第5戦 7月14日(土) NRC 鈴鹿 BIG ジムカーナ
梅雨明け直前!灼熱の鈴鹿で
ダンロップ勢がチャンピオンを見据え6クラス制覇!
灼熱の太陽と雨上がりの高い湿度。とてつもなく高い不快指数のなか、会場アナウンスがこまめな水分補給を呼びかけていた、鈴鹿サーキット南コース。
夏直前になって全国各地に雨の被害をもたらした梅雨前線。鈴鹿サーキット南コースで行われた全日本ジムカーナ第5戦でも、多くの選手がいつ降り始めるかわからない天候を気にかける。シリーズの行方を左右する中盤戦、集まった競技車両は165台。高い湿度の会場、その蒸し暑さ以上に熱い戦いが各クラスで展開された。選手たちからも高い人気を誇る鈴鹿サーキット南コース。今回の設定でポイントとなったのは、スタート後に設けられた3箇所のテクニカルセクション。絶妙な配置が施されたパイロンにブレーキをあまらせたり、スピードが足らずサイドターンを失敗する選手が続出。だがトップを争う選手たちは素晴らしいパイロンワークでこのセクションをクリアしてゆく。各区間のセクションタイムを見ると、ここで一発勝負をかける選手、後半の中高速セクションで取り返す選手。それぞれの思いがタイムから見え隠れする。異なるクルマに異なるタイヤ、そして各種各様のドライビングスタイル。けれど同じようなタイムで走り切り、勝敗がつく。そんなモータースポーツの醍醐味を感じさせる戦いが繰り広がられた。
してやったり!1本目にトップに立ち相手にプレッシャーを掛ける作戦がドンピシャリでハマった河本晃一。会心の今シーズン2勝目に2年連続チャンピオンへの道も見えてきた。
ここまで62ポイントを獲得して、シリーズトップに立っている昨年のチャンピオン河本晃一。その河本に新たなる刺客が。全日本チャンピオン経験者で今シーズンはN2クラスに参戦していた松本敏が、シビックタイプRでPN2クラスに参戦してきたのだ。山野哲也のBRZ、松本のシビック、そして河本のZとマシンのバリエーションも増え戦いのレベルが上がった。松本が叩き出したタイムを山野が更新。そして迎えた河本の走行。スムーズなパイロンワークで前半セクションをトップで折り返すと、そのリードを保ってゴールするとタイムは1分10秒210!見事な走りで1本目トップに立つ。「1本目、松本さんの上にいることが絶対条件でした。2本目、精神的に優位に立てますからね。正直、鳥肌が立つくらいの緊張感を味わいました」と満足気に語る河本。2本目に入っても天候は変わらず路面はドライ。各選手がタイムアップするなか松本が1分10秒071と河本のタイムを更新する。これには山野も届かない。そしてラストゼッケンの河本を迎える。「パイロンセクションでミスっていて、コンマ5秒くらいはあげられるつもりでいました」と語る河本は、そのミスを2本目でしっかりと取り返した。ゴールするとタイムは1分9秒709。言葉どおり、コンマ5秒のタイムアップを実現してみせた。「今日は1本目から予定どおりです。サイコーです!」とニッコリの河本。緊張感の高まる中での逆転勝利。強さを見せる戦いで今シーズン2勝目を挙げた。ポイントも82まで伸ばし、2年連続チャンピオンへの道が見えてきた。仙台ハイランドで行われる第6戦、さらに成長した姿を見せられるか?真価が問われる一戦となるだろう。
インプレッサには若干不利なセクションもあったものの、ライバルを抑えきって4連勝を飾った山野直也。ついにチャンピオン獲得に王手をかけ、次戦のハイランドで確定を狙う。
第2戦から破竹の3連勝を飾り、ライバル岡野博史とのポイント差を25にまであけた山野直也。その勢いを駆って鈴鹿に乗り込んできた。今回の成績次第でチャンピオンが確定する可能性もあった。だが、周りが思うほど大きなアドバンテージは無かったようだ。「鈴鹿南は一見ハイスピードに見えるんだけど、実際に高速なのはストレートだけなんですよね。今回のコースで攻略ポイントとなったのは、スタート後のテクニカルセクション。インプレッサは、一度止まってしまうとランサーに置いてかれる。だから、止まらずに走るようにしなければと感じましたね」とコースの印象を語る直也。そして決勝1本目がスタート。岡野が1分6秒336を叩き出してトップに立ち、迎えた直也のトライ。直也はスタート直後のテクニカルセクションを、その言葉どおり連続する大きな挙動でクリア。ここで岡野にコンマ3秒のビハインドを背負う。だが連続S字を含む区間では0.77秒挽回し逆転。そのままゴールすると、タイムは1分6秒217!トップに立って1本目を終えた。気温が上がり、灼熱の中での戦いとなった2本目。各車なかなか1本目のタイムを上回ることができない。岡野もパイロンタッチを喫して万事休す。直也は1本目のタイムで逃げ切り4連勝を飾る。「次勝てば(チャンピオン)確定です。チャンピオンに王手をかけられたのが、一番大きな収穫ですね。路面温度が高くなった状況でもZIIはスタートからゴールまで、きっちりとグリップしてくれましたね。今週は新品、ユースドと3種類くらい山の高さの違うタイヤを試してみました。多少フィーリングの違いはあっても、それほど大きなタイム差はなかった。ZIIは安定してタイムを刻めるのが分かりました。お世辞抜きにオススメできますね」と直也はニッコリ笑顔を見せた。全9戦中70%、つまり上位6戦の有効ポイントで争われる全日本ジムカーナ選手権。95までポイントを伸ばした直也は、次戦仙台ハイランドで行われる第6戦にチャンピオン確定をかけて乗り込む。
N2クラスのディフェンディングチャンピオンがついに覚醒? シーズン当初から不調を囲っていた朝山崇だがココに来て復調!今シーズン初優勝を飾った。
インテグラタイプRのワンメイク状態が長く続くN2クラス。豊富なエントリー台数を背景に、毎戦熾烈な戦いが繰り広げられている。トップと同秒台に5~10人が並ぶのは当たり前で、100分の1秒の違いが順位を大きく左右する。2011年、その熾烈な争いを制しチャンピオンを獲得した朝山崇は、今シーズンからダンロップのタイヤを履くことになった。だが……、「最初は散々な結果ばかりでした。それでも4~5位くらいにはいられるかなと思ってたんですけど、それも出来なかった。シーズンイン前は、前半戦で慣れたら後半には勝負できるかなと思ってました。でも、そうはなりませんでしたね」新たなマテリアルを自分のモノにするため、練習とセッティングを繰り返してきた朝山に今回チャンスが巡ってきた。1本目トップの箕輪雄介から0.012秒差の2位。上位4台が1分6秒台、そのうち3台までが1分6秒6まで同じ。まさに100分の1秒が勝敗を左右する戦いとなった。2本目に入るとライバルたちは軒並みタイムダウン。だが朝山はひるまない。冷静なアタックで走り切るとタイムは1分6秒584団子状態から一人抜け出すと追いすがるライバルはいなかった。「今回は何となくですけど、イケそうな雰囲気がありました。始まる前は確信になってなかったんですけど、走り終わったら(メンテナンスショップの)小清水さんからも『なんかイケそうな雰囲気あったやろ』って言われました。精神論ではないんですけど、クルマを手足のように動かせるようになっていかにミスなく走り切るか?それが100分の1秒差を分けるんだと思いますね」と語る朝山。中盤戦に入ってディフェンディングチャンピオンがついに覚醒か? これからの戦いが楽しみだ。
仲間からの祝福、そしてこれまでお世話になった人への感謝。そのすべてがうれしさにつながった金本辰也の全日本初優勝。『こんな気持ちええなら、もう一回優勝したい!』
今シーズン2勝を挙げて51ポイントとシリーズトップに立つ菱井将文。ところが前戦のスナガワで、N4クラス移籍後初優勝を遂げた野尻隆司が48ポイントと肉薄する。3位には金本辰也が40ポイントでつけるなど、古谷哲也率いるTASSIST勢が菱井包囲網を敷いている。だが1本目は気合が入りすぎてしまったのか?野尻、金本ともにパイロンタッチで下位に沈む。一方、菱井は1分4秒243を叩き出してトップに立つ。2本目に入ると1分4秒台に入れてくる選手が続出!金本は菱井のタイムを0・006秒更新する1分4秒237でトップを奪う。野尻も1分4秒290と菱井のタイムにわずかに届かず3位につける。そして最終ゼッケンの菱井がスタート。しかし、コース途中でなんと2本のパイロンタッチを喫してしまい、1本目のタイムで競技終了。2本目にトップタイムを更新した金本の全日本初優勝が決まった。会場には代表の古谷をはじめ、昨年までN4クラスを戦っていた竹田宏太郎など仲間が集まっていた。金本は仲間たちと抱き合って大喜び。「いや~気持ちイイですねぇ~。全日本で勝つことが、こんなにもうれしいもんだとは思いませんでした。うちのチーム(TASSIST)にはウィナーズクラブっていうのがあって、茅野(成樹)さんや古谷(哲也)さんをはじめみんなが入っててボクだけ入れなかったんですよ。地区戦のチャンピオンは獲ったことあるけど、全日本では勝ったことが無かった。こんな気持ちのええもんやったら、もう一回勝ちたいと思いますね。え?ジムカーナ歴は今年で12年になります。全日本に参戦し始めて6年くらいかな?とにかく古谷さんをはじめ、助けてくれた仲間たちに本当に感謝したいです」と金本。念願の初優勝に続き2回目の栄冠を目指すべく、中盤戦を戦う。
ハイレベルな戦いの中では、心理面が勝敗のカギとなる場合が多い。これまで安定した成績が続かなかった茅野成樹だが、冷静さを保ち逆転で今シーズン3勝目を挙げた。
全日本有数の強豪選手たちがしのぎを削るSA3クラス。1分3秒021を叩きだして1本目トップに立ったのは西原正樹。次いで2位は天満清、3位に津川信次が続く。「今回のコースでポイントになるのは、最初のテクニカルセクション。中盤から後半にかけては金曜日から練習してるし、うちらはミスすることはないからね。とにかく3回サイドを引く最初のテクニカルセクションがポイント」と津川。あけて2本目、まず西原が1分2秒790と自己タイムを更新する。続く茅野、もちろん攻略ポイントは頭に入っていた。エボXに乗り換えてからここまでドライビングに悩み、必死に考えぬく茅野の姿があった。スポットでの優勝はあるものの、なかなか連勝がなく安定したリザルトを刻むことができずにいた。だが……、今回は違った。1本目から見違えるほど変わったテクニカルセクションでの走り。ここでマージンを稼ぐとミスなく走り抜きゴールすると、タイムは1分2秒610。西原を逆転してトップに立つ。このタイムには天満清、津川も追いつくことができず茅野今シーズン3勝目、そして北海道に続く連勝が決まった。「最近はオヤジになってきて、気合一発じゃ勝てないというのが分かってきた。とにかく冷静に、もう一人の自分と対話するような精神状態を作るようにしてます。だから今回も、1本目西原に先行されても冷静な自分がいた。2本目は慣熟歩行をしないで、ずっとビデオを観てたよ。それこそテクニカルセクションを4つから5つくらいに分けて。同じクラスで速い人の走りを徹底的に研究して、いいとこ取りの走りを組み上げる。そんな作業してたら、メシ食うの忘れてた(笑)。2本目はそれをミスなく走ることに集中したら逆転できた」ココ一発の集中力。それが茅野のこれまでの大きな武器だった。ところがここ数戦の戦いを見る限り冷静な茅野がそこには存在している。心境の変化は後半戦になって大きく生きてくるかもしれない。
1本目のタイムで逃げ切り、今シーズン3勝目を挙げてシリーズリーダーの座をガッチリと固めた牧野タイソン。念願のシリーズチャンピオン獲得に向けて、次戦に挑む。
前戦スナガワでの優勝でシリーズリーダーに返り咲いた牧野タイソン。今回からマシンの仕様をより改造車方向に振って、鈴鹿に乗り込んできた。「周りのライバルたちもドンドン速くなってきたので、今回はクルマの仕様を変えてきました。僕自身が乗る時間を取ることができなかったので、現場合わせになってしまいました。土曜日の1本目走ってみたら、こりゃ大変だ!と。そこからプレジャーの大橋さんをはじめ、みなさんにご協力して頂いて何とか走ることができました」とコメントするタイソン。1本目に1分4秒091を叩きだすとそのタイムで逃げ切り今シーズン3勝目。シリーズリーダーの座をガッチリと固めて、仙台ハイランドで行われる第6戦に挑む。「がんばろう東北」と銘打たれたイベント名からも、主催者の意気込みが感じられる。初開催となる仙台ハイランド本コースでのイベント。本格的な暑さのなか、シリーズの覇権争いは一層激しさを増すことになるだろう。