D1グランプリエキシビジョンTOKYO DRIFT in ODAIBA 5月24日(日)
野村 謙が準優勝! 日比野哲也4位入賞!(お台場2日目)
早朝から雨が降りウェットコンディションで始まったお台場2日目
予報されていたとはいえ、初日とは打って変わって、2日目は早朝から雨模様となってしまった。会場には初日と同様、たくさんの観客が詰めかけていたが、ゲートオープンの頃になって雨足が一段と強まった。コース上はもちろん完全ウェット。コースをそのまま使用するため、ドライ路面の走行でできたタイヤ痕(ラバー)は、ドライではいっそうグリップするが、ひとたび雨水が載ってしまえば、今度は通常の路面より滑る劣悪な状況となる。ラバーを避けて走りたいところだが、ドリフトという競技の性格上、ライン取りも重要な審査対象となる。選手たちにとって波乱の幕開けとなりそうだ。
ダンロップ勢は、3台とも無事に2日目を迎えた。とくに、初日にベスト8で川畑真人と対戦してボディに大きなダメージを受けた古口美範のマシン(180SX)の状態が心配されたが、エンジン、足まわりに問題なく、応急処置的な修復を行なって、午前の練習走行から元気な姿を見せていた。また、初日に安定感のある走りを披露した野村 謙はウェットコンディションも同様にコントロールされた安定感の高い走りで練習走行をこなしていた。
そして、注目は日比野哲也。初日のインタビューでは「雨が降ったらこちらに強みがありますね」と、重量級のマシンにはマネのできない、ハチロクならではの軽さを生かした、速さとコントロール性のよさを武器に勝負に出る、というわけだ。三者三様の作戦で、どんな戦いを見せてくれるだろうか。追走トーナメント進出をかけた1回戦がスタートした。
ハーフウェットのコンディションに苦戦を強いられた古口美範選手
練習走行では雨足が強かったものの、1回戦が始まるころにはいったん雨足も弱まり、天候は回復傾向を思わせた。しかし、コース上は相変わらずスリッピーなコンディションであり、グリップ感が一様ではない、難しい状態だった。
初日と同様、Bグループで登場した古口。お台場で初めて優勝を飾った前日の余韻そのままに、スピード感にまさる思い切りのよい走りを見せていた古口であったが、1本目は角度を付けすぎたのか2コーナー手前でスピンとなって失敗。53.25点の低い得点となってしまう。もう後がない2本目、相変わらず進入速度が高く、迫力があったものの、またしても2コーナーの手前でハーフスピン状態となり失敗。まさかの1回戦敗退となってしまった。初日で優勝し、波に乗っていた古口であったが、著しく路面コンディションが変化するハーフウェットに翻弄されてしまった模様。「コントロールが難しかったですね。でもシリーズに向けての新たな課題を見つけられましたし、エキシビジョンは得るものが多かったです」と。追走トーナメントへ進出できなかった悔しさをにじませながらコメントしていたものの、初日の優勝によって勝てる走りが自分のなかで見えてきたとも答えてくれた。シリーズの戦いに期待が高まる。
オートポリス以降の好調が続く日比野哲也選手が1回戦をトップ通過
初日はあと一歩のところでベスト8進出を逃した日比野は、最終グループのトップで1回戦に挑んだ。その1本目は難しいコンディションのなかを、進入速度、角度、ラインの3つがパーフェクトといえる走りを見せ、前日を上回る99.62点をマーク。それは100点をつけた審査員もいたほど。この日のトップに立った。2本目を終えた時点で日比野の1本目を上回る選手は現れず、みごと1位で追走トーナメントへ進出した。軽さというハチロクの利を生かした走りが光っていた。
滑りやすい路面に戸惑ったという野村 謙選手は14番手で1回戦を通過
1回戦が終わりに近づいたところで、雨はほとんど上がった状態となっていたものの、路面は相変わらず滑りやすい難しいコンディションだった。ここで登場したダンロップのエース、野村。単走の1本目はスピードの高い1コーナーへの進入を見せた。そこから4コーナーまでキレイにまとめた野村だったが、やや角度が浅くなったこともあり98.25点。これが14番手の得点となり、追走トーナメント進出が決定した。
イタリアから参加したフェデリコ・シェリフォ戦を征した日比野選手の走り
午後に入り、再び雨が落ちてきた。ウェットから、ハーフウェット、再びウェットと、選手たちを悩ませる路面コンディション。そんななかでスタートした追走トーナメント。まず登場したのは、1回戦を1位で進出した日比野。対戦相手は、16位で通過した、インプレッサに乗るフェデリコ・シェリフォ。ドリフト選手権イタリアシリーズ2位という戦績を持つドライバーで、追走は日比野にとって未知の相手だ。先行でスタートした日比野が、ミスなく1コーナーを過ぎようとしたところで、フェデリコが1コーナーのスポンジバリアに接触。日比野が大きなアドバンテージを得る。続く後追いの日比野は手堅くマージンを取った走りでベスト8進出を決めた。
高橋邦明選手との4ドア対決に勝って野村選手はベスト8へ進出
野村のベスト16は、4ドア対決となる高橋邦明が相手だった。後追いでスタートした野村は、ほぼ同時に振り出し、2コーナーでインに食い込んでいく。野村、高橋ともキレイで安定感のあるベテランらしい接近ドリフトを披露。先行高橋でイーブンに持ち込んだ。続いて野村が先行の2本目。振り出しからスピード感がある野村に対して2コーナーでインに寄せようとする高橋選手だったが、入りきれない。結果、野村に軍配が挙がった。
初日に涙を呑んだ日比野選手は時田雅義選手への雪辱を果たした
日比野のベスト8の対戦相手は、初日に準優勝と波に乗る時田雅義。日比野をベスト16で下した選手だ。その1本目は日比野が先行。昨日の借りは返すぞといわんばかりに勢いよく飛び出てきた日比野は、スピードで時田を上回る。接近戦へと持ち込ませず、3コーナー、4コーナーにかけて引き離す圧巻の走りでアドバンテージをとる。後追いでは、振り出しのポイントでマージンをとったものの、そこから1コーナーにかけてピタッと寄せていき、2コーナーではしっかりインに食い込む。3コーナー、4コーナーも時田に食らいついて離れず、リベンジを果たしたと同時にベスト4へと駒を進めた。
ベスト4は、スカイラインの手塚 強が対戦相手。先行でスタートした日比野は、高いスピードに乗せて1コーナーを目指して振り出す。しかし、手塚も負けてはいない。ピタリと寄せて、2コーナーでインに食い込む。しかし、日比野が3コーナーでわずかに離す。これで日比野がアドバンテージをもらう。有利な展開となり、続く後追いをスタートした日比野は2コーナーで手塚のインに入るも、4コーナーで詰め過ぎてドリフトをやや戻す。勝敗がつかずサドンデスへと突入した。その1本目、先行の日比野がさらにアグレッシブに攻めるも、手塚がしっかりインに寄せる走りで今度はイーブンに持ち込まれる。後追いの日比野。進入からビタビタに合わせるも、2コーナーの手前で手塚選手に接触し、ここで敗退が決まった。
「中途半端な路面コンディションで、最後はセッティング面でちょっと噛み合いませんでした。でも、乗る時間がどんどん増えて、ようやく自分の手足になってきた感があります。この調子をさらに上向きにして岡山へ挑みたいですね」(日比野哲也)
サドンデスを繰り返した野村選手と手塚 強選手の決勝戦
野村のベスト8の対戦相手は、RX-7の高山健司。その1本目は、先行野村の振り出しに対してやや出遅れた高山。続く後追いでは高山より先に振り出した野村選手。2コーナーではしっかりインに食い込むドリフトを見せたものの勝敗が付かず、サドンデスとなった。先行は再び野村。高山が野村に食らいついていこうとするも角度をつけ過ぎたか、1コーナーでスピン状態となりスポンジバリアへ。これで9:1の大きなアドバンテージを得た野村は後追いで手堅く走り、ベスト4進出を決めた。
ベスト4は、目下のところシリーズで1位を競っているシルビアの今村陽一。その1本目、先行の野村に対して今村がピタリとつけ、2コーナーでは完ペキにインに食らいつく。結果はイーブン。続く野村が後追いの2本目。今村と同時に振り出して、2コーナーでピタリと合わせる野村のキレイなドリフトが光る。が、4コーナーでやや離されてしまい、勝敗がつかず、高山戦に続いてサドンデスへ突入した。先行は野村。今村が進入からビタビタに合わせてくる。今村に若干のアドバンテージを与えてしまったが、続く後追いで今村が失敗。2コーナーの入り口でスポンジバリアに接触するミスを犯す。結果、野村が決勝へと進出を決めた。
決勝は、同門日比野を下して勝ち上がってきた手塚。初日は野村がベスト16で手塚を破っており、手塚も相当気合が入っているのが走りからも伝わってくる。両者とも「100%の力で戦う」と走行前のコメントどおり、決勝に相応しい戦いを繰り広げた。先行手塚で始まった1本目。角度を浅くつけた野村が1コーナーで手塚のインに食い込もうと寄せる。逃げる手塚に対して果敢に追う野村。どちらもノーミスで4コーナーを立ち上がり、わずかに野村がアドバンテージをとった。続いて野村が先行。手塚に正々堂々とインをあけての勝負。手塚もさすがに上手くピタリと寄せる。決着がつかず、サドンデス。野村は3連続でサドンデスで決着をつけることになった。結果として、野村VS手塚の追走は4回の対戦の末にようやく勝敗が決まった。最後は、手塚にアドバンテージをとられた野村が、先行で手塚にビタビタに合わせられ、アドバンテージを覆すことができずに惜しくも涙を呑んだかたちに……。しかし、どちらが勝っても不思議ではないハイレベルなドリフトバトルに観客も拍手喝さい。エキシビジョンに華を添える素晴らしい決勝戦で幕を閉じた。
準優勝でシリーズ戦に弾みがつく野村選手
野村 謙選手のコメント
「決勝戦は、手塚選手とやりやって、4回走りましたが楽しかったとです。お台場はお祭りですから、お客さんに楽しんでもらいたく、がんばったとですよ。1回戦は雨が降って、路面がツルツルでとても難しかったですが、結果的に準優勝することができて嬉しいです。ホントは優勝したかった……とです」
阿部成人監督のコメント
「お台場なので、もともとパワーを出す方向のセッティングではなく、朝から雨だったのでブーストを下げて1.5キロぐらいで1回戦に挑みました。トーナメントでは路面がドライへと回復してきましたので、ブーストを上げましたが、走るたびに路面が乾いていくという状態で、安定した走りができずに苦労していたみたいです。でも、決勝では見せてくれましたね。結果、負けてしまいましたが、ふたりとも僕のなかでは優勝だと思っています。この負けはシリーズで必ず取り返しますよ!」