第1戦 4月17日(日) モビリティおおむた
デビュー戦から4クラス制覇
20111年からDIREZZA 87Rがダートラのスタンダードに!
選手や関係者が持ち寄ったイベントでの賞品などが集まったチャリティバザー。売上は震災で被災した方々への義援金として寄付された。
北関東から東北地方を襲った未曽有の大災害。一方、国難と形容されるこの事態にプロ野球の開幕問題などに端を発した自粛の波は、モータースポーツ界にも深刻な影を落とし始めている。そんななか先週唐津での全日本ラリー開幕に引き続き、全日本ダートラも九州のモビリティおおむたで開幕戦を迎えることが出来た。参加98台と台数こそ少なかったものの、会場では周囲からの自粛の圧力に屈せずイベントを開催した主催者に感謝する声が多く聞かれた。今回は決勝当日にチャリティバザーを開催。売上は、未だ戦い続ける被災された方たちに全額義援金として寄付された。
満を持して登場したDIREZZA87R。今シーズンのダートシーンを席巻してくれるに違いない。
先週の全日本ラリー開幕戦で全クラス制覇し、ラリーファンを勇気づけたダンロップタイヤ。さらに今シーズンは、全国のダートファンにとってもう一つ楽しみな事がある。それは2月25日に発表されたニューダートタイヤ、DIREZZA87Rだ。これまでのDIREZZA86RとDIREZZA86RWの領域をカバー、さらに耐摩耗性を高めてライフの長いタイヤとして使えるように開発が進められてきた。期待の87Rその全日本ダートラのデビュー戦は4クラスで優勝を飾る素晴らしいものとなった。早速その模様を見て行こう。
砂ボコリを上げてコーナリングする北村和浩のランサー・エボX。連覇を目指す北村走りは、ことしも観客を楽しませてくれるに違いない。
決勝当日の天候は晴れ。モビリティおおむたの路面はドライ。朝から砂ボコリ防止のため散水が行われた。87Rの開発ドライバーでもあるSA2クラスの北村和浩。昨シーズン同様、エボXでの参戦となる北村だがその走りに死角はない。2年連続チャンピオン獲得に向け、最高のスタートを切りたいところだ。思っていた以上に気温が上がらず散水の影響が残ったSA2クラス1本目の路面。北村はコース内に残るウェット路面に合わせ、DIREZZA74Rをチョイス。そこまでトップに立っていた田中自動車の山尾英史ランサーのタイムを1秒以上更新する1分38秒264を叩き出し、逆転でトップに立つ。
「震災の被害が続く中、どうにか開幕戦を開催出来たのだから、今日はなにがなんでも勝つ」という北村の気持ちが開幕戦での優勝につながった。
注目の2本目は、気温も上がり半袖で過ごしても快適な天気。SA2クラススタート前に散水が入ったものの、数台が走り始めるとターゲットタイムは一気に39~38秒台にまで上がる。路面を見ていた北村は2本目ついに87Rをチョイス。87Rの開発ドライバーとして、そして何より男・北村和浩として思うことがあった。「震災の被害が続く中、どうにか開幕戦を開催出来たのだから、今日はなにがなんでも勝つという気持ちでエントリーした」豪快な砂煙を上げ深いアングルでコーナーをクリアする黄色いエボX。観るものをクギ付けにする北村走りに場内からどよめきの声が上がる。ゴールするとタイムは1分36秒920!SA2クラス唯一の36秒台を叩き出しケン・ミレニアムレーシングチームの松田周一を逆転し2011開幕戦を優勝で飾る。2位に入った松田、3位スマッシュの山野光司を引き連れてダンロップ勢が表彰台を独占した。
2本目にニュータイヤDIREZZA 87Rを装着し3秒近くのタイムアップで優勝した吉村。開発ドライバーとしてお手本ともいえる走りを見せてくれた。
インサイド側に設けられたストレートグルーブに対しトラクションを発揮する直角に刻まれた縦溝。そこからアウトサイド側に向け、コーナリング時のコントロール性やグリップに多大な効果を発揮する斜めに配されるブロック部分。デザインの基本こそ踏襲された87Rだが、唯一異なるのはこの斜めに配されたグルーブの面積が明らかに86Rよりも広いこと。北村とともに開発テストに携わったエボXを駆る吉村修も、この斜め部分の角度や剛性の異なるタイヤを数多くテストしたという。全日本での結果だけでなく、全国各地で開催される地区戦も想定して87Rのテストは進められた。
自らも阪神大震災で被災した経験を持つ吉村。ガンバレ東日本の気持ちで開幕戦の開催を期待していた。そして、全力で2ヒートを走った。
N3クラス1本目トップに立った吉村も北村同様、気温の上がった2本目に入って87Rをチョイス。9台で争われたN3クラスだが、2本目に入ると早々にトップタイムが更新される。シードゼッケン神奈川の影山浩一郎が38秒台でトップに立ち、吉村がスタート。スムーズかつリズミカルにエボXを前に前にと進める。ゴールしてたたき出したタイムは1分37秒800で逆転。最終ゼッケンでエボIXを駆るディフェンディングチャンピオンの北島広実。だが北島もこのタイムには追いつくことが出来ない。開幕戦の勝者吉村、「今回の震災でみんな大変だけど、自分も阪神大震災で自宅が全壊するなど被災しただけに、ガンバレ東日本の気持ちで開幕戦はなんとしても開催してほしかった。それだけに2ヒートとも全力で走って優勝することができました」と表彰式で語る。開発ドライバーふたりが87Rの使い方を示してくれたような開幕戦の勝利。シーズンが進むに連れ、多くのドライバーが北村や吉村のように87Rを使いこなしてくれることとなるだろう。
1~4位までを独占したダンロップ勢。優勝した香川の黒木陽介。「今シーズンはこの勢いでやっていきたい」と表彰式で活躍を誓った。
1本目から3秒近くのタイムアップでN1クラスを制した香川の黒木陽介。黒木も2本目に87Rを選択しての開幕戦優勝だ。「1本目でトップタイムを出す時に限って勝てなかったが、今日は2本目の走りもOK! 今シーズンはこの勢いでやっていきたい」と黒木。その大半がDC2インテグラで参戦するN1クラス。優勝した黒木から2位森田英文、3位のディフェンディングチャンピオン内藤聡、4位竹本幸宏まで上位をダンロップ勢が独占。FFなど2輪駆動勢にとっても87Rは大きな武器となりそうだ。
ブーボー勢同士のトップ争いとなった開幕戦。そこは伊藤益弘代表の貫禄勝ち。表彰式では東北の昨年のチャンピオン佐藤秀昭選手を気遣っていた。
ブーンやストーリア、そしてアルトといった4輪駆動車で争われるNA2クラス。1本目トップに立った西田裕一だったが、2本目にはブーボー代表の伊藤益弘が逆転!開幕戦を優勝で飾った。「1本目は西田選手に負けてしまったので、2本目は気合を入れた。今年も全戦出るのでがんばって行きたい。去年のチャンピオン佐藤秀昭選手も早く出てきてほしいです」と伊藤は東北の佐藤選手を気遣った。
デビュー戦から速さを見せたDIREZZA87R。優勝した4選手すべてが2本目に87Rを選択していた。ナンバー付き車両での活躍で、これから開催される全国各地の地区戦でも活躍の期待が高まる結果だ。全日本ダートラ第2戦は、栃木県の丸和オートランド那須での開催予定。だが栃木県北部は被災地域に近く、街中でも多くの家々が倒壊し現在でも多くの人達が復旧作業に当たっている。大きな試練に立ち向かい開催されるイベント。応援の意味も含め、これから開催されるイベント会場にぜひ足を運んで欲しいと感じさせられた開幕戦だった。