第8戦 10月2日(日) テクニックステージタカタ
苦しんだ北村和浩がチャンピオン確定!
ダンロップは全9クラス中、8クラスでチャンピオンに輝く!
全日本ダートラに参加する選手のほとんどが走ってみたいと口をそろえるテクニックステージタカタの路面。今回も155台という多くのダートラ車が集結した。
2011年の全日本ダートトライアル選手権は、早くも最終戦を迎えた。その会場となるのは広島県にあるテクニックステージタカタだ。整備の行き届いた路面とハイスピードテクニカルコースとダートラ選手にとって、ここを走りたいと思わせる会場に参加台数も155台を数えた。1本目の走行でできたワダチを2本目までにグレーダーで補修する念の入りよう。砂ボコリ防止のためにまかれる塩化カルシウムは、多少グリップ感に影響を与えるもののドライビングで攻略するというのが常連選手の常だ。各クラスのチャンピオンが確定し、残るはN2、SA1、SA2の3クラスのみ。残暑を思わせた9月末から一変、朝夕は11月並に気温が下がった。雲間から太陽が顔をのぞかせては消える、極端に気温の上がることのないままの過ごしやすい天候。絶好のダートラ日和の中で2011年最後のチャンピオン争いの幕は切って落とされた。
最終戦までもつれ込んだSA2クラスのチャンピオン争い。シーズン中盤からスランプに陥った北村和浩だったが、チャンピオン獲得に対する執念はすざまじいものがあった。
チャンピオン争いが最終戦までもつれ込んだSA2クラス。開幕連勝で波に乗るかと思われた北村和浩だったが、シーズン中盤からスランプに陥る。その間に調子を上げてきたのがライバル荒井信介だった。一気にポイントを稼ぎ北村を追い上げた荒井に対し、北村はチャンピオン獲得を最優先として“キタムラ走り”と呼ばれる豪快な走りを自ら封印して第6戦の優勝をもぎとる。第7戦2位で97ポイントとした北村に対し、荒井は優勝して87ポイント。荒井が10ポイントの差を埋めるには、捨てポイントの関係で優勝しなければ無理。それに対して北村は1ポイントでも加算できればチャンピオン確定。捨てポイントを見てみると有効ポイント中、4位が1回あるため3位以上でポイントが加算される。だが3位を狙って3位を獲得できないのがスラローム競技の難しい所。ましてや路面はダート、北村が得意とするテクニックステージタカタとはいえ先は見えない。
1本目トップから逆転されたものの、2位でチャンピオン確定。苦しんだからこそ価値がある。今シーズンは北村の走りの可能性をまた大きく広げた結果だといえるだろう。
先手を打ちたい決勝1本目、1分53秒570を叩き出してトップに立ったのは北村。3位以上で決まるチャンピオンに向け絶好のスタートを切った。1本目北村が選択したのは87R。2本目に向け超硬質路面用の91Rに履き替える選手も増えた中で、北村は2本目にも87Rをチョイス。決して3位を狙ったワケではない。ダンロップのドライバーとして、何があってもチャンピオンを獲得するため確実にタイムを出す。そんな明確で強い意思がそこにはあった。わずかでもラインを外せばタイムが落ちる、そんな状況の中でライバルの荒井は超硬質路面用のタイヤで勝負に出るしかない。その差が2本目に顕著に現れた。大きくタイムアップしてきたのは91Rを選択したドライバーだが、確率は低い。荒井がゴールすると、タイムは1分53秒221!逆転でトップに立ったものの、この時点での2位は1本目トップの北村。今シーズンの苦しい戦いの中、北村のチャンピオンが確定した。「今年は早々とチャンピオンを確定できると思ってましたが(笑)、ここまで引っ張るとは思ってもいませんでした。ご協力いただいた関係者の方々にお礼を言いたいと思います。ありがとうございました」と締めくくった北村。苦しんでつかみとったチャンピオンだけに忘れられない2011年となったことだろう。
フル参戦1年目で全日本チャンピオンを獲得した市村弘義。ケン・ミレニアムチームでの参戦で、全日本を制したことでひとつの才能を大きく花開かせることを見せてくれた。
こちらも激しいチャンピオン争いが展開されたSA1クラス。85ポイントを獲得しトップの市村弘義、第7戦で優勝を飾り76ポイントの柴田一洋、そして昨年のチャンピオン山崎利博が72ポイント。このダンロップユーザー3人にチャンピオンの権利が残った。捨てポイントの関係で柴田、山崎ともに仮に最終戦で優勝しても88ポイントが最大値。それに対して市村は5戦で85ポイントを稼いでいる。最終戦で入賞すればそのポイントが全て加算されるため、柴田、山崎を越えるには8位以上+優勝回数3でチャンピオン確定と圧倒的に優位に立っている。1本目3人の最初から動きがあった。市村、山崎が87Rを選択するなか、柴田は74Rをチョイス。結果は?市村は2分4秒420で2位、山崎が2分4秒472とこれに食い下がり3位につけるが柴田は10位と大きく出遅れてしまう。天候は曇りのまま2本目、タイムアップの条件はそろっていた。優勝しかチャンピオンの可能性がない山崎は91Rを選択、柴田と市村が87Rを装着する。チャンピオン候補の先陣を切って市村が2分1秒639を叩き出したトップに立つ。この時点で柴田、山崎の残りの2台に抜かれても市村は4位でチャンピオンが確定する。柴田は2分2秒965で市村を越えられない。最終走者の山崎が2分1秒436とコンマ2秒市村をかわして逆転優勝!意地を見せた山崎、だがポイント的には市村100に対して山崎88ポイント。三つ巴となったSA1クラスのチャンピオン争いは、市村が2位で決めた。
2本目に市村を逆転して優勝を飾った山崎利博。最後の最後まで諦めない戦いを見せてくれたのは、ディフェンディングチャンピオンとしての意地。
「チームで多くの人から支えてもらって、フル参戦1年目にしてチャンピオンを獲ることが出来ました。タカタは好きなコースなので勝ちたかったけど、勝てなくてそれが残念です。でも楽しい1年でした」と市村。元祖丸和スペシャリストとして参戦2戦目で全日本初優勝を飾った市村。その翌年からケンミレニアムチームでの参戦がスタート。本格参戦となった2011年、専門メカニックがクルマをいじり事前の練習会でセッティングを詰めるという作業をこなした。失格で優勝をふいにするということもあったが、市村の速さは際立っていた。実力でもぎ取ったチャンピオンといえるだろう。来年に向けてドライバーオーディションを行うなど、ダートラを盛り上げるべくケン・ミレニアムチームの活動は続く予定だ。
最後まで展開が読めなかったN2クラス。チャンピオンを獲得した伊藤益弘は、初の全日本ダートラチャンピオンを獲得。「来年は還暦チャンピオンを目指します」と笑わせた。
伊藤益弘と佐藤秀昭の一騎打ちとなったN2クラスのチャンピオン争い。シリーズリーダー伊藤の89ポイントに対して82ポイントの佐藤。最終戦を迎えるにあたり、捨てポイントの関係で佐藤は優勝で最大12ポイントプラスの94ポイントまで加算可能。対して伊藤は3位以上で加算が可能で、優勝で99ポイント、2位で94ポイント、3位で91ポイントとなる。仮に佐藤が優勝して伊藤が2位になった場合、優勝回数で上回るため佐藤のチャンピオンが決するという状況になっていた。曇り空の中始まった1本目、2分4秒067でトップに立ったのは伊藤。2位に好調な中嶋ケンタロー、3位に西田裕一がつけ佐藤は5位に終わる。2本目、シードゼッケン勢の走行に入ると展開が大きく動く。好調さを見せていた中嶋が自らのタイムを3.6秒更新!2分1秒286で伊藤からトップを奪い取る。西田も2分1秒794でこれを追う。残る2台の伊藤がスタート! だが……、インに乗り上げて転倒!!タイムを残せない。1本目のタイムで5位に付けた伊藤だったが、ポイント加算圏内の3位に届かず89ポイント。最終ゼッケンの佐藤がゴールしタイムは2分1秒858で3位。有効ポイントの計算からはじき出された佐藤のポイントは88……。わずか1ポイント差で伊藤の全日本チャンピオンが確定した。「モータースポーツを初めて38年目で初めて全日本ダートラのチャンピオンを獲得することが出来ました。59歳で獲れたので来年は還暦チャンピオンを目指します」と会場を笑わせた伊藤。対して佐藤は、「1ポイント差で負けましたけど、何も悔いはありません。来年また頑張ります」と潔いコメントに、会場からは拍手が沸き起こった。最終戦で伊藤のチャンピオン確定したN2クラス。優勝した中嶋も全日本参戦4年目にして初の優勝。来年も大きな活躍が期待される。
北海道から遠征してきた北条倫史が、チャンピオンの吉村修、北島広実ら強豪を押さえて全日本初優勝を飾る。このニュースに地元北海道でも大きな歓声が上がったとか?
前戦の京都で吉村修のチャンピオンが確定したN4クラス。勝ってチャンピオンを印象づけたい吉村はもちろん、ライバルの北島広実も意地を見せて優勝を狙いたいところ。そんなトップふたりの意地が火花を散らした1本目、3位につけたのが北海道の北条倫史。今庄で行われた第6戦では4位に入るなど好調さを見せていた選手だ。1分56秒501で北島、吉村に追いすがった北条は2本目に入ると2.07秒のタイムアップで1分54秒429を叩き出す。これには上位陣もついて行けず北条の全日本初優勝が決まった。このニュースは北条の地元北海道まで届き、帯広で行われていたAPRCの会場でも大喜びしていた関係者もいたという。本格参戦が叶えば確実に場にからんでこれる実力を秘めていることを見せてくれた。また、N1クラスではチャンピオンを決めた黒木陽介が2本目に逆転で優勝して今シーズン5勝目。シリーズポイントを115ポイントまで伸ばした。同じくDクラスでもチャンピオンを決めた宮入友秀が優勝するなど今回もダンロップ勢の活躍が目立った。シリーズ成立した全9クラス中、8クラスでチャンピオンを獲得したダンロップの選手たち。全国のダートラ選手たちにチャンピオンを狙うならダンロップタイヤを履けば間違いないといえる成果を上げた1年だった。