

「GAINER TANAX GT-R」は5位で、47周目の接触で足まわりにダメージを負った「SUBARU BRZ R&D SPORT」はチェッカーを受けることなくレースを終え、それでも完走扱いの23位となっていた。

「持ち込んだ硬い方のタイヤでスタートして、正直もう、みんな無交換で来ると思っていたんで、僕らも無交換で行かないと勝負はできないと考えていました。僕に代わってピットアウトした時にGAINER(TANAX AMG GT3)の前に出てトップとなって、そのあとは向こうも無交換だったので、ペースを合わせて走っていたんですが、こちらの方がペースは良くて早々にリードを築くこともできました。でも、残り20周近くある状況で、『これは最後、厳しくなるな』と思い、かなりタイヤをいたわって走ったこともあって、ランボルギーニやポルシェが迫ってきた時にもまだグリップは残っていたので、なんとか逃げ切って久々の優勝を飾ることができました。4年ぶりで、アウディでは初めての勝利です」(藤井)

「悔しいですね。予選までは完璧だったんですが、決勝は今年の僕らを象徴するような展開になってしまいました」(平中)
「GT300では予選で上位を独占できました。あの難しい状況にウェットタイヤがマッチしていたのですが、ドライの決勝では11号車(GAINER TANAX AMG GT3)や61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)のペースが、後半落ちてしまいました。前半はそれなりのペースだったのですが、思ったよりも温度が高くなったことが影響してしまったようです。それでも21号車(Hitotsuyama Audi R8 LMS)は踏みとどまって優勝してくれたので、非常に嬉しく思います」(ダンロップモータースポーツ/斉脇課長)