第3戦 5月20日(金)~5月22日(日) HIMUKA RALLY '11 IN 美郷
地元密着が大きな魅力を生むラリーin美郷で
ダンロップ勢が3クラスを制した!
恒例となったセレモニアルスタートでの1コマ。地元からの深い理解があってこそ成り立つ沿道から声援が、参加する選手のモチベーションを高めてくれる。
全日本ラリー第3戦はその舞台を開幕戦に引き続き九州に移す。ひむかラリーin美郷は、宮崎県東臼杵郡にある美郷町周辺で開催。未舗装のグラベル路面で争われるこのラリーは、SS距離102.14kmと北海道以外で行われるラリーとしては最長距離。走りがいのあるコースとして毎年多くの参加車を集める。今回もエントリー49台と多くの参加を集めた。そして人気が高い理由は、それだけではない。1986~2005年まで平家落人伝説で有名な椎葉村で行われていた『ひえつきラリー』から続く地元密着の熱い応援。小さな子供から高齢の御婦人までもが旗を持って応援する様は、ドライバーからも高い評価を得ており参加する大きなモチベーションの一つとなっている。今回のラリーは13.10kmの山神下、2.98kmの長迫、最長13.45kmの珍神、そしてリバースで6.77kmの珍神R、そして最終SSに設定されている山神上の5ステージを使用して行われる。珍神は新設のギャラリーステージで、今年も例年同様多くの観客を集めた。
ジリジリと追い上げてきたランサー勢に対して、今回は波に乗れず2位に終わった勝田範彦。次戦福島で行われるラリーは、今シーズンの戦いを占う上でも重要な1戦となる。
5月21日、ラリー初日の天候は曇り。コース内は砂ボコリの立たない程度の状況でも、スタート地点ではウエット。昼間には雨具が必要なほどの雨が降ったかと思えば、霧が出て視界不良になる。山深いロケーションで展開される今回のラリーは、文字通り山の天候に左右されることに。そんな時こそ泥ねい路から硬質ダートまで幅広い路面でトラクション性能を発揮する、ダンロップ最新のダートタイヤ87Rの真価を発揮する時。総合、JN4クラスともにシリーズリーダーに立つ勝田範彦/足立さやか(インプレッサ)は、もちろん87Rをチョイス。13.10kmの山神下でスタートしたSS1からその真価を見せつける。ファーストランナーとして11分29秒9を叩き出した勝田だが、このタイムは2位につけた今回から参戦の石田正史/竹下紀子(ランサー)をなんと13.6秒もブッちぎるベスト。長迫でのSS2でもトップタイムを刻んだ勝田。セクション1を終えて2位に11.2秒差をつけてサービスに戻ってきた。だが勝田の表情が冴えない。SS1と同じコースを使ったSS3でタイムが伸びていないのだ。ここまででDAYリタイヤ10台、天候同様にラリーは荒れ模様の様相を呈していた。対してSSベストを奪ったのは、ライバルの奴田原文雄/佐藤忠宜(ランサー)。他のランサー勢も含め、セクション1終盤にかけて明らかにタイムが伸び始めていた。気まぐれな勝利の女神は、この時点で意中の人を決めかねていたのか……。仕切り直してセクション2がスタート。SS4~6までベストを奪ったのは奴田原。ランサー勢の追い上げを何とかかわす勝田。12.8秒あった奴田原との差は、SS6終了時点7.5秒まで縮まっていたセクション2最終のSS7は最長距離、珍神の再走。ここで奴田原は勝田を4.9秒上回るSSベスト。勝田に2.6秒差の2位でDAY1を終えた。完全に勝田VS奴田原の様相を呈していたJN4クラス。40.1kmのSSを残してまだまだ目を離せないDAY2は、曇間に日差しが顔をのぞかせるドライコンディションのなかスタート。最長ステージ珍神をリバースで短縮したSS8、ここで勝田のマシンに予期せぬトラブルが発生。これによりSSタイムは奴田原の47.1秒後方。逆転を許し大差のリードを許してしまう。このトラブルから歯車が狂ってしまったか?勝田は波に乗れず、ポジションキープにターゲットを定めた。結果は奴田原に57秒差の2位でラリーフィニッシュ。開幕から1位、2位、2位と安定した成績で、手元の集計ではシリーズポイントトップを守った勝田。次戦の福島はシリーズを占う上でも重要な1戦となりそうだ。
毎戦コロコロと変わるウィナーに目が離せない展開が続くJN3クラス。今回は最終SSまでセリカvsブーンの激戦が展開され、最後はセリカに乗る曽根崇仁が2年ぶりの優勝を飾った。
18台を集めた今シーズン話題豊富なJN3クラス。セクション1で頭ひとつ抜けだしたのは地元九州の曽根崇仁/桝谷知彦(セリカ)。久万高原で行われた第2戦と同様に香川秀樹/浦雅史(インテグラ)との激しいトップ争いを展開する。曽根の2.8秒リードで再スタートしたセクション2。SS4こそ曽根に譲ったものの、SS5~6で香川が追い込む。そしてこの日最終、珍神の再走で曽根を逆転!コンマ6秒差で香川がDAY1のトップに立った。まだまだ続くかと思われたコンマ差の戦いだったが、終演はDAY2に入ってあっさりと訪れた。スタートのSS8で香川の足まわりにトラブルが発生!そのままリタイヤとなってしまったのだ。だが、残るSSを制し曽根がそのまま優勝!というわけにいかないのが今年のJN3クラス。2位と3秒差の3位に着けていた松原久/香川俊哉(ブーン)が7分23秒1を叩き出し、曽根に11.2秒差をつけトップを奪いとる。続くSS9では曽根がお返しとばかりに松原を15.2秒上回り再度逆転。めまぐるしくトップが入れ替わるジェとコースターのような展開。山神上の再走となる13.28kmの最終SS11。この時点で松原はトップ曽根に対し6.8秒差につける。逆転の可能性を秘めた最終ステージだったが、速さを見せたのは曽根だった。ゴールすると、SS9での自己タイムをさらに短縮し12分27秒9を叩き出す。12分49秒4と21.5秒差をつけられた松原だったが、駆動系にトラブルを抱えていたのだ。曽根が2009年の第3戦の同じく美郷でのラリー以来、2年ぶりの優勝を飾った。表彰式では、「逆転されて気合が入りました」と語る曽根。痛車やプロトンだけじゃない、セリカが速さを見せた今回の戦い。次戦福島で行われるMSCCのラリーでは、昨年松原が優勝している。今シーズンのJN3クラスは毎戦ウィナーが入れ替わる激戦は、観ている者を飽きさせない戦いを見せてくれる。
今シーズン2勝目を飾った天野ヴィッツ。「グラベルでは明らかに新型にアドバンテージがある」と語るように2位に1分以上の差をつけて圧勝。次戦でも活躍が期待される。
新旧ヴィッツ対決の様相を挺したJN2クラス。SS1を奪った増川智/赤木弥生(ヴィッツ)だったが、グラベルでの安定度では天野智之/井上裕紀子(ヴィッツ)が上回ったか?DAY1を終了して天野が増川に1分3秒6の差をつけてトップに立った。今シーズン開幕戦でデビューウィンを飾った天野のヴィッツだったが、久万高原の第2戦ではマイナートラブルが発生していた。短期間に対策を施して挑んだ今回。予想以上の手応えを感じている。「グラベルは明らかに新型のほうがイイですね。もっと距離が長いラリー北海道だと、その差がもっと出るんじゃないかな?高速コーナーでの安定感が明らかに違う。高いポテンシャルを持っているのを確認できました。今から楽しみですね」と天野。そのコメント通りDAY2に入っても天野の快走は続く。今回設定された全11SS中、10SSでトップタイムを刻んだ天野がグラベル2連勝を飾った。
3戦連続で成立したJN1クラスは、西山敏が速さを見せ今シーズン2勝目を挙げた。初めて履いた87Rとのマッチングも良く、グラベル路面ではさらに速さを増しそうな勢いだ。
5台の参加で成立したJN1クラス。速さを見せたのはベテラン西山敏/大谷美紀夫(マーチ)。2位にセクション1で3秒、セクション2では13秒の差をつけてDAY1を終了した。DAY2に入ってラス毎のSS10と11で山北研二/馬瀬耕平(マーチ)がSSベストを奪うも、西山は1分以上の差をつけてゴール。第1戦から3戦連続で成立したJN1クラス。今シーズン2勝目を挙げた西山は、「新しい参加者が集まってきてくれて嬉しいですね。次は最終戦の新城に出るつもりですが、成立状況によっては参戦回数も増えるかもしれませんね。今回は初めて87Rを履きましたが、フィーリングも良くて新しいセッティングも見えてきました」と笑顔で語った。
第2戦からグラベル3連戦中の全日本ラリー。その第5戦が福島県棚倉町で開催される。東日本大震災の被災地域である福島復興に向けて「がんばろう!福島MSCCラリー2011」と名付けられた今年のイベント。中止もウワサされたなか、主催者はもちろん地元の協力で6月10~12日の開催が実現し、全日本主力組の多くが参戦することになりそうだ。