D1グランプリ第4戦 6月26日(土)・27日(日) 岡山国際サーキット(岡山県)
今村陽一が3位。首位を堅守
第3戦を終えた時点でポイントの首位は今村陽一選手。野村謙選手も3位の好位置につけている。第4戦を好成績で後半戦へと折り返したところ
2010年のD1グランプリシリーズも後半戦への折り返し地点を迎えた。今シーズンは第2戦~第4戦までが国際サーキットを舞台とした、ハイスピードドリフトアタック。この3連戦の締めくくりは、岡山国際サーキットとなった。
今シーズン、ここまでのダンロップ勢の戦いを振り返ってみると、まず、第1戦・お台場は、今村陽一選手が優勝、日比野哲也選手が準優勝するワンツーフィニッシュで飾った。また、野村謙選手、古口美範選手も好位置につけ、この4選手がシードとなる絶好のシーズンスタートだった。第2戦・オートポリスは、ベスト8にダンロップ勢のこの4選手が残るという、お台場での好調ぶりをそのまま維持しての戦いだった。惜しくも優勝を逃してしまったものの、3位から6位までをダンロップ勢が独占。もちろんシードのまま、巻き返しをはかるべく富士スピードウェイへと乗り込んだ。この第3戦では、みごとに今村選手が優勝し、野村選手が準優勝という、再びダンロップ勢のワンツーフィニッシュで締めくくり、今村選手がポイントランキングの1位に返り咲き、野村選手が3位に浮上した。さらに古口選手が5位、日比野選手が6位と続き、4選手とも上位のシード選手として、舞台を第4戦の岡山国際サーキットへと移したのだった。
岡山国際サーキットでの開催は今年が3年目。初開催の2008年は今村選手が優勝し、日比野選手が獅子奮迅の戦いでターボ勢を翻弄、堂々の3位を獲得した年だった。さらに日比野選手は昨年のここ岡山で、D1グランプリ初優勝を遂げるなど、ダンロップ勢にとって岡山国際サーキットは相性のよさを匂わせる。それだけに期待が高まるというもの。
チーム・ドルーピーの地元、岡山での開催ということもあり、松川和也選手も気合が入る。予選では難しいコンディションをみごとに攻略、ダンロップ勢のなかで予選をトップ通過した
第4戦は、6月26日、27日に開催され、26日に予選がおこなわれた。梅雨時期の開催ということもあるが、九州、四国で大雨になるなど、西日本は大荒れの天気。岡山国際サーキット上空も分厚い雲で覆われ、あいにくの雨となり、予選はウェットコンディションのなかでのスタートとなった。
岡山国際サーキットの審査区間は、1コーナー~2コーナー(通称ウィリアムズコーナー)の立ち上がりまでとなる。下り勾配のホームストレートからハイスピードで1コーナーへドリフトで飛び込むサマは、富士スピードウェイ、オートポリスとはひと味違ったスリリングなもの。1コーナーの手前のストレートからハイスピードでドリフト状態へ持ち込み、1コーナーへドリフトのまま届かせて、振りっかえして左の2コーナーへ進入し、立ち上がっていく。スピードや振り出しポイント、ライン、角度、さらには音など要求される走りに対して各選手たちがどのようなテクニックで高得点を出すべく挑むのであろうか。
進入速度が高くなるコースゆえに、今回の予選のように、いったんウェットコンディションになると、その攻略が難しくなる。ウェットでは、“スーパーロングサイド”のドリフトスタイルとなり、サイドブレーキをきっかけとするロングサイドの進入を、滑りやすい路面と、下り勾配のストレートを利用して、直線でのドリフト状態の距離をさらに伸ばすのだ。
予選にエントリーしたのは、福田浩司選手、箕輪慎治選手、松川和也選手、猪瀬徹選手の4名で、結果として4名ともすべて予選を通過。8名全員が決勝日を挑むことになった。
4名のなかで、一番上位で通過したのが松川選手。予選の2本目で、進入速度、角度とも文句のない走りで99.36点をマークした。これで8番手通過を果たした。
第3戦の富士で久しぶりにベスト16の追走トーナメントへ進出した箕輪選手も、安定感のある走りで2本ともうまくまとめて15番手で通過した。
富士を欠場したものの、猪瀬選手は速いドリフトで魅せるスタイル。勢いある進入はさすがで、2本目こそ失敗してしまったものの、1本目にほぼミスなしの安定感ある走りできめて、10番手で本戦へと駒を進めた。
福田選手は、姿勢をやや崩す場面も見られたが、2本とも大きなミスをせずにドリフトを成功させて、16番手をキープ。
エントリーしたダンロップ勢8名全員が、優勝を賭けて明日の1回戦・単走から走る。
第3戦・富士を欠場した猪瀬徹選手だったが、第4戦・岡山では速さで魅了するドリフトを披露した。1回戦・単走に出場したものの惜しくも追走トーナメント進出は叶わなかった
翌27日の決勝日も雨が予想されていたが、幸運にも朝早くに雨は上がっていた。雲の合間からは青空が見え、サーキットには薄日も差し込んだ。気温が高く、ジトジトして蒸し暑い。コースコンディションはウェットから徐々にドライへと変わり、練習走行では白煙も上がりはじめ、D1グランプリならではの迫力ある走りが見られた。
ダンロップ勢は8名がこの決勝日を迎えた。
1回戦・単走がスタート。まず、予選を通過した4選手だが、前日までのウェットからドライへとコンディションが変わったためか、本来の走りを発揮できず、なんと全員が1回戦敗退を喫してしまった。
猪瀬選手は、さすがに進入速度の高い走りであったものの、1本目でダートにつかまってしまい、2本目ではラインが違うとの指摘もあり、得点が伸びず、20位で第4戦を終えた。
地元開催となったチーム・ドルーピーの松川選手は1本目がスピンによる手痛い失敗。あとがない2本目では得点が伸びず、26位に甘んじてしまった。
箕輪選手もあと一歩及ばずの22位、福田選手のマシンにはギヤのトラブルもあり、本来の実力を発揮できないままでの敗退であった。
ここまで好調をキープし、岡山へ挑んだ日比野哲也選手であったが、なんと、17番手で惜しくも1回戦敗退となってしまった。次戦がおこなわれるエビスサーキットは、日比野選手の名を知らしめた場所でもある。熱い走りを見せてくれるだろう
1回戦の最終組で登場したシードの4選手。昨年の岡山では2戦とも(第3、第4戦が連日開催されたデュアルファイナルズ)予選不通過と、不調だった古口選手がまず魅せた。199km/h台の高い車速から進入した1本目でキレイにまとめて99.4点。この時点で1回戦通過の得点となった。勢いをもらったその2本目で、さらに高い車速と、角度、ラインで攻める。99.66点をマークし、結果的に6番手で追走トーナメント出場を決めた。
富士ではマシンの不調があったものの、みごとに準優勝した野村選手は、前日の練習走行で好調な走りを見せていた。1回戦は1本目からきっちりとミスなしで決めて99.4点マーク。野村選手もこの時点で1回戦通過が確定。さらに高得点を狙った2本目は1コーナーで惜しくもスピン。10番手で追走トーナメントへ駒を進めた。
いっぽう、1回戦で涙を呑んだのが、日比野選手だった。1本目の進入でドリフトを戻してしまうミスをおかす。2本目でようやくパワーをフルに使った日比野選手らしいドリフトを決めて、99.06点。ギリギリの16番手につけていたが、17位で岡山を去る結果となってしまった。
また、あわや1回戦敗退の危機に見舞われたのが、今村選手だった。その1本目は、スピード、角度ともに今村選手らしくミスのないキレイなドリフトを見せていた。しかし、審査区間をあと少しで終える、2コーナーでアンダーステアになる手痛いミスをおかしてしまう。この減点が響き、1本目はなんとベスト16へ残れない98.63点の得点となってしまった。1回戦は下位から順に走り、ゼッケン1の今村選手が最後の選手だった。まさにあとがない2本目、しかし、そこはさすがにディフェンディングチャンピオンだ。進入速度、角度、ラインともに最後までノーミスで走り終えて99.30点を得る。結果、14番手で辛うじて追走トーナメントへ出場を決めた。
川畑真人選手との180SX対決。過去に何度か対戦が組まれているが、今回は川畑選手に軍配が上がった
午後からおこなわれた追走トーナメントも、ドライコンディションのままスタートした。観客席には大勢のファンがつめかけ、熱い声援をおくっていた。
ダンロップ勢の追走トーナメント、最初は今村選手VS今村隆弘選手(RX-7)。今村選手の後追いで始まったこのカードは、先行する今村(隆)選手に対して同時に振り出してドリフト状態をつくり、インに食い込んだ今村選手が手堅くアドバンテージをつくる。先行ではミスがなく、また今村(隆)選手の接触もあって、勝負を決めた。追走トーナメントへ進出すると、勝率をグンと高める男、今村選手の快進撃が今回も始まった。
古口選手は、同じ180SXの川畑真人選手と対戦した。1回戦・単走では199km/h台という高い進入速度で圧倒していた古口選手が先行、逃げたいところだったが、川畑選手に同時フリを決められる。しかし、1コーナーの立ち上がりのところで川畑選手はダートへはみ出し、勝負の行方は2本目へ。後追いでスタートした古口選手は負けじとばかりに同時フリを決める。しかし、角度をつけすぎてしまい失速。さらにはドリフトを戻してしまうミスが出て、180SXの勝負は川畑選手に軍配があがった。
「川畑選手は角度をつけるスタイルなので、ここでポイントを取られないように角度をつけましたが、コントロールの面でミスが出てしまいました。ここ2戦、ベスト16で敗退しているので、エビスではもっと気合を入れて挑みます」(古口選手)
ベスト16の戦いで時田雅義選手と対戦した野村謙選手。勝敗のつかない好ゲームとなり、サドンデスが2度もおこなわれ、大いに盛り上がった
ダンロップのエース、野村選手は、クラウンの時田雅義選手との4ドア対決となった。野村選手の後追いで始まった1本目、同時フリを決めた野村選手はしっかりと距離を詰めていき、2コーナーではインに入る気迫のドリフトを見せ、アドバンテージを得る。しかし、単走から好調だった時田選手も、入れ替わった2本目で先行の野村選手に対して同時フリを決め、食らいついて行く。決着が着かず、サドンデスとなった。しかし、この勝負も互いに相手にピタリと食らいつくよい走りを見せ、甲乙つけがたい。再びサドンデスとなった。両者ともタイヤを交換して挑んだ3回目。ここでついに勝負が動いた。後追いの野村選手だったが、1コーナーの進入でインに寄ったラインをつくってしまい、さらには2コーナーでアウト側へ流され、時田選手にアドバンテージがついた。入れ替わった先行で、野村選手がよい走りを見せるも、アドバンテージを覆すまでには至らず。ベスト16で敗退。9位で第4戦・岡山を終えた。
「昨日までずっと雨で練習していました。調子がよかったとですよ。でも、日ごろの行ないが良いのか悪いのか!? 決勝でドライコンディションに変わり、ちょっとリズムを掴めないまま、単走に挑みました。1本目で、まずまずの得点だったので、2本目は110点狙いたいなぁというノリでいったんですが、失敗しました。追走になって、ようやく身体がドライコンディションに慣れてきたとですよ。でも、(最後の後追いで)距離が近すぎてブレーキを踏んでしまい、車速が低くなってインへ寄っていったとです。ミスが出てしまいましたねぇ。次のエビスでは、今回のぶんを取り返すべく自信をもって挑むとです。皆さん、お気づきかも知れませんが、僕は単走のときから走り方を変え、追走も楽しく、お客さんを盛り上げる走りを心がけておるとですよ。もしかすると、もしかするかも知れませんので、ぜひ会場へ応援しに来てください。待っとるとです!!」(野村選手)
ベスト4で時田選手に敗れるもシリーズポイントを大きく伸ばした今村陽一選手。エビスサーキットの連戦で勝負に出るか!?
ベスト16で“今村対決”を征した今村選手は、古口選手を破ってベスト8へ進出した川畑選手との対戦カード。今度は“チャンピオン対決”だ。その1本目、先行の今村選手に対して、後追いの川畑選手がしっかりと食らいついていく。互角の戦いであったが、わずかに今村選手にアドバンテージがついた。入れ替わった2本目。後追いの今村選手は1コーナーを先フリで進入。車間ギリギリで合わせる走りだ。しかし、2コーナーの進入のところで今村選手の接触があった。判定の結果、後追いでの先フリとインを詰めた今村選手の走りに対してアドバンテージが与えられ、今村選手のベスト4進出が決まった。
さあ、優勝も見えてきたベスト4による準決勝。対戦相手は野村選手を下した時田選手。ここまで絶好調で上がってきた強豪だ。この対戦は今村選手の先行で始まった。1コーナーから逃げたい今村選手だったが、時田選手が同時フリでピタリと食らいつき、最後まで離れない。入れ替わった2本目、今村選手も1コーナー進入で同時フリを決める。が、その直後のクリップ付近で今村選手がドリフトを戻すという手痛い状況をつくってしまった。ここで勝負がついた。結果、時田選手がこの第4戦を征している。
「1コーナーでシフトミスをしてしまいました。これが大きく響きましたね。次へ向けて気をもっと引き締めていきたいです。でも、後半戦へ向けて折り返す第4戦を3位で終えることができたのは、ポイント的にも大きな成果だと思っています。エビスは土日の連戦ですから、土曜日に勝負をかけて、よい流れで日曜日へつなげたいですね」(今村選手)
今シーズンもいよいよ後半戦へと突入する。次はエビスサーキットで第5、第6戦が連日でおこなわれるため、過酷な戦いが予想される。頑張れ、ダンロップ!!
岡山を終えた結果、ポイントランキングは今村選手が大きくリード。野村選手が3位をキープしており、シリーズ争いから目が離せない。
次はエビスサーキット(福島)で、第5、第6戦がおこなわれる。今シーズン唯一のデュアルファイナルズだ。ダンロップ勢の奮闘を期待したい。
■藤岡和広監督のコメント
「マシンは、速さもついてきたので、(パワー勝負になっても)いけるところまでいけるようになったという感じですね。とにかく、壊れないように仕上げることを心がけています。次のエビスは連戦ですからとても難しいんですが、今回のように着実にポイントを積み重ねていけば、よい方向へいくんじゃないかと思います」
■阿部成人監督のコメント
「今回はおかげ様で、事前の準備もバッチリ。クルマの仕上がりは100点でした!!(笑) 決勝がドライになり、ちょっとビックリしましたが、タイヤのエア圧調整ぐらいで済んでいます。ドライ、ウェットのどちらでもいけるようにクルマが仕上がっていますから。結局、野村さんが負けてしまいましたが、時田選手とは気持ちよく走れたんじゃないですかね。次はエビスサーキットです。今のままではタービンがちょっと大きいので、コースに合わせて仕上げて挑みますよ」