第6戦 8月4日(土) 震災復興「ともに、前へ仙台」オールジャパンジムカーナ イン 仙台ハイランド
灼熱の太陽のなか山野直也がチャンピオン確定
ダンロップ勢が5クラスで優勝を飾る!
初の全日本ジムカーナ開催となった仙台ハイランドレースコース。真夏の太陽に路面温度もぐんぐん上昇。人にもクルマにも、そしてタイヤにも厳しい戦いとなった。
全9戦で争われる2012年の全日本ジムカーナ選手権。中盤戦の最後となる第6戦は、その舞台を東北の仙台ハイランドに移して開催された。震災復興「ともに前へ」と題された今回のイベント。ジムカーナコースが震災の影響で路面が隆起してしまい、その修復が間に合わないという理由でレーシングコースに変更されたという経緯があった。初開催となるコースはピットレーン出口からスタートして1コーナーまで下り、ターンして逆走。ホームストレートに戻ってくると、居並ぶパイロンでスラロームとターン。ハイスピードな前半セクションとテクニカルな後半セクションが組み合わされた設定だ。走行経験の無いなかでも、選手たちは練習走行~公開練習と試行錯誤しながら攻略方法を煮詰めてゆく。午前中から50℃をゆうに超えた路面温度。白熱するシリーズポイント争い。灼熱の太陽が降り注ぐなか、文字通り熱い戦いが各クラスで展開された。早速その模様を観てみよう。
ライバルたちとの争いの中で着実な進化を遂げている河本晃一。勝ちパターンが見え始めた戦いに、次戦もてぎでの2年連続チャンピオン獲得も見えてきた。
今回16台と最多のエントリーを集めたのが、2006年以降で1600cc以上のFFとFRが戦うPN2クラス。参加車両はフェアレディZ、BRZに86、そしてシビックタイプRなどが競い合う。ここまで2勝、82ポイントを稼いだZの河本晃一がシリーズリーダーに立つ。次いでBRZを駆る山野哲也が64ポイントで2位。主力3車種ともに異なる得意なコースレイアウト。今回のコースにマッチしたのはどのマシンだったのか?優勝候補たちの間で1本目から白熱した勝負が展開されるのか?と思いきや山野がパイロンタッチで下位に沈み、シビックの松本敏がミスコース……。ラストゼッケン河本が1分20秒601を叩きだしてトップに立つ。ライバルたちの脱落をスタート前、目前で観て優位に立ちトップに立った河本。だがそれは第三者の視点だった。「タイムは出なかったけど、山野さんがギリギリまで攻めてるんですよ。松本さんがミスコースと聞いて、クルマの中で何が起こったのか分からなくなりました。でもクラッチミートするまでの間に、これはラッキーなんだ!イケルんだ! 勝てるんだ!! と頭の中を切り替えなければ、勝てる相手じゃないんですよ」と河本。『プレッシャー』その中で見えてきたのが1本目トップに立って、相手にプレッシャーをかけること。2本目に入っても河本のタイムを更新する選手は現れず、逃げ切りで今シーズン3勝目が決まった。ここで河本は、敢えて未体験のことにチャレンジした。ジムカーナ界のスター、山野のお株を奪うヘッドライトを点灯してのウィニングラン。タイムこそ上がらなかったものの、ツインリンクもてぎで行われる第7戦以降もライバルたちにひるまず立ち向かう強い意志が感じられた。暗中模索で自分との戦いに終始した昨年、そこから他人との勝負という環境に変わった今シーズン。勝負を楽しむというステップに向かい、チャンピオン獲得への手応えをしっかりと握りしめた第6戦だった。
今回はパイロンセクションでライバル岡野博史を逆転しての優勝で5連勝を飾った山野直也。2年ぶりのチャンピオン確定で、全クラスでチャンピオン一番乗りを果たした。
第2戦から破竹の4連勝でチャンピオンに王手をかけ、仙台ハイランドに乗り込んできた山野直也。“パイロンの魔術師”の異名をとる岡野博史との戦いに、前半の高速セクションで稼ぐ作戦を立てた。路面温度の高くなる昼過ぎに重なる2本目の走行時間。総合的に考えて、1本目から全開の勝負を挑む必要があった。もちろん岡野もそれを認識していた。直也VS岡野のバトルは、3位以下を1.5秒近くぶっちぎる異次元の世界に突入した。1分16秒361を叩き出した岡野。対して直也、前半の高速セクションでタイムを稼ぐ『予定』が岡野にリードを奪われる。だが、後半のテクニカルセクションが圧巻だった。“魔術師”を上回るパイロンワークを見せる。ゴールするとタイムは1分16秒080!パイロンセクションで岡野を逆転してトップに立ったのだ。「正直、どうしてタイムが出たのか良く分からないんですよ。でもジムカーナのようにたくさんハンドルを切る競技では、タイヤの性能差が出やすいですよね。そんな中でもZIIは縦から横への過渡特性も含めてバランスがスゴくいいんですよ。それはサイドターンなんかで、滑らせた後にトラクションを回復させる時にもアドバンテージがあったんじゃないかな?」と直也。こちらは予想通り、60℃近くにまで上がった路面温度にタイムダウンとなった2本目。両者ともにタイムダウンで終わり。1本目のタイムで逃げ切り直也の5連勝というリザルトが決まった。「(兄の)哲也がジムカーナを始めた頃から、走っている大先輩の岡野さんとPN3で戦えたということはスゴく嬉しいことです。走り方も勉強させてもらいました。見た目は物静かな方ですけど走り方は男らしくて、ウエットでもドライでもイチかバチかというブレーキングの詰め方をしてくる。尊敬できるドライバーです」2シーズンぶりのPN3チャンピオン確定を一番乗りで決めた。しかも大先輩岡野を破っての栄冠に直也の言葉に、大きな実感がこもっていた。次戦のもてぎは、満点チャンピオンを目指してエントリーする。
全日本初優勝を飾った土手啓二朗。周りの選手や関係者たちからの大きな祝福に「涙が出そうでした。今回はタイヤがバッチリ合ったのと牛タンパワーです」と笑わせた。
8台のエントリーを集めたN1クラス。62ポイントを獲得してシリーズランキングトップに並ぶのは、昨年のチャンピオン平田裕三と村井勝のふたり。1本目トップに立ったのは、平田。N1クラスでただひとり24秒台の1分24秒979を叩き出した。2本目に入って微妙に路面状態に変化が現れたか?1本目と同等のタイムが出始める。そんな状況をうまくつかんだのがランキング4位の土手啓二朗だった。「1本目にターンで失敗してたんですけど、2本目にそれを修正したら思ってた以上にタイムが出ていてイケルかな?」と語る土手は、平田のタイムを更新する1分24秒677を叩き出す。このタイムを更新する選手が現れず、土手が逆転で全日本初優勝を飾る。「やっと勝てました。20年以上前には少しやっていたんですけど、本格的に全日本を追いかけたのは6年です。金曜日に始めて(03Gの)M2を履いたんですけど、自分のリズムと合っていて今回はテンポ良く走れましたね。今日はフロントに新品の03GのM2を履いて、バッチリでしたね。それと今回はせっかく仙台に来たんだからって事で、牛タン食べまくったんですよ。全日本で転戦するってことは、全国各地の美味しいもの食べられるってことじゃないですか。だから今回は牛タン効果もありそうですね」と笑顔を見せる土手。周りからの祝福に、「正直、涙が出そうでした。もう一回優勝してみたいですね」残り3戦、その思いがジムカーナへのモチベーションをさらに高めてくれることだろう。
今シーズン2勝目を挙げ単独シリーズトップに立った野尻隆司。北海道から続くティーアシスト勢の活躍は、昨年のチャンピオン菱井将文の牙城を崩し始めた。
昨年のチャンピオン菱井将文が60ポイントを獲得してシリーズリーダーに立つN4クラス。その菱井を激しく追いかけているのが、古谷哲也率いるティーアシスト勢。前戦の鈴鹿で全日本初優勝を飾った金本辰也が同ポイントで2位、さらに60ポイントで野尻隆司が3位につけている。それぞれ優勝回数と上位入賞回数で差がついているものの、シリーズの行方は混沌としてきた。1本目1分13秒334でトップに立ったのは喜勢竜一。それにわずか0.05秒差で2位につけたのが野尻。シリーズリーダーの菱井はパイロンタッチで下位に沈む。2本目に入って各選手がタイムアップ。1分13秒292でトップに立ったのは稲木亨だ。これを野尻が1分13秒097と逆転。同じチームの金本に期待が集まるが、今ひとつタイムが伸びない。そして迎えたラストゼッケンの菱井だったが、1分13秒668とタイムが伸びない。逆転で野尻の今シーズン2勝目が決まった。「乗れてきてるんで、かなり上向き調子になってるなぁと思います。あんまり高速コースを走ったことが無いのでなんとも……。1本目は後半が良くて、2本目は前半が良かったんですよ。今日はなんか調子良かったです(笑)。今はチームの雰囲気がスゴく良くて、北海道からそんな感じで来てます。その流れを壊したくないですね次のもてぎは得意だと思うコースなので、いい結果出したいですね」と語る野尻だが、これで80ポイントとなり菱井を抜いてシリーズリーダに立った。混沌とするN4クラスのチャンピオン争い、ひょっとすると次戦のもてぎがシリーズ争いのポイントとなるかもしれない。
不調が続いた今回のイベント。だが津川信次は、その中でチャンスを掴み取るとそれを決して離さなかった。決勝1本目にピークを持ってきて逃げ切り優勝を飾る。
11台が参加したSA3クラス。毎回熾烈な戦いを繰り広げる上位陣の争いだが、初開催となる仙台ハイランド。各車のセッティングが大きく異なり、手探りの中でのスタートだったようだ。土曜日の公開練習ではシリーズリーダーの津川信次が1本目ミスコース、2本目10位。シリーズ2位の茅野成樹が低迷し9位といいところがなかった。開けて日曜日の決勝。1分13秒台で推移していたトップタイムを今シーズンからSA3クラスに移籍してきた野島孝宏が1分11秒205に更新。昨年のチャンピオンマシンのランサー・エボXが久々にトップに立つ。茅野は12秒台にとどまり、野島トップで迎えた最終ゼッケン津川。昨日の不調がウソのような快走で1分11秒205と野島を逆転!トップで1本目を終える。2本目に入って各車11秒台に入れてくるが、このタイムは破られず逃げ切りで津川の今シーズン2勝目が決まった。「コース的には前半の行き帰りでのコーナリング2回。それ以外はターンという設定でしたね。正直もっとグチャグチャの設定になるかと思ってたので、リアウィングを外してきてたからね。金~土曜日と全然調子が良くなくてセッティング変更に追われて、この暑さのなか(田原)憲に無茶苦茶無理してもらいましたね。土曜日の2本目にようやくなんとか見えてきて、今日はそれをベースにサスいじくってうまくハマったって感じ。今回は勝てて自分も嬉しいけど、憲も一生懸命やったのが形になったので良かったんじゃないかな?ポイント的にはトップに立ってるんだけど、優勝回数が1回なので茅野(成樹)さんに4勝されたらお手上げかなと思ってた。崖っぷちの状態でここまで来たんで、憲もがんばってくれたよ」第6戦で有効ポイントが全て埋まった津川。優勝2回と2位3回、3位2回という構成は2位以上出ないとポイントが加算されない。対して茅野は優勝3回に4位1回と三振かホームランか?という構成。後半戦に入る第7戦、これからますます目が離せない戦いが続きそうだ。