第6戦 2007年7月15日 栃木県丸和オートランド那須
台風の豪雨を退け3クラス優勝、止まらない快走!!
梅雨の終わりも近い7月半ば、栃木県那須塩原市にある丸和オートランド那須に、全日本ダートトライアル選手権が帰ってきた。開幕戦以来となる丸和でのレースだが、今回も雨にたたられてしまう。日本列島をなめる様に東進してきた台風4号が、分厚い雨雲を塩原の空に運び、朝から激しい雨を降らせた。午前中は、一時降雨量が18ミリを記録するなど、これ以上無い悪条件。気温も20度を超えず、肌寒い。ダートは雨を吸い込み、泥濘へと変化、ドライバー達の神経を消耗させ、マシンからパワーを奪い取っていく。様々な要素が絡まりあった中で、第6戦の幕が切って落とされた。
今期初の表彰台、佐藤卓也選手
京都コスモスパークで行われた第5戦も雨模様で、マシンパワーの制限されているN1クラス、N2クラスは特に苦戦を強いられたが、その状態はここ丸和でも変わらない。第2ヒートではこれに加え、エントリーした約200台のマシンによって、路面に相当のダメージが加わる事が予想された為、おのずと第1ヒート勝負に出るマシンが多かった。
N1クラスではこの傾向が特に顕著で、全てのマシンが第1ヒートでベストラップを刻んでいる。佐藤 卓也選手(インテグラ)も、一発勝負の重圧に負けず、1分40秒207の好ラップを第1ヒートで記録。3位に食い込み、見事今期初ポイント、初表彰台を獲得した。
激闘のN2クラス、岡林選手が攻める
ダンロップユーザーにとっては幸先の良いスタート。原 宴司選手(ブーン)、佐藤 秀昭選手(ブーン)、岡林 亮太選手(ブーン)の三人がハイクラスのバトルを続けているN2クラスでも、そのタイヤ性能は遺憾なく発揮された。
僅差の2位、原選手
ここ3戦の連続優勝で、一気にトップタイとなった原選手が、このレースでも連勝を続けるのか、それとも他のドライバーがそれにストップをかけるのか。しかし注目の第1ヒート、原選手はタイムを伸ばせず苦戦、1分41秒438のタイムで5位と意外な展開。トップの佐藤選手は1分39秒919、約1秒半の遅れをとってしまう。しかし第2ヒート、雨足が僅かに弱まり、各車にタイムアップのチャンスが与えられると、一気の反攻に転じた。第1ヒートとは明らかに違うドライビングで、各コーナーを攻略していく原選手。果たしてタイムは、1分39秒923。僅か1000分の4秒届かず2位、連勝は3で止まった。しかしながら第2ヒートの脅威の追い上げからも判るように、好調は持続しており、今後も目が離せない存在である事に変わりはない。
再び単独トップに立った佐藤秀昭選手
その原選手を僅差でかわし、再びクラス単独トップに立った佐藤選手の走りもまた見事。トップタイムとなった第1ヒートの走りも素晴らしいものだったが、第2ヒートも1分40秒455と、クラス全体で2番目の好タイムで、安定した走りはずば抜けていた。今期全てのレースで表彰台に上り続けているのは、決して偶然ではない。3位にはやはり岡林選手が食い込み、3者のバトルは終盤戦までもつれこみそうな様相だ。
川口選手は大逆転で今季初勝利
安定した走りの後は、大逆転劇が起こったSC2クラス、主人公となったのは、川口 つぐみ選手(アルト)ここまで全てのレースでポイントを獲得しながら、最高位は4位。表彰台まで後一歩という走りが続いていたが、このレースは違った。第1ヒートこそ1分44秒771、出場8台中7位と出遅れてしまったが、第2ヒートで驚異的な追い込みを見せたのだ。タイムは1分38秒009、第1ヒートで小清水 昭一郎選手(ミラジーノ)がマークしたトップタイム1分39秒562を1秒以上も更新する素晴らしいドライブ。一気の逆転に、荒天の中詰め掛けた観客達は大いに沸く。他のドライバー達も果敢にコースを攻めるが、誰もこのタイムを破れず、川口選手の今期初優勝が決まった。小清水選手も第1ヒートでのアドバンテージを生かして3位を堅守、ダンロップユーザーの1、3フィニッシュとなった。
価値ある3勝目、三上選手
N2クラス以上に僅差でのバトルとなっているDクラス、前節の優勝でトップに立った三上 悟選手(ランサー)だが、安穏としてはいられない。2位との差は僅かに2、3位とも6ポイントしか差が無い。このレースでは何としても上位に入り、ポイント差を突き放したいところだ。
普通ならプレッシャーに押しつぶされそうなこの状況、しかし三上選手は極めて冷静に、正確なマシンコントロールに努めた。第1ヒートの1分34秒244、第2ヒートの1分33秒145はともにヒートのトップタイムで、2位に0.5秒以上の差をつけている、まさに完勝といっていい内容だ。絶え間なく降る雨、午後から吹き降ろしてきた北風、様々なマイナス要素がからみあった中で、驚異的な安定感を見せた三上選手。これでシリーズ2連勝、今期3勝目をかざり、2位とのポイント差は7となった。シリーズは全戦通算ポイントではなく、ベスト6戦の合計で争われる為、この3勝目にはそれ以上の価値があると言っていいだろう。
N3クラスでは吉村 修選手(ランサー)が1分34秒723の好タイムで2位に入りクラストップを守った。3人のドライバーがそれぞれ2勝をあげ、熾烈な争いを続けている中、大崩れしない吉村選手が一歩抜け出す展開となっている。SA1クラスは本間 義教選手(インテグラ)が3位に食い込み、N1佐藤 卓也選手、SC2川口選手と同じくこちらも嬉しい今季初の表彰台。SA2クラスでは前節までクラストップの北島 広実選手(ランサー)と、同3位の櫛田 正文選手(ランサー)がデットヒートの末、それぞれ3位、2位を獲得した。前節優勝し、クラス2位のSC1すずき みがく選手(インテグラ)は好調を維持し3位。同クラス3位につける工藤 清美選手(シビック )も好タイムを2本そろえ2位となった。SC3の亀山選手は地元で意地の走り、開幕戦の丸和に続き、このレースでも今期自己ベストの2位、見事ファンの期待に応えている。
天候が天候だけに、開幕すら危ぶまれた第6戦。しかし無事2ヒート開催。ダンロップ勢も、今季初優勝あり、連勝あり、全てのクラスで表彰台を獲得するなど、実りの多い一戦だった。
全日本ダートトライアル選手権は、これから2ヶ月弱のインターバルを経る。次節は残暑の残る北陸能登半島、輪島市の輪島市門前モータースポーツ公園が舞台。いよいよ佳境に入ってきたダートトライアル、この2ヶ月の間隔が各選手、そしてマシンにどのような変化をもたらすのか、注目したいところだ。