D1グランプリ第2戦 4月24日(土)・25日(日) オートポリス(大分県)
好調をキープしてダンロップ勢が躍進!!
開幕戦のお台場を優勝した今村陽一選手と、準優勝の日比野哲也選手。ハチロクでどこまで日比野選手が駒を進めるかにも注目!!
昨シーズンと同じく、オートポリスのD1グランプリは春の開催となった。前大会は予選で悪天候に見舞われ、ウェットコンディションに翻弄されてしまう選手が続出し、予選を免除されるシード選手も練習をまともに出来ないまま、翌日の決勝日を迎えるという事態であったが、今年は予選から好天に恵まれ、絶好のコンディションのなかでおこなわれた。
第1戦のお台場で優勝した今村陽一選手は、昨シーズンのオートポリスで優勝、当然連覇を狙っている。ポイントランキング7位でスタートした野村謙選手は、そのときの決勝で今村選手に惜敗こそしたものの、準優勝でオートポリスを終えている。2006年はこの地で優勝もしており相性のよいコースのひとつ。地元九州開催だけに、その奮闘ぶりに期待。勝って富士スピードウェイへ向けて弾みをつけたいところ。
また、昨シーズンのオートポリスでは目覚ましい活躍を見せた日比野哲也選手、ハイスピードコースが得意な古口美範選手もしぶとく上位に駒を進めるはずだ。
オートポリスとは相性がよい猪瀬徹選手が予選を10番手で通過した
24日(土)の予選参加者は32名。このうち、ダンロップは、猪瀬徹選手、福田浩司選手、松川和也選手、箕輪慎治選手の4選手で、箕輪選手が急きょ欠場となり、3名が単走に挑んだ。
オートポリスは、ホームストレートから最終コーナーへ向けて逆走するコース設定が特徴で、200km/hをオーバーするほどの高い進入速度を要求されるステージだ。ストレートの途中からドリフト態勢をつくって進入、ゆるく曲がった右の1コーナーを通過した直後に振りっかえし、さらに大きな左の2コーナーをドリフトのままでクリアする。速度が高いゆえに、高度なドライビングテクニックはもちろん、「そびえ立つ壁へ向かって飛び込んでいく感覚になる」という、恐怖心をはねのける度胸も必要になる。低い速度域では加点のための重要なポイントのひとつである迫力にも欠けてしまう。選手たちはハイスピードのなかで、シビアなマシンコントロールをしなければならない。予選ではさすがにこのハイスピードステージを攻めあぐねる選手も多く、高い点数をなかなか得られない。
しかし、そんな中で見せてくれたのが猪瀬選手だった。210km/h以上という進入速度で、スピード感に勝る迫力たっぷりのドリフトを披露。10番手で予選を通過。また、今シーズンからダンロップ勢に加わった福田選手は、マシンも今年からシルビア(S15型)となり、オートポリスでは相性のよいところを見せてドリフトをキレイにまとめて12位通過。SC430で戦う松川選手が続く13番手で予選を通過した。この結果、シード選手を含めて7名が翌日におこなわれる決勝日を戦うこととなった。
今シーズンからダンロップ勢に加わった福田浩司選手。ベテランらしい安定感のあるドリフトが光る
25日(日)の決勝日は、予選日以上に晴れ渡り、雲ひとつない晴天に恵まれた。やや風がひんやりとしていたものの、気温自体は高く感じられ、絶好のイベント日和。多くのドリフトファンがオートポリスにやってきた。
ダンロップ勢は7選手とも予定通り練習走行からスタート。野村選手はマシンのエンジンをリフレッシュ、古口選手はニューエンジンを投入している。練習走行では調子のよいところを見せていた。
その一方で、日比野選手は、予選と同時におこなわれた前日のシード選手の練習時にエンジントラブルに見舞われ、エンジンを2度も交換して決勝日を迎えていた。進入速度が200km/hを超えるコースゆえに、いくら搭載したNAの4AGエンジンがフルチューンでも、並みいるハイパワーターボ勢の前では非力さを否めず、互角に勝負すること自体がとても難しい。毎戦、限界ギリギリのところを使っているだけに極度の負荷が加わっていたのであろう。決勝日に間に合わせるべく、夜を徹しての作業となった模様だ。
また、開会式となったところで、今村選手にも不安情報が。いつものように選手紹介としてひな壇に並べられるマシンのなかに、今村選手のシルビアがない。なんと、エンジンに不調が判明し、急ピッチで修復作業をおこなっていた模様。
そんななかで1回戦・単走は始まった。
3グループに分かれて単走を2回走り、得点のよいほうを抽出し、各選手の得点を比較して、上位16名が追走トーナメントへ出場できる。
まず、1組目に登場したのが、予選を勝ち上がってきた松川選手、福田選手、猪瀬選手の3名。
松川選手は1本目でキレイな慣性ドリフトで進入、クリップを取り振りっかえして2コーナーでアウトいっぱいまで使うラインをやや大回りしすぎてリヤをダートへはみ出す。コースアウトと思われたが、何とか姿勢を維持してクリア。99.06点をマークしたものの、2本目はコースアウトで失敗。結果22位となり、お台場に続き2戦連続での追走トーナメント出場は叶わなかった。しかし、今年に入って急成長著しい若手だけに、今後に期待したい。
福田選手は、ロングサイドで進入。角度、ラインともにキレイにまとめた。2本目もうまくまとめ、1本目の99.33点で辛うじて16位にとどまり、追走トーナメントへの出場を決めた。
今シーズンはオートポリスからスタートを切った猪瀬選手。ハイスピードが得意という猪瀬選手らしく、1本目からスピンをしても不思議ではないほどの角度となる、リヤからの進入を見せ、2コーナーでやや外へ流されるラインとなったものの99.26点。さらに2本目は同様のドリフトで、いっそうスピード感に溢れ、1本目を上回る99.4点で13位通過。久々の走りながら追走トーナメント出場を決めた。
シード選手の4名はいずれも追走トーナメントへ進出。とくにマシンに不調を抱えた今村選手はフタを開けてみればディフェンディングチャンピオンらしい安定感と正確なドリフトを披露し、単走のトップ通過を果たした。
追走トーナメントの初戦は今村選手VS福田選手の同門対決に。今村選手が駒を進めた
追走トーナメントは、1回戦1位通過者対16位通過者という、上位と下位が当たる組み合わせとなる。ダンロップ勢は6名が進出したわけだが、初戦で1位の今村選手と16位の福田選手の同門対決というカードとなり、さらに順当に勝ち進むとベスト8の段階でダンロップの同門対決がふたつある組み合わせとなってしまった。
追走トーナメントの1組目は今村選手VS福田選手。同じS15型シルビアでの戦いだ。今村先行で始まった1本目。今村選手の振り出した直後に福田選手も振りっかえす。2コーナーで今村選手にキッチリと車間を詰めて合わせる福田選手であったが、審査席前のあたりで今村選手の後ろへ入ってしまうというミスをおかす。入れ替わって福田選手が先行の2本目は、今村選手が得意とする後追いのワザを披露。2コーナーでインに入り、ギリギリの車間できっちりと合わせる。結果、今村選手がベスト8進出を決めた。
「ドリフトを楽しむ」スタイルへと気持ちを切り替えた野村選手。しかし、いつもどおりの豪快な走りを見せてくれた。高山健司選手を破ってベスト8へ進出
野村選手の対戦相手は高山健司選手。高山選手の先行で始まった1本目、野村選手は先振り(先行の選手より先にテールを振り出す)で高山選手に合わせていく。進入から接触スレスレというほどの超接近ドリフトで合わせた野村選手が大きなアドバンテージを得る。野村選手が先行した2本目、こんどは高山選手が2コーナーで野村選手のインに食い込む。しかし、1本目のアドバンテージを覆されることなく、野村選手のベスト8進出が決まった。
また、予選での高い進入速度が際立っていた猪瀬選手は、オートポリスで優勝経験のある斎藤太吾選手が対戦相手となった。互いにスピードを持ち味としており、ハイスピードドリフトバトルを予感させる。その1本目は猪瀬選手が後追い。さすがに両者ともスピード感に溢れる。1コーナーの進入から振りっかえし、ここで斎藤選手にピタリと合わせる猪瀬選手。しかし、そこから先でオーバーラン。大きなアドバンテージを斎藤選手に与えてしまう。続いて先行の猪瀬選手は斎藤選手に対してインに入らせない果敢なドリフトを見せる。しかし、万事休す。1本目のミスが響いて、ここで敗退となった。
NAのハチロクでハイパワーターボ勢に挑む日比野選手。追走トーナメントでは今回もそんなアグレッシブな走りを披露
練習日に2度のエンジントラブルに見舞われていた日比野選手。決勝日の朝になってようやくエンジンが直った。単走こそ3位通過したものの、耐久性を重視したデチューンともいえる仕様で、追走ではハイパワーなターボ勢と対峙しなければならない。対戦相手は佐久間達也選手。NA・ハチロクVSターボ・シルビアとなったこのカードは、パワーで勝るターボに対して、日比野選手がどのように挑むのかという点に当然注目が集まる。先行でスタートした日比野選手は、単走で見せた深い角度でドリフト態勢をつくって1コーナーへ進入していく。ハイスピードのなかで、2コーナーにかけての振りっかえしはD1マシンでトップと呼べる速さだ。右から左へと素早く身をひるがえし、ターボにそん色のないスピードを見せ、佐久間選手に対してインをとらせない。これで日比野選手がアドバンテージを得る。後追いでは佐久間選手のインに入らなかった日比野選手であったが、迫力はそのままにノーミスで走り終え、日比野選手がベスト8へ進出した。
熊久保信重選手との追走で超接近ドリフトを見せた古口選手。ハイスピードでのバツグンなコントロールが光っていた
シード選手として第2戦に挑んだ古口選手。対戦相手は熊久保信重選手だ。ベテラン同士の戦いを征したのは古口選手だった。先行の古口選手はスピードにモノをいわせるドリフトで、追走名人といわれる熊久保選手に対してインに入り込まれる隙を与えない。0.5ではあったが、わずかにアドバンテージを得た。2本目の後追いでは、熊久保選手に対して同時振りでドリフト態勢をつくり、さらに1コーナーの進入にかけてビタビタに接近する攻めのドリフト。後追いでも古口選手の得点が高く、圧倒するかたちでベスト8進出を決めた。
サドンデスを2回戦い、合計6回の追走バトルで決着がついた野村選手VS今村選手
ベスト8に進出した8名のうち、ダンロップが4名という素晴らしい展開となった。しかし、予想できたカードとはいえ、ここでは今村選手VS野村選手、日比野選手VS古口選手というふたつの同門対決でベスト4を目指すことになってしまった。
まずは、今村選手VS野村選手のカード。昨年は決勝戦がこのカードであり、野村選手としては雪辱を果たしたいところ。いっぽうの今村選手は野村選手に勝って優勝を目指したい。そんな一歩も引かない両者の走りは、点を取ったら取り返すという白熱戦となった。
先行の今村選手で始まった1本目。後追いの野村選手は同時振りで今村選手との距離を縮める。しかし、インに入りきれない。今村選手は振り出し、角度ともに評価が野村選手をうわまわり、0.5のアドバンテージをとった。こんどは野村選手が先行。ここでは今村選手が同時振りで進入し、きっちり合わせていく。しかし2本目は五分となり、少ない点差で勝負がつかずにサドンデスとなった。サドンデスの1本目を野村選手はタイヤを交換して挑んだ。後追いの野村選手は接近した状態から同時に振り出し、角度をつけて今村選手に対してビタビタに合わせる。角度と距離で今村選手を圧倒し、1.5という大きなアドバンテージを得た。こんどは野村選手が先行。しかし、ここでも今村選手が踏ん張る。タイヤを交換して今村選手がスタート地点へ向かう。そしてスタート。先行の野村選手に対して同時振りで進入し、さらにはビタビタに合わせる攻めのドリフトで応酬。この結果、アドバンテージが1の差に縮まり、なんと、再びサドンデスへ突入。ここで、野村選手は再度タイヤを交換。そして、ついに決着がついた。野村選手が先行する2本目で、今村選手が1コーナーで流されるというミスをおかす。野村選手がベスト4へ進出を決めた。
「タイヤ交換のタイミングを見誤りましたね。そこでミスが出てしまいました。でも、野村選手と同じチームで、クリーンに戦えたのでとても気持ちがいいです。次の富士では今回より上の成績を残せるように頑張ります。応援してください」(今村選手)
ベスト8でのもうひとつの同門対決は古口選手VS日比野選手。古口選手が勝ってベスト4へと進出を決めた
ベスト8での日比野選手VS古口選手のカードは、先行、後追いともスピードに勝るドリフトで日比野選手を終始リードした古口選手が勝利した。「オートポリスのような大きなコースだとさすがに厳しいですね」と日比野選手のコメント。しかし、ターボ勢を押しのけて単走で3番手、決勝で6位の成績は千金の値打ちがある活躍だ。シードでつないだ次戦・富士での奮闘に期待したい。
日比野選手との同門対決を征した古口選手は、末永正雄選手と決勝進出を賭けて戦った。古口選手は700psオーバーのニューエンジンを武器に先行、逃げにかかる。優勝経験も豊富な末永選手といえども絶好調な古口を相手にそのインに入り切れない。五分で迎えた古口選手が後追いする2本目。ここで古口選手が手痛いミス。先振りするも1コーナーをインカットするライン取りとなってしまった。この結果、1.5のアドバンテージを末永選手に与えてしまい、ここでオートポリスを終えた。惜しくも敗退したものの、今シーズンはマシン共々好調さを見せる古口選手。優勝経験のある第3戦・富士スピードウェイが楽しみだ。
「末永選手との対戦では、振り出すタイミングが少しズレちゃったのでイン巻きしちゃいましたね。まだまだ自分本来のかたちができていないので、そのあたりが今後の課題です。でも、3位という結果は目標のラインでもあったので満足しています」(古口選手)
斎藤太吾選手に敗れたものの、4位の成績で第2戦を終えた野村選手。富士でのさらなる躍進に期待したい
野村選手のベスト4の対戦は、猪瀬選手と時田雅義選手を下して勝ち上がってきた斎藤選手。先行の野村選手に対して同時振りで挑む斎藤選手。そして、1コーナーから振りっかえしての2コーナーにかけてインに入られてしまう。斎藤選手が1のアドバンテージを取った。入れ替わって後追いは野村選手。しかし、野村選手はインに入ることができず斎藤選手が逃げ切る格好となり、ここで野村選手の敗退が決まった。
「斎藤選手との追走ではちょっと加速のタイミングを間違えてしまいましたね。申し訳なかです。でも、今年はドリフトを楽しんで、それがお客さんに伝わるようにと、頭を切り替えましたし、リラックスして挑めました。陽一(今村選手)とは同じチームメイトで、駆け引きなく戦うことができて、とても楽しめました。次の富士も楽しんで、そしてよい成績を残せるようにがんばるとですよ。だから皆さん、見に来んしゃい!!」(野村選手)
阿部成人監督のコメント
「オートポリスに向けてエンジンをオーバーホールしました。クランクシャフト、クランクメタルを新品にして、ピストンをコーティング、ブロックも新しく作ったものを使っています。さらに今回は足まわりをガラリと変えました。これがうまくいったようです。単走から安定していましたね。追走トーナメントまでいけば、あとは野村さんなら良いところまで駒を進めてくれますから。今村選手とのサドンデスが一番の見せ場となりましたね。斎藤選手とは、パワーの差が出ちゃったかな、と……。富士ではタービンを大きくし、パワーとトルクをアップして挑みたいですね!!」