第5戦 8月2日(土)~3日(日) オートポリス
Rd.5 Report
コースイン直前の野村選手
早くもシーズン後半に突入した、2008年のD1グランプリ。ダンロップワークスは野村謙がランキング2位、古口美範が8位と上位にランクインしている。また第4戦で3位に入賞した日比野哲也、コンスタントに予選を通過するようになった一柳和人ら、新兵器『ディレッツァスポーツZ1スタースペック』の投入もあって軒並み上り調子だ。今回の第5戦・オートポリスは、進入が200㎞/hを超す超ハイスピードコース。ギャラリーの度肝を抜く、熱いバトルを期待したい!
一柳選手の予選
予選は8月2日の土曜日に行なわれた。野村と古口はシード権を獲得しているため、日比野・猪瀬・一柳の3名が決勝進出の枠を賭けてコースイン。エンジンと駆動系にトラブルを抱えていた日比野だが、高い適応力で車両の不調を感じさせない走りをみせる。猪瀬は昨シーズン同様、1本目から208㎞/hという最高速をマークし、2本目に今大会では誰も出していない100点を叩き出す。一柳も落ち着いた走りで高得点。3本の走行を追えた結果、1位が猪瀬で3位に日比野、一柳も13位で全ドライバーの予選通過が決定した。
日比野選手の1回戦
翌日の1回戦、最初に登場したのはランキング2位の野村。目に止まるミスはないものの、迫力が足りないと評価される。続く古口も精彩を欠き、なんとかベスト16には残ったが順位は野村が14位で古口が16位。日比野はマシントラブルの影響か、3本すべてに小さなミスがあり22位。一柳も2度にわたりコースアウトを喫し、18位と一歩届かなかった。そんななか、ひとり気を吐いたのが予選をトップで通過した猪瀬だ。1本目に205㎞/hというストレートスピードを記録し、そのまま十分な角度を保って進入。クリップも確実に抑え、派手なタイヤスモークを上げて立ち上がる。見事7位で決勝進出!
古口選手vs末永選手
ベスト16、ダンロップワークスの先陣は古口。対戦相手は地元・九州の末永正雄選手だ。1回戦で100点満点を出しているということもあり、かなりの強敵であることは間違いない。1本目は末永選手が先行。進入で古口のドリフトが大きく戻り、1コーナー立ち上がりから先で追い付くものの採点は4:6。2本目は進入で古口がラインを外し、スピン状態に陥ってしまう。後追いの末永選手は逃げ場を失ってしまい、スポンジバリアに軽くヒット。古口はスピンこそまぬがれたが、クラッシュの原因を作ったという判定が下され、この時点で姿を消すことになった。
猪瀬選手vs田中選手
次は猪瀬とチームオレンジ・田中一弘選手の対戦だ。シード勢をしのぐトップスピードを誇る猪瀬の走りは、追走でどこまで通用するのか。先行は猪瀬。進入から1コーナーまでは互角だったが、2コーナーの途中で突如スピン! 3:7で大きなリードを許し、2本目に突入する。そこで猪瀬が見せた! ストレートエンド、フェイント気味にアウト側から後輪をダートに落としインパクト満点のドリフトを決める。だが、採点は6:4と1本目のミスを取り返すことはできなかった。
野村選手vs黒井選手
ダンロップワークス、最後の砦はランキング2位の野村。対する黒井敦史選手は1回戦を2位でパスしており、ハイスピードコースとの相性もいいドライバーだ。1本目と2本目は互いにわずかのアドバンテージを奪い合い、今大会では初めてのサドンデスに。3本目もまったくの互角だったが、野村が先行する4本目に勝負が動く。1コーナーの角度でポイントを稼ぎ、さらに2コーナーの加速で黒井選手を引き離す。相手にミスはない。しかし、野村の走りはさらに上だったのだ。
野村選手vs田中選手
そしてベスト8。野村は同じダンロップ勢の猪瀬を破った田中選手と対戦する。勝負は田中選手の先行でスタート。1本目、2本目ともイーブンで再び野村のサドンデスが決定する。3本目は田中と同じタイミングで振り出した野村が、4.5:5.5という超僅差のアドバンテージ。4本目は1コーナーの角度で野村が圧倒し、2コーナーでもインに入り込ませない。ベスト16と同じく、ミスのない相手をさらに上のテクニックでねじ伏せ、野村が準決勝に駒を進めることになった!
野村選手vs今村選手
準決勝は第4戦・岡山国際サーキットでも対決した今村選手との対決。過去の対戦では2勝7敗と、相性の悪い相手であることは確かだ。しかし、地元での開催ということも影響しているのか、勢いは野村にあった。1本目は野村が先行し、1コーナーで深く懐に食い込んでいく。さらに2コーナーで今村選手のラインが小さく、食い込みはもっと深くなる。2本目は今村選手が気合いの後追いをみせるが、あまりにも距離が近すぎ振り返しで接触! 弾かれるように今村選手がコースアウトし、採点は7:3。天敵・今村選手を倒した野村が久しぶりとなる決勝戦に進出だ!!
野村選手vs斉藤選手
上位陣で唯一の20代である斉藤選手と、大ベテランの野村。D1の世代交代に繋がるのか、それともベテランが壁の厚さを見せつけるのか、誰もが注目する対戦だ。斉藤選手が先行の1本目は、両者とも2コーナーのラインがやや小さくイーブンの採点。「長引くか」と思われた勝負だが、決着は意外なほど早かった。800psのハイパワーを活かした斉藤選手が、2コーナー進入で野村のインにノーズをねじ込んでくる。そのまま絶妙なクリアランスを保ったまま並走し、立ち上がりでオーバーテイクを許してしまう。完敗だ。1回戦14位からの快進撃もストップ。だが、野村のランキングは変わらず2位のまま。残り2戦、怒濤の巻き返しをみせてくれるだろう!
エースドライバー野村選手
「単走は1コーナーの進入方法に迷いがあって、散々な結果になってしまいました。追走でようやく吹っ切れ、D1の楽しさを見てもらおうと気合いを入れたらいつの間にか決勝戦。もう負けてもイイから楽しく走ろう、と気負いはなかったですね」と野村は明るく話す。「ベスト16以降の後追いでは、先行するクルマと同時に振り出すのがポイントに繋がりましたね。今回からサイドブレーキを油圧式に変更したので、その成果が出たと満足しています」とは阿部監督のコメント。猛暑のなか、最後まで集中力を切らさなかったドライバー。また安定したグリップを発揮し続けた『ディレッツァスポーツZ1スタースペック』も、準優勝の立役者といえるだろう。