第7・8戦 6月16日(土)~6月17日(日) 富士スピードウェイ
第7戦は2番手から飛び出した参戦2シーズン目の井口卓人選手が初優勝!
第8戦は3番グリッドからジャンプアップした田中誠也選手がうれしい初優勝!


第7戦決勝レースのスタートシーン

 6月16日~6月17日、フォーミュラチャレンジ・ジャパン(FCJ)第4大会(第7戦、第8戦)が富士スピードウェイで開催された。富士でFCJが開催されるのは、4月初めにフォーミュラ・ニッポンのサポートレースとして行われて以来で、今シーズン、これが2度目。レースウィーク直前の14日、15日には公式合同テストと公式練習が行われ、ウェットとドライで、それぞれ1日ずつ走り込み、コースレコードホルダーの国本京佑選手が両日ともにトップタイムをマークした。だが、これが2大会目とあって、各ドライバーのタイムは急接近。ドライとなった2日目にはトップの国本京祐選手から20台以上がタイム差1秒以内にひしめき合う接戦ぶり。舞台となる富士の長いストレートでは、スリップストリームを使ってのパッシングも魅力で、決勝でのドッグファイトが期待されることになる。

激しいタイムアタックが続き、山本選手がトップタイムをマークしてポールをゲット

●第7戦、第8戦予選

 FCJ第7戦、第8戦の公式予選は、16日(土曜日)の午前10時5分から。計測時間はそれぞれ15分ずつで、間に10分のインターバルを挟む、通常どおりのパターンで行われた。気温25度だが、乾いた空気は肌に心地よい。ただし日射しは厳しく、路面温度は40度まで上昇することになった。前日にドライコンディションでの走り込んでおり、各車、1周目から全開でアタック。前日のセッションでトップタイムをマークしていた国本京祐選手や井口卓人選手、田中誠也選手らランキング上位陣が、毎周のように順位を入れ替えながらタイムを詰めていく。最終的にはランキング6位から上位進出を狙っていた山本尚貴選手が、1分43秒631のトップタイムをマークして逆転。これに井口卓人選手、田中誠也選手、国本京祐選手が、同じく1分43秒台で続く。その後方は激戦で、5番手の李康太選手から20人以上が1分44秒台をマークしていた。なお、井口卓人選手は、自己ベストをマークした直後にマシントラブルでストップ。何とかピットまで戻ってきたものの修理が間に合わず、第8戦の公式予選には残念ながら不出走となってしまった。

国本選手が渾身の走りでポールを獲得

 第8戦の公式予選でも、山本尚貴選手や田中誠也選手、国本京祐選手がターゲットタイムを更新し合う展開となり、前日の公式練習でもトップタイムをマークしていた国本京祐選手が意地を見せ、この日のベストとなる1分43秒591をマーク。気温が上昇したコンディションもあって、自身の持っているコースレコードには及ばなかったが、第8戦のポールをゲットすることになった。これに山本尚貴選手と田中誠也選手が続き、山本尚貴選手は2戦連続でフロントローから、田中誠也選手も2戦連続で3番手からスタートすることになった。その後方、4~5番手には糸田川和亮選手、小林崇志選手が続き、ここまでが1分43秒台をマーク。1分44秒台をマークしたのは19人で、相変わらずの激戦ぶり。パッシングし易い富士だけに、決勝への期待が高まった。予選不出走となった井口卓人選手は、嘆願書を提出、第8戦はグリッド最後尾からのスタートが認められた。


第7戦ポールポジションの山本尚貴選手
「前回のもてぎ大会から、メンタル面について少し考えを変えました。それまでは、勢いだけでレースに臨んでいたんですが、少し気持ちを落ち着ける。そう心がけるようにしたんです。もてぎでは、流れを自分に引き込むことができ、いい意味での自信がつきました。今回も同じようにしてレースに臨んでポールを奪うことができ(もてぎの好結果が)たまたまだったのではなく、自分に合ってた。間違いなかったんだと実感できました。この前はポールから散々なレースでしたが今回は、落ち着いていけば勝てる、と思っています」

第8戦ポールポジションの国本京佑選手
「1回目の予選は、走り始めから好感触で、これは行けるなと思ったんですが、その後はずっと前のクルマに引っかかって、待っても待っても良いポジションが見つからず、チャンスを逃してしまいました。最初に出て行くときからピット出口が戦争みたいになっていて、そこで競り負けました。2回目は、前に誰もいない状態を作れて、ひとりでアタックできたので、全然問題ありませんでした。午後の決勝ではスタートでに前に出るつもりですが、もしそこで行けなくてもレースの中できっちり抜いて、表彰台には乗るつもりです」

好スタートを決めた予選2位の井口選手が、快調な走りで逃げ切って初優勝

●第7戦決勝レース
 15周で争われるFCJ第7戦の決勝レースは、予定どおり午後4時前にスタートが切られた。好天にも恵まれ、強い西日がコースを照らしつけ、気温26度/路面温度43度と、ドライバーだけでなくマシンやタイヤにも厳しいコンディション。予選からタイム差がなく接戦が期待されたが、上位陣は比較的淡々としたレースに終始。だが後方集団は予想に違わず、最初から最後まで緊迫したバトルが連続。見応えのあるレース展開となった。
 スタートで飛び出したのは2番手グリッドから猛ダッシュを見せた井口卓人選手。予選でトラブルに見舞われたが、それも完璧にリペアされていたようで快調に先を急ぐ。ポールスタートの山本尚貴選手、4番手からひとつポジションアップした国本京祐選手、その彼にスタートダッシュで後れを取った田中誠也選手が井口卓人選手を追いかけ、その後方では多くのマシンがダンゴ状態でドッグファイト、上位との差はじわじわと広がっていく。
 スタートで飛び出したのは2番手グリッドから猛ダッシュを見せた井口卓人選手。予選でトラブルに見舞われたが、それも完璧にリペアされていたようで快調に先を急ぐ。ポールスタートの山本尚貴選手、4番手からひとつポジションアップした国本京祐選手、その彼にスタートダッシュで後れを取った田中誠也選手が井口卓人選手を追いかけ、その後方では多くのマシンがダンゴ状態でドッグファイト、上位との差はじわじわと広がっていく。

井口選手と山本選手がデッドヒートを展開

 トップグループでは井口卓人選手が快調に速いラップを重ねることになった。2番手につけた田中誠也選手がペースを上げて追いすがれば、井口卓人選手もペースを上げてさらに突き放す。完全にレースをコントロールした状態で15周を走り切り、見事トップチェッカー。今年で2シーズン目となるFCJで、うれしい初優勝を飾ることになった。2位の山本尚貴選手には、トップを追いきれない理由があった。それは後方から攻め立てる国本京祐選手と田中誠也選手の存在だ。この3台は、時に急接近してテールtoノーズに近づき、またある時には間隔を空けての単独走行となり、と一進一退を繰り返す。マシンと自分自身のポテンシャルを、フルに引き出してのわずかなミスで流れは急変する。だが、最終的にはオーダーが変わることなくチェッカー。ともにうれしさと悔しさが交錯する中、山本尚貴選手と国本京祐選手は、優勝した井口卓人選手とともに表彰台を手に入れた。
 一方、5番手以降では激しいドッグファイトが続けられたが、まずは中盤に小林崇志選手が抜け出して単独5位の座をキープ。続いて糸田川和亮選手も6位のポジションを確立した。接近戦が繰り広げられたものの、意外にもパッシングのシーンは多くなかった。また、接近戦ではラフファイトが見られるケースが少なくないが、今回はそれも皆無。クリーンなドッグファイトは、若いドライバーの進化を示していたのに違いない。

2位の山本選手、予選3位から優勝を決めた井口選手、3位の国本選手

優勝した井口卓人選手
「金曜日の公式練習から、自分のリズムを作ることができず、悩んでいました。でも、アドバイザーの方から『プラス思考をすれば実際に物事はプラスの方向にいく』とメンタルな面での助言をもらって、自分の中でリセットできました。予選では“無”になって自分の走りをしよう、と思っていました。第7戦の予選ではベストタイムを出した後でトラブルが出てしまい、第8戦の予選には出走できませんでしたが、メカさんが必死で直してくれて、午後の決勝にでることが出来ました。メカさんには本当に感謝しています。とにかく楽しく走ろうと思って、後ろのことは気にせずにベストを尽くして走りました。明日は最後尾からのスタートですが、とにかく追い上げて、表彰台に上れればいいなと思います」

2位の山本尚貴選手
「スタートで出遅れてしまいました。それでも何とか2位につけていて、あのまま(ミスなく)走っていれば、決してチャンスもなかったわけではないし、勝てたかもしれません。でも、ミスの多さと自分の弱さで離されてしまいました。またひとつ、チャンスを自分で失ってしまったことで、自分に腹が立っていて、レースに負けたことより自分に負けたという気持ちが、今は強いです。でも、今日のことは今日のことと気持ちを切り替えます。2番手からスタートできるので、明日こそ落ち着いて、絶対勝てるように頑張ります」

3位の国本京佑選手
「今週は金曜日の公式練習から、すごく調子がよくて、予選も自信があったんですが、1回目の予選では戦い方を失敗してしまって、ポールからはスタートできませんでした。でも決勝では、4番手からスタートし、3位で表彰台に乗れたことに、とても満足しています。一度、山本選手がミスしたときに抜けそうにもなったんですが、ボクも少しミスをしてしまってたし、無理に行ってたらぶつかってたと思うんで、引くところは引いて、ちゃんと完走を目指して走りました。今日の結果を、ポールからスタートする明日のスタートに繋げていければなと思っています。クルマを突き放して、絶対に勝ちたいと思います」

3番手からスタートでトップに立ち、そのまま逃げ切りの優勝を飾った田中選手

●第8戦決勝レース

 シリーズ第8戦の決勝レースは17日(日曜日)の午後に行われた。この日も朝から好天が続いていたが、午後になると少しずつ雲が拡がってきて、スタート時点での気温/路面温度は24度/38度。ただし、雨が落ち始める気配はなく、第7戦に続いて第8戦も、完全ドライのコンディションとなる。前日に行われた第7戦のスタート時に比べると幾分低下していたが、その分レース距離(周回数)が15周から21周と伸ばされており、やはりドライバーにもマシンにもハードなコンディションであることに変わりはなかった。

ポールの国本選手は2位でゴール

 スタートで大きくジャンプアップしたのが、3番手グリッドから抜群のダッシュを見せた田中誠也選手。1コーナーに向かって併走していた国本京祐選手と山本尚貴選手のインに並ぶと、3台併走状態で1コーナーにアプローチ。その立ち上がりで一気にトップを奪うと、2位以下をじわじわ引き離していく。その後方のバトルは、山本尚貴選手が先んじて1コーナーを立ち上がり、これに食らいつく格好で国本京祐選手が続いた。4番手スタートの糸田川和亮選手がグリッド通りのポジションを守っていたが、彼を含めて6~7台がダンゴ状態で先を争っており、こちらのバトルからは目が放せそうになかった。
 トップに立った田中誠也選手は、以後も快調に飛ばしていく。一方、2番手につけた山本尚貴選手はなかなかペースが上がらず、背後から国本京祐選手が迫ってくる。この2位争いは結局、4周目の1コーナーで国本京祐選手が山本尚貴選手をパスすることで決着。以後、トップ3は一進一退の攻防を見せながらも、21周のレースを走り切ることになる。4位争いの集団でも、先ずは糸田川和亮選手が抜け出してポジションを確定。5番手の千代勝正選手も少しずつ集団を引き離し、上位陣のオーダーは固まっていった。
 一方、注目を集めたのは、最後尾から激しく追い上げた井口卓人選手。土曜日の第7戦では2番手グリッドから飛び出し、そのまま逃げきりで初優勝を飾った彼だったが、この第8戦は、マシントラブルで予選を走ることができず、最後尾からのスタートとなっていた。オープニングラップで一気に18番手までジャンプアップすると、以後もハイペースで猛チャージ。レースの3分の1となる7周目を終えた時点では12番手まで進出していた。流石に、ここから先は簡単にはいかなかったが、先行するマシンを粘り強く攻略。結局10位まで追い上げてチェッカーを受け、貴重な1ポイントをゲットしていた。
 今回初優勝を飾るとともに、11周目にベストラップをマークした田中誠也選手は、ボーナスポイントを含めて21ポイントを稼ぎ、ランキングでも2位に進出。ランキングトップの国本京祐選手が、この週末に2戦続けて表彰台を獲得するなど、手堅くポイントを上乗せしたために、逆転は成らなかったが、その足がかりを造ることになったのは事実だろう。第7戦ではトップ4が5位以下と、明確な一線を画していた印象があったが、この第8戦でもトップ3の速さは、少し水を空けていた。それはトップ3が1分43秒台前半、4位以下が43秒台後半、というベストラップを見ても明らか。今後も、このトップ3に、第7戦のウィナーである井口卓人選手を加えた4人が、バトルの主導権を握りそうだ。もちろん、このレースで4位以下だったドライバーも、次回こそはの期待は高まっていく。

第8戦の表彰台、2位の国本選手、初優勝を決めた田中選手、3位の山本選手

優勝した田中誠也選手
「昨日の第7戦ではスタートを失敗していたので、今日こそは好スタートを切ろう、と思ってレースに臨みました。思い通りのスタートが切れ、1コーナーでトップに立つことができたのですが、国本選手をなかなか引き離すことができず、精神的に厳しいレースになってしまいました。それでも最後までミスなく走ることができ、初優勝を飾ることができました。今日、勝ったことで流れは好くなったと思うので、次の鈴鹿でも勝ちたいです」

2位の国本京祐選手
「スタートを少しミスしてしまいましたが、何とか1台を抜き返して2位につけ、トップの田中選手を追いかけたのですが、最後まで捕まえることができず、2位に終わってしまいました。それでも自分の弱点が見つかったし、何よりも今日は楽しくレースすることができました。次回の鈴鹿では2レースとも勝つつもりで頑張ります」

3位の山本尚貴選手
「スタートは、失敗した、というほど悪くはなかったのですが、田中選手が好スタートを切り、1コーナーで先に行かれてしまいました。前半は、なかなかペースが掴めず、国本選手に抜かれてしまいましたが、その後はコンスタントにタイムを刻むことができました。それに、レース終盤にベストタイムをマークすることが出来、昨日に比べて成長したかな、と思います。第5大会は、SRS-F(鈴鹿サーキットのレーシングスクール)で走り慣れた鈴鹿でのレース。ここまで3戦連続表彰台と流れも好いので、次は初優勝を狙います」

 第8戦終了時点でのポイントランキングは、1位は国本京佑(107点)で変わらず。2位は、今回の第8戦で初優勝を飾った田中誠也(87点)が大きくポイントを伸ばし、第7戦で優勝したものの第8戦では最後尾スタートで1ポイントに終わった井口卓人(81点)を逆転した。以下、4位に山本尚貴(66点)、5位中嶋大祐(45点)、6位栗原正之(44点)、7位ケイ・コッツォリーノ(39点)、8位小林崇志(31点)と続いている。
 FCJ第5大会(第9戦、第10戦)は、7月7~8日、鈴鹿サーキットで開催される。
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Motercycle
ニュルブルクリンク2014