第9戦 10月14日(日) SUPER GYMKHANA IN IOX-AROSA
PN2河本&SC牧野がシリーズ5勝目!
有終の美を飾って最終戦が終了
紅葉の季節にはまだ早い? 醫王山の中腹にある駐車場に設置された19本のパイロンが様々なドラマを生んだ。2012年全日本ジムカーナ最終戦が行われたイオックスアローザ。
ついに今シーズン最終戦を迎えた全日本ジムカーナ。これまでも数々の名勝負を生んできた富山県のイオックスアローザがその舞台だ。そして今シーズンただ一つのパイロンコースでの開催となる。急速に進んだ秋の季節は、朝方から昼への急激な路面温度の変化を生む。それが今回の結果にも大きく影響することとなった。最終戦までもつれ込んだSA3クラスの熾烈なチャンピオン争い。4人にチャンピオンの可能性が残るなど、どちらに転ぶかわからない状況に選手たちは必死で対応する。それでは、早速ダンロップ勢の活躍を見ていこう。
強力なライバルたちとのバトルの中、最終戦で優勝を飾りシリーズ5勝を挙げた河本晃一。その戦いの全てが糧となり、一段上のドライバーへと成長を遂げた2012年だった。
Z、86、BRZ、シビックなど、現在旬なクルマたちが無差別級の戦いを繰り広げてきたPN2クラス。2013年から86&BRZが別クラスとなることを受け、その戦いも今回の最終戦が文字どおり最後。2年連族チャンピオンを獲得した河本晃一は、九州で行われた第8戦を仕事でスキップしたため今回のイベントにかける意気込みも高い。「今シーズン自分を鍛えてくれた山野(哲也)さん、(松本)敏さんと一緒に走れる最後の機会ですからね。PN2クラスの卒業試験だと思ってイベントに挑みました」と河本。下馬評ではやはりFF勢が有利か?という声も多かった。決勝1本目がスタート!やはりシビックが一歩抜きん出る。第8戦雨の九州を制した松本は、その好調さを維持し大本命でイオックスに乗り込んできた。前半セクションを48秒776と圧倒的なスピードで駆け抜けた松本だったが、後半最終ターン前のパイロンがわずかに動いた。1分20秒390というトップタイムが幻と消える。最終ゼッケンの河本がスタートする。前半セクションは、松本に遅れること1秒。だが後半をうまくまとめて1分20秒969を叩き出しトップで折り返す。気温、路面温度ともに上がった2本目。松本はシッカリと走り切り、1分20秒537と逆転する。だが河本が今シーズン大きく成長した姿を見せる。「1本目が終わって生タイムで比較すると、敏さんにコンマ6秒負けてたんですよ。だけど向こうは、パイロンタッチで沈んでて無理ができない状態。こっちはコンマ6秒という大差を追いかけなければいけないというプレッシャーがありました。走りを見ていた(アジュール代表)川村さんには、『うまく走れば1秒ちょっとは上げられる』と言われました。でもボクの予想は、コンマ8秒くらいのタイムアップまでしか見えていませんでした。それでアナウンスされた敏さんのタイムを聞くと、1分20秒537。実質コンマ2秒のタイムダウンなんですよ。それをコンマ6秒から差し引くと、その差はコンマ4秒。コクピットに座りながら、『勝てる!』と思っちゃいました」と語る。自信に満ちたその走りで最後の最後に松本を逆転!今シーズン5勝目を挙げる。「今回は満を持して新品を投入しました、昨日の夕方に履いてホテルまで往復して今日のイベントに備えました。でも皮が剥ききれてなくて1本目スタートしたらズルっと滑っちゃった。でも、その後は直ぐに温度が上がってくれて、後半セクションは楽に走れたんですよ。それが分かってたから、2本目はタイヤ1本分ずらしてツルツルじゃないところを狙ったんですよ。だからスタートダッシュを決められたと思いますよ」と河本。大きな成長を見せてシーズンを締めくくった。
まれに見る激戦となった2012年のSA3チャンピオン争い。シリーズ2位が確定した津川信次。「このままじゃ終われん」津川は2013年のリベンジを静かに誓った。
高度にチューニングされたマシン、並みいる全日本チャンピオンたちのエントリー、そして実績に裏打ちされた高度なドライビングテクニック。SA3クラスを表する言葉は、ナンバー付き箱車で最速タイムを刻み続けるクラスの形容詞だ。今シーズン、見事なまでに星が割れたため、津川信次、茅野成樹、天満清、西原正樹の4人にチャンピオンの可能性が残った。戦前の予想ではランキングトップの津川が一歩有利。有効ポイントの関係で2位以上ならチャンピオンが確定する。だが、公開練習から絶好調なのは西原。あまりの速さに手がつけられない状態で、西原トップでシミュレーションを立ててみた。すると驚く事に有効ポイントで並び、有効戦数内でのポイントの取り方まで同じ。という事で捨てポイントでの比較を見ると、西原10に対して津川が3。つまり12点を獲得する3位以上で西原を抜いてチャンピオンが確定する。SA3の拮抗した戦いを象徴する状況だ。そして決戦の日曜日、1本目がスタート。シリーズ4位の西原からスタート。やはり速い!1分13秒582を叩き出しトップに立つ。続く茅野、目一杯パイロンを攻め込む走りを見せるが1分13秒658と西原に届かない……。続く天満は、さらに切れた走りを見せ1分13秒341と西原を上回るタイムを叩き出してトップタイムを更新!逆転につぐ逆転に会場の雰囲気は最高潮に。そしてランキング1位の津川がスタート。前半セクションでの遅れを後半で取り戻すことができず5位に……。仕切り直しの慣熟歩行。各選手は気温が上がり、走りこまれた路面を確認する。そして2012年最後のトライが始まる。やはり西原が速い。1分12秒487と天満のタイムを塗り替え逆転でトップに立つ。続く茅野は西原が優勝の場合、2位以上でチャンピオンが確定する。この時点でのターゲットタイムは、天満の1分13秒341。パイロンタッチに苦しめられた今シーズン、探りながらの走行を強いられてきた。だが「2本目は、目一杯攻めますよ」と語っていた茅野だったが……。中間タイムが思った以上に伸びない、ゴールするがタイムは1分13秒883とタイムダウンで天満に届かず3位。続く天満は、1分12秒751と自己タイムを更新したが西原に届かず2位と変わらない。アナウンサーの絶叫が会場に響くなか、最終ゼッケン津川がスタート!前述のとおり、西原優勝の場合3位以上がチャンピオン獲得の条件だ。前半セクションは茅野とほぼ同タイム、だが後半で遅れた……。タイムは1分14秒141と茅野に届かず5位。2012年のシーズンが終了した。熱気が冷めた表彰式終了後のパドック。津川が静かに語り始めた。「結果を見ると、もてぎと九州でノーポイントだったことが響きましたね。タイヤチョイスも大分悩んでたのも確か。金曜日から走ってきたデータを元にS2コンパウンドを選びました。S2のポテンシャルを引き出し切れなかったところもあったかもしれませんね。すべて自分の責任です。でも、このままじゃ終われんと思ってます」シリーズ2位。しかも、捨てポイントの大きさで決まった今シーズンのSA3クラス。この悔しさをバネに、津川は2013年のリベンジを静かに心のなかに誓った。
九州でチャンピオンを決めた牧野タイソン。チャンピオンとなったタイソンは1本目からトップタイムを叩き出し、逃げ切って今シーズン5勝目を挙げた。
大牟田で行われた第8戦で、初の全日本チャンピオンを確定させた牧野タイソン。最終戦となる今回は落ち着いた走りを見せた。1本目に1分12秒579をたたき出してトップに立つと、タイソンのタイムを破る選手が表れない。2本目も逃げ切って堂々の、今シーズン5勝目を挙げた。「1本目からしっかりタイムが出るなんてボクらしくないですね(笑)。今回はチャンピオンが決まっていたという事もあって、落ち着いてたかもしれません。ポイント争いをしていた時と違う走り方ができたかもしれません。それにここは準地元みたいな場所で、地区戦のときからよく走ってましたからね。今までの集大成みたいな気持ちになりました。来年はもう少しSC車両のメリットを出せるようなチューニングをしたいですね。今回のネタですか?そうですね、高速道路でイオックスに向かうはずが気づくと逆方向に向かってました。会社に行くのと間違えちゃったんですね(笑)。次のICで降りて、乗り直しました。まぁよくある事ですけどね」とタイソン。来年はクルマをメンテナンスするプレジャーレーシングの大橋渉代表がSCクラスに参戦するという情報もあり、師弟対決が繰り広げられるかも?こちらも楽しみな1年となりそうだ。全日本ジムカーナは、これで2012年全てのイベントを終了。長いシーズンオフを迎える。ダンロップタイヤを履いてエントリーしたみなさん、本当にありがとうございます。来年の3月9~10日に鈴鹿南コースで行われる開幕戦で、みなさんとお会いできるのを楽しみにしています。