第1戦 4月12日(金)~4月14日(日) ツール・ド・九州2013 in 唐津
デフェンディングチャンピオン勝田範彦、盤石の走りで唐津8連覇を達成!
安全確保と万が一の際の体制準備はモータースポーツの要。エキスパートからの講習を定期的に受けることで、情報をアップデートすると共に意識の再確認につながる。
2012年シーズンを11月の新城で締めくくった全日本ラリー選手権。2013年も開幕戦は、佐賀県の唐津市を拠点とするターマックラリー、 ツール・ド・九州が務めることとなった。サービスパークとなる唐津港近隣の駐車場へは、唐津道路の唐津千々賀山田インター開通により、福岡方面か らのアクセスがいっそう簡便に。今年はこのサービスパークにギャラリーステージが隣接されることで、観客にとっても楽しみが増えた一戦となった。唐津での開幕戦でおなじみの光景となっているのは、金曜日に行われるエントリードライバー全員での唐津神社への祈願。同じ場所で行われるセレモニアルスタートでは、37台が晴れ舞台を迎え、いよいよシーズンの開幕という、ほどよい緊張感も流れ始めた。なお、今イベントに先駆けて、ラリーを主催者グラベルモータースポーツクラブはFIA国際競技規則に基づく負傷ドライバーの救出訓練会を実施。 特別講師としてラリー大国であるフィンランドからヤッコ・マルックラ氏を迎えて、実践的なレクチャーを行った。
恒例となったエントリー全員揃っての唐津神社での参拝。シーズンの開幕を告げるおなじみの光景。
注目はもちろん、現全日本チャンピオン、勝田範彦。今季も足立さやかとのコンビでインプレッサを駆り、今イベント8連覇の偉業に挑む。 所属するラックは今季、勝田のインプレッサに加え、横尾芳則の86、天野智之のヴィッツにもそれぞれグラベル用、ターマック用 と2台の車両を用意する。各戦の開催期間が短いことを考慮したものだが、この結果、勝田は昨年の新城から同じマシンで走り込みを行うことができ、 セッティングもかなり煮詰めての万全の体制。昨季最後までタイトルを争ったランサーの奴田原文雄/佐藤忠宜、同じくインプレッサを駆る柳澤宏至/中原祥雅、昨季は大一番のラリー北海道でベテランらしい貫禄勝利を挙げた石田正史/宮城孝仁と、強豪が揃う全日本の最高峰クラスJN-4で、タイトル4連覇に挑む。今季の開幕ステージは、3.93kmの「林の上」。ここで幸先よく2.4秒差をつけてのベストタイムをマークした勝田は、続くSS2 でも奴田原を1秒先行。SS3に設定されている2.31kmの「黒木平」は「リスキーなステージなので、危険を回避してやや抑えめにアプローチした」と言う通り、この日、再走、逆走の1回共にベストは譲ったものの、それ以外のSSはすべてベストタイムと圧巻の強さを見せつけ、2位奴田原には 10.4秒、3位柳澤は35.9秒ものマージンを築いての首位でデイ1を折り返した。
昨季、投入したニューマシンはターマック仕様に固定、セッティングを煮詰めてきた。隙のない走りで今イベント貫禄の8連覇を達成し、全日本4連覇に向けて好調に滑り出した。
デイ2に設定されるギャラリーステージは、わずか0.36kmのスプリントコース。「短いステージはあまり得意ではなく、短い割にタイムロスが多い」とショートステージに苦手意識を見せていた勝田にとっては、この日3回設定されているこの「シーサイド」は今ラリーで唯一の懸念要素だった。しかし、この鬼門でのタイムロスも最大で予想範囲の1秒近辺にとどめ、その分を10.90kmの「三方」で充分に取り戻す走りを見せた勝田は、2位奴田原との差をさらに17秒まで広げる。これでかなり余裕ができ、残るステージもその差を推し量りながらステージをクリアしているかのように見えたが「実は三方の再走でミッションのトラブルを抱えて。3速の歯が飛んでしまったので、2速と4速でしのぎ切ったんです」と思いがけないアクシデントも。しかし、このステージでもベストタイムをマークした勝田は、最終的に奴田原に10.2秒差をつけての開幕勝利を果たした上に、今イベント8連覇という圧巻の強さを見せた。「1日目、2日目共にタイヤ選択もばっちり決まり、すべてが理想通りに進みましたね」という勝田は、順調に今季を滑り出した。
S2000で登場した筒井は、アクシデント続出のSS15を難なくまとめたことで2位を死守した。
熾烈なバトルを見せたのは、昨年から86が参入し一気に激戦区と化したJN-3クラス。今回はチャンピオンの眞貝知志がエントリーしていないため、この間にポイントを稼ごうと強豪ドライバーが白熱の展開を繰り広げた。まず先手を打ったのは、レビンの山口清司/島津雅彦。JN-4車両も抑える 激走を見せたが、S2000の筒井克彦/永山聡一郎も2.3秒差、86の横尾芳則/船木一祥も3.0秒差で続く。しかしSS2は筒井、SS3は再び山口、SS4はさらに筒井が取り返すという大接戦となり、デイ1に設定された12SS・計37.30kmを終えて、首位山口と2位筒井の差はわずか0.2秒!さらに3位の三好は8.2秒、4位横尾も10.6秒と僅差に迫った。そして注目のDay2。山場となった10.90kmのロングステージでスーパータイムをマークしたのは、横尾。総合でも7位に食い込む激走で、このSSだけで2番手タイムの山口との差を9.2秒も詰めて、クラス2位に浮上してきた。しかし続くSS15になると、速度域が大きく下がり、リズムを崩してスピンを喫するドライバーが続出する。このSSをそつなくまとめた筒井が、このSS7番手タイムに沈んだ山口に4.4秒差をつけてのクラス首位を奪取! JN-3クラスの優勝争いは、筒井と山口の両者に絞られてきた。続くロングステージは3番手タイムながら、ベストの山口との差は1.1秒に抑えた筒井だったが、SS17、3.81kmの「白木々場」で7番 手タイムに沈み、山口の首位奪還を許してしまう。残る2SSはいずれもわずか0.36kmのショートステージだったため挽回のチャンスを逸した筒井だったが、今季の滑り出しをポディウムフィニッシュで飾った。
地元九州の岡田は昨年のモントレーでターマック優勝を経験。SS15でのベストタイムが光り、開幕戦で3位を獲得した。
JN-2は、ヴィッツ、デミオ、スイフトなどのFF1500cc車両のクラスで、こちらも激戦区。昨季は、チャンピオンの天野智之/井上裕紀子が川名賢/安東貞敏(ヴィッツ)と最後までタイトルを争ったが、その他にも岡田孝一/漆戸あゆみ(デミオ)、高橋悟志/箕作裕子(ヴィッツ)と勝利を狙えるドライバーが多数存在する。さらに昨年はランサーで今イベント3位に食い込んだ九州在住の榊雅広/井出上達也がヴィッツでエントリーしており、不気味な存在だ。その榊はSS1からベストタイムを叩き出すと、JN-3にも割って入る快進撃を見せた。一方チャンピオンの天野のターマック用マシンは、ラックが用意する2台のうちの新車。今回はまだセッティングが煮詰まり切っておらず、リズムをつかむのに苦戦したが、それでもデイ1終盤にはセカンドベストも連発し、同じく福岡出身の岡田と共に榊に食らいつく。デイ2は、全クラスで鬼門となったSS15で岡田がベストタイムをマークし、開幕戦でポディウムフィニッシュ。天野はロングでセカンドベストと健闘し、4位でフィニッシュを迎えた。
昨年の洞爺での勝利も記憶に新しい松岡。要所要所で見せ所を作り、2位に食い込んだ。
JN-1は5台がエントリーして、昨年に続き開幕戦からクラス成立。昨年の洞爺戦ではクラス優勝を果たしている松岡竜也/縄田幸裕が、この開幕戦で安定してトップ3タイムをマーク。2位につける難波巧/石下谷美津雄(RX-8)の背後にキッチリと食いつき、虎視眈々と上位浮上を狙いながらSS9ではセカンドベストも叩き出して、難波に13.5秒差の3位でデイ1を折り返す。そして追い上げを目指すデイ2、松岡はこの日最初のSSからベストタイムをマークし、難波を追い詰める。そして、今回の山場となったSS15ではJN-1でもドラマが起きた。その難波が痛恨のリタイアを喫したのだ。これで2位 に浮上した松岡は、最終2本のギャラリーステージをいずれもベストタイムでまとめて見せ場を作っての2位フィニッシュ。3位にはマーチの山北研二/大谷三紀夫、4位にはヴィッツの鷲尾俊一/田代啓之が入った。