第7戦 オートポリス

2014/12/24

GAINER TANAX GT-Rが予選14番手から2位入賞
最終戦を待たず、悲願のWタイトルを獲得する!

SUPER GTシリーズの第7戦、「SUPER GT in KYUSHU 300km」が大分県のオートポリスで10月31日〜11月1日に開催された。ここまで2勝を挙げて、ランキングのトップを独走する「GAINER TANAX GT-R」(アンドレ・クート/千代勝正/富田竜一郎)には、早くもドライバーとチーム、Wタイトル獲得の可能性がある。そのためのハードルは決して低くはないが、チャンピオン獲得のために全力を尽くすのは言うまでもない。そして同じGT300のダンロップユーザーである「GAINER TANAX SLS」(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)、「SUBARU BRZ R&D SPORT」(井口卓人/山内英輝)とともに今季5回目の入賞揃い踏みの期待もかかっていた。

 シリーズも終盤に差し掛かり、今回のレースにおける最大の要素は、ウエイトハンデが半減されて、ここまで獲得したポイントと同じ重量を積むことである。前回はGT300でMAXとなる100kgを積んでなお6位入賞を果たした「GAINER TANAX GT-R」は、半減したとはいえ74kgを搭載。これがどれだけ影響を及ぼすのか注目された。
走行開始となる土曜日は、強めの日差しがまさに秋晴れというに相応しいものの、吹く風は肌寒く、むしろ秋を通り越して冬を感じさせた。言い換えるならば、アタックには適した条件ともなっていた。そんな中、公式練習では「GAINER TANAX GT-R」は1分44秒541を出すに留まり9番手。一方、「SUBARU BRZ R&D SPORT」は1分44秒275で4番手につけたものの、「GAINER TANAX SLS」は1分44秒845を出すのがやっとで、状況はより深刻なよう。それでもメカニックたちの懸命なセットアップによって、打破されることが期待された。
しかし、結論から言えば、予選でQ1を突破できたのは「SUBARU BRZ R&D SPORT」だけだった。山内が1分43秒833で2番手につけ、ふたつ順位を落としてしまったとはいえ、井口が1分43秒832をマークして決勝レースには4番手から挑むことになった。「決して悪くない結果。ポジティブに考えて、決勝では僕たちに追い風が吹くはずです。それはタイヤ選択もそうですし、オートポリスでのタイヤテストでロングランも試せて、いい感触が得られましたから」と語るのは、地元九州出身の井口。たくさんの応援団が訪れるサーキットだけに、まさしく必勝体制で挑んでいた。

 一方、千代がQ1を担当した「GAINER TANAX GT-R」は、1分45秒342でコンマ02秒及ばず14番手留まり、あと一歩のところでQ2進出を果たせなかった。そして「GAINER TANAX SLS」のビルドハイムも1分45秒763で16番手。しかし、意識には明らかな違いがあった。「確かに重いです。でも、僕らは決勝レースを見据えて、硬めのタイヤを選んでいたので、予選は正直、あの順位で仕方ないというか、想定内でした。決勝は大丈夫、追い上げていけますよ」と千代は語っていたのに対し、平中は「よく分からないのですが、どうにもバランスが良くなくて……」と苦悩の表情を浮かべていたからだ。
日曜日になると、空には雲も浮かぶようになって、さらに温度は低下。そんな状況において、「SUBARU BRZ R&D SPORT」は山内が記録した1分45秒255で、トップタイムをマークする。「ダンロップが用意してくれたタイヤが、すごくマッチしています。決勝のペースは良いと思うので、それを活かせる走り、チームの戦略をしっかりまとめたいですね」と山内は引き続き前向きに語る一方で、「GAINER TANAX GT-R」は1分47秒136を、「GAINER TANAX SLS」は1分48秒203を出すに留まり、苦境から脱していない印象だ。予選より温度が下がっていたのも、その一因なのかもしれない。

そして、いざ決勝を迎えると……。「SUBARU BRZ R&D SPORT」の井口はオープニングラップでひとつ順位を落としてしまうも、2番手を争う集団の中にいて立ち上がりはまずまず。

「GAINER TANAX GT-R」のクートもポジションキープ、「GAINER TANAX SLS」のビルドハイムはひとつ順位を上げて15番手に。この後、それぞれじわりじわりと順位を上げていくことが期待された。
ところが、序盤早々にダンロップユーザーの一画が崩れてしまう。ビルドハイムが3周目に大きく順位を落としたばかりか、次の周にはピットに戻り、ガレージにおさめられたままコースに復帰することは出来なかった。「原因ははっきり分かりませんが、(エンジンの)タイミングベルトが切れてしまって」と田中哲也監督。逆にクートは着実に順位を上げ、14周目には10番手に。その後も早めのドライバー交代を行ったチームもある中、自力でのオーバーテイクにも成功。35周目には、5番手に上がったところで千代に交代する。
しかし、その段階で「SUBARU BRZ R&D SPORT」の姿は、コース上になかった。31周目に井口と代わって、山内がピットを離れた瞬間、マシンは止まってしまったのだ。「どうやらプロペラシャフトが折れてしまったようです。タイヤは予想どおり決勝にマッチしていて、井口選手もいい感じで走ってくれていたのに。何もなければ、きっと面白いことになっていたと思うんですけどね……」と山内は悔しそうに語った。 一方、全車がドライバー交代を済ませた時の「GAINER TANAX GT-R」の千代は5番手。ドラマはこれにて終わらない。中盤から降り出した雨も味方につけて、なおも順位を上げていく。44周目に1台を、そして45周目にはもう1台。さらに50周目には2番手を走行していた車両にタイヤトラブルが発生、リタイアを喫したため、2番手に躍り出ることになる。そればかりか、ランキングで「GAINER TANAX GT-R」に続いていた車両が接触によってピットでの修復を命じられたため、入賞圏外へ。これで王座獲得のお膳立ては完璧に整った。「タイヤもクルマも、チームのピットワークも完璧で、本当にすべて完璧。トップには追いつけなかったけれど、自分たちのベストを尽くせたので、本当に満足しています」と千代。その結果、念願のWタイトル獲得が達成される。
「僕はGT300のベストチームに恵まれた。エンジニア、メカニック、そしてチームメイトの千代と富田、みんないつも素晴らしい仕事をしてくれたからね。チャンピオンが獲れて本当に嬉しい。最高の1年間になったと思う」とクート。
「14番手からのスタートとなった『GAINER TANAX GT-R』が素晴らしい追い上げを見せて、2位表彰台を獲得し、チャンピオンを獲得してくれました。今年は車種も増え、いろいろなマシンに合うようにしていこうという考え方を採りました。こうして結果を残せたことで、その方向性が正しかったことが証明できたと思います。GAINERとクート、そしてダンロップにとって昨年獲れなかったドライバータイトルも獲れたことは、とても嬉しい状況です。みんなで進めてきた努力が、これで少しは報われたのではないでしょうか」とモータースポーツ部の斉脇課長。残す最終戦で有終の美を飾って、シーズンを終えたいところである。