第3戦 6月9日(土)~6月10日(日) マレーシア・セパンインターナショナルサーキット
【GT300】
15番手スタートのGAINER DIXCEL R8 LMS
着実なペースで追い上げて7位入賞!
開幕戦では優勝のGAINER DIXCEL R8 LMS
昨シーズンは、序盤に2位入賞を繰り返し、チームとドライバーに対しては、改めて高い評価が下されたが、その一方で悔しさが募る。そんなシーズンを送った「GAINER」が、悲願となるタイトル奪取のために用意した今シーズンの切り札は、Audi R8 LMS Ultraの「GAINER DIXCEL R8 LMS」。今やベテランの域に達した田中哲也選手と期待される有力若手へと成長した平中克幸選手のコンビ、そしてチームのサポート体制や装着するダンロップタイヤも含めてパッケージの骨格は不変で、唯一マシンが変わっただけ。もちろんマシンが変われば、それにあわせたタイヤ開発が要求されるようになるのは当然のこと。タイヤ開発は、昨年、フェラーリで履いていたセットをベースに、少しずつAudiに合わせてファインチューニングを進めていった。
それでも開幕戦では2番手グリッドから優勝、第2戦の富士では予選でポールポジションを奪うなど、随所で見事なパフォーマンスを発揮している。そして迎えた第3戦だったが、走り始めから苦労が待ち受けていた。
予選ではQ1を担当した田中哲也選手
ここセパンでのレースは年に1回のみ。冬でも暖かい気候を理由に、シーズンオフにはGT500が集まってメーカーテストを繰り広げるのがここ最近の習いで、GT300でも、そのテストに“相乗り”してテストを行うチームもある。だが「GAINER」はセパンでのテストを実施しておらず、データが少ないのが大きなハンデとなっている。今回も、昨年、フェラーリで走った際のデータを基に基本セットをまとめてきたのだが、走り始めてみると極度のオーバーステアとなっていた。そこからセッティングを修正しながら走行を続けたが、午後の公式予選までには修正しきれず、田中哲也選手が公式予選1回目(Q1)でマークした2分08秒630で15番手のグリッドが決定した。
スーパーラップに出走予定だった平中克幸選手は、タイムアタックすることなく公式予選を終えることになったが、「明日の決勝では、今日と違う流れをつかみ、1ポイントでも多く稼いで、次のレースに繋げたい」とポジティブに気持ちを切り替えていた。
決勝で着実に追い上げたGAINER DIXCEL R8 LMS
決勝レースのスタートは、日曜日の午後4時ちょうど。そこからローリングがスタートし、1周目で隊列が整わなかったためにもう1周ローリングラップを追加して、午後4時8分に正式なスタートが切られた。前半のスティントは田中哲也選手が担当したが、コーナリングではアドバンテージを持っているが、ストレートスピードではライバルに後れを取ってしまう。そんなAudiのマシン特性を活かすためには、タイミングを違えてピットインし、クリアな、つまりストレートが速くコーナーで遅いライバルのいないところでプッシュしていくのが得策。ただし燃費や最大周回数との兼ね合いもあるから“ある程度”は田中哲也選手に我慢の走行を強いるしかない。そこでチームの作戦は田中選手が20周を走り終えたところでルーティンのピットイン。後半のスティントを平中選手に託すことになった。
平中選手の担当する後半のスティントは約30周。これならガソリン満タンで走りきれる。ピット作業を追えてピットアウトしていった平中選手は、予選でアタックできなかった分までアクセルを踏みつけるかのようにハイペースで猛チャージ。少しずつ、そして着実にポジションもアップして行った。そして上位入賞も見え始めた頃、やはりストレートの速さを武器とするメルセデスをパスしようとしたところでスピン。これでメルセデスとBRZに抜き返されたが、残る周回数でBRZを再逆転。上位入賞まであと一歩の7位でフィニッシュした。
後半のスティントを担当した平中克幸選手
「昨日は最悪だったけど、その状態(予選15番手グリッド)からスタートして7位。最良とは言わないまでも結果的にはよかったと思います」と田中哲也選手。
チェッカーを受けた平中選手も「15番手(のグリッド)から7位入賞でよかったです。予選までの段階ではクルマのいいところを探しきれていなかったのですが、決勝ではいいペースで走れました。ベストラップは5番手につけています。でもうちのクルマは直線が遅いのがウィークポイントで、これはもうどうしようもないのですが、それをカバーできるよう、次までには何とかしたいですね」と、早くも次戦をにらんでいるようだった。
小笠原康介エンジニアも「走り出しが超オーバーで、それは予選までにはどうしようもなかった。でもレースセットではタイヤも安定していたしフィーリングもよかったようです。何よりペースが悪くなかったですからね。でもポルシェやランボルギーニ、アストン・マーチンの速さは見えてこないですね。FIAのBOP(車種間の性能調整)が“改善”されるのが一番ですが、それを待っているだけでもしかたがないので、次回までにタイヤのパフォーマンスを引き上げて、コーナリングスピードをさらに高めることができるようトライするつもりです」と次戦以降への作戦を練っていた。
第4戦スポーツランドSUGOでのGAINER DIXCEL R8 LMSとダンロップの活躍に期待したい
昨年は、開幕から3戦連続で2位入賞を果たしてドライバー&チームともにポイントランキングトップの座をキープして、第4戦菅生ラウンドに臨んだ。マシンを「GAINER DIXCEL R8 LMS」にスイッチした今季は、開幕戦で優勝を果たし、富士ではポールポジションを奪ったが、第2戦は5位、第3戦では7位と連続で表彰台を逃してしまい、ポイントランキングでは3位につけて、次戦のスポーツランドSUGOを迎える。高低差約73m、最終コーナーからメインストレートは上り10%勾配というテクニカルサーキットだ。
チームとドライバー、そしてダンロップタイヤの開発陣が一丸となり、さらなるパフォーマンスを引き上げるための新たなチャレンジに注目したい。