第7戦 10月7日(日) テクニックステージタカタ
N1河石逆転チャンピオン!4クラス優勝で有終の美!
白熱した戦いが続いた今季の全日本ダートトライアルもついに最終戦、テクニックステージタカタが決戦の舞台となった。広島県の北部、安芸高田市にあるテクニックステージタカタは、高いドライビング技術が要求されるコースレイアウトと巻き上がる砂塵がドライバーを苦しめる難コース。勝利する為には心技体の全てが必要となる。決勝当日の午前中は秋独特の高い空から日光が降り注ぎ、コースが乾燥。散水車が登場するも、レースカーが通るたびに砂ぼこりが立ち上り、次のレースカーのスタートが遅れる一幕もあった。午後からは再び散水車が登場、曇り空になったこともあいまってコース状態が良化、ほぼ全車が第2ヒートでベストラップを残している。ダンロップユーザーでは硬質な路面を得意とするSP SPORT 91-Rと幅広いシチュエーションに順応する85-Rとにチョイスが分かれたが、SA、SCの各クラスでは殆どのドライバーがSP SPORT 91-Rを選択している。
逆転でクラスチャンピオンに輝いた河石
まず最終戦までクラスチャンピオン争いが続いたN1クラス。ここまでクラス2位の河石潤(インテグラ)が、逆転優勝に向けて果敢な走りを見せる。第1ヒートこそコースコンディションに苦しめられ、1分55秒097というタイムで2位と出遅れてしまったが、タイヤをSP SPORT 91-Rへとチェンジさせると、第2ヒート猛反撃を開始する。前述の通り、第2ヒートではコースコンディションが整い、各車タイムを大幅に短縮したのだが、河石のそれは別次元。1分52秒183と、第1ヒートから一気に3秒近くのタイムアップに成功、一転トップに躍り出た。2位とはコンマ1秒差という薄氷ものの勝利だったが、この力走が今季のクラスタイトルを決定付けた。
会心の笑みをみせる河石
シリーズ中盤はポイントを稼げない苦しいレースが続いたが、追い詰められた第7戦門前で優勝、復活の狼煙をあげ、ここタカタでも連続優勝、一気にタイトルを決めた。
他を圧倒する原のドライブ
既にタイトルを手中にしているドライバー達も、その実力を余すところ無く見せ付けている。前回門前で今季大混戦となったN2クラスを制し、クラスチャンピオンに輝いた原宴司(ブーン)は、ここタカタでも力走。第1ヒート1分53秒201、第2ヒート1分50秒637はともにトップタイム。付け入る隙さえ与えない完璧な走りで今シリーズのラストランを飾った。序盤2戦こそ満足の行く結果が得られなかったものの、中盤3連勝でクラスタイトル争いに名乗りを上げると、一気の足で居並ぶライバルを追い越し、終わってみれば8戦中5戦で優勝を飾る圧勝劇となった。
上位独占のN2ダンロップ勢
この他、共にタイトルを争った佐藤秀昭(ブーン)も1分50秒773の好タイムで2位。3位には西田裕一(ブーン)が入り、嬉しい今季初の表彰台獲得となった。このレース、N2クラスは1位から6位までが全てダンロップユーザーという珍しい結果になっている。
安定した吉村のドライブ
N3でもダンロップユーザーの走りが光った。主役は勿論チャンピオン、吉村修(ランサー)だ。こちらも第1ヒートは1分45秒713というタイムで3位となったものの、第2ヒートに向けタイヤをSP SPORT 91-Rへとスイッチすると、これが功を奏し、タイムは1分41秒815と大きくジャンプアップ、逆転で今季3勝目を勝ち取った。
納得のレース展開、吉村満面の笑み
8戦中優勝3回という数字は決して圧倒的なものではないが、大崩れせず、全てのレースでポイントを獲得。5位以下が僅か2戦という抜群の安定感が、勝利を勝ち取った最大の要因と言える。2位には同じくダンロップユーザーの山野光司(ランサー)が入り、1、2フィニッシュ。このレース、N部門は全てダンロップが制した。
SA1では第1ヒート7位と苦戦した川島秀樹(インテグラ)が、こちらもタイヤをSP SPORT 91-Rに履き替え逆襲。一気に4秒以上もタイムアップし、2位に食い込む意地を見せた。クラストータルでは3位となり、05年シーズン以来のクラスチャンピオン奪還はならなかったが、終盤は粘りの走りで上位に食い込むレースが増え、来季への期待を膨らませた。
こちらも既にチャンピオンが決定しているSA2クラス、だが来年に向けたバトルは既に始まっている。北島広実(ランサー)は第1ヒート、唯一の1分45秒台となる1分45秒146でトップに立つ。第2ヒートでは予想以上にタイムが伸びず、悔しい2位に終わったものの、ハイレベルな争いとなった今季のSA2クラスタイトル争いを最後まで沸かせた。3位には櫛田正文(ランサー)が入り、同クラス総合でも3位に食い込んだ。
最高の走りをみせたすずきみがく
最終戦で意地の走りを見せたのはSC1クラスで熾烈な2位争いを続けるすずきみがく(インテグラ)第1ヒート1分49秒89、第2ヒート1分48秒304と好ラップを2本揃え、今季2勝目を勝ち取った。全てのレースで表彰台に立つ大活躍も総合で2位。優勝にはあと一歩及ばなかったすずきみがくだが、来季このレースのような展開が増えればおのずとタイトルが見えてくるだろう。
つねに冷静、すずきみがく
最後までタイトル争いがもつれたSC2。可能性を残していた岩田真理(ストーリア)だが、5位に終わり、惜しくもタイトル獲得とはならなかった。しかし今季3勝はクラス最多。来季はいかに取りこぼしを無くしていくかがカギとなる。このクラス、ダンロップユーザーでは小清水昭一郎(ミラジーノ)が3位、今季4度目となる表彰台を獲得している。前年度チャンピオンの小清水、今季は不満の残るシーズンとなってしまったが、実力は皆の知るところ、こちらも来季の活躍に期待したい。
小清水同様不完全燃焼のシーズンを送ったSC3クラスの北村和浩(インプレッサ)SA2からクラスチェンジした今年は試行錯誤を繰り返した一年だった。このレースでは第1ヒート2位以下を1秒以上引き離す1分40秒81という驚異的なタイムをたたき出したものの、第2ヒートでのタイムアップが出来ず、2位に終わった。第4戦スナガワ、第5戦コスモスパーク、第7戦門前、そしてタカタ。終始レースを引っ張る活躍を見せながら勝てない不運は、自らの力で振り解く他は無い。3位には同じくダンロップ勢の梶岡悟(インプレッサ)が入り、シーズンでも3位に入る活躍を見せている。
とりを飾るのはDクラス。こちらはまだクラスチャンピオンが決定していない。ここまでクラストップ、最もチャンプに近い位置にいた三上悟(ランサー)だが、第2ヒートでのタイムアップはならず、無念の3位となった。しかし最終戦までもつれたクラス争いを最後まで牽引した活躍は、評価すべき素晴らしいもの。
これで全日本ダートトライアル選手権の全日程は終了。ダンロップ勢からは3人のクラスチャンピオンが誕生した。しかしこれは決して満足出来る結果ではない。さらなる活躍、そして勝利を目指し、ダンロップの来シーズンへ向けた戦いは、既に始まっている。