第7戦 9月29日(土)~9月30日(日) オートポリス(大分県)
ファイナルラップの攻防でトップを失うが
Epson HSV-010がウエットの快走で2位入賞!
今季初表彰台の中山友貴選手道上 龍選手
9月29日~9月30日、熊本県との県境に程近い大分県日田市上津江にあるオートポリスで、2012年スーパーGTシリーズ第7戦「SUPER GT IN KYUSHU 300km」が開催された。このオートポリスラウンドは、99年にオールスター戦として初開催。2002年からはシリーズ戦として、シーズン終盤のタイトルの行方を左右する重要な1戦として開催されてきた。2010年は一時開催休止となったが、九州や西日本地区のファンの熱い要望を受けて、翌2011年から復活、西日本のファンから高い支持を集めるレースでもある。昨年はレース距離が250kmに短縮されたが、今年は本来の300kmレースとして争われる。
ダンロップは、GT500クラスとGT300クラスの各1台にタイヤを供給する。GT500クラスは、今年でダンロップユーザーとして8年目のシーズンを迎えた「NAKAJIMA RACING」が、デビュー3シーズン目となる「Epson HSV-010」で参戦。GT300クラスは、昨年のFIA GT耐久仕様(LM-GTE)のフェラーリF458 GTCからFIA GT3仕様の最新モデルであるAudi R8 LMS Ultraにマシンをスイッチした「GAINER DIXCEL R8 LMS」。今季からチーム名は「JIMGAINER」(ジェイアイエムゲイナー)から旧来の「GAINER」(ゲイナー)に戻されている。
今回持ち込んだタイヤは、GT500用、GT300用ともに、晴れ用のスリックと雨用のレイン、そしてレインの溝を浅目に設定した小雨時用のインターミディエイトの3タイプ。ドライは、より固めのコンパウンドを使用したハードと、ハードよりは少し柔らかいコンパウンドを使用したミディアムの2種類。レインとインターミディエイトは、ミディアムと、さらに柔らかいコンパウンドのソフトを用意した。
オートポリスは、昨年のシーズンオフにコース路面を全面改修しているが、今回のレースに向けてのタイヤテストは実施されていない。それでもツーリングカーレースなど他のカテゴリーでダンロップユーザーが走った際のデータは蓄積されており、グリップが向上すると同時にタイヤに対する攻撃性も強くなったことが確認されている。今回持ち込んだタイヤは、これらの情報と昨年までのデータを基に新たに製造されたものだ。ただし残念ながら、レースウィークの走り始めとなった土曜の公式練習から、日曜日の決勝まで、レースウィークのセッションはすべてウエットコンディションとなり、新作のドライタイヤを試す機会はなかった。だがハーフウエットとなった決勝では、ダンロップのウエットタイヤは威力を発揮してEpson HSV-010はトップを快走、今季初2位表彰台をゲットした。
Epson HSV-010は予選11位となった
【GT500】
「NAKAJIMA RACING」は今シーズンも、ベテランの道上 龍選手と、ルーキーから期待される中堅へと成長した中山友貴選手がコンビを継続。マシンも昨年と同様にホンダHSV-010 GTを使用。デビューシーズンの2010年にチャンピオンに輝いたHSV-010 GTは、昨年はサイドラジエターにコンバート、3年目となる今シーズンは昨年のパッケージングを継承しつつアップデート。コーナリング性能に加えてトップスピードも追求するマシンとなった。
台風17号が九州地方に接近した影響から、レースウィークの走り始めとなる土曜日午前の公式練習から雨が降ったりやんだりの繰り返しで、路面は完全なウエットコンディションとなった。予選に向けてのセットアップと装着するタイヤ選びを兼ねて走行を続けたEpson HSV-010は、道上選手がセッション2番手となる1分45秒832をマーク。トップとは僅差で、中山選手もあっさりと1分46秒台前半をマークして上々の滑り出しとなった。
午後の公式予選はノックアウト方式が採用された。これはQ1と呼ばれる最初のセッションで4台がノックアウトされて12番手~15番手のグリッドが決定。次にQ2と呼ばれる2番目のセッションで8番手~11番手のグリッドが決まり、最後のQ3で、トップ8のグリッドが決定する。
Q1は道上 龍選手がアタックして、あっさりと1分56秒台でQ1を突破。続くQ2では中山友貴選手がアタック。この頃から雨足が強くなり、コース上には水たまりも増えて難しいコンディションになった。懸命のアタックを見せた中山友貴選手だったが、高速コーナーで水たまりに足をすくわれてコースアウトしてクラッシュ。そこで予選を終えることになり、Q2に進出した11台の最後尾となる11番手グリッドから決勝レースをスタートすることになった。
Epson HSV-010は安定した走りを見せた
決勝日の日曜日も雨となった。しかも霧が濃くなるコンディションで、朝一番に予定されていたフリー走行はわずか8分間行われただけで、視界不良のために赤旗中断となり、そのまま終了。さらにスケジュールに追加された午前11時からのセッションも、濃霧のために中止となるなど、不順な天候にスケジュールは翻弄された。
だが決勝レースのスタート時刻が近づくにつれ、雨は小止みとなり霧も消えていく。そしてセーフティカーに先導されるセーフティカースタートとなった。午後2時にセーフティカーに先導されて各車がスタート。2周を回ったところでセーフティカーはピットロードに向かい、レースはスタート。クラッシュの影響からエンジンを交換したために、決勝レースが始まるとすぐに15秒間のペナルティストップが課せられることになった。もちろんチームとしては、これも織り込み済みだった。
ペナルティストップを消化してピットアウトした道上 龍選手は、Epson HSV-010は最後尾までポジションダウンしたが、ハイペースで追い上げ、10周目には、その時点でのファステストラップをたたき出すなど見事なパフォーマンスを見せた。12周目には、クラッシュしたマシンを回収するためにセーフティカーが導入され、セーフティカーが先導する隊列の最後、トップから約17秒後れで周回を重ねることになった。そして17周目にセーフティカーがピットロードに向かうと、ここから、道上 龍選手は、怒涛の追走劇を展開した。
トップグループと同等以上のハイペースで周回を続けた道上選手は、1台、また1台と前車をパスしてポジションアップ。20周目にポイント圏内となる10番手に進出すると、30周目には表彰台圏内の3番手まで浮上。この時点でトップ2とのタイム差は約10秒だったが、道上 龍選手は猛プッシュを続けて、ジワジワと間隔を詰めていく。そして41周目に2番手に上がるが、トップのマシンがルーティンのピットインを行い、道上 龍選手はトップに立った。42周を終えたところでピットに向かった道上 龍選手、今度はチームがミラクルを見せた。ピットインのタイムロスを最低限に抑えるためにタイヤ無交換で、中山友貴選手に交代してピットアウト。その作戦が決まったトップのままレースに復帰。中山友貴選手は、無交換でタイヤに熱が入っていたこともあり、アウトラップからハイペースで好走。
44周目、GT300クラスのマシンと接触し2番手に後退した中山友貴選手は、50周目には再びトップに立った。レースを通じて、小雨が降ったり止んだりが繰り返されるコンディションだったが、レース終盤を迎える頃には小止み状態となり、ダンロップのレインタイヤの得意とするコンディションからは少しドライよりにシフトした。無交換で60周を超えて猛プッシュを続けながら、中山友貴選手は最後まで攻防戦を繰り広げた。そして運命のファイナルラップ。1コーナーで後続マシンを抑えきった中山友貴選手だったが、第2ヘアピンで再び超接近戦となり、立ち上がりで一瞬アウトに膨らんで後続マシンにパスされる。
結局、中山選手は2番手でチェッカー。今シーズン、ここまで苦戦続きだったEpson HSV-010にシーズン初ポイント、そしてシーズン初表彰台をもたらすことになった。
タイヤ無交換のEpson HSV-010
中嶋悟総監督は「タイヤ無交換は、決して無謀な作戦じゃなかったと思います。最後は厳しくなったようにも見えましたが、レースの終盤に雨足が弱まって(ダンロップタイヤが)得意とするコンディションではなくなってきたことの方が大きいと思います。実際、もう少し雨が長引いていたら逃げ切れたと思います」とクールに分析していた。
「今回は、ダンロップにとってはコンディションのすごく合った状況でした。だから勝てる位置にいて優勝できなかったのはとても悔しいです。でも表彰台に上がれたという意味ではうれしいので、”2位でよし”としておかないといけないかな」と道上選手はコメント。
一方、トップを快走しながら、最後に逆転されてしまった中山友貴選手は「2位という結果で終わってしまってとても悔しいです」とレースを振り返った。
この勢いをキープして最終戦で活躍なるか
第7戦から4週間のインターバルを経て迎える最終戦(10月27~28日)ツインリンクもてぎ。1周4.801km、ストップ&ゴーが続くテクニカルサーキットであり、予選での順位がより重要になるコースだ。
Epson HSV-010は、第7戦オートポリスで待望の2位表彰台を獲得しただけに、ノーウエイトハンデとなる最終戦。NAKAJIMA RACINGとダンロップの勝利を目指す今季のラストバトルでの飛躍を期待したい。