第7戦 10月10日(土) 富士スピードウェイ
野村謙選手のチャンピオン争いから目が離せない

悲願のシリーズチャンピオンを目指す野村選手

 2009年のD1グランプリシリーズもついにファイナルを迎えた。今シーズンはこれまで岡山国際サーキットとエビスサーキットの2ヶ所で、開催日2日間を2連戦するデュアルファイナルズが組まれ、連日で決勝に挑むという過酷な条件のなかを戦ってきた。第5、第6戦となったエビスでは、日比野哲也が第5戦で準優勝、第6戦で4位に入賞と好成績を収め、終わってみれば97ポイントでシリーズランキング第2位の大躍進を見せた。一方、野村謙はベテランらしい安定感のある走りを見せるもあと一歩のところで及ばず、勝利を逃してしまった。第6戦を終わった時点でランキング4位に後退。しかし残りはまだ2戦あり。逆転のチャンスは大いにある。悲願のシリーズチャンピオンへ向けての野村の果敢な走りに期待したいところ。今回の富士スピードウェイも第7戦と第8戦のデュアルファイナルズだ。

林渡選手らの奮闘にも期待したい

 初日の10月10日は秋晴れが予想されていたが、厚い雲がサーキットの上空を覆い、早朝からすでに路面がやや濡れた状態で、大会が始まる少し前には雨粒も落ちてきた。ハイスピードコースゆえにウェットではマシンコントロールがいっそう難しく、選手を悩ますコンディションとなる。そんななかで始まった第7戦だが、予選そのものは前日の金曜日に終わっており、ダンロップ勢は、シードの野村と日比野を除く6台がこの予選に挑んだ。結果、ハイスピードコースを得意とし、昨年はここ富士で初優勝に輝いた古口美範が堂々のトップ通過を果たした。また、S14シルビアでエントリーした加藤貴也が、19番手で予選通過を果たした。エビスサーキットの第5戦でベスト16に残った実力を富士でも見せたのだ。いっぽうで惜しくも不通過となってしまったのが、岡山戦から復活した猪瀬徹。また、マークIIの箕輪慎治、シルビアの林渡、ハチロクの小畑仁宏も残念ながら本戦へと駒を進めることができなかった。

エビスサーキットの好調をキープして予選を通過した加藤貴也選手

 単走の1回戦は、追走トーナメントへ進出する16台を決める戦いだ。2本を走り、各自の得点の高いほうを元に順位が決まる。シード選手10台と、予選通過選手20台の計30台が3つのグループに分かれて戦いに挑んだ。まず、ひと組目に出てきたのが加藤。まだ路面が滑りやすいウェットのなかでの1本目は、300Rの手前でスピードに乗せて振り出す果敢なドリフトを見せた。このままうまくいけば! というほど、ラインと角度も申しぶんのないものだったが、振りっかえした直後にリヤが引っかかった状態となりスムーズに向きを変えられず姿勢を崩してしまう。なんとか走り切ったものの得点は96.5点。2本目も300Rの飛び出しまではよかったものの、再び振りっかえしで引っかかった状態となりドリフトを維持できず、失敗。その時点で5番手のポジションだったが、結果、1回戦通過は叶わなかった。

ハイスピードコースが得意な古口美範選手

 1回戦のふた組目となる頃、天候が急速に回復。富士スピードウェイにようやく晴れ間が出てきた。依然として路面はウェット状態で難しいコンディションだったが、早い段階での回復も期待できる。予選をトップで通過した古口は、ふた組目の最後に出走。その1本目は、300Rの飛び込みを角度のある速いドリフトできめ、振りっかえしもスムーズに、最後まで安定感の高いドリフトを披露した。「このスムーズさは古口らしくないぞ!?」と審査員から声が挙がるほど。高いスピードでコーナーへ飛び込むアグレッシブな走りを冷静にコントロールしている様子で、古口の走りも確実に進化している。また、今回はニューエンジンをマシンに投入しているという要因もそのひとつにある。2.2L化されたSRエンジンは700ps以上のパワーをマーク。それを物語っていたのが圧巻だった単走の2本目。スピード感は1本目以上であり、300Rはテールから進入するほどの深いドリフトアングルであり、審査員席前ではアウト一杯までラインを使った完ペキな走り。1本目より高得点となる99.12点を獲得。3位で追走トーナメントへの進出を決めた。

野村選手は1回戦を突破して追走トーナメントへ進出

 野村にとって第7戦はシリーズチャンピオンになるための負けられない1戦だ。路面はまだウェット気味ではあるものの、ウォーミングアップの走りは安定感バツグン。調子のよさを見せていた。その1本目は、300Rの飛び込みから振りっかえし、ヘアピン手前までにかけてキレイなドリフトを見せていた。しかし、ヘアピンでカウンターを戻してしまい、これが響いて97.6点の低い得点となってしまった。この時点でベスト16圏内に届かない。今シーズンの単走は2本しか走れないのだ。つまり、シード選手の野村といえども後がない。しかし、百戦錬磨のベテランはさすがに術に長けている。2本目を難なくキレイにまとめて安全圏内の98.42点をマーク。勝つことへの執念を見せた野村が、13位で追走トーナメントへ進出した。

エンジンの不調で本来の走りができなかった日比野哲也選手

 エビスサーキットでの第5戦、第6戦の結果、ポイントランキング2位となり、チャンピオン争いに加わった日比野は、単走のウォーミングアップランをする直前でエンジンに不調が見つかり、ウォーミングアップランなしで本番へ挑むことになった。その1本目は大きく振り出しての300Rの飛び込みとしたものの、日比野らしいアグレッシブさは影を潜めていた。エンジン音が明らかに不調であり、走りそのものにいつもの力強さがない様子。2本目は進入と、ペアピンでなんとミスもおかす。1本目に出した97.3点は18位止まりとなり、追走トーナメント進出を果たせなかった。じつは、これまで使っていたエンジンを急きょ載せ替えての本戦だった。それが、またしてもエンジンの不調に見舞われてしまったのだ。ポイント争いから一歩後退する、悔しい結果となってしまった。

野村謙選手VS松井有紀夫選手

 午後から行なわれた追走トーナメントは、予選とは打って変わって暖かさを感じるほどの晴天となり、コース上はドライコンディションに回復。富士スピードウェイ本来のハイスピードによる見ごたえたっぷりな追走トーナメントとなった。野村は、1回戦4位の松井有紀夫(180SX)とのカードだ。しかし、ここでマシンにトラブルが判明。エキゾーストパイプにクラックが入り、ブーストを上げられない状況となっていた模様。富士スピードウェイで一勝をあげたいところなのに、状況は正反対の方向へと行くかに思えたが、応急処置でなんとかスタートラインへついた。後追いの野村だったが、スタートしてみれば、その走りはマシンの不調を感じさせるどころか、300Rの飛び込みから松井にきっちり合わせるアグレッシブさ。振りっかえしも同時にきめて、ヘアピンでの松井のリズムを狂わせるほどの接近ぶりだった。変わって先行の野村に対して今度は松井がきっちりと300Rから合わせる。D1ストリートリーガルでチャンピオン争いをするほどの実力をもつ選手ならではというところであったが、ヘアピンの立ち上がりで野村が差を広げ、みごとにこのカードを征した。

黒井敦史選手との対決を征した古口美範選手

 予選を1位で通過、1回戦を3位で追走トーナメントへ進出してきた古口。進入スピード、角度、ライン、さらには迫力と、富士スピードウェイの走りは得意というだけあってさすがに抜きん出ており、相性のよさを伺わせる。対戦相手はシルビア(S13)の黒井敦史。この選手もまたスピードと角度で圧倒するスタイルが持ち味。180SXとシルビアの対決となったこのカードは、古口が先行でスタート。300Rを深い角度で飛び込んできた古口。スピードもある。インに入り込もうとする黒井にヘアピンまでその隙を与えない。アドバンテージは古口がとった。入れ替わっての後追いでは、先行の黒井に合わせるものの、古口がラインをイン側に取るミスをおかす。結果、サドンデスへと突入。再び先行は古口。300Rの飛び込みの深い角度は相変わらずで、1本目と同様に黒井にインに合わせづらい状況をつくった。その後追いでは振りっかえしてからのラインがまたしてもイン寄りとなったものの、300Rできっちり合わせた走りが評価で黒井を上まわり、野村とともにベスト8への進出を決めた。ベスト8では、今村陽一との対戦となり、古口が先行のスタートで、今村にインに入られてしまいほぼイーブン。後追いでは300Rを同時に振り出すも、振りっかえし後のラインがイン寄りとなったところが得点に響いてしまい、ここで敗退が決まった。

野村謙選手VS川畑真人選手

 野村のベスト8の対戦相手は川畑真人。はじめに後追いスタートの野村は、300Rでやや川畑に離される。ヘアピンのクリップへと向かう手前の審査員席前で流されたラインとなった野村。川畑にもラインにミスが出たものの、アドバンテージは川畑がとった。先行では野村が川畑を300Rで引き離す。ヘアピンでも川畑がインを食い込めない速度で逃げ切った。しかし、後追いでの川畑のアドバンテージを覆すことができず、敗退となってしまった。野村は7位を獲得。シリーズランキングを争う手塚、今村もベスト8へ進出。さらに今村は準決勝進出のすえに3位となり、手塚は5位。ポイントランキングは、1位が手塚、2位が今村、3位が野村、4位が日比野という結果だ。野村はポジションをひとつアップ。手塚とは16ポイント、今村とは8ポイントの差で追いかける。
明日は最終戦。ダンロップ勢の活躍に期待しよう。
Global Race Category
Domestic Race Category
Motercycle
ニュルブルクリンク2014