ストレートでは目一杯アクセルを踏み、コーナーを限界まで攻めるサーキット走行は、危険なスポーツといわれることが多いが、公道でスピードを出すより遙かに安全。しかし、それはサーキットの常識と言えるルールとマナーが守られてこその話。
サーキットに制限速度は無い。しかし、ピットロードには制限速度がある。イベントによって変更されることもあるが、筑波サーキット コース2000なら40キロ。富士スピードウェイや鈴鹿サーキットなど国際格式のコースなら60キロ。ミニサーキットの場合はピットロードが狭い場合が多く、場合によってはピットインした途端にパドックという場合もある。速くとも40キロ以下と考えておくべきだろう。
ピットアウトする時には、すぐにコースの中央側に出ないこと。国際格式のサーキットではピットアウト時の走行ラインを規制するホワイトラインが存在するが、有っても無くてもルール的には同じ。高速道路の合流で突然追い越し車線まで行ったら危険。というのと同じこと。まずは一番左側(サーキットによってはコースの右側がピットという場合もある)の走行車線に合流。その際にはウインカーもお忘れなく。
必ず覚えておかなければならないのが、コースサイドに設けられたポスト(監視小屋)に居るコースマーシャルから出るフラッグ。ミニサーキットの場合はポストが無くシグナルで代用していることも多いが、これは公道でいう信号。イエローフラッグは追い越し禁止、レッドフラッグは走行中止、他にも車両トラブルを知らせるフラッグ、低速走行車両の存在を教えてくれるフラッグなどいろいろな種類がある。これを理解せずにコースインするというのは無謀な行為。周囲に迷惑を掛けてしまう可能性もあるので、フラッグの意味はしっかり覚えておこう。
公認サーキットはほとんどがミニサーキット。ミニサーキットはポストの位置が少なく、これから説明するフラッグの種類も少ない。だが、一通り意味を理解しておく必要がある。
#チェッカーフラッグ(メインポスト)
これはサーキットを連想させるほど有名なフラッグ。レース終了だけでなく、走行枠の終了の際にメインポストで振られる。慣れないうちはチェッカーフラッグを見落として2度受けてしまう失敗をする場合があるが(ダブルチェッカー)、危険だし、とても迷惑。走行終了時刻を覚えておくと有効な予防策となる。
#イエローフラッグ(各ポスト)
スピンやコースアウトなど、ポストの先に危険が存在するというサイン。使い方は3種類あって、1本が静止状態の場合は追い越し禁止。1本が振られている場合(振動と呼ぶ)はコース上にスピン車両など障害物がある状態。スピン発生直後の場合も振動となる。そして最も危険な状態を示すのが2本振動。この場合、走行ライン上にスピン車両が停止している場合や、回収作業などでコース内に人が居る時に使用される。イエローフラッグが出されている場合はとにかく追い越し禁止。スピン車両が突然動き出すこともあるので、全開走行はやめて原因となった車両から離れた場所を走ろう。
#グリーンフラッグ(各ポスト)
規制解除を示すフラッグ。ポスト数の少ないミニサーキットでは、グリーンフラッグは運用されず、原因となった車両を通り過ぎた時点でイエローフラッグ解除となる場合が多い。
#ホワイトフラッグ(各ポスト)
ポストの先にスロー走行車が居ることを知らせるフラッグ。トラブル車両や救急車などの場合もある。注意は必要だが、追い越しはOK。
#ブラックフラッグ(メインポスト)
公式レースの場合、この旗が振られた車両は失格。レースから除外される。ピットインを指示するフラッグだが、コースによっては音量オーバーや運転席の窓が開いているなど一端ピットしろというサインとして運用されていることがある。ということで、この旗を見たらとりあえずピットイン。
#オレンジディスク(メインポスト下)
車両トラブルを教えてくれるフラッグ。基本的にはメインポスト下でゼッケンと一緒に提示される。オイルやクーラントなどが漏れている、バンパーやマフラーなどパーツが外れかかっているなどこのまま走行を続けることが危険と見なされた場合に提示される。緊急の場合はゼッケンではなく、フラッグ&指さしとなる場合もある。このフラッグを確認したら、まずはミラーを確認。もし、後方が煙で真っ白になっていたら液体漏れ。ゆっくりと減速し、スピードが落ちたらランオフエリアの安全な場所に車両を移動しよう。その他の場合は、安全な速度でピットイン。ピットロードに入ればマーシャルが誘導してくれて、オレンジディスクが出された理由を教えてくれる。
#オイルフラッグ
路面コンディションの急激な変化を知らせるフラッグ。コース上にオイルが出ている場合はもちろん、砂利、泥、また雨が降ってきて滑りやすくなった場合にも使われる。このフラッグは暫くしたら撤去されるが、それは路面状況が回復したということではなく、コース上の走行車両全車が状況を確認したタイミングで撤去される。
#ブルーフラッグ
後方から速いクルマが迫っているということを教えてくれるフラッグ。このフラッグを確認したら、焦らずに後方を確認して道を譲ろう。
#レッドフラッグ
走行中断のサイン。コース上にオイルが出てしまったとか、車両回収、緊急の救助が必要な場合などに提示される。レッドフラッグを確認したらレッドフラッグが出た時点で計測は止まるので、あとちょっとで良いタイムが!! など考えず、直ちにスピードを落とし、オイルなどに注意をしながら速やかにピットに戻ること。走行車両が速やかにピットに戻らないとレスキューがコースインできないのでノロノロ走ってはダメ。
#その他のフラッグ
コースによっては2輪用をローカルルールとして使っている場合もあるので、各サーキットのローカルルールを確認すること。
フラッグに従うというのはサーキットの基本的なルール。全員が速く走ろうとしているサーキットのコース上ではあるが、マシンの差、ウデの差でスピード差は生まれる。そこで重要なのがコミュニケーション能力。速いクルマが迫ってきた時、それがストレートであれば勝手に抜いて行くのでそのままやりすごせばいいが、コーナーが迫っている場合はインを空けてあげよう。その先が左コーナーでコースの右側にいたとしたら、右にウインカーを出し、左側にスペースを空ける。その際、急減速したり、レーンチェンジしてレコードラインを空けようとする必要は無い。
速いクルマのドライバーは遅いクルマに迫っていく段階で計画を立てている。その計画を乱してしまうような行動をするとかえって危険になる。
特にストレートでは、直後に迫ってくるクルマの後に、更に速いクルマが潜んでいることがある。そこでレーンチェンジをしてしまうと非常に危険な状態になるので気をつけよう。今度は逆の立場。抜く場合は、迫っていく段階でハイビームを使い自分の存在をアピール。先行する車両が大きくラインを外したとしても、ウインカーが出ていない限り譲られたと判断しないこと。サーキットで一番つまらないことは他車との接触。もちろんどうやっても避けられない場合もあるが、接触は最大限に予防したい。
慣れないうちはなかなかコースが覚えられなかったり、同じコーナーで同じ失敗を繰り返してしまうことが多い。このコーナーでは、安全に、無駄にクルマを消耗せずに楽しむ方法を伝授しよう。
①まず、しっかりとコースを覚えること
サーキットに出掛ける前にHPでコース図をチェック。基本的なコースレイアウトは頭に入れておこう。最近はどんなコースでもYouTubeで車載をチェックできるので、攻略のイメージも勉強しておくといいだろう。
②コースインしたら
コースインしたら、まずは予習したイメージと現実のすり合わせ。その際にはフル加速、フルブレーキングなどは行わず、リズム良く走ることを心掛けることが大切。まずはコーナー立ち上がりのポイントを探す。どこでクリップを取ればキレイに立ち上がることが出来るかを研究し、それからアプローチ。どこでブレーキを終了して切り込みを開始すればクリップに付くことが出来るかを研究する。その際に決してハードなブレーキングをしないこと。最初からハードなブレーキングにチャレンジしてしまうと、失敗ばかり。コーナー進入を失敗したら、コーナリングは全部失敗となってしまうからだ。
③一通り攻略のリズムを掴めたら
攻略のリズムを掴めたら、少しずつブレーキングポイントを遅らせていく。で、リズムが狂ってしまったら修正。これを繰り返しながらレベルアップしていこう。
全開走行はクルマに負担が掛かる。連続でアタックしてしまうと負担倍増。
ドライバーの負担も大きくなるので、2〜3Lap全開で走ったら1Lapクーリング。エンジン回転を抑え、ブレーキも緩く踏むようにしてクルマを休ませてあげよう。その際には後方確認を怠らないこと。他車の全開走行を邪魔してしまわないように注意しよう。
後方から速いクルマが来たらウインカーを出し、レコードラインを譲る。
しかし、コーナーが連続する場所では何処にいても邪魔になるので、コーナーはさっさと走り、クーリングはストレートでしよう。
タイムリザルトはサーキット走行の成績表。誰だって、コンマ1秒でも速いタイムをマークしたい。ということで、締めくくりは好タイムをマークする方法を伝授しよう。ドライバーの腕はそう簡単に変わらないが、夏場より冬場の方が圧倒的に速いタイムが出るように、クルマのコンディション次第でタイムは変わる。まずはクリアラップを取ること。誰にも影響されずに走れる環境は自分で作らなければならない。
そして、クルマに熱が貯まる前にアタックを決めること。通常は、エンジンがいいタイミングにタイヤの発熱が間に合わないということもあるが、発熱が早いZⅢにその心配がいらない。となると、計測1〜2Lapでベストタイムをマークしなければならないことになるが、初中級者にそれは無理な話。ちょっと空気圧を低めに設定し、オイシイタイミングを後半に持ってくるというのも好タイムを残すテクニックだ。