サーキットを体験するために、完璧なスポーツカーを用意する必要は無い。しかし、これからサーキット走行を始めようというのであれば、サーキット走行に適したクルマを選ぶべき。スポーツタイプのクルマであれば何でもいいという話もあるが、お奨めはメジャーな車種。サーキット走行をするユーザーが多いクルマはアフターパーツが豊富に用意されているからだ。
ドライビングのスキルアップを目指すなら、最初はあまり速いクルマを選ばないこと。パワーはそこそこで前後重量配分の良いFR、マツダロードスターやトヨタ86、スバルBRZ辺り。FFではスズキスイフトスポーツがお奨め。
サーキット走行は、通常走行とは較べものにならないくらいクルマに大きな負担が掛かる。例えば、0.4Gのブレーキング。これは公道では急ブレーキになるが、サーキットでは緩めのブレーキング。横方向に掛かるGフォースも同じ。ハードな走行をするんだから最初からいろいろチューニングをすべきだという意見もあるけど、まずは基本メンテナンスをしっかりやっておくことが大切。オイルがちゃんと入っているか、ブレーキパッドの残量など、ディーラーでキッチリメンテされているからと言って安心出来ない場合もある。
そこで頼りになるのが、サーキット走行に精通しているチューニングショップ。このクルマはフロントのナンバープレートを外して走らないとオーバーヒートしやすいとか、エンジンオイルのレベルを最低でもFULL、出来ればそれ以上入れた方が良いとか、最低限ブレーキパッドは変更しないと無理! などという個別の車種特有のウィークポイントはもちろん、合理的なチューニングのステップなど、スペシャルな情報を持っているショップと付き合うことが大切。
クルマによって変わるが、ブレーキパッドくらいは交換しよう
まずはヘルメットとグローブ。これは必需品。普通の走行会であれば、あとは肌を露出しない服装であれば走行出来る。しかし、サーキット走行したクルマは高温になるパーツがあるので、ポリエステルなど燃えたり溶けたりしやすい素材は避けよう。万が一、クラッシュしてしまうようなことがあっても、映画のようにクルマが爆発、炎上することは無いが、ちょっとしたオイル漏れや軽い気持ちで装着したアクセサリーの配線がショートして車両火災に繋がる可能性もある。すべては安全のため。ヘルメットはフルフェイスの4輪用。グローブはFIA公認のものをお奨めする。グローブなんて上級グレードを選んでも2万円程度。安いものです。まあ、本当は、ヘルメットはハンス付き、4点式シートベルト(これは必ずFIA公認を選ぶこと)、レーシングスーツ、レーシングシューズと完全武装が望ましい。と言うことをいうと、「私はプロを目指しているわけじゃないので」という答えを聞く。しかし、遊びだからこそ怪我をしないよう、万全に備えるべきじゃないかと、オレは思うんです。
クルマの準備、装備品の準備と同じくらい大切なのが、体の準備。体調管理である。サーキット走行は意外な程に体に負担が掛かる。特に熱中症対策は重要。そのためには余裕のある予定を組むことが大切。前日は飲み過ぎず、しっかり睡眠をとること。コーヒーなど利尿作用の高い飲物は控え、小まめにスポーツドリンクを口にするのがお奨めだ。
良くあるパターンが前日の夜、仕事が終わってから準備を始め、充分な睡眠をとる余裕もなくサーキットへ出発。一日走行して帰途へ。仕事の事情などで仕方のない場合も多いのだが、ハード過ぎるスケジューリングはいろいろな意味で危険。クルマの準備は事前に済ませ、出来れば前日はサーキットの近くに宿泊。それが難しいなら、走行後の宿泊でもいい。それも難しいなら、100歩譲って近くの日帰り温泉施設で一風呂浴びて、仮眠を取ってのんびり帰るくらいの余裕が欲しいところだ。もちろん、自宅が近ければ別ですよ。
サーキット走行に出掛ける際には、いくつか持っていくべきものがある。まずはガムテープとビニールテープ。布テープはゼッケンを貼るためともしものことがあった時の補修用。最近は、剥がしやすい養生テープを使っている人が多いが、粘着力が小さいためゼッケンが剥がれやすく、もしもの場合にも補修力が足りない。ビニールテープはライトの飛散防止やバッテリー端子の絶縁用に必要。他には、十字レンチとエアゲージ、作業用の軍手、ペーパータオルがあるとオイルチェックなどに便利。ラゲージスペースに余裕があれば、衣類や小物を収納するためのプラスティックケースに入れておくと出し入れが便利。
サーキット走行の前後にいくつか点検しておくべきものがある。まずはエンジンオイルレベル。エンジンオイルの量が不足していると強いGが掛かった時に油圧が低下。エンジンを壊してしまう可能性がある。あとはタイヤの空気圧とホイールナットのトルクチェック。もう一つ、タイヤが装着されたままでいいので、走行前にパッドの残量を見ておくといいだろう。パッドによっては、30分の走行でイッキに摩耗しちゃうなんてことも有るんです。ホイールナットについては、マシ締めという言葉が使われるが、トルクチェックが正しい。軽く力を入れて、緩んでないかを確かめるだけでOK。締め過ぎはトラブルを起こすので要注意。心配な場合は、トルクレンチ(締め付けトルクを設定できる工具)を使えば安心。
空気圧は気温や路面温度、陽が当たっているかどうかに大きく左右されるので、混乱の元。測定のタイミングは朝イチ、の出発前がベスト。そのような状況だと10%程度空気圧が下がっている可能性が大きいが、その程度は問題なし。まず、4輪の空気圧がバラバラになっていないこと。測定時点で差があったら、一番低いタイヤに合わせること。そこを基準にスタートの空気圧を調整。
現場に着いてから測定すると、また違った数値を見ることになるが、あとは走行後の空気圧をチェックして調整。走行時の気温、路面温度に対してどのくらい空気圧が変化するかを覚えておくと後々の武器になる。前半のフィーリングが良ければ低め、後半のフィーリングが良ければ高めが良いということになる