ドライバー
第7戦 8月25日(土) 2012年JAF全日本ジムカーナ選手権第7戦
灼熱のもてぎ北ショートコースで
河本晃一がPN2クラスチャンピオンを確定!


真夏の太陽が燦々と照りつける中、ツインリンクもてぎの北ショートコースで開催された全日本ジムカーナ第7戦。シリーズ後半戦に入り、チャンピオン争いも佳境を迎える。

全9戦で争われる2012年の全日本ジムカーナ選手権。シリーズ終盤戦に入った第7戦は、栃木県にある国際サーキットツインリンクもてぎの北ショートコースで開催された。クルマにはもちろんドライバーにも過酷な真夏。激しいシリーズチャンピオン争いとも相まって、強烈な印象を与える1戦だ。135台がエントリーした今回のイベントでは、昨年より導入された決勝前日に本番コースを慣熟走行するウォーミングアップランにも注目が集まった。決勝の2本に加え同じコースを3本走ることで、走りの精度が高まりタイム差が一気に詰まる。結果的に大差のついたクラスは少なく、ミスが許されない緊張感を強いられる中で競技は進む。灼熱の太陽がアスファルトを照らすなか、各クラスで健闘したダンロップ勢の活躍を見ていこう。

“気負い”、“あきらめ”、“奮起”、“切磋琢磨”そのすべてが詰まった河本晃一、2年目のPN2クラス。連覇という最高の結果に、自分を走らせてくれているライバルと仲間たちに大きな感謝を感じた。

2012年自動車業界で最も注目を集めた86とBRZ。この2台が参戦してきたのがPN2クラスだ。初めて成立した昨年はフェアレディZに乗る河本晃一がチャンピオンを獲得し、2012年からジムカーナ界の“スター”山野哲也がエントリー。山野は第2戦のタカタサーキットでBRZのデビューウィンを飾り、そのポテンシャルを目一杯引き出す走りを見せた。そして戦前からチャンピオンマシン候補といわれていたFD2シビックも全日本チャンピオン経験者松本敏のドライブでエントリー。人気の高まったPN2は20台を超える参加台数を集めることもあった。今シーズン最も話題が豊富だったのがPN2クラスだともいえる。FFとリア駆動、中排気量と大排気量のすべてが一緒になった無差別級の争いに興味を持った選手たちも多かったようだ。今シーズン3勝を挙げ102ポイントを獲得、シリーズランキングトップに立つ河本。2位につける山野を30ポイント引き離しチャンピオン確定を目指してもてぎに乗り込んできた。決勝1本目がスタート。クラスファーストゼッケンの松本が叩きだしたタイムは1分42秒683。優勝候補と目される松本のタイムが、いきなり高いハードルとなって後続の選手の前に立ちはだかる。松本のタイムは更新されないままラスト2台となり、山野がスタート。戦前に山野は「BRZに一番不利なコースは仙台ハイランドで、その次がもてぎ」と語っていた。しかしそこは山野。目一杯BRZのポテンシャルを引き出し、ギリギリのラインどりとターンで叩きだしたタイムは1分42秒599。松本を0.084秒逆転してトップに立つ。そしてラストゼッケンの河本がスタート。外周からシケインへの飛び込みで白煙を上げる激しいブレーキングを見せながらも、見事にクリア。目一杯攻め込んだ走りに会場からの注目も集まる。そして最後の360度ターンもキレイに決めてゴール、タイムは?「1分41秒708!」の場内アナウンスが流れ、山野を破るタイムに会場から拍手が沸き起こった。

1本目の走行にかけた河本。「今回は路面温度の高さもあって山の低いタイヤを選択しました。もてぎの路面ではユーズドでも高いポテンシャルを発揮できますね」とZIIのポテンシャルを絶賛。

「正直あのシケインはヤバイなと思ったんですけど、本当に集中できていたんで頭で考えるより速く体が反応してスッとブレーキを抜くことができました。そこからは、自分が上から自分の運転を見ているような感覚で走り切れちゃいました。集中できてる時ってそういうものなんですね」と河本。1本目でトップタイムを叩き出し、ライバルたちをプッシュする得意の戦い方。最高の形で2本目を迎えることができた。あけて2本目がスタート!
松本は自己タイムを更新できない、そして前ゼッケンの山野がスタート。気温とともに路面温度も上がった2本目。だが、そんな状況でもあきらめない山野はギリギリの走りで応酬する。タイムは1分42秒646とわずかにタイムダウン!ゴールした河本は山野のタイムを場内アナウンスで聞いてガッツポーズ。第5戦の鈴鹿から3連勝で河本のPN2クラス2連覇が確定した。「去年と比べて自分のいる環境は激変ですよね。でもこの変化ってジムカーナやってても、一生に一度来るか来ないかというチャンスだと思いました。山野(哲也)さんをはじめ、(松本)敏さん、それとアジュールのみなさんに戦う心構えという部分を鍛えてもらいました。ライバルと切磋琢磨できるという幸せと、1戦1戦ごとみんなに走らせてもらっているという事をすごく強く感じられるようになりました」と河本。ゴール後、松本から「いい走りだったよ」と声を掛けられて涙が止まらなかったという。ニューマシンのデビュー、有力選手の参戦と大きく変化した周りの環境。しかしそんななかで、常に勝負の中心に自分を置き続けた。強さを身につけた河本のこれからの活躍に期待したい。

PN3クラスの山野直也が1本目のタイムで逃げ切り、第2戦から6連勝を飾る。有効戦数全てを優勝という満点チャンプも確定。「今季はミスなく走れた証拠かもしれませんね」と直也は笑顔でコメントした。

前戦の仙台でシリーズチャンピオンを確定させた山野直也。今シーズンはライバル岡野博史と毎戦のようにコンマ差のタフな戦いを続けている。「決勝でコンマ差ということは、土曜日から同じくらいの差で緊張感を強いられる戦いになりますよね。サーキットレースでラップタイムの差がコンマ2~3秒差といえば少しは安心できるんだけど、ジムカーナでは最後にターンがあるといえばすぐひっくり返されますからね」と直也。あけて決勝1本目、前ゼッケンで走った岡野が叩き出したトップタイムは1分37秒746。直也は、スムーズなコーナリングで岡野を追いかける。ランサー対インプレッサ、得意とするセクションが全く異なるこの2台だがコースを走り切るとほぼ同じタイムで走りきってしまう。精度の高い走りができることこそコンマ差の戦いを制する秘訣だ。「スムーズな走りに見えても、クルマの中ではスゴく大変な作業をしてるんですよ(笑)」と直也。ゴールするとタイムは1分37秒574!0.172秒差で岡野を逆転した。気温の上がった2本目は両者ともにタイムダウン、1本目のタイムで直也が6連勝を飾った。前戦の仙台でコメントした有効戦数すべて優勝で20ポイントを積み重ねる満点チャンプも確定した。「ジムカーナのように不確定要素の大きい競技で、満点チャンプを獲れたというのはスゴく嬉しいですね。正直第2戦でダンロップのZIIを履いた時、今シーズンはイケルという手応えがありました。そこから6連勝できましたからね。今シーズンはミスなく走れたという証拠かもしれません」とニッコリ笑顔を見せた。

その差わずかに0.05秒! 僅差で2位に終わったN1クラスの村井勝。残り2戦でチャンピオンとシリーズ2位を分かつのは気持ちも含めてほんのわずかの差になりそうだ。

9台のエントリーがあったN1クラス。超接近戦で勝負を繰り広げたのはシリーズランキングトップの平田裕三と2位の村井勝のふたりだった。1本目1分43秒441を叩きだしてトップに立った平田に対し、わずか0.05秒差の1分43秒497で2位につけた村井。2本目に向けて路面温度や状況の変化が気にかかる。周りの選手のタイムがわずかに下回り始めるなかで村井がゴール。タイムは1分43秒761と約コンマ3秒のダウン。2本とも1分43秒台を応酬し合った平田と村井の戦い。残り2戦、シリーズチャンピオンと2位を分けるのはほんのわずかの差となるに違いない。僅差の戦いが続くN1クラスに注目したい。

エンジンブローというトラブルがあったものの、ティーアシストの仲間たちの必死の復旧でスタートラインに立った茅野成樹。なんとか5位に食い込み、8ポイントを加算した。

毎戦激しい戦いが展開されるSA3クラス。常に表彰台をキープする安定感で97ポイントを獲得、シリーズリーダーに立つ津川信次。前戦の仙台で待望の今シーズン2勝目を挙げ、後半戦を少しでも有利に戦いたいところた。対して88ポイントでシリーズ2位の茅野成樹は、「今シーズンはホームランか三振かのどっちかですわ」と語るように3勝を挙げながらも思った以上にポイントを伸ばせない。茅野vs津川の師弟対決に注目が集まった第7戦だったが……。走行終了後疲労困憊の表情で語り出したのは茅野だった。隣に立つティーアシスト代表の古谷哲也氏も、酷暑の中で無精ヒゲが伸び疲れきった表情を隠せない。「一睡もしとらんのですわ、それと昨日の昼から何にも食べてない」と語る古谷氏。今回、茅野のマシンは土曜日にエンジンブローしていたのだ。そこから決勝でスタートするまで必死の復旧作業があった。1本目1分35秒306で4位の茅野。エンジン不調の原因を探し当て、2本目には、スタッフそろって手を合わせて茅野を送り出した。「いろんな事がありすぎて、一晩あっても語りきれないですわ」と茅野。「悔しいのは、少しまともに走れるようになった2本目にパイロンタッチしてしまったこと。次の九州は気持ちを入れ替えて挑みます」結果5位に終わったものの、茅野は8ポイントを加算した。一方の津川だが、2回の優勝以外に2位3回と3位1回のポイント構成。有効戦数に達した前戦、今回は最低でも2位以上でなければポイントは加算されない。パイロンタッチで下位に沈んだ1本目。インターバルの間に考え出た結論は、「中途半端に走ってもポイントは加算されない、ならば攻めるしかない」というシンプルな戦い方。だが、2本目はコースアウトで結果を残せなかった。「コースアウトしたことに悔いは無いけど、攻めすぎという部分には気を遣わなければいけないという教訓が残ったね。でも残り2戦、攻め続けなければチャンピオンは獲れないからね」と津川。シリーズポイントは97で変わらなかったものの、首位を死守した。真夏の太陽と同じくSA3クラスの熱い戦いは続く。

第6戦仙台の覇者野中信弘に、またも先行を許してしまい2位に終わった牧野タイソン。だがシリーズポイントでは98ポイントとトップを譲らず、残り2戦に挑む。

9台のエントリーを集めたSCクラス。第4戦からの連勝で波にのるかと思われた牧野タイソンだったが、前戦仙台ハイランドで惜しくも2位に終わった。雪辱を期した今回のイベントだったが、1本目1分35秒236と大きく出遅れ、仙台の覇者野中信宏の先行を許してしまう。2本目、1分32秒649という野中のタイム逆転を目指してスタートしたタイソンだったが1分33秒247と約コンマ6秒届かず2位に。ともに3勝で並んだものの、シリーズポイントはタイソン98に対して野中82。タイソンは16ポイント差を持って残り2戦を戦うことになった。
Global Race Category
Domestic Race Category
Motercycle
ニュルブルクリンク2014