第3戦 6月18日(土)~6月19日(日) マレーシア・セパンサーキット
予選14位から粘り強く追い上げたEpson HSV-010
アクシデントに見舞われながらも、集中力は途切れず12位完走!
国旗をバックに疾走するEpson HSV-010
6月18日~6月19日、2011年スーパーGTシリーズ第3戦「SUPER GT INTERNATIONAL SERIES MALAYSIA」が開催された。マレーシア大会は、クアラルンプール国際空港に程近いセパンインターナショナルサーキットを舞台に2000年から開催され、00年と01年は特別戦として開催され、02年からシリーズの1戦に加えられ(03年は都合により開催中止)、今では年に一度の海外遠征として恒例のイベントとなっている。
初戦の富士大会、そして前回の岡山大会では、開幕前の公式テストが中止となったことで金曜日の走行セッションが復活したが、今回からは本来のスケジュールに戻り、土曜日に公式練習と公式予選、日曜日に決勝レースという2Day開催となった。舞台となるセパンインターナショナルサーキットは、中高速コーナーが主体だが、フラットで回り込んだレイアウトが多く、コーナリングに強いマシンに有利とされるサーキット。赤道に程近いロケーションとあって気温/路面温度ともに著しく高く、猛暑・酷暑の大会となってきた。レース距離は多くのラウンドと同様に、これまでの300kmから250kmに短縮された。
GT500クラスは、ダンロップユーザーとして7年目を迎える「NAKAJIMA RACING」が、デビュー2年目となるホンダのHSV-010 GT、「Epson HSV-010」で頂点を目指す。
GT300クラスは、昨年からダンロップユーザーとなった「JIMGAINER」(ジェイアイエムゲイナー)がFIA-GTの耐久仕様であるニューマシン、フェラーリF458 GTCを新投入。雨に見舞われた初戦の富士、ドライコンディションに恵まれた岡山と、2戦連続で2位表彰台をゲットした「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」がチャンピオンを狙う。
今回、ドライ用はGT500がソフト、ミディアムの2種類。GT300用はミディアムとハードの2種類。ウエット用はGT500、GT300ともに浅溝、深溝の2種類で、それぞれにソフトとミディアムを用意。ドライとなった予選では、GT500は公式練習で好感触を得たソフトを、GT300は、ウエイトハンディで重くなった車重を考慮してハードをチョイスして臨んだ。
スーパーラップ進出を逃したEpson HSV-010
【GT500】
「NAKAJIMA RACING」は今シーズンも、チーム加入2年目のベテラン道上 龍選手と、スーパーGTにステップアップして今年で3シーズン目となる若手の中山友貴選手のコンビでシリーズに挑んでいる。マシンは引き続きHonda HSV-010 GTを使用するが、デビューシーズンとなった昨年、見事チャンピオンに輝いたものを、今シーズンはコーナリング性能の一層の引き上げを狙い、サイドラジエター化を図るなどHonda陣営としてもチャレンジングなシーズンとなっている。
今回の舞台となったセパンインターナショナルサーキットは、HSV-010 GTが得意とするコースのひとつ。昨年も、トラブルに見舞われて優勝こそ逃しているものの、数台のHSV-010 GTが、最後の最後までトップ争いを繰り広げていたのは記憶に新しいところ。
レースウィークの走り始めとなったのは土曜日午前の公式練習。ここで2種類のタイヤをテストすることになったが、ソフトで道上 龍選手がセッション3番手となる1分58秒台前半の好タイムをマーク。その結果、午後の公式予選も、このソフトタイヤで行くことを決断した。だが、午後のセッション直前になって晴れ間が広がり、気温/路面温度ともに急激に上昇してしまった。セッション最初の混走時間に、先ずは中山友貴選手がピットアウト。予選通過基準タイムをクリアしてピットに戻ってくると、今度はアタッカーを務める道上 龍選手の出番となる。だが、急に上昇していった路面温度に合わせ込むことができず、タイムもアップしていかない。混走セッションを終え、GT300の専有走行時間帯を挟んで、いよいよGT500の専有走行時間となり、道上 龍選手は渾身のラストアタック。だが、急激に上昇した路面温度に、完全には合わせ込むことができず。午前中のタイムに比べてもコンマ4秒届かない不本意なタイムでセッションは終了。
「公式練習ではバランスよくグリップ感もあったのですが、路面温度が急激に上がったせいか公式予選ではグリップ感が得られる感じではなくスーパーラップに進出することができませんでした」と悔しそうな表情でコメントした道上 龍選手は、中山友貴選手とともに翌日の決勝では14番手のグリッドから追い上げを期すことになった。
猛追して12位となったEpson HSV-010
決勝当日も暑い一日となった。朝一番のフリー走行に加え、ファンにとっては待ち兼ねていたサーキットサファリもあって、マシンのチェックには十分な走行マイレージを稼ぐことができた。やはりマレーシアでも大盛況だったピットウォークを終え、最後のサポートレースにチェッカーフラッグが振られると、いよいよスーパーGTの決勝レース。午後4時にフォーメーションラップがスタート。1周のローリングラップを終えて正式なスタートが切られると各車一団となって1コーナーに向かっていった。
オープニングラップの2コーナーでは上位陣に少しドタバタが見られたが、道上 龍選手は順調に走行。19周目には11番手までポジションアップし、20周を走り切ったところでルーティンのピットイン。後半スティントを担当する中山友貴選手に交代した。素早くピットワークを終え、中山友貴選手は12位でレースに復帰。その後の追い上げが期待されたが23周目に、後方のマシンに追突されてしまい2ポジションダウン。だが中山友貴選手は集中力を途切れさせることなく粘り強く周回を続け、ひとつ、またひとつとポジションを回復、ポイント獲得こそならなかったが力強く12位で完走を果たした。
菅生への決意を語る中嶋 悟総監督
「2人のドライバーが粘り強く走り切って12位でフィニッシュすることができました。ただ決して喜べる結果ではありません。テストを重ねて次回の菅生に臨みたいと思います」と中嶋 悟総監督。
「タイヤの温まりがよくてスタートも上手くいき1台をパスすることができました。スティントの後半に、もう一度ペースアップすることができ前の集団を追い上げることができました。他のマシンに追突されてポジションダウンするなど残念な結果となりましたが、過酷なこのセパンを走りきれたことで、次のステップに繋がったと思います」とベテランでエースを務める道上 龍選手はコメント。
「チームが素早いピット作業で送り出してくれ、いくつかポジションをあげることができたのですが、最終コーナーのブレーキングで追突され、スピンしてしまいました。2台にかわされただけで再スタートし、猛プッシュした結果、何とか1台をパスすることができ、12位でチェッカーを受けることができました。これから暑いレースが続くので、テストでしっかり仕上げて臨みたいと思います」と中山友貴選手はレースを振り返った。
飛躍が期待されるEpson HSV-010
今回のセパン・ラウンドでは、公式練習で目覚しいパフォーマンスを発揮したが、公式予選を前に急激に路面温度が上昇。完全に合わせ込むことができずに後方のグリッドに甘んじることになった。さらに決勝では、上位を狙っていながら他車に追突されるアクシデントもあり、と散々なレースとなった。だが公式練習で得た手応えは一筋の光明だ。
第4戦(7月30~31日)は、杜の都、仙台のスポーツランド菅生が舞台。アップダウンに富んだ、そして中高速コーナーが程よく組み合わされたテクニカルコース。猛烈に暑かったり、極度に寒かったり、とコンディションが読みづらいことでも知られているだけに、レースは毎年のようにドラマチックな展開を見せてきた。開幕から3戦続けて苦戦を強いられたEpson HSV-010だが、タイヤテストで仕切り直して挑む1戦だけに、飛翔のときとなることを期待したい。