第1戦 3月15日(日)岡山県備北サーキット
不況の波を吹き飛ばせ!
有力選手が2009年チャンプ獲得に向け順調な滑り出し
一見するとフラットに見える備北サーキットだが、細かなアンジュレーションに加え轍も存在する。
今回は舗装も含めた路面をどう読むか? それが勝負の一因となった。
未曾有の経済危機、自動車メーカーのモータースポーツからの撤退。昨年末より暗いニュースには事欠かなかったともいえるモータースポーツ業界。不況の影響は、参加型のモータースポーツにどんな形で現れるのか? 様々な意味で注目度が高まった2009年全日本ジムカーナの開幕戦。ふたを開けてみると会場となった岡山県備北サーキットには、北海道~九州まで全国から140台の競技車両が集まった。参加分布を見てみると最多は関東の51台、関西の26台、中部の25台が続く。分析の方法は100人100通り。さまざまな解釈が存在するので割愛するが、言い換えれば140台という競技車を集めるポテンシャルが全日本ジムカーナに存在していることが紛れもない事実として証明されたと捉えよう。
「今のご時世にとらわれ過ぎず、走ることを愉しんで!」とSA3クラスの川脇一晃選手。その言葉どおり、2009年開幕戦を優勝で飾った。
さて前置きが長くなってしまったが、開幕戦を迎える備北サーキットの天候も荒れ模様だった。金曜日は底冷えのする大雨、公開練習の3月14日は寒風に乾いた粉のような雪が舞い荒れる。翌日の決勝1本目スタート時は曇り気温2℃から太陽が顔を出す。2本目が佳境を迎える14時30分頃には16℃前後まで上がる。めまぐるしく変わるコンディション。
コースもストレートを目一杯まで取った設定。一コーナーからスピードの乗るS字からテクニカルセクション、大きく取った内周から島周りへ。そして最後へメインストレートで最高速からゴール前の複合テクニカルセクションへ。フラットに見えるコースも、アップダウンに微妙なアンジュレーションに轍が存在する。タイヤマネジメントにドライビング、セッティングの変更など様々な要素が選手の頭の中をかけめぐっていたことは想像に難くない。
自身初の2年連続シリーズチャンピオンに向けて順調な滑り出しを見せた川脇一晃選手。
そんな厳しい気候の中でも多くのダンロップユーザーが活躍を見せた。強豪がひしめくSA3クラスで2008年チャンピオンを獲得した川脇一晃選手がその一人。今シーズンもチャンピオンマシンのエボ9で参戦する。
「ボディは一緒ですけど、エンジンからドライブシャフトからハブまで、新車を一台作るくらいのメンテナンスを施しました。もちろんチャンピオンを獲るための選択ですが、シーズン中にエボ10に変更することも視野に入れています。ボクらが率先して新車を投入することで、クルマはもちろんタイヤの開発にもつながることだと思っていますんで楽しみにしていてください。それと今回はフロントタイヤにM1コンパウンドを選択しました。気温の面だけを考えるとこの季節はS1を選択してしまうんです。だけど事前のテスト時に、タイヤへの攻撃性が高い備北サーキットの特異な路面からM1を選択して走ってみたんです。そのときに後半でタイムを稼げるという感触があったので、今回はフロントにM1を履きました。今回は正解でしたね」
気温が上がり始めた1本目、1分16秒345のトップタイムをたたき出した川脇選手。2位津川信次選手をコンマ4秒も引き離すスーパータイムだった。このタイムは2本目に入っても破られる事なく逃げ切って優勝。『チャンピオンの貫禄』と言う言葉がピッタリと当てはまった強さ。2年連続3回目のチャンピオン獲得に向け順調なスタートを切った。そんな川脇選手が是非にと語っていたコメントを付け加えよう。
「今のご時世という言葉で、いろんな事が片付けられてますが不況だから走ることがつまらなくなるなんて事は絶対にないです! ジムカーナやダートラをやっている人はほとんどの人が趣味。だからメーカーが辞める事で走れなくなるプロフェッショナルと違って、続ける人は多いんじゃないかと思ってます。ボクの知り合いにも高速道路が1000円で走れるようになったら、今まで走ったことのないサーキットに行くんだという人が一杯いますからね。ぜひ楽しく走ることをあきらめないで、ジムカーナを続けてください!!」
そう締めくくった川脇選手。自分自身が楽しく走り続けることで、周りの人間も楽しくしてくれる。近くでジムカーナが開催されるときは、川脇選手のパドックを訪れてみよう。こんな楽しみ方があるの? と目から鱗の走りの楽しみ方を教えてくれるに違いない!
これまで苦手だったサイドブレーキターンにも開眼! いまだ成長を続けながらチャンピオン獲得を目指す津川選手は今回2位。
SA3クラスで川脇選手に次いで、コンマ2秒差で2位につけた津川選手。
「いやぁ、ほんとに100%以上で戦わないと兄貴には勝てないですね。今回はボクもM1コンパウンドを選択しました。それもフロント、リヤともにね。最終的にはここまで気温が上がったので、勝てるチャンスは十分にあったと思うんで本当に悔しいですね。クルマは3年目になるエボ9です。同じ競技車を3年使うのは、初めてなんです。だから入念にリフレッシュしてきました。SAの車両規定を考えて、ブレーキの軽量化を図ってきたのでセッティングを詰めて次の名阪に挑みます!」
川脇、津川ふたりのダンロップユーザー同士の争いがレベルを引き上げてきたSA3クラス。少ない台数の中で、内容が濃すぎるほどの戦いが繰り広げられる。このクラスが全日本ジムカーナシリーズの目玉ともなっている。次戦、名阪の戦いも要注目だ。
2007年N4クラスチャンプの茅野選手もチャピオン奪還に向けて、3位に入賞した。
昨年シリーズ2位につけた古谷哲也選手がラリーに転向。N4クラスを走る茅野成樹は1本目パイロンタッチで下位に沈んだものの、2本目きっちりと走りきって3位に入賞した。
「今シーズンは、昨年菱井将文選手に獲られたチャンピオンを奪い返すべく参戦します。クルマは昨年と同じエボ9。今回のコース設定では、タイヤが暖まるまでの前半の遅れを後半で巻き返すつもりで走ったんですが……。ホント悔しいです。次戦の名阪は、今回の備北と全く異なる路面です。次こそは優勝目指して目一杯いきます!」
秘めた闘志が言葉の端々から感じられる、2007年N4クラスチャンピオンの茅野選手。年間9戦で、全国各地で開催される全日本ジムカーナシリーズ。まだまだ始まったばかり。第2戦は4月26日に名阪スポーツランドで開催される。『今のご時世』を跳ね返す! ダンロップユーザーたちの活躍に期待しよう。