第6戦 9月7日(土)~9月8日(日)富士スピードウェイ(静岡県)
追い上げを見せたEpson HSV-010
アクシデントで無念のリタイア
決勝レースでは予想外のトラブルに見舞われたEpson HSV-010
9月7日~9月8日、2013年スーパーGTシリーズ第6戦「FUJI GT 300km RACE」が開催された。全8戦で争われるシリーズは、ついにラスト3戦に突入し、チャンピオン争いも佳境を迎えた。5月の第2戦に次ぐ、今季2度目の開催となる富士スピードウェイ。全長4563m、約1.5kmの長いメインストレートを持つ。コース前半は高速セクション、そして後半はテクニカルセクションが続き、ドライバーにとっても攻めがいのあるコースだ。
今季のダンロップは、GT500クラスは1チーム1台、GT300クラスは1チーム2台のマシンにタイヤを供給する。GT500クラスは、ダンロップユーザーとして9年目を迎える「NAKAJIMA RACING」が、デビュー以来4シーズン目となるHonda HSV-010 GTの「Epson HSV-010」で参戦する。09年に実施されたGT500の車両規定が今シーズン限りとなり、来季に一新されることから、現行のGT500マシンでのレースは今年が最後となる。2010年にデビューしたHSV-010 GTは、当初からコーナリングが得意なマシンであり、デビューイヤーでチャンピオンマシンとなり、毎年、進化を続けて、ポテンシャルはアップしている。
GT300クラスは、ダンロップユーザーとして4年目となる「GAINER」(ゲイナー)。昨年は「Audi R8 LMS Ultra」を新投入したが、今季は「Mercedes-Benz SLS AMG GT3」という、FIA GT3仕様の最新モデルを投入。さらに2カーエントリーとなって開発体制も強化し、チーム一丸となって、悲願のタイトル獲得を目している。
今回、ダンロップがサーキットに持ち込んだタイヤは、GT500クラス、GT300クラスともに、ドライ用はハードとミディアム。富士で行われた公式テストと鈴鹿1000kmのデータをもとに、ミディアムは、ソフト寄りのコンパウンドにしてグリップを高めた仕様のタイヤを投入し、予選でのポジションアップを目指した。ウエット用は浅溝と深溝、ともにミディアムとソフト。予選は、練習走行での状況によって、GT500とGT300は、ともにドライ用のミディアムで出走した。
予選15位のEpson HSV-010
【GT500】
今季の「NAKAJIMA RACING」は、道上 龍選手がチーム加入4年目となり、新たに中嶋 悟総監督の息子である中嶋大祐選手新加入した。昨年はGT300クラスでCR-Zを戦い、今季GT500に初挑戦となった中嶋大祐選手は、スーパーフォーミュラ(フォーミュラ・ニッポン)でも「NAKAJIMA RACING」から参戦する注目のドライバーである。
デビューイヤーにチャンピオンマシンとなったホンダHSV-010 GT。ラジエターの位置を前輪の後方からフロントに移動。「スワンネック」と呼ばれる新型リヤウイングを新投入し、ラストイヤーとなる今季も、さらなるポテンシャルアップを図っている。
「NAKAJIMA RACING」は、昨年の第2戦富士でポールポジション獲得し、第7戦オートポリスでは2位、最終戦(第8戦)もてぎでは3位とウエット絡みの難しいコンディションでは、高いパフォーマンスを発揮し、ウエットに強いダンロップを印象づけている。今年の開幕戦岡山でも、ウエットの予選で2番手につけた。さらに第4戦SUGOでは8位入賞を果たして今季初ポイントを獲得。続く第5戦鈴鹿1000kmは、想定以上の猛暑で、コンディションとタイヤのマッチングが悪くなり、結果的に1回多くピットインすることになって、13位に終わった。今季2度目の富士でのレースとなる今回は、上位入賞を目指して臨んだ。
土曜の予選日は、前戦までの暑さは去り、曇りとなって、気温25℃、路面温度32℃という比較的過ごしやすいコンディションとなった。午前9時に予選に向けての公式練習走行がスタート。Epson HSV-010の道上 龍選手と中嶋大祐選手は、計47周の計測ラップを走行して、道上 龍選手のマークしたベストタイムが14番手となり、このセッションを終えた。
午後2時からの公式予選は、公式練習と同様に、気温25℃、路面温度33℃というコンディションでスタート。15分間で争われるノックアウト方式の予選1回目であるQ1では、道上 龍選手がタイムアタックをしたが、前回の鈴鹿と同様にタイヤと路面コンディションのマッチングが悪く15番手に終わり、トップ8台が進出できるQ2への進出はならず。
「公式練習よりもタイムアップはしたのですが、今回も状況はあまりよくなくて、トップとは1秒近く離されて15 位という結果でした。明日のレースでは、追い上げて、少しでも上位でゴールしたいですね」と語る道上 龍選手。
ピットウォールの中嶋 悟総監督
決勝日の日曜は、朝から小雨が降る不安定な天候となった。朝9時から行われたフリー走行は、ウエットコンディションとなった。気温23℃、路面温度は24℃と涼しい状況だった。ここではEpson HSV-010は 1分46秒053、11番手のタイムでセッションを終えた。
フリー走行後は、雨も上がり、天候は回復傾向にあり、午後2時の決勝レースまでには、路面はドライコンディションとなっていた。
1周のフォーメーションラップの後、300km、66周の決勝レースがスタート。気温29℃、路面温度35℃という前日と同様なコンディションとなったが、上空には雲が多く、風で移動する雲の隙間から日差しが照ったり隠れたりしていた。レース中盤には雨がパラつくという予報もあり、波乱のレース展開を予感させた。スタートドライバーの道上 龍選手は、スタートで14番手に順位を上げて、その後も19号車 SC430と14番手争いを展開した。
Epson HSV-010は、18周目を終了し、19周目のストレートエンド手前で、左リヤタイヤにトラブルが発生。マシンはスピンしながら、そのままイン側のガードレールに接触して停止。道上 龍選手は無事だったが、マシンはストップ。その後、コース上に飛散したパーツの回収などのために、レースはセーフティカーランとなった。その時点までは異常はなく、追い上げ態勢となっていた道上 龍選手だったが、18周でリタイアとなった。
リタイアとなったEpson HSV-010
「厳しいレースウィークでした。決勝では追い上げる展開となるはずでしたが、リタイアとなりました。まだテストもあるので、最後まで全力で戦いたいと思います」と中嶋 悟総監督。
「今回も状況はあまりよくなくて、予選ではトップと1秒差ではあったのですけど。決勝ではトラブルを抱えてしまい、リタイアとなりました。ボクたちの戦略どおりに、きっちりと組み立てられたレースができていましたが残念です。オートポリスに向けては、まだテストもあるので、しっかりと開発をやっていきたいです。昨年はトップ争いをして、表彰台に上がったサーキットなので、頑張りたいと思います」と道上 龍選手はコメント。
「今回は、フリー走行ぐらいしか走れなかったので何ともいえないのですが、まだまだやることは多いなというのが正直なところです。残り2 戦に向けて、さらなるレベルアップをして行きたいと思います」と中嶋大祐選手は語った。
第7戦オートポリスでの巻き返しが期待されるEpson HSV-010
第7戦(10月5~6日)の舞台は、オートボリス(大分県)。高速&中低速コーナーとアップダウンが続くテクニカルコース。昨年、レース前に新舗装となったが、ダンロップ勢は、事前テストなしでの本番となったため路面に関するデータがないままでレースに臨んだ。結果的にレースウィークはウエットとなり、レースでは2位入賞を果たしている。
今年もレース前のGTアソシエーションによる公式合同テストは行われなかったが、タイヤメーカー主催の合同テストが行われた。そこでダンロップ勢は初めてドライコンディションでの走行データを得ることができた。タイヤに厳しいコースと言われるサーキットだが、新舗装で路面はかなり改善されているという。
ゲンのいいサーキットだけに、道上 龍選手と中嶋大祐選手が、Epson HSV-010とダンロップタイヤで、好パフォーマンスを見せてくれることを期待したい。