レースレポート
TOKYO DRIFT IN ODAIBA(エキシビジョンマッチ) 6月7日(土)
東京・お台場特設コース
Report
湾岸お台場決戦開幕
江戸幕府が砲台を築いた人工島――通称「お台場」。D1グランプリのエキシビジョンマッチ『TOKYO DRIFT IN ODAIBA』は、悠久のときを経て、最先端の建築物や商業施設が立ち並ぶ街へと進化を遂げた、そんな人造空間であるお台場の特設コースが舞台となった。
進化したハイグリップラジアルタイヤ、ディレッツァスポーツZ1スタースペックが、開幕戦のエビスサーキットを準優勝で飾り、続く第2戦の富士では早くも優勝を遂げた。ディレッツァスポーツZ1スタースペックが高いパフォーマンスを持つタイヤであることを誰もが知るところとなった。『TOKYO DRIFT IN ODAIBA』は、D1ファンを魅了する選抜された選手が揃う、いわばオールスター戦であり、シリーズ戦のポイントには影響がない。しかし、レーシングカー専用に整備されたサーキットの路面ではなく、広大な駐車場のうえに作られるコースを使ってのハイレベルなドリフトバトルとなるだけに、このイレギュラーな路面コンディションを征するための、タイヤへの依存度がことさら大きくなる。タイヤの性能が問われる重要な一戦だ。つまり、ハイグリップラジアルとして生まれたディレッツァスポーツZ1スタースペックの真価を見せつける、恰好の舞台となるのは間違いない。ドライバーは、野村謙、古口美範、日比野哲也、猪瀬徹4名。快進撃を続けるダンロップ勢は、まさにライバル達を迎え撃つポジションにある。
スキール音が号砲となり、メトロポリスドリフトバトルがついに始まった。
“湾岸お台場決戦”――相手にとって不足なし。ダンロップタイヤ勢のドリフトの勝どきを、いざ聞かん。
ダンロップユーザー4名が参加
6月2日に関東地方は早くも梅雨入りした。天候が危ぶまれたものの、初日である6月7日の東京・お台場は晴れ。夏を思わせるほどの暑い日差しに包まれていた。D1グランプリがお台場で開催されるのは3年ぶりとなった。シリーズ戦としてのD1グランプリは全国の国際サーキットを中心に開催されているが、『TOKYO DRIFT IN ODAIBA』は、東京の、それも新名所として人気があるお台場の特設コースでドリフトバトルが繰り広げられる。サーキットよりもっと間近でD1ドライバーの走りが楽しめるエキサイティングなドリフトマッチだ。特設コースゆえにエスケープゾーンは皆無に等しく、ワンミス即クラッシュと、ドライバーとマシンにとっては過酷な条件での戦いとなる。そんななかでの果敢なドリフトアタックは見ごたえじゅうぶん。午前8時のゲートオープンを待ちきれない大勢のD1グランプリファンが会場に集まった。
野村選手
コースは500mほどの直線コースから先が、大きなアールとなる右の1コーナー、アールのキツイ右の2コーナーへと続き、そこから振りっかえして左の3コーナー、4コーナーへと進入していくレイアウトだ。ちょうど、Rの文字を一筆書きしたところをイメージすればわかりやすい。1コーナーの進入は120km/h以上の車速となり、アウトから進入して審査員席付近にアウトクリップをとり、2コーナーではクリップに確実につく。振りっかえして3コーナーの進入、ミドルのラインで4コーナーを目指す。ドリフトの振り出しはストレートの副審の地点で、そこから4コーナーまでドリフト状態を維持したままでの走りとなる。
さて、ダンロップタイヤ勢は出場した4人全員がお台場のドリフトを経験している。やはり口を突いて出るのは“路面コンディション”が一筋縄でいかないところ。野村選手は「路面でボヨンボヨンと弾む。3ヶ所大きな波があって、路面が数メートルおきに違う。単純なレイアウトだけど簡単ではない」とコメントしていた。しかし、ディレッツァスポーツZ1スタースペックとなったことで、グリップ性能が向上したことから「安心して横へ向けられるし、止まるから安全」ともコメントしていた。事実、野村選手は予選からハイスピードな進入で、他車がマネできないほど深く角度がついたドリフトを披露。会場を大いに沸かせたのだった。
予選に向かう野村選手
予選は31台がエントリーした。A~Cの3グループにわかれ、ベスト16への進出を賭けた単走(3本を走って各自の一番の高得点を採用)で行なわれた。まず登場したのが野村選手。1コーナーをアウトいっぱいから振り出して、深い角度で進入し、審査員席めがけて“ぶっ飛んで”くるアグレッシブな走り! 審査員が理想とする走りを見せ、いきなり100点をマーク。2本目も同様な走りで会場を沸かせて再び100点を得た。堂々の2位で予選を通過。「安心して横へ向けられる」をまさに走りで教えてくれたのだ。
残念ながら予選敗退の日比野選手
続いて日比野選手が予選に挑んだ。1本目は振り出しのポイントが遅くなり失速もあって95点。2本目は深い角度で挽回、3本目も深い角度はよかったが、速度をのせきれず、あろうことか予選での敗退となってしまった。「3本とも走りが噛み合っていなかった感じですね。でも、明日はがんばりますよ!」と、予選終了後には頼もしいコメントをしてくれた。
4位予選通過の古口選手
次に登場したのが古口選手。第2戦の富士で優勝して、「勝ちに対するこだわりがいっそう強くなった」と出走前にコメントしていた。1本目の走りこそ、1コーナーで流されてしまい、小さなラインとなってしまったものの、2本目で本領を発揮。130km/hの進入速度から振り出し、角度、ラインともにほぼパーフェクトで99.9点をマークした。3本目も99.9点となり、4位で予選を通過。ちなみに、3位通過の選手とは0.05点の差だった。
速度番長猪瀬選手の走り
最後は猪瀬選手。「ラインを重視すると小さくなるし、スピード重視でいけばラインから外れる」と、朝の練習走行で攻略の難しさをコメントしていたが、速度、角度ともに納得のいくドリフトにならなかった様子で、ベスト16への進出は果たせなかった。お台場特有の路面コンディションにも翻弄されてしまったようだ。
見事な走りをする古口選手
決勝(追走)トーナメントは、まずは古口選手から始まった。対戦相手は岡村和義選手。先行の古口選手だったが、勢いをつけすぎたのか1コーナーから先で大まわりするラインとなってしまった。しかし、岡村選手がインインを回る小さなラインとなる。5.5:4.5で古口選手がわずかにアドバンテージとなった。こうなると勢いがつく古口選手。後追いでは古口選手がピタリと合わせる。結果、古口選手がベスト8にコマを進めた。
野村選手は平岡英郎選手とのベテラン同士の対戦を制した。先行で予選を上回るほどのハイスピードであり、角度がついた飛び込みで、平岡選手が1コーナーでインに入ることを許さず、反対に追走では白煙を上げながらの超接近ドリフト! 会場を盛り上げた。
熊久保選手に対し果敢に攻める野村選手
さあ、頂上が見えはじめたベスト8。古口選手は末永正雄選手との対戦となった。末永選手は安定感があり強敵だ。古口選手は後追いでスタート。1コーナーから果敢に懐へ入ろうとするものの、攻めきれない古口だったが、ここはイーブンに持ち込んだ。今度は先行となり、互いにミスのない勝負で、サドンデスへと突入した。後追いの古口選手はなんと1コーナーの進入でスピンを喫してしまう手痛い状況になってしまった。末永選手に大きなアドバンテージを与えてしまい、続く先行では末永選手の攻めのドリフトを抑えきれず、ここで敗退となってしまった。
野村選手の相手は熊久保信重選手。互いに手の内を知っているベテラン同士だけにデッドヒートが予想されたが、なんと後追いの野村選手は振り出していきなり痛恨のスピン。側壁寸前で止まりクラッシュはまぬがれたものの、とても不利な状況をつくってしまった。続く先行で逃げ切ろうとするも熊久保選手の手堅い走り。野村選手もベスト8で惜しくも涙を呑んだ。
ファンサービスをする野村選手
競技終了後、「お祭りですから。お客さんをもっと喜ばせようとしたら、角度をつけ過ぎてしまいました。明日も果敢に攻めます。もちろん、てっぺんを狙ってます」と、野村選手。いっぽう、こちらもベスト8で終わった古口選手だが、「限界ギリギリの走りを冷静にコントロールすることを心がけているんですけれど、今日はちょっと熱くなっちゃったかな(笑)。でも、こんなにお客さんがいるんだもん。熱くならないほうが不思議でしょ! スタースペックはトラクションがしっかりかかるし、もっともっとコントロールした走りで魅せたいですね」と。
明日も4台が揃って戦いに挑む。お台場2日目もダンロップタイヤ勢に注目だ。
阿部成人監督のコメント
「マシンは路面のギャップ対策で、サスペンションのセッティングを柔らかい方向に変えました。また、音量の面で調整がありましたので、パワーは若干落ちてはいますが、お台場なら問題ないレベルでした。無事に決勝トーナメントへ進出でき、野村さんらしい角度のついたよい走りだったと思います。ベスト8ではちょっとやり過ぎましたかね。“支配人に勝つには角度だ!”といって出て行きましたが……。これも野村さんらしいところですが」