第2戦 4月25日(土)~26日(日) オートポリス
Rd.2 Report

ゼッケン1をつけて登場した野村 謙選手

 D1グランプリ第1戦・エビスサーキットでは、並みいる強豪をはね退けてみごと優勝を飾った野村 謙と、8位でシードのポジションを獲得した古口美範が活躍。ダンロップワークス勢は2009年シリーズを幸先よくスタートした。まさに昨年投入した新兵器『ディレッツァスポーツZ1スタースペック』、その真価をぞんぶんに発揮した戦いだったといえる。第2戦は、九州のオートポリス。昨年は8月、一昨年は9月開催と、これまで気温の高い夏の時期に行なわれる大会としてイメージが定着していたが、今年は春真っ盛りの4月下旬に開催された。オートポリスは、ホームストレートから最終コーナーへ向けて走る、コースを逆走する形で行なわれるのが特徴であり、D1グランプリのなかでも進入スピードがもっとも高いと言われるハイスピードステージだ。昨年は野村が2位、古口が16位の戦績。野村は地元九州ということもあり、さらに第1戦を優勝した凱旋の意味でも負けられない戦いとなるだろう。

日比野哲也選手

 25日(土)に始まった予選は昨日からの雨が残り、さらには辺りが時おり真っ白で何も見えなくなるほどの深い霧が立ち込める、荒天のなかでのスタートとなってしまった。コース上はウェットであり、ハイスピードコースでの滑りやすい路面が選手たちを苦しめた。練習走行が終わり、予選が始まっても進入失敗でスピン、コースアウトするマシンが続出。コース清掃や霧の晴れ待ちが入り、幾度となく予選が中断する波乱の展開となった。そんななか、日比野がひとり気を吐いた。滑りやすい路面をまるで味方につけるが如く、高い進入速度からスパンと、スピンをしても不思議ではないほど豪快に角度をつけてドリフトを成功させたのだ。そのアグレッシブな走りは予選トップとなる98.75点をマークした。いっぽう、マークIIで参戦している箕輪、シルビアの林は厳しいコンディションのなかでも無難に決めてそれぞれ5位、11位で予選を通過した。AE86カローラレビンの小畑は終始路面に苦しめられる状況で実力を出し切れずに残念ながら予選敗退となった。なお、野村、古口はシードのため、この日は練習走行のみ。明日の決勝で予選通過者とともに頂点を目指すわけだが、天候に阻まれて練習走行らしいことがほぼできない状態だった。

林 渡選手

 翌26日の決勝日は、冬を思わせる寒い一日となったものの、雨も上がり、霧もない、ドリフトならではの走りの迫力を見られる決勝日に相応しいコンディションのなかで迎えた。進入速度が昨日のウェットとは打って変わり、190km/h台が続出し、さらにはシード組になると200km/hをオーバーするマシンもあり、ハイスピードコースならではの高次元なドリフトアタックとなった。予選を終え、まずは予選通過20台とシード10台の30台による一回戦(単走)が始まった。今年から一回戦は2本を走り、得点の高いほうで順位を決める。さらに『ノックダウン方式』を採用しており、順は予選得点の低いほうから先に出走する。つまり、ゼッケン1の野村は最後に走ることになる。
最初に出てきたのは林。その1本目は進入直後にドリフトをやや戻してしまい、2本目も進入で振られてしまい、2コーナーへの振りっかえしで姿勢を崩してコースアウト。不本意な走りで1回戦敗退となってしまった。

箕輪慎治選手

 続いて予選5位通過の箕輪。ハイパワーエンジンと安定感あるドリフトを武器としたマークIIで挑んだものの、1本目は進入でコースサイドにややはみ出してフロントを引っかけてのドリフトとなったため、アグレッシブさを欠いた走りとなってしまう。2本目は1コーナー進入で振られて、2コーナーのラインも小さくなり、高得点に結びつけることができずにここで惜しくも敗退となってしまった。

古口美範選手

 いっぽう、ハイスピードコースを得意とするシードの古口は1本目、スピードと角度で魅せる1コーナーの進入をしたものの、2コーナー審査席前のサイドブレーキ調整が得点に響いてしまい、2本目は1コーナーで流されたところを減点され、1回戦敗退となってしまった。昨年はベスト16へ進出し、今年はその上を目指していただけに、この結果には悔やまれる。「1コーナーへの進入と、そこから流されないラインで走ることにちょっと気を取られてしまい、不本意な結果となってしまいました。悔しいですね。でも、マシンを仕様変更してパワーアップしましたし、次の岡山では納得できる走りをしたいです」と、走行後にコメントする古口。このうっ憤を次戦の岡山では晴らしてくれるだろう。

野村 謙選手

 荒天のなかでも手綱を締めて終始攻めのドリフトを見せ続け、1位で予選を通過した日比野。今年からNAエンジンでNOS仕様のAE86スプリンタートレノとなった日比野は、軽さを武器に難しいコンディションを征したようにも思えたが、トレノ×日比野のパッケージングはウェットもドライも関係ないか!? といってよいほどAE86不利といわれるD1グランプリで、強豪を相手に決勝日も調子は変わることなく、単走1本目をスピード、角度、ラインとも完ペキなドリフトで決めて99.62点でトップ。2本目ではリアから入るほどさらに角度のついた1コーナーの進入を見せ、1回戦を終わってみれば、99.82点を獲得して堂々の2位でベスト16へと駒を進めた。
1回戦の最後に登場したダンロップワークスの野村は、進入では角度、スピードともに文句なし。さすがを思わせる走りだ。しかし、1コーナーで流されてしまい、2コーナーの振りっかえしで角度をつけ過ぎてハーフスピンとなるまさかのミスをおかす。得点が58.75点と極めて低くなってしまった。もう後がない2本目だったが、ここは百戦錬磨の勇士、手堅くドリフトを決めて99.0点を出して8位でベスト16へ進出した。

野村 謙選手VS藤中 学選手

 午後に入っても曇り空で、相変わらず気温は真冬並みを思わせた。そんななかで追走トーナメントが始まった。野村のベスト16の対戦相手は初顔合わせとなる藤中学(RX-7)。先行でスタートした野村は藤中に接近をわずかに許すもミスなく走ってアドバンテージをもらう。後追いでは1コーナーの進入で先行の藤中より先に振り出すという貫禄を見せつけ、藤中にビタビタに接近するドリフトコントロール。2コーナーで藤中がコースをはみ出したところでオーバーテイクし、ベスト8進出を決めた。日比野は中村直樹(シルビア)とのカード。後追いの日比野が中村と同時に1コーナーを振り出し、インに食い込んで角度、スピードとも中村を上回ってアドバンテージとなる。しかし、2本目の先行で日比野が2コーナー手前の振りっかえしでアンダーステアを出してしまい、ノーミスの中村が有利となり、サドンデスへ突入。その先行で日比野が中村に距離を詰めさせないドリフトを見せ、後追いでは2コーナーの立ち上がりで中村のインに食い込み、ベスト4への進出を決めた。
野村は山下広一(マークII)がベスト8での対戦相手となった。1年ぶりにD1ドライバーとして復帰した山下もベテランであり、いわば古豪同士の対決だ。先行は山下。後追いで同時に振り出す野村はピタリと合わせ、振りっかえしでも絶妙な距離を保ち、終始離されることなく2コーナーを立ち上がる完ペキな走りを見せる。山下がノーミスでも野村の走りが上回っていた。これで有利に先行できる野村。山下が果敢に後追いで接近するも、野村に接触し、野村のベスト4進出となった。

日比野哲也選手VS今村陽一選手

 ベスト8で日比野の対戦相手は、追走トーナメント常連の強豪、末永正雄(RX-7)と決まったが、マシントラブルのためリタイヤ。不戦勝でベスト4へと進出が決まった。そのベスト4での相手は、優勝経験が豊富で、追走名人ともいわれる今村陽一(シルビア)。NOSをつかったスプリンタートレノは軽さが武器。それを生かしていざ後追いでスタートした日比野だったが、ドライ路面で150m看板から振り出すというロングドリフトに打って出た今村に進入から離されてしまう。それは2コーナー立ち上がりまで続き、今村に大きなアドバンテージを与えてしまった。先行では今村に接近戦に持ち込まれ、ここで、日比野の2009年のオートポリスが終わった。
「今年から、ドルーピーさんのNA(NOS仕様)のハチロクに乗っています。以前は自分でクルマを仕上げていましたから、多少は不安要素も抱えていたのですが、今はクルマに不安要素がまったくありませんから心強いです。反対にこのマシンをどう乗りこなすのか、試されているわけですから気合が入りますね。エビス(第1戦)ではハンドルの切れ角が足りなかったので、これを改善してオートポリスに参戦しました。ハチロクが有利なのは角度と軽さで勝負できるところです。準決勝での今村選手との対戦はこちらがミスしたわけではないので、上出来だったと思います。でも、悔しくないと言ったら嘘になりますけどね(笑)。今回、じつはタイヤ交換をしていないんです。NAというのもあるんですが、いつもグリップ感が変わらないし、そのままで行けました。これも安心材料のひとつです。次はシードですから有利に戦いたいですね」(日比野哲也)

サドンデスのすえに熊久保信重選手を下した野村選手

 今シーズンから、単走は1本少ない2本で勝負となり気を抜けない。1本を失敗すると、もう後がないのだ。1本目でハーフスピンを喫しあわや1回戦敗退かと、ファンをヤキモキさせた野村だったが、追走トーナメントが始まれば、シード“常駐”であり、さらにはベテランらしいワザに長けたドリフトで、すんなりとベスト4まで勝ち進んだ。ベスト4の対戦相手は熊久保信重(ランサーエボリューションX)。野村VS熊久保のカードは幾度となく組まれてきたが、今回はとくにベテラン同士らしいドリフトバトルで観客を沸かせた。野村が先行の1本目、追走の名手らしくビタビタに寄せる熊久保の走り。熊久保のアドバンテージとなる。しかし、今度は後追いの野村も負けてない。進入で同時に振り出し、熊久保にビタビタと寄せる。サドンデスとなった。その1本目、先行の野村はまたしても熊久保にピタリと合わされる。6:4で熊久保が再度アドバンテージをとる。続いて野村の後追い。ここで熊久保が1コーナー進入のインに入り過ぎてハーフスピン状態となり、これが決め手となって野村が第1戦に続いて決勝進出を決めた。
決勝の相手は今村陽一。第1戦と同じカードとなった。ここで2連覇し、オートポリスでの優勝も飾っておきたい野村だった。先行は野村。今村にインを許すもアグレッシブな走りでミスなく2コーナーを立ち上がる。しかし、わずか0.5で今村にアドバンテージをとられる。続いて後追いの野村は、進入から今村のマシンに果敢に寄せて走るも、2コーナーでインに入り切れず、僅差で準優勝となった。

ポイントランキングで1位にとどまる好調な野村選手

 これでシリーズポイントが今村と同率で1位となった野村。次の岡山国際サーキットは初のダブルファイナルズ。ここで一気に差をつけたいところだ。そして、日比野の躍進、古口の巻き返し、林、箕輪、小畑の奮闘にも期待したい。なお、野村はD1グランプリUSAを2回、エキシビジョンのお台場をはさんで岡山へ挑む。ダンロップワークス勢に大きな声援を送ってほしい。

野村選手のコメント
「ゼッケン1がプレッシャーでしたね。夜も眠れんほど緊張したとです。金曜日にサーキットへ入りましたが、ほとんど走れず、土曜日は雨で練習できずで、決勝日を迎えてしまいました。ちょっとハマっちゃいましたね。単走は、1本目を抑えて走ったところがハーフスピン。これはマズイと16位につけた選手の点が98.5点だったから、98.6点を取ればよかと、手堅く点を取る走りをしてしまいました。ベスト16へ残ることが先決なので……。煙をたくさん出さずに迫力のない走りとなり、ファンの皆様、申し訳なかとです。追走ではタイヤのウォームアップもなくて、気温が低くて正直不安でした。でもディレッツァスポーツZ1スタースペックを信用して走ってよい結果が出たとです。岡山もがんばりますから、応援してください。あ、お台場もあります。皆さん見にきてください」

阿部監督のコメント
「金曜日は、セッティングなどに時間を費やしたので思ったように走行チェックできず、土曜日も雨で練習ができなかったので大変でした。単走の1本目は抑えていこうとしたところで失敗してしまい、何とか手堅い走りでベスト16に残れましたが、ヒヤヒヤしましたね。今回はベスト4での熊久保選手との戦いが見事でしたね。点を取られたら取り返すんですからとても楽しかったです。決勝は僅差だったので、次戦はベストを尽くして優勝したいと思います」
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ニュルブルクリンク2014