第3戦 6月18日(土)~6月19日(日) マレーシア・セパンサーキット
【GT300】
JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F458
60kgのウエイトハンディを感じさせない走りで3戦連続の2位入賞!
3戦連続2位入賞の平中克幸選手と田中哲也選手
2年目のダンロップユーザーとしてGT300で戦う「JIMGAINER」(ジェイアイエムゲイナー)。昨年は、FIA GT仕様の「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP F430」で、第1戦鈴鹿は予選2位、第4戦マレーシアではポールを獲得するなど速さ見せ、11月の特別戦では、ドライバー交代がない100km(22周)レースで2連勝を飾った。今季はFIA GT耐久仕様のフェラーリF458 GTCを新投入し、「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」として参戦する。
レースウィークに入ってマシンが国内に到着するなど、慌ただしいデビュー戦となった初戦の富士では、雨足が強まったり弱まったりを繰り返すタフなコンディションの中、堂々の2位入賞を飾ると、延期開催となった第1戦・岡山ラウンドでも、今度はドライコンディションの迫真バトルの末に、30kgのウエイトハンディを跳ね返して2戦連続の2位入賞を飾った「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」。FIA GTの範疇ではあるが耐久仕様(LM-GTE)ということもあって、そのコンセプトはFIAのGT3と、JAF-GTとの中間にあたる。具体的にはストレートの速さはFIAのGT3には及ばないが、コーナリングでは一歩長がある。反対にJAF-GT比べるとストレートでは優位を保つがコーナリングに関しては分が悪い。
そんな「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」は、開幕2戦で連続2位入賞を飾った結果、セパンではポイントリーダーとして臨むこととなった。もちろん、その一方でウエイトハンディは60kgにも上っている。加速と減速に関しては、これはもう“物理の法則”でもあってウエイトハンディは誤魔化しようがない。だが、コーナリングに関してはハンディウエイトの搭載位置やマシンのセットアップで補うことも可能。さらに今回はダンロップ・タイヤのパフォーマンスが「JIMGAINERDIXCEL DUNLOP 458」を後押しすることになったのだ。
予選4位のJIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458
「60kgのウエイトを積んでいるので、走り始めるまでは(好成績は)期待していなかった、と言うのが正直なところ」とエースの田中哲也選手。だが、走り初めとなった土曜日の公式練習で「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」はまずまずのタイムをマークするとともに、平中克幸選手が担当した、ハードタイヤでのロングラップにおいても安定したパフォーマンスを見せたのだ。そこで公式予選の1回目ではミディアムタイヤをチョイス。田中哲也選手が5番手の好タイムをマークしてスーパーラップ進出を果たしている。そのスーパーラップは、使用したタイヤで決勝レースをスタートすることがレギュレーションによって決められているので、単にグリップ性能のみでタイヤを選ぶことはできず、決勝レースで前半のスティントを走り切るだけのロングライフも要求されることになる。チームは迷わずハードを装着して、田中哲也選手をスーパーラップへ送り込んだ。田中哲也選手は渾身のタイムアタックで、2位グループにコンマ4秒差の4番手をマーク、日曜の決勝では3戦連続の表彰台も、十分射程に捉えるポジションにつけたのだ。
好調なJIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458
決勝レースの正式スタートは、1周のローリングラップを終えた午後4時4分。レース距離は46周だが、GT500のトップが46周を終了した時点でチェッカーが振られるため、GT300のレース距離は42周か43周となるはず。グリーンランプが点灯すると同時にトップのBMWが逃げに掛かる。田中哲也選手がドライブする「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」は、スタートで1つポジションを上げ3位でオープニングラップを終えた。直前を行く2番手のフェラーリとは1秒弱の差で、田中哲也選手も猛チャージを掛けるのだが、このフェラーリはFIAのGT3仕様であり直線スピードに勝っていたから簡単にはパスできない。コーナーで詰め、立ち上がりで引き離される。そんなバトルが繰り返されたが、事態は、それ以上には進展しなかった。そこでチームでは新たな作戦を執ることになった。
14周を終えたところで「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」は急遽ピットロードに向かう。ルーティンのピットインを早めに行い、後半のスティントを担当する平中克幸選手が、トラフィックのないポイントでロングラップを周回し、結果的にレースタイムを短縮しようという作戦だった。そして田中哲也選手から平中克幸選手にドライバー交代する間にチームスタッフはガソリン補給とタイヤ交換を素早く行い、平中克幸選手が乗り込んだ「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」をレースへと送り出す。実はタイヤ交換をどうするかも、レースの作戦のひとつのテーマだった。今シーズンはレース距離が全般的に短縮されており、今回のセパン戦も本来の300kmレースから250kmレースへと変更されていたので、タイヤ無交換も候補に上っていた。だが、チームの福田洋介エンジニアは「タイヤ無交換が有効かどうかは微妙ですね。ストレートの速いGT3相手にプッシュ目に走る展開だったらタイヤ交換したほうが結果的に速くなるようです。それに暑い時期のレースではクールスーツなどもあってドライバー交代に意外と時間が掛かるから、タイヤ4本交換したとしても実際のタイムロスは(タイヤ無交換に比べて)ごく僅かなのです」と分析する。
ともかくフレッシュタイヤを装着して再スタートを切った平中克幸選手の「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」は、ピットインが早かったためにポジション的には14番手まで大幅にドロップしていたが、行く手をさえぎるマシンはなく、思いっきりハイペースで周回を続けることが可能になった。トップを逃げるマシンと同等のハイペースでプッシュし続けた平中克幸選手のJIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458は、他車のルーティンピットが始まると見る見る順位を回復し、28周目には、ルーティンピットを終えたばかりのBMWに次ぐ3番手(未ピットのマシンがトップを走行しており事実上の2番手)まで進出していた。そしてここから先は逃げるBMWと追うJIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458の一騎打ちとなった。BMWもFIAのGT3でストレートスピードは速かったから、コーナーで何とか追いついてもストレートで離される展開が続き、平中克幸選手も何度かは、横に並ぶまでにはプッシュしたものの、やはり簡単にパスすることはできず、そのままのオーダーでチェッカー。結局、JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458は3戦連続で2位入賞を果たすことになった。
ピット作業中のJIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458
「また2位です(苦笑)。でも今回は、60kgのウエイトを積んでいたので(上位入賞は)厳しいかなとも思っていたのでうれしいですね。今後は、いかに取りこぼさず、毎レース、1ポイントでも多く持って帰るか。そんな戦いになると思います」と語る山本俊茂監督。
福田洋介エンジニアは「今回はタイヤに尽きます。走り始めのセッション(土曜日の公式練習)から手応えがあって、日曜日のレースまでイメージできていました。ピットインを早めたのは27号車を抜きあぐねていたから。あそこでタイヤ無交換という選択もあって、実際には可能だったと思います。でも、この展開なら最後までプッシュできるようにと思ってタイヤを交換しました。最後までタイムの落ちが少なくラップタイムも安定していました。本当に今回はタイヤに尽きます」とレースを分析していた。
「60kgのウエイトハンディがあるから、とてもここまでは期待していませんでした。ただ、終盤の展開を見ただけに、勝てなかったのはちょっと悔しいですね(苦笑)。でもウエイトハンディを考えると上出来です、それにレース前にいくつか展開を考えてきたのですが、そのとおりの展開になって。予定どおりの戦いになりました」と田中哲也選手。
後半のスティントでロングラップを実践した平中克幸選手も「土曜日の公式練習でロングラップはテストしていましたが、でも、30周を連続して一気に走り切ったわけじゃないから、最後の方は未体験の世界で、正直言ってタイヤがもつか不安もありました。でもタイムの落ちは緩く、最後までプッシュすることができました。今回はタイヤに助けられました」とダンロップタイヤを高く評価していた。
ダンロップタイヤと最新マシンのフェラーリF458 GTCは、また今回も好パフォーマンスを発揮して3連続2位入賞を達成した。ドライバー&チームともにポイントランキングトップの座をキープしたままで、第4戦(7月30~31日)菅生ラウンドに臨むことになった。90kgのウエイトをも跳ね返せるか? 田中哲也選手と平中克幸選手のドライブする「JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458」の活躍に注目したい。