第17・18戦 11月17日(土)~11月18日(日) 鈴鹿サーキット(三重県)
第17戦はポールからスタートを決めた山内英輝選手が初優勝!
大荒れの最終戦を制した国本京佑が、シリーズチャンピオンを獲得!


第18戦のスタートシーン、予選4位のケイ・コッツォリーノ選手がトップに浮上

 11月17~18日、フォーミュラチャレンジ・ジャパン(FCJ)第9大会(第17戦、第18戦)が、鈴鹿サーキットで開催された。
 今シーズン3度目となる鈴鹿サーキットでのレース。開幕戦の舞台だったこともあり、ドライバーそれぞれが、この1年でどれだけレベルアップできたかを確かめられる戦いとなった。レース直前の15日、16日には練習走行が行われたが、この4回のセッションでトップタイムを分け合ったのは、山内英輝選手と坂本雄也選手だった。
 さらに16日には、06年度ランキング2位を獲得し、今シーズンは英国フォーミュラルノーに参戦していた山本龍司選手が、テストカーで走行。山内英輝選手たちよりもコンマ2秒ほど速いタイムをたたき出し、英国帰りの力を見せつけた。シリーズチャンピオン獲得の資格を有するのは国本京佑選手、山本尚貴選手、そして田中誠也選手の3人。田中誠也選手はポール・トゥ・ウィンの2連勝をしなければ可能性が絶たれるが、上位2人のポイント差は6ポイントとわずかなだけに、熾烈な争いが期待された。

第17戦でポールを獲得した山内英輝選手

第17戦、第18戦予選

 FCJ第17戦と第18戦の公式予選は、17日(土曜日)の午前10時10分に始まった。練習走行の行われた木曜と金曜は雲がうっすらと空を覆っていたが、この日は雲ひとつない快晴。秋晴れの日差しは強く、気温は17度だが路面温度は22度まで上昇した。計測時間はわずか15分しかないことから、セッション開始と同時に全車がピットを飛び出していく。まずは最初にコントロールラインを通過した坂本雄也選手が2分4秒188をマーク。すぐさま山内英輝選手が2分3秒台に入りトップタイムを塗り変えた。計測2周目に入ると、昨日までの練習走行で好調ぶりを見せていた小林崇志選手が2分3秒668でトップに。ところが、セッション開始から6分のところで、栗原正之選手がデグナーでクラッシュ。タイヤに熱も入り、これから本格アタックというところで、赤旗中断となった。
 10分ほどの中断の後、セッションは再開。残り時間は8分ほどしかなく、ラップタイムが2分を越えるFCJでは残るチャンス3周ほど。各車1周目から全開のアタックを見せる。まずは山内英輝選手が先ほどまでの自己ベストを更新しトップタイムをマーク。小林崇志選手がラストアタックで一旦トップに立つものの、山内英輝選手が最後の最後に2分3秒578をマークし再びトップに返り咲き、第17戦のポールポジションは山内英輝選手が獲得することになった。タイトルのかかる国本京佑選手、山本尚貴選手は5番手、6番手と、ともに3列目からのスタートとなった。

第18戦でポールを獲得した小林崇志選手

 15分のインターバルをはさみ、第18戦の予選がスタート。先ほどのセッションでクラッシュした栗原正之選手は不出走となり、26台でタイムアタックが行われた。このセッションでも好調ぶりを見せたのは、山内英輝選手と小林崇志選手の2人。まずは山内英輝選手がトップタイムをマーク。次の周には小林崇志選手が、それを塗り替えトップに躍り出る。山内英輝選手も再びタイムアップを図るが、わずかに及ばず今回の軍配は小林崇志選手に上がることに。小林崇志選手は最終戦に初のポールポジションを獲得した。国本京佑選手、山本尚貴選手はそれぞれ6番手、7番手にとどまった。

ポール・トゥ・ウインの山内英輝選手

第17戦決勝レース

 FCJ第17戦の決勝レースは午後2時過ぎにスタートとなった。この日は終始快晴で、レースのスタート時は気温19度、路面温度23度というコンディション。予選時には、昨日までとのコンディションの違いに戸惑い、コースアウトする選手も多かったが、この決勝レースではうまくコンディションに合わせてきており、各所で激しいバトルが展開された。
 富士スピードウェイで行われた第12戦でもポールを獲得していた山内英輝選手だが、そのときはエンジンストールで最後尾まで後退し悔しい思いをした。それを踏まえて今回は、「とにかく落ち着いてスタートを切ろうと思った」と、フロントローの小林崇志選手より比較的慎重にスタートを切った。1コーナーへ先に飛び込んでいったのは山内英輝選手。その後ろには小林崇志選手、国本雄資選手と続くが、レース序盤から山内英輝選手と小林崇志選手の2台でトップ争いが展開、3位以降は少しずつではあるが2台に差をつけられ、4台ほどの集団でバトルが展開された。国本京佑選手は1周目を終えて5位とポジションキープ。一方の山本尚貴選手は、スタート直後のポジション取りに失敗した形で2つ順位を落とした。

1周目のシケインを抜けるトップグループ

 山内英輝選手と小林崇志選手のバトルは、レース序盤はコンマ5秒ほどのギャップで接戦のまま周回が重ねられたが、5周目に入ったところでその差が一気に1秒近くにまで開く。レースが進むに連れてだんだんとグリップ感の減っていくなかで、それに小林崇志選手のドライビング対応が遅れたためだった。その後は徐々に差が広がり、落ち着いた走りでレースを進めた山内英輝選手が逃げ切りの初優勝を決めた。1秒6の差で小林崇志選手が2位と、惜しくも優勝は逃したが、初表彰台を獲得した。3位には国本雄資選手が入り、ポイントランキングでも3位に上がった。国本京佑選手は5位、山本尚貴選手は7位でゴール。2人のポイント差は11に広がり、国本京佑選手は余裕を持って翌日の最終レースを迎えることとなった。

左から2位の小林崇志選手、初優勝を決めた山内英輝選手、3位の国本雄資選手

「初優勝は本当にうれしい。大暴れしたいくらいうれしいんですが、まだ明日のレースがありますから。明日は2番手からですが、今日のように落ち着いてスタートできれば勝てるという気がします。実は、以前ポールを獲ったとき(07年第12戦)、スタートを失敗して順位を落としてしまったことがあるので、今回はもし遅れて2位になってもいいからというくらいの気持ちで落ち着いてスタートしたんです」と初優勝の山内英輝選手は振り返った。
「スタートで前へ行きたかったんですが抜けず、2位につけてからは自分のペースが上がらず、結局そのままで終わってしまったことがくやしい。今シーズン、初めての表彰台なんですが、表彰台に上がらなくてはいけないときには上がれなくて、今日は上がれたのに、うれしい気持ちよりも、本当にくやしい気持ちだけでいっぱいです。明日はポールポジションからきっと勝ちます」と2位の小林崇志選手はコメント。
「3位に入賞できてよかった。木曜にクラッシュしたりして流れがよくなかったんですが、いろいろと相談してアドバイスをもらって、ようやく今日の予選で本来の流れを取り戻せたという感じだったんです。それで結果を出せたことを、アドバイザーのみなさんに感謝したいと思っています」と語る国本雄資選手。

予選4位のケイ・コッツォリーノ選手を先頭に各車がスタートの1コーナーに向かう

第18戦決勝レース

 第18戦決勝は、18日のお昼にスタート。朝から強風に見舞われ、スターティンググリッド上も強い追い風が吹きつけていた。12時05分、定刻どおりにスタート。「明日はポールポジションからのスタートなので、絶対に決めて勝つ」と誓った小林崇志選手だったが、1コーナーへ真っ先に飛び込んでいったのは、4番手スタートのケイ・コッツォリーノ選手。2番手に小林崇志選手、3番手には山内英輝選手と並び1周目を終了した。予選3番手だった坂本雄也選手はエンジンストールにより、最後尾に落ちてしまう。挽回しようと前を猛追していた坂本雄也選手は、バックストレッチで単独クラッシュ。コース上にパーツが飛び散り、レースはすぐさま赤旗中断となる。

レース終盤、2番手の国本京佑選手の背後に迫る田中誠也選手

 レースは2パート制となり、14周での再スタートが切られた。フロントローに並んでいたのはケイ・コッツォリーノ選手と小林崇志選手。しかし絶好のスタートを決めたのは、6番グリッドにいた中嶋大祐選手。ケイ・コッツォリーノ選手に続き2番手で1コーナーに進入。ここで後方集団で接触などの混乱があり、李康太選手が1コーナーで転倒するアクシデントが発生。これにより、セーフティカーが導入されることになった。1周のセーフティカーランの後、再スタートが切られ、今度はトップを走っていたケイ・コッツォリーノ選手がコースオフ。レースから脱落することになり、再び中嶋大祐選手がトップに立った。
 スプーンコーナーでミスをした中嶋大祐選手は、背後に迫っていた山内英輝選手に130Rでパスされる。後方の山本尚貴選手もそれに続こうとしたが、勢い余ってランオフエリアへとはみ出してしまった。なんとか姿勢を戻すと、中嶋大祐選手の前でコース復帰する。これが、「走路外走行」との判定を受けて、ドライブスルーペナルティが課せられることに。山内英輝選手のミスを突いて、一瞬トップに立った山本尚貴選手だが、これでポイント圏外となり、逆転チャンピオンの可能性を失うことになった。

ラストまで続いた中嶋大祐選手、国本京佑選手、田中誠也選手のトップ争い

 山内英輝選手のミス、山本尚貴選手のペナルティにより、再びトップに返り咲いた中嶋大祐選手。しかし、レースウィークを通してペースはよくなく、2番手までポジションアップしていた国本京佑選手に、何度も背後に迫られる。最終ラップまではなんとか持ちこたえていた中嶋大祐選手だったが、最後の最終コーナーでわずかにミスをし、ラインから膨らんでしまった。そのわずかなスキを見逃さなかった国本京佑選手は、思い切って前に出るとそのままトップでチェッカー。シリーズチャンピオンを、最終戦優勝で決めた。2位には、山内英輝選手との激しいバトルを振り切った田中誠也選手が、スピードの緩んだ中嶋大祐選手をかわし、久々の表彰台をマーク。中嶋大祐選手は3位に踏みとどまり、こちらも久々の表彰台獲得となった。

左から2位の田中誠也選手、優勝の国本京佑選手、3位の中嶋大祐選手

「昨日もそうでしたが、この週末は速いリズムをつかみきれずに、今日もレースの前半では、我慢の走りをしていました。でも、決してポジションキープという消極策ではなく、後半までに少しずつ順位を上げてチャンスを狙っていたんです。最終ラップは、シケインのアプローチで中嶋君がミスをしたので前に出られてよかった。今年はシーズン前半調子がよかったけれど後半は勝てなくなってつらいこともあった。でも悪く考えずに楽しく過ごしていました。その結果チャンピオンになれたんだと思います。最終戦でも勝ってシーズンを終えることができ、本当にうれしいです」と優勝した国本京佑選手。
「予選がうまくいかずに後ろにいたんですが、スタート直後の混乱をうまく抜けて前の方に抜け出すことができました。でもそれより前のクルマにはなかなか追いつかず、自力でというよりも前がミスしてくれたおかげで順位を上げて表彰台に上がることができました。最終ラップでは中嶋選手のミスを見て『これは絶対に抜いてやる』と、気持ちで抜いていけました。ひさしぶりに表彰台に上がることができ、うれしいです」と2位の田中誠也選手。
「スタートはとてもうまくいきました。とくに2回目は今まで経験したことがないほどうまくいって、自分でもビックリするぐらいでした。それで2位に上がれたと思っていたら今度はケイ選手が飛び出していって、今度はトップだと。今回はトップを走る心の準備ができていないまま、いきなり(トップに)立ってしまって、その気持ちの弱さが最終ラップのミスにつながったんだと思います」と3位の中嶋大祐選手は振り返った。
 これで、今季のFCJは全戦が終了。11月26日には、都内で全日本選手権フォーミュラ・ニッポンとSUPER GTシリーズと合同で、FCJのシリーズ表彰式が行われる。
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ニュルブルクリンク2014