第9戦 10月25日(金)~10月27日(日) 新城ラリー2013
来場4万人を超えるビッグイベント新城で、勝田範彦/足立さやか組がシリーズ4年連覇を奪取!
今年も地方戦、TRDラリーチャレンジが併催され大いににぎわった新城ラリー。初日は雨に見舞われたにも関わらず、両日の観客合計数は4万2000人に達した。
2013年の全日本ラリー選手権も、いよいよ最終戦。2クラスのタイトルがこの最終戦まで持ち越された戦況の中、今年で開催10周年の節目を迎えた新城ラリーで決戦を迎えることとなった。注目を集めたのは、既に2戦に渡ってタイトル確定の可能性が実現せずに持ち越しとなっているJN4クラスの勝田範彦/足立さやか(インプレッサ)と奴田原文雄/佐藤忠宜(ランサー)の戦い。第7戦のラリー北海道では、最終SSでの逆転劇でタイトル獲得が叶わず、第8戦ハイランドマスターズでノーポイントに終わった奴田原と、この2戦で連勝を重ねた勝田の立場は今や逆転。奴田原がタイトルを獲得するには初日、2日目共にデイトップにつけての完全優勝が絶対条件。地元愛知在住かつ舗装を得意とする勝田にとっては圧倒的に有利な戦況となったのだ。一方、同じくタイトル確定が持ち越されているJN1では、今季2勝、2位2回と好成績を収めている松岡竜也(ストーリア)がポイントリーダー。松岡を6.4ポイント差で追いかけている鷲尾俊一(ストーリア)とこちらも一騎打ちとなった。なお、今季のポイントは全9戦中7戦が有効となり、今回、78.54kmのSSが設定される新城ラリーの係数は1。優勝した選手には10ポイント、2位に8ポイント、そして1ポイントずつ減算して8位までに入賞した選手までポイントが与えられる。また、さらに各デイにおけるクラス別順位に従い上位3人の選手には3~1のデイポイントが加算される。新城ラリー自体は開催10年目という節目を迎え、イベントの規模はさらに拡大。これまでの新城市だけでなく愛知県からの支援も受け、拠点を新城総合公園に移動、大々的なラリーパークを展開。昨年も来日した往年の名WRCドライバー、ビヨン・ワルデガルドが再来。新井敏弘、田島伸博といった国内トップドライバーと共にデモランを披露した。さらに公園の内周路を使用したショートSSはインターネットによる生中継を行うなど革新的な取り組みにも挑戦するなど、話題豊富なイベントとなった。
総合リザルトでは結果として雨に泣かされた勝田だったが、デイ2単独ではトップフィニッシュと貫禄を見せて、タイトル4連覇に華を添えた。
台風の直撃も心配された今回の新城ラリー。レッキ中は強い雨にも見舞われ、スタート前夜は一層雨は強まったが、初日の朝を迎える頃は、雨も一時落ち着きを見せてきた。予報では昼頃から晴れ間も見えてくるという。ラリー北海道、ハイランドと連勝し、俄然タイトルのチャンスが高まった勝田範彦/足立さやか。しかし天候の変化や路面の状態などをゼロから判断しなくてはならない先頭順からの走行は、特に今回のような天気では、至難を極める。運命の決戦、最初のステージは、2009年以来に使用するという「ほうらいせん一念不動」。普段から交通量がほとんどなく、路面の表面にはうっすらとぬめりが乗っており非常に厄介な路面コンデションだ。このクラスがステージを走行する頃には雨が再び強くなり、勝田はこのSSで4番手、一方の奴田原も首位から13.7秒差の7番手に沈む。続くSS2は、旧有料道路を利用した2車線の幅広い「作手北」。速度域は高くなるが霧も出てきて、一層トリッキーな状態となった。気になる奴田原は、3番手タイムとやや持ち直すが、それでも首位まで12.5秒の3位とトップとは差が広がっている。奴田原がこの日を首位で折り返さなければ自分のタイトルが決まる勝田にとっては、慎重にステージをクリアしていきたいところだ。しかし、雨が止み、やや晴れ間も見えて来た中で迎えたSS4は、トリッキーなSS1の再走。ここで勝田は、ウエット部分に足を一気にすくわれ、コントロールを失ってしまう。クラッシュして道をふさぐ形となり、自身は無念のリタイア、このステージでは全車に同一タイムが与えられた。これで残るステージ は、ハイスピードステージである「作手北」の再走とラリーパークで観戦できる0.95kmのショートステージのみ。ここでの奴田原の順位を見守る立場となる。しかし、SS1での遅れが響いた奴田原は、SS5、6と連続ベストタイムを叩きだすものの、総合順位では3位が精一杯。この時点で、勝田のシリーズ4連覇が確定した。「見た目とグリップレベルにかなりの違いがあり、ウエットに乗った時点で予想外に外に膨らんでしまいました。デイ1が終わった時点でタイトルは決まりましたが、王者としてケジメをつけたい」と語った勝田は、メカニックたちの必死の奮闘に支えられ、修復されたマシンでデイ2再スタートを果たし、デイ優勝を目指す。一転、秋晴れに恵まれた2日目は、新城最大の難所である「雁峰西」14.27kmが控える。イベント最長であると共に、木陰の部分には苔が生え、場所によっては路肩が落ち込むなど、道の特色が多変するため、グリップレベルの差が大きく、「雁峰を制する者は新城を制する」とも呼ばれるほどの名物ステージだ。全選手が警戒するこの山場で勝田は、2回の走行でいずれもベストタイムを叩き出す渾身の走りを披露し、デイ2トップでのフィニッシュを果たした。
シリーズの最終局面で、課題となっていた「デイ1トップ」を達成し、タイトル争いも大いにかき乱した高山の活躍は、来季も大いに期待される存在だ。
一方、初日を首位で折り返し、勝田のタイトル獲得をサポートしたのが、成長著しい高山仁/河野洋志(インプレッサ)だった。難所のSS1を3番手タイムでまとめると、ハイスピードステージのSS2でベストタイムをマーク。前半ループを終えた時点で奴田原に11秒差をつけた。タイトルに後がなくなった奴田原が激しい巻き返しを図った後半も、ハイスピードSSで1.6秒差、ショートSSで0.8秒差と僅差に抑え、自身初となるデイ1トップを達成。課題となっていた「初日からトップ」を、この緊迫した局面で果たした。これでデイ2では、初めて先頭順から走行することになった高山。先行車のラインやブレーキングポイントなど参考できる要素がない状態での走行は、想像以上に難しいものだが、高山は難所の「雁峰西」はSS7でセカンドベスト、SS10ではヒットをしながらもサードベストと、慎重ながらも堅実なタイムでまとめる。奴田原からは追い上げられはしたものの、それ以下の追随は許さず、昨年に引き続き2位でのフィニッシュを果たした。
新城の難所、テクニカル&トリッキーな雁峰で貫禄の走りを披露した天野。ライバルに突き入る隙を与えず、見事な勝利を飾った。
コンパクト車両のJN2では、既にタイトルが確定しているが、前年王者の天野智之/井上裕紀子(ヴィッ ツ)にとっては、地元新城での勝利は譲れない。今季の最終戦を勝利で飾るべく、気合いを入れて臨んだ。しかし、トリッキーなコンディションに上位クラスでアクシデントが多発し、勝負どころの「ほうらいせん一念不動」は、2本とも同一タイムが与えられることに。上りハイスピードの「作手北」では、重量差に阻まれた上にギアのファイナルも合わず、トップの川名賢/小坂典嵩(ヴィッツ)から6.7秒遅れで初日を終える。しかし、山場の「雁峰西」1本目では、スピンを喫しながらも2番手を8秒近く引き離すどころか、JN3全車を凌駕するスーパータイム。ここで川名をかわして首位に浮上すると、2本目の雁峰西では、総合でも5番手に食い込む圧巻の走りを披露。最終的に川名を17.7秒差にまで引き離しての今季2勝目をマーク。さらに、総合でも7位に入った。「得意の新城での勝利は譲れませんでした。もちろん勝ったこともうれしいのですが、総合順位でも、JN3の多くをさしおいて、JN4に食い込むことができたのは、本当にうれしいですね。雁峰は、気合いを入れてがんばりました!」とうれしい勝利コメントを明かした。
今季は第3戦から3連勝した松岡。2戦を欠場して臨んだ新城での最終決戦でタイトルを決めた!
最終戦までタイトル決定がもつれこんだJN1クラス。同じくSS1とSS4では同一タイムが与えられた。チャンピオンの座を巡っては、ポイントリーダーの松岡竜也/縄田幸裕(ストーリア)と2位で追う鷲尾俊一/佐竹尚子(ストーリア)との一騎打ちとなった。スタート前、懸念された天候にも「雨は得意。このまま降り続いても一向に構わない」と語っていた松岡は、SS2から鷲尾に5.1秒差をつける快調な滑り出し。初日を終えて11.0秒差をつけての首位に立つ。そして勝負どころとなるデイ2最初のSS7、「雁峰西」では、その松岡が左コーナーでアウト側をヒット。これで鷲尾とのタイム差が一気に2.2秒に縮まってしまった。これでタイトルの望みが再燃した鷲尾は、続くSS8の「作手北」でアタック。しかしこのステージ中盤、ゆるやかな上りの4速右コーナーでフロントをガードレールにヒットしてしまう。日中サービスにはたどりついたが、ラジエターにダメージを負ったほか、左側ライトも失っていたため、続行を断念。ここで松岡のタイトルが確定した。