D1グランプリ第2戦 6月5日(日) お台場特設コース(東京都)
追走を準優勝した今村陽一が総合ランキングトップに躍り出た!!
D1グランプリのストリートリーガルからステップアップした河上善計選手。予選不通過も渾身の走りで審査員に注目される
「TOKYO DRIFT IN ODAIBA」の2日目も好天に恵まれ、夏の日差しのなかで開催された。第1戦にも増して会場のゲートオープンを前に続々と観客が訪れ、長蛇の列をつくっていた。
D1グランプリ第2戦としてカウントされる2日目の予選は、前日の第1戦の追走トーナメント決勝後に行なわれ、25名がエントリーした。ダンロップ勢は箕輪慎治選手、河上善計選手、北芝倫之選手(シルビア)、村田郁雄選手(スープラ)の4名が単走ファイナルを賭けて挑んだが、残念ながら4名とも今シーズンのお台場を後にした。4名のうち、予選で一番高い得点は、箕輪選手の98.53点。スピード感のある進入速度と、振り出してからの角度、アウトクリップいっぱいに寄せるラインも「うまく持っていった」と評される内容だった。ボーダーラインを超えるかと思われたが、残念ながら得点を伸ばせず、16番手とあと一歩及ばず。4月に右手を負傷し、完治していない状態での参戦だったゆえに満足な走りにならなかった模様。ただ、次戦の岡山以降の参戦も可能になったという明るいニュースもあり。善戦に期待したい。
河上選手は、1本目で全体的な迫力とスピード感が足りないと指摘され、本人曰く「ショボい走りをするよりも、クラッシュ覚悟の走りを見せたい」で2本目を挑み、今度は進入から車速が高く、審査員席まで飛んでくるような理想的なラインとなった。しかし、2コーナーでアウト側にはらんでスポンジバリアへ接触、残念ながら1本目より低い得点だった。予選結果は20位。ただ、審査員席で注目される走りであったのは事実であり、お台場の経験をバネにステップアップを待ちたい。なお、北芝選手は21位、村田選手は24位の結果だった。
午前の練習走行で前日に続いて1コーナーでクラッシュ。足まわりにダメージを受けて修復作業を行なったものの、エンジン系のトラブルも重なってしまった日比野哲也選手
第2戦の単走ファイナルは、第1戦と同様にシード選手を含む総合ランキング16位までの16名と予選通過者12名の28名で競われる。A、B、シードの3組に分かれて単走2本による高得点を競った。
ダンロップ勢は、シードの野村謙選手、今村陽一選手、古口美範選手、日比野哲也選手と、総合ランキング12位の松川和也選手の5名が出場した。
まず、松川選手がAグループで出場。その1本目は振り出しから1コーナーへの進入まではよかったものの、ドリフトアングルがつきすぎたのか内へ巻くラインとなり、2コーナーでやや失速してしまう。95.33点と得点が伸びない。2本目はスピード、角度、ラインともにうまくまとめたセオリーどおりの内容で98.3点。単走ファイナルは22位の結果だった。
シードで最初に登場したのが日比野選手。しかし、その1本目をなんとパスしてしまう事態となる。この日、朝の練習走行で再び1コーナーのスポンジバリアでクラッシュし、足まわりにダメージを受け、急ピッチで修復作業が行なわれていたが、今度は出走を前にターボ系のトラブルがあり、大事をとって単走1本に絞ることとなった模様。2本目で無事に走行できたもののパワー感がなく、全体的に車速を乗せられず、いつもの日比野選手らしいアグレッシブさがない。27位と大きく下げ、単走ファイナルをノーポイントで終える手痛い結果となった。
マシントラブルから生還した野村選手。第2戦の単走は11位の結果だった
前日に駆動系のトラブルに見舞われた野村選手のスカイラインは無事に修復作業を完了し、朝の練習走行から好調さを伺わせる走り。単走ファイナルの1本目は進入速度、振り出しからの角度、審査席前でアウト側をギリギリ通るラインで、うまくまとめた。ただ、1コーナーでのラインのズレが指摘されて98.67点と得点は思わしくない。しかし、そこはベテランの野村選手。2本目は車速をさらに乗せて振り出し、角度、ラインもみごとに決めた。99点と伸ばした結果、11位で第2戦の単走を終えた。
バツグンの安定感とキレのあるドリフトは変わらず。この日も好調な今村陽一選手
第1戦で単走10位となり、本来の実力をいま一歩出し切れなかった古口選手。単走の1本目は、進入からキッチリと決めて99.07点をマークした。さらに得点を伸ばしたいところであったが、2本目はやや流されたラインとの指摘も入って99点。単走9位の結果だった。
前日の単走こそ4位で優勝を他車に譲ったものの、追走で今季初優勝、総合優勝も勝ち取って波に乗る今村選手は、単走1本目からミスのない、美しいと評される走りで99.23点。2本目は迫力不足の指摘があったものの99.1点の平均得点で、5位で単走ファイナルを終えた。
岩井照宜選手との対戦で同ポイント。ベスト24はサドンデスを行なわないルールのため再審議という珍しい判定で、惜しくも敗退した松川和也選手
追走ステージが始まる頃、お台場上空は曇り空に変わり、気温も下がってしのぎやすくなった。ダンロップ勢はシードの4選手と松川選手の5名で、前日と同じ顔ぶれ。さらなるポジションアップを目指して挑んだ。
まず、ベスト24の追走1stステージに登場したのが松川選手。第1戦でベスト16止まりとなってだけに、勝ち上がって上を目指したいところだったが、初の対戦となった岩井照宜選手(スターレット)に惜しくも敗れた。後追いから始まった松川選手の追走は、軽量な岩井選手のマシンに対して重量級のSC430ということもあってか2コーナーに入っても追いつけない。アドバンテージを岩井選手に取られてしまった。しかし先行では、「やられたらやり返す」の走りで、今度は松川選手が2コーナーから先で引き離しにかかる。この結果、松川選手がアドバンテージを取り戻す格好となりジャッジは同ポイント。追走1stステージはサドンデスを行なわない規定となっており、再審議の結果、岩井選手に軍配が上がった。甲乙つけがたい接戦だったゆえに後味の悪さが残った。
「岩井選手とは初対戦ですが、地元は同じ広島なんですよ。今回はやられましたね。総合で15位に辛うじて止まっていますが、朝の単走ファイナルの1本目で失敗したのが痛かったです。2本目は確実にポイントを取れる走りになってしまいましたから。次は岡山で、家から一番近くのコースなので楽しみです」(松川選手)
日比野哲也選手は3S-GTEターボ、田所義文選手はロータリーターボで、同じハチロクでありながら搭載エンジンが異なり、注目の対戦となったが、日比野選手がデファレンシャルブローで競技中止という残念な結果となった。第2戦は単走、追走ともノーポイント。次戦の岡山ではその雪辱を果たしてほしい
松川選手が追走1stステージで敗退した結果、シード選手とベスト24を勝ち上がってきた8名が対戦する追走2ndステージ(ベスト16)は、シードの4選手だけとなった。気がかりなのは日比野選手のマシン。金曜日の練習走行でクラッシュし、足まわりにダメージを受けたため修復作業をしたものの、第1戦、第2戦の練習走行でも1コーナーのスポンジバリアへヒットさせており、不調そのものだ。対戦相手は田所義文選手で、同じハチロク対決の好カード。先行した日比野選手の1本目、ようやく本来の日比野選手らしい角度をつけた姿勢でスピード感に優るドリフトとなり、2コーナー手前で田所選手がアウトへはらんでスポンジバリアへ接触するミスを誘うほどだった。大きなアドバンテージを得る。しかし、入れ替わった後追いの2本目、1コーナーへの進入から日比野選手はドリフト態勢をつくれず、そのまま田所選手の後を追うだけ。なんと、デファレンシャルが壊れるマシントラブルが起きてしまったのだ。田所選手の勝利が決まった。単走でターボ系にトラブルが出てノーポイントで終わり、有利にゲーム運びをしていた追走でデファレンシャルブローとなり、逆転されてここでもノーポイントで終わる屈辱を日比野選手は味わった。「金曜日の練習走行でクラッシュして、フレームまで損傷してしまい、ごまかし、ごまかしで走っていたので、どこかに負担がかかっていたんでしょうね。ターボのトラブルもタービンに問題を抱えていました。元々駆動系にも課題はあったのですが、ここへ来て壊れてしまったという感じですね。今回、シード落ちにはなってしまいましたが、岡山では取りこぼしなく走ってシードに返り咲きたいです」(日比野選手)
■松岡歩代表(DROO-P)のコメント
「日比野はデフブローという結果に終わりましたが、噛み合わないときはこんなものかなぁと思います。朝の練習走行でクラッシュしていなければ、あと2、3周したところでデフが壊れていたでしょうから、こんなところでそれが起きるのは、やはり噛み合っていなかったんでしょうね。でもそれほど大きなダメージでもなく、岡山までには間に合います。マシンの膿を出し切ればよくなると思います。松川は、だいぶよくなってきました。自分自身をコントロールして挑んでいますし。ま、まだまだ崖っぷちですけどね(笑)」
スピード感、さらには角度があるドリフトを見せて廣田友和選手との対戦に勝った古口選手は、今村陽一選手との同門対決に敗れ、ベスト8で第2戦を終えた。「毎戦、課題があり反省しているんですが、それをしないように戦うことが今後の課題ですかねぇ(笑)」と古口選手
前日の第1戦から単走で9位となりポジションをひとつアップした古口選手。追走ではまず廣田友和選手(GS350)と対戦した。先行でスタートした古口選手は進入からミスなしで、単走時のような走りを披露。対して廣田選手が2コーナー手前でスピン状態となって、アドバンテージを得た。入れ替わった後追いでは2コーナーからきっちりインに入って接近戦へ持ち込んだ。みごとにベスト8へ進出。
ベスト8は、今村選手との同門対決。同門とはいえ優勝して波に乗る今村選手に対して一矢を報いたいところであったが、後追いの振り出しで引っかかるような挙動となり、古口選手は振り出し遅れとなる手痛いミスをおかす。2コーナーで何とかインに入ったものの、アドバンテージは今村選手。先行では1コーナーから今村選手に接近戦へと持ち込まれてしまい、ここで決着がついた。結果、追走は6位となり、総合ランキングは5位で岡山を迎える。
「陽一との後追いは先振り(後追いから先行車より早く振り出してドリフト態勢をつくる)を意識していたんですが、ちょうどそのあたりに路面にギャップがあって、フロント荷重が抜けたような感じになっちゃったんです。昨日も何回かあって、ギャップのことを意識しながら走っていたんですけどね。今回はギリギリ感がないというか、攻めた感じが足りなかったと思います。今回で総合5位に落ちました。やっぱりアップしたいし、悔しいですね。次の岡山ではまとめてふたつぐらいアップしますよ!!」(古口選手)
ベスト8でたかやまけんじ選手と対戦した野村謙選手。惜しくも敗退した。「守りの走りだった」と走行後にコメント。悔しさをにじませていた
単走ファイナルで11位に甘んじたものの、マシンの修復を終えて無事に第2戦の追走2ndステージを迎えたダンロップのエース、野村選手。初戦の対戦相手は松川選手を下して勝ち上がってきた岩井選手だった。軽さを武器に戦う岩井選手に対して、追走百戦錬磨の野村選手の戦法やいかに。先行が野村選手の1本目、ベテランらしくミスなしで3コーナーまでクリアしていく。対して岩井選手に2コーナー手前でドリフトを戻すミスがあり、アドバンテージを得た。後追いの2本目では、1コーナー手前から岩井選手を射程圏内に収め、ロックオン。2コーナーからドリフトで合わせ、3コーナーではきっちりインに入り込んで勝利した。
ベスト8は、ひらがなになった「たかやまけんじ」選手。昨年は活躍が目覚ましく、今やRX-7の急先鋒といえ、今回のお台場でも調子のよさを見せている。昨年はたかやま選手との対戦は1勝1敗。両者ともさすがに相手に対してドリフトで合わせていくミスのない走りで、この勝負はサドンデスで決めることになった。先行の野村選手は同様にミスのない走り。が、高山選手が1コーナーからドリフトで合わせようと接近戦へと持ち込む。これでたかやま選手にアドバンテージを与えてしまった。入れ替わった後追いでは、野村選手も負けていない。1コーナーから合わせていき、2コーナーから先もしっかりインへ食い込む。しかし、ジャッジの結果、0.5ポイントという僅差で高山選手の勝利が決まった。これで野村選手は総合7位のランキング。シードで迎える岡山での巻き返しに期待したい。
「マシンのトラブルがあり、もう壊したくなか! ということで、ちょっと守りの走りになってしまったとです。これが最大の失敗だったとですよ。もっとやりたかったなぁ。岡山はそんなによい成績はないんですが、ちょっと攻撃的な走りをしてみようかなと思っています。皆さん、ぜひ応援しに来てくんしゃい!!」(野村選手)
■阿部成人監督(DFellow)のコメント
「ちょっと単走の2本はよくなかったので、それが残念です。マシンの状態も悪くなかったので。追走は、今日の高山選手は速かったです。でも、野村さんもいい走りだったから、何とも言えず、悔しいですね。岡山で取り返したいです。がんばります!!」
2回にわたるサドンデスで攻防戦を行なった結果、今回は川畑真人選手に一歩譲った今村陽一選手。このカードは奪われたら奪い返すという激戦で、今シーズンのお台場ファイナルに相応しい名勝負となった
前日より順位をひとつ落としたものの、単走を5位で終え、着実にポイントを獲得している今村選手。この日も変わることなく調子のよさを維持していた。
追走2ndステージでの初戦の相手は上野高広選手(BMW)。先行でスタートした今村選手は、ミスのないドリフトで、2コーナーから先にかけて上野選手を引き離す。0.5ポイントのアドバンテージを得た。後追いでは2コーナーからピタリと接近戦へ持ち込み、これで勝利してベスト8へ進んだ。
ベスト8で古口選手との同門対決を征し、準決勝ではたかやま選手とのカードとなった。ちなみに今回は、松川選手を下した岩井選手を野村選手がやっつけ、野村選手を下したたかやま選手を今村選手が手合せする組み合わせとなった。この勝負を征したのは今村選手。勢いがあるたかやま選手に対して、先行でスタートした今村選手は、ミスなし走行するも1コーナーからビタビタに合わされてしまいビハインド。後追いで今度は今村選手は1コーナーから合わせる“ビタビタの応酬”となり、サドンデスとなった。こうなると勝負強さを見せるのが今村選手だ。先行の1本目、同様にミスのない走りを見せる。ここで後追いの高山選手がミスをおかし、2コーナーでスピンしてしまい、大きなアドバンテージを得る。入れ替わっての後追いでは2コーナーからきっちりとインへ入り、勝利した。
前日のコメントが現実となり、ついに決勝戦を迎えた今村選手。対戦相手は180SXの名手、川畑真人選手だ。この日、単走で優勝し、尻上がりに調子を上げてきている。2007年のシリーズチャンピオンであり、かたやディフェンディングチャンピオン。お台場を締めくくるにふさわしいカードとなった。
先行が川畑選手、後追いが今村選手で戦いが繰り広げられたが、川畑選手にアドバンテージをとられるも、先行で取り返すという攻防戦となり、サドンデスを2回、合計6回を走って勝負が決着した。6本ともミスのない、勝負強さと粘りのある今村選手であったが、最後の勝負でビタビタに合わせるも先行する川畑選手の角度に対してビハインドとなり、後追いでビタビタに合わせられたことが勝敗を分ける結果となったようだ。
「相手が川畑選手で、あそこまで追走でインへ入って合わせてくる選手だから、簡単にはいかないだろうとは思っていました。がまん比べか、どれだけ距離を詰められるかという勝負になって、結局は僕のほうが最後の詰めが甘かったという感じです。でも、決勝まで行けたので満足していますし、岡山をゼッケン1で迎えられますから嬉しいです」(今村選手)
■藤岡和広監督(BOSS)のコメント
「ドライバー、マシンも調子がよかったんですが、今回は川畑選手のほうが調子がよかったですねぇ。とりあえず頑張ってもらって、準優勝になったので嬉しいです。この2日間、追走を合わせてこのクルマが一番走っています。マシントラブルで順位を落とすと寂しいですから、極力そんなことがないように、これからもしっかり仕上げていきたいです」