ダンロップ勢5クラスで優勝!計算されたタイヤチョイスが勝敗のカギに!
 全日本ダートトライアル選手権も第三戦、舞台は雨の九州から初夏のみちのくへと移った。会場となったのは福島県二本松市にあるメーハイランドSSパークサーキットグラベルコース。郊外の丘陵地帯を切り開いたこのコースは、ダートトライアル用のターマックコース、さらにはジムカーナコースも併設された複合施設。その中にあって、グラベルコースは最も大規模で、ターマックコースを取り囲むようにレイアウトされたオーバル状のコースと「たこ壷」と呼ばれる名物コーナーで構成されている。

 さらに今回、前日練習走行は行われず、ドライバーが自らのマシンでコースを走行出来るのは、決勝当日1本目のみとなっていた。このようなシチュエーションではドライバーの決勝当日の慣熟歩行だけでコース状態を把握し、マシンとコースとのマッチングを見極めなければならない。曇天模様の空の下、朝の慣熟歩行を行うドライバー達の目は、いつにも増して緊張していた。


見事な逆転をみせた河石選手

 先陣を切ったN1クラス、河石 潤選手(インテグラ)が痛快な逆転劇を演じてみせた。慣熟歩行で路面状態が良くないと判断した河石選手は、悪路で真価を発揮するSP SPORT 73-Rをチョイスする。第1ヒートこそ1分31秒029とタイムが伸びず、6番手と出遅れてしまったが、この走行でコースの特徴、マシンの状態を把握し、臨んだ第2ヒートで驚異的な走りを見せる。他のドライバーのタイムが伸び悩む中、このクラス唯一の1分28秒台となる1分28秒972をたたき出し、栄光を手にする。二番手にも、同じくダンロップユーザーで、SP SPORT 73-Rを装着した内藤 聡選手(インテグラ)が1分29秒014の好タイムで食い込み、地力の強さを見せ付けた。

大混戦を制した原選手

 N2クラスはダンロップ勢の独壇場、トップ争いには原 宴司選手(ブーン)、そしてここまでランキングトップの佐藤 秀昭選手(ブーン)さらには二位につける岡林 亮太選手(ブーン)が加わり三つ巴の様相となった。

 3選手のチョイスしたタイヤはSP SPORT 73-R。3台のブーンがしのぎを削る中、第1ヒートでは佐藤 秀昭選手が、ここまでの好調を持続した軽快な走りを披露。1分27秒797のタイムでトップに立つ。しかし原、岡林亮選手も譲らず、共に素晴らしいタイムをたたき出す。コンマ0.4秒差の中に3台がひしめき合う大混戦。
 第2ヒートでは3選手の熱い戦いがよりヒートアップする。先陣を切った原選手が第1ヒートから0.5秒タイムを縮め、1分27秒639で逆転に成功。佐藤選手もタイムを伸ばすも僅か0.02秒差で届かない。岡林選手は3位に終わったものの、第2戦に続く表彰台独占は、どのようなシチュエーションでも力を発揮するダンロップタイヤのポテンシャルの高さを象徴するシーンだった。

圧倒的な強さをみせた川島選手

 SA1クラスでは、ここまでランキング4位につけていた川島 秀樹選手(インテグラ)の驚異的なドライブが、他者を圧倒する。
 まず第1ヒート、多くのダンロップユーザーと同じくSP SPORT 73-Rをチョイスすると、1分27秒657でトップに。しかしそれに満足せず、第2ヒートに入るとさらにタイムを縮めるべく、よりスピード重視のDILEZZA 86Rwにタイヤをスイッチ。この的確な判断が、勝利の女神を呼び込む。たたき出したタイムは1分26秒600、脅威の走りで優勝を掴み取った。
 また2位には同じくダンロップユーザーで、第1、第2ヒート共にSP SPORT 73-Rを装着、堅実なドライブを見せた柴田 一洋選手(インテグラ)が入り、確実にポイントを上乗せした。
 N2クラスの表彰台独占に続いて、このクラスでも1、2フィニッシュの好成績、ドライバーの様々なプランに的確なタイヤを提供するダンロップタイヤがその一助となったのは間違いない。

自らの「賭け」に勝った北島選手

 SA1クラスの川島選手はアドバンテージがある中でのタイヤチェンジだったが、第2ヒートでの逆転の為、ギャンブルプレーとしてタイヤを変更する場合もある。SA2クラスでの北島 広実選手(ランサー)は、極限状態の中、決断を行う勇気と、それを成功に導くだけのドライビングテクニックを見せ付けた。
 第1ヒートでは堅実に、グリップ力が高く、バッドコンディションでもコントロールし易いSP SPORT 73-Rを選んだが、1分22秒960のタイムで3位に留まった北島選手。しかしその順位に満足せず、よりタイムを縮められる可能性のある、DILEZZA 86Rwにスイッチ、賭けに出た。結果は、吉。第2ヒートで逆転トップに立つ1分21秒499をはじき出し優勝。選手権ランキングでもトップに立った。3位には第1、第2ヒート共にSP SPORT 73-Rで臨んだ櫛田 正文選手(ランサー)が第1ヒートでの1分22秒429の好タイムを生かして入賞。ダンロップユーザーの1、3フィニッシュとなった。

アドバンテージを生かした工藤選手

 SA1、SA2同様ダンロップ勢が好成績を残したSC1クラス。戦前はここまで開幕2連勝を飾り、好スタートをきった石井 淳選手(インテグラ)を誰が止めるのかに注目が集まった。
 その石井選手にストップをかけたのはシビックを駆る工藤 清美選手(シビック)SP SPORT 73-Rをチョイスした工藤選手は、序盤からの果敢な走りで他のドライバーにプレッシャーを与え、下馬評を覆した。
 コースコンデイション、マシンセッティングなどの為に第1ヒートを抑えて走行し、第2ヒートに勝負をかけるドライバーが多い中、工藤、石井両選手は第1ヒートから熱いバトルを仕掛ける。他のドライバーを1秒以上引き離す異次元の走り。だがコンマ0.3秒、工藤選手が上につく。
 このコンマ0.3秒は、大きなアドバンテージとなっていく。僅かなミスがタイムロスを生むダートトライアルでは、少しの心の揺らぎも命取り。第2ヒート、石井選手は攻めの走りを見せたがタイムは伸びず、このアドバンテージを崩すまでにいたらなかった。ランキングトップを向こうにまわし、激しい神経戦となったこのレースを制した工藤選手は勿論今期初勝利。3位には第2ヒートDILEZZA 86Rwを装着してタイムを伸ばしたすずきみがく選手(インテグラ)が入り、独走かと思われた選手権が俄然面白くなってきた。


SC2クラスでは小清水 昭一郎選手(ミラジーノ)が好走を見せ、第2ヒートで1分25秒153をマーク、強豪ひしめく中で3位入賞を果たし、これからを占う上で、貴重なポイントを手にした。またSC3クラスでもランキング4位の亀山 晃選手(ランサー)が堅実に3位、その本領を発揮し始めた。同クラス北村 和浩選手(インプレッサ)は進化いまだ半ばのマシンで奮闘し、6位入賞、これからの展開に期待を抱かせた。Dクラスではトップを走る河内 渉選手(ミラージュ)を猛追する三上 悟選手が(ランサー)、河内選手の上を行く2位、ポイントを縮めている。

 今回も全9クラス中5クラスを制覇、ダンロップ勢の好調は留まるところを知らず、さらに進化を続けている。次の舞台はさらに北に移り、北海道オートスポーツランドスナガワにて行われる。雄大な北の台地がドライバー達を待っている。