第6戦 8月2日(日) 浅間台スポーツランド
外れかけた歯車がしっかりと
かみ合い始めた今回の浅間台
千葉県にある浅間台スポーツランドに舞台を移して開催された全日本ジムカーナ第6戦。後半戦に入って各クラスのチャンピオン争いは、ますます熾烈さを増してきた。1本目と2本目でタイヤ交換が許されないジムカーナでは、朝のタイヤ選択は最重要項目となる。前戦イオックスに続くパイロンコース、八月に入って高まる気温、梅雨に逆戻りしたかのような天候。特に浅間台のコースは、路面に雨がたまるとまるで氷上? といわれるほどグリップが下がってしまう。スタート前にドライバーの頭を悩ます要素はいやというほどあった。選手たちはいつ変わるかもしれない曇り空を眺めながら、全日本ジムカーナ第6戦がスタートした。
勝利への執念が現れた茅野の走り。これでもかと浅間台のパイロンコースを攻めた。
1本目に1分10秒413を叩き出しN4クラス2位につけた茅野成樹。2本目勝負と踏んで茅野が選んだのは、中高温域用のM1コンパウンドだった。N2クラスの途中、曇り空からぽつりぽつりと雨が降り始める。走行する車輌のワイパーは動いているものの、路面を黒く濡らすほどの雨量ではない。
「2本目スタート前に雨が降り始めてきたので、正直タイムアップは無理かな? とも思いました。だけど直前のSA3クラスで同じタイヤを選択した(川脇)アニキがタイムアップして優勝したので、これはイケル! と思いました」
と茅野。走り出すとしっかりと路面に食いくM1コンパウンド。パイロンぎりぎりを攻め続ける茅野の走りに、会場に訪れた観客の目は茅野の走りにクギづけだ。ゴールしたタイムは1分9秒623。終わってみれば2位にコンマ7秒以上の差をつけるスーパーラップ。今シーズン初優勝を劇的な逆転で飾った。
「これで振っ切れました。残りは全部勝つつもりでゆきます」と力強いコメント。
「タイヤ、クルマ、ドライバーその性能を全部出し切った感じ。これでもか! というくらいに攻めました。とにかくうれしいです! 今年に入って初めての優勝できました。正直ポイントのことは考えてなかったんですが、残りは全部勝つつもりゆきますよ。とにかく今回で振っ切れました」
天候に苦しめられたシーズン前半戦。そんな中でも、攻める気持ちを失わなかった茅野。今季初優勝に心から拍手を送りたい。
パイロンセクションでの苦手意識を払拭。スキルも常に進化を続けている。
2本目に入ってぱらぱらと降っては止む雨に、先の展開を予想させなかった今回の戦い。JAFカップ最多保持者の宮嶋一人が設定した今回のコースは、前半にコース幅を目一杯使った高速セクション。後半に観客席前でのテクニカルセクションと区分けされていた。SA3クラスは、2本目にスリリングなトップタイム更新合戦となる。1本目トップに立った川脇一晃。だが勝負をかけた2本目、一コーナーへの突っ込みであわやスピンしかかってしまう。だが勝利への執念は消えない。前半のタイムでは遅れたものの、後半パイロンセクションでしっかりとタイムを稼ぎ再逆転で優勝を飾った。
表彰式では他の選手の物まねで沸かせた川脇。その明るさに会場は爆笑!
「昨年の浅間台での優勝以降、パイロンセクションはタイムが稼げるという感覚を持てるようになりました。SA3クラスを戦っているライバルを考えると、カートコース必死に走っても100分の1秒差をつけられるかどうか? だけどパイロンセクションでは、少しのミスでも平気でコンマ3秒くらいは変わってくる。そのパイロンを自信を持って走れるようになたのは、すごく大きいですね」
これで川脇自身が最低ラインと踏んだ3勝目をライバルに先立って挙げた。連続チャンピオン獲得に向けて大きな1勝となった。次戦は得意の鈴鹿サーキット南コース。常に明るく周りを和ませる川脇。前半戦で噛み合わなかった歯車が、ひとつひとつ噛み合い始めてきた今回の浅間台のイベントだった。
大好きな季節の夏に向けて、不調を脱しつつある田原憲。
これまでも公開練習や事前練習ではトップに肉薄するタイムを叩き出していたものの、決勝になるとトラブルなどで結果が残せなかったN3クラスの田原憲。だが今回は違った。明らかに田原らしい走りが戻ってきた。
「今さらながらかもしれないけど、やっと歯車が噛み合ってきた感じだね」
と明るい表情で語る。今回はトップからコンマ4秒差の3位、残る3戦N3クラスの台風の目となるのは間違いない。
最新のDクラスマシンにもひけを取らない活躍を見せた上野宗孝のM1。
歴代の名ドライバーが、そのステアリングを握ってきたDクラスマシンM1。ジムカーナ界のスーパーDの先駆けとなったマシンだ。だがそれが過去の遺物ではなく、現在でもトップクラスのポテンシャルを持っていることを上野宗孝が2位というリザルトで証明して見せた。他のダンロップDクラス勢も4位、6位と今回の浅間台で活躍を見せた。
川脇、茅野の活躍は、各クラスで外れかけていた歯車を噛み合わせ始めた。次戦は近畿~中部地区の選手が得意とする、鈴鹿サーキット南コースでの開催となる。全日本ジムカーナ第7戦、鈴鹿でのハイスピードバトルを見逃すな!