D1グランプリシリーズ第7戦 8月7日(日) エビスサーキット(福島県)
連日ダンロップの勢いが止まらない
単走ファイナルで日比野哲也選手がみごと優勝!!
しかし、今村陽一選手がクラッシュする大波乱あり


今季より2.2Lターボエンジンを搭載し、ハイパワーも身にまとったAE86トレノ。マシンのポテンシャルを存分に引き出して圧巻のドリフトで単走ファイナルを優勝で飾った日比野哲也選手

見出しのとおり、第6戦終了時に「明日は思いっ切り行きますよ」とコメントしていた日比野哲也選手がやってくれた!! 最終コーナーから“ぶっ飛んでくる”ほどの迫力に満ちた、日比野選手のエビスサーキットでの走りは健在だった――。
デュアルファイナルズの2日目、第7戦も朝から天候に恵まれ、夏の厳しい日差しのなかでスタートした。
まず、単走ファイナルから始まり、日比野選手は2組目の最後に登場。その1本目、最終コーナー出口の縁石をかすめつつ、高い車速からジャンピングでストレートへ進入。深いドリフトアングルを保ったまま1コーナーから2コーナーへ進入し、3コーナーのクリップをついて通過。スピード、角度、ラインともほぼ完ペキといえるもので、99.05点をマークした。さらに圧巻だったのが2本目。1本目よりもスピード感に勝る最終コーナーの立ち上がりで、その勢いのまま審査区間をミスなくクリアしていった。拍手が沸き起こったこの走りに対する得点は99.93点。この時点でランキングトップに躍り出た。第7戦の単走ファイナルでは99点台を出す選手が続出し、終わってみれば14位までが99点台を獲得したが、日比野選手が終わって登場した強豪のシード組になってもこれを上回る選手は現れず、岡山に続いて2戦連続で単走を征した。前日にシフトレバーが折れるという珍しいアクシデントに見舞われた日比野選手であったが、得意のエビスサーキットでその実力をいかんなく発揮した。

単走ファイナルを7位で終えた野村謙選手。この日もベテランらしい安定感と攻めの走りでファンを魅了した

単走ファイナルの予選は、前日の第6戦の終了後に行なわれ、松川和也選手、箕輪慎治選手が予選を通過。ダンロップ勢は7名が単走ファイナルへ出場。
第6戦で総合優勝した古口美範選手はこの日も調子のよさを見せた。最終コーナーの飛び出しから角度をつけて進入し、審査区間内の車速も高い攻めの走りで2本とも高得点をマーク。2本目に出した99.48点で単走ファイナルを堂々の3位で終えた。
箕輪慎治選手も第6戦に続いて単走ファイナルではその実力を発揮。99.48点で4位に入った。
第6戦で単走優勝を決めたディフェンディングチャンピオンの今村陽一選手は、安定感バツグンのドリフトで5位に入り、着実にポイントを重ねてゆく。
野村謙選手は、最終コーナーを飛び出す勢いにやや欠けるという指摘があったものの、2本ともミスのない走りで、2本目に出した99.3点で7番手につけた。
松川和也選手は1本目をミスなく走るも、2本目で2コーナーをアウト側へはらんでしまい失敗。17位という成績だった。

ベスト24の追走1stステージで箕輪慎治選手は上野高広選手と対戦。惜しくも敗退となってしまったが、エビスでは連日活躍が目覚ましく、第7戦は単走が4位となり、総合で7位に入った。富士でもセダンの豪快なドリフトを見せてくれるだろう

追走トーナメントは、単走ファイナルへ出場したシードを除く予選免除(ランキング16位まで)の選手と、予選を通過して単走ファイナルで24位以内にとどまった選手の、16名によって、まずはベスト16への進出を賭けた追走1stステージから始まる。
予選から出場し、単走ファイナルでは見事に4位に入った箕輪選手は上野高広選手(BMW)と対戦した。先行の1本目、ミスなく走るも上野選手に2コーナーで合わせられ、3コーナーでインにつかれてしまう。後追いでは、上野選手に対して攻めきれず、3コーナーでもインをつくことができなかった。これで勝負あり。惜しくもベスト24で敗退となってしまった箕輪選手であるが、このデュアルファイナルズでは本来の実力を発揮してその存在感を大きくアピールした。最終戦も飛躍の場となることを期待したい。

末永直登選手に敗れはしたものの、追走のよい感触を掴んだという松川和也選手。富士で本来の実力を見せてほしい

前戦の岡山では精彩を欠き、単走止まりでいまひとつ元気がない松川選手。エビスでは第6戦で安定感が戻ってきて、追走1stステージに出場。第7戦も単走で17位となり、追走トーナメント出場の権利を獲得した。対戦相手は末永直登選手(ランサーエボリューションIX)。後追いの松川選手は、末永選手に対して最終コーナーの飛び出しから食らいつき、1コーナーではドリフトで合わせていく。そこから2コーナーに差しかかったところでわずかに離され、3コーナーでインに攻め入ることができなかったものの、0.5点のアドバンテージを得た。しかし、入れ替わった先行では飛び出しから4コーナーまでの審査区間で末永選手に終始接近戦に持ち込まれ、ポイントの逆転を許してしまった。
「結果は負けましたが、感触としてはよいイメージで追走を終えることができたのでよかったです。単走は思ったほど得点が伸びませんでした。勢いがないという評価でしたし、難しいですね。最終戦の富士は大好きなので、もっとよい走りをしたいです」(松川選手)

ベスト16で熊久保信重選手を破り、ベスト8へ進出した日比野哲也選手。斎藤太吾選手との対戦は互いにインに食らいつく接戦となり、僅差で敗れた。しかし、第7戦の名勝負のひとつとなったのは間違いない

単走を優勝し、波に乗る日比野選手は、福田浩司選手(マークII)が追走1stステージでの対戦相手だった。先行でスタートした1本目から単走と同様のアグレッシブな走りを見せて福田選手にインを与えず逃げ切る。入れ替わった後追いで1コーナーから接近戦に持ち込み、追走2ndステージへの進出を決めた。
追走2ndステージは熊久保信重選手(ローレル)。前日の第6戦のベスト8で対戦し、その最中にシフトレバーが折れるというアクシデントとなってしまったが、この対戦は後追いの1本目で熊久保選手を2コーナーで追い詰め、アドバンテージを得る。2本目の先行ではインを与えずに逃げ切り。ベスト8へと駒を進めた。
ベスト8は強豪の斎藤太吾選手(チェイサー)。アグレッシブなドリフトスタイルで日比野選手と共通しており、軽さを武器にガンガン攻める日比野選手が、800馬力オーバーのハイパワーにモノを言わせて攻める斎藤選手にどう対峙するのかに注目が集まった。後追いでスタートした1本目、高い車速から最終コーナーを飛び出す斎藤選手に対して、角度をつけて豪快に飛び出してきた日比野選手は1コーナーからドリフトで斎藤選手に合わせていき、3コーナーでインに入った。斎藤選手に喰らいつく走りを見せたが、入れ替わった先行で今度は斎藤選手が最終コーナーからすぐのストレートで日比野選手にビタビタに寄せる。2、3コーナーも同様であり、結果、この進入時の斎藤選手の走りがポイント差となって、日比野選手の敗退が決まった。
「太吾だったので、思いっ切りいったんですけど、向こうもそれ以上に思い切りきたんで、悔しいけどしようがないです。でも、気持ちよく勝負できました。今までNAエンジンではできなかったことをターボになってようやくできるようになりました。次の富士でもいい走りを見せますよ」(日比野選手)
単走を優勝、追走をベスト8へ進出し、ポイントを伸ばした日比野選手は、第7戦を終えてランキング7位となり、シード選手へ返り咲いた。今シーズン、ターボとなってパワーも武器として使える日比野選手の最終戦、富士にも注目だ。

トラウマを跳ね返す走りで第7戦に挑んだ野村謙選手であったが、初戦となるベスト16で末永正雄選手に敗退。ノーポイントを喫してしまった

第6戦を終え、残念ながらチャンピオン争いで一歩後退してしまった野村選手。単走では8位となり、第7戦でポイント奪取を図りたいところであったが、追走2ndステージで対戦した末永正雄選手(RX-8)に負けてしまい、追走はノーポイントとなってしまった。この対戦は、互いにミスがなく、1回では勝負が決まらずサドンデスを行なった。先行の野村選手に対して1コーナーから合わせてくる末永選手。そして2、3コーナーでインに食い込まれた。アドバンテージは末永選手に奪われた。しかし、後追いで野村選手も接近戦に持ち込んでいく。しかし、ドリフトで合わせていったときの角度が末永選手よりやや足りなかった模様で、アドバンテージを覆すことができず、僅差での敗退となった。
「エビスはトラウマがあったとですが、単走の1本目を終えたら“トラ”がどっかへ逃げていったとですよ。“ウマ”はまだ1匹残っとったとですが。追走はもうちょっと思い切って行けばよかったと、反省しとります。富士は行きますよ。もうチャンピオンが決まるでしょうから。ス、スミマセン……。有終の美を飾りたいです」(野村)

■阿部成人監督(BLITZ DFellow)のコメント
「単走ではポイントを稼げなかったので残念です。追走もどうやったら勝てるかというところで迷ってしまい、いい結果を残せませんでした。最後の富士は、去年のように勝ちたいですね」

末永正雄選手とのサドンデスを征して第7戦は単走、追走ともに3位を獲得した古口美範選手

この日も単走3位で昨日の第6戦に続いて絶好調なのが古口選手。追走1stステージは松川選手を下した末永直登選手で、この勝負は先行でアドバンテージを奪った古口選手が、後追いで末永選手をドリフトで合わせた走りで追い詰める。接近戦の優劣で古口選手がポイント差を広げて勝利した。
ベスト8の中盤で天候が急激に変わり、雷警報が発令されて競技は中断した。その後、激しく雨が降り、コースは完全なウエットコンディションに変わった。雨が上がったところで再開されたが、コースは滑りやすい状態が続いた。
古口選手のベスト8の対戦相手はマークXの高橋邦明選手で、現在総合で3位にランクしているベテランであり強豪だ。後追いでスタートした古口選手はストレートから角度をつけてドリフトで合わせていく。そして2コーナーへ差しかかったところでスリッピーな路面につかまり高橋選手がスピン。大きなアドバンテージを得た。入れ替わった先行で、今度は古口選手が3コーナーでスピンを喫する。しかし、高橋選手も2コーナー手前でスピンしており、アドバンテージをひっくり返されることなくベスト4へ進出した。
ベスト4では今村選手との同門対決となり、後追いの古口選手が1コーナーで姿勢を乱すミスが出た。その後もコントロールに苦しむ状態の走りとなり、大きなアドバンテージを今村選手に与えた。先行ではミスなしで走行するも万事休す。3位決定戦へ挑むことになった。
3位決定戦は斎藤太吾選手に敗れた末永正雄選手が対戦相手で、この勝負はサドンデスで決着した。後追いの古口選手、先行の末永選手ともにドリフトを戻すミスがありジャッジはイーブン。そして先行では末永選手に1コーナーの進入で合わせられるも、イン側のラインを通過するところがあり、ジャッジは古口選手の勝利を告げた。
「いつも、路面の変化に対応しきれず、スピンなど失敗することが多かったんですけど、今回は3位ではありますが、内容にはとても満足しています。よい成績が残せなかったエビスの連戦で、総合で優勝、3位になれたのですから。最高のかたちで富士を迎えることができました」(古口選手)

斎藤太吾選手との決勝戦で、今村選手にアクシデント発生。ストレートのコンクリートウォールへ接触。マシンにダメージが加わり競技を中止した

斎藤太吾選手とのし烈なチャンピオン争いを繰り広げている今村選手は、第6戦の追走でまさかのノーポイントで終わったこともあり、僅かだが総合で斎藤選手にポイント差を広げられた。第7戦での単走でも斎藤選手の上につくことができず、追走トーナメントはまさに負けられない戦いとなった。
追走1stステージでは織戸学選手(スープラ)に1本目でアドバンテージを奪われるものの、2本目の後追いで1コーナーから合わせるドリフトを見せ、アドバンテージを覆して勝利。
雨が降ってコンディションがウエットに変わったところで、今村選手のベスト8の戦いが始まった。対戦相手は川畑真人選手(180SX)で、サドンデスの末、先行する川畑選手のスピンによって勝負がつき、第7戦はベスト4へ駒を進めた。
ベスト4で古口選手を破った今村選手。そして、迎えた決勝は、ポイントランキング争いをする斎藤選手との直接対決となった。昨日と同様、大会を締めくくるに相応しいカードとなった。
路面は対戦を重ねるごとに部分的にドライに変わるハーフウエットで、グリップの変化が激しく難しいコースがスピンやコースアウトなどで選手たちを翻弄していた。
そして、いよいよ斎藤選手との戦いが始まった。路面コンディションお構いなしという雰囲気で豪快に角度をつけながら最終コーナーを飛び出してきた斎藤選手。対して後追いの今村選手も後に続く。しかし、この直後に今村選手にアクシデントが。最終コーナーの立ち上がり(ジャンピングポイント)でマシンの角度が浅い状態となり、ストレートへ入ったところでラインをアウト寄りへ乱す。ドリフトアングルをほとんど得られないままストレートのアウト側コンクリートウォールへリヤ側面を激しく接触。そのままコンクリートウォールへ右側面を擦りながら、2コーナーイン側へ向きを変え、3コーナー手前で停止。マシンは右後輪部分を中心に損傷し、競技を中止した。
斎藤選手との直接対決は、残念ながら斎藤選手に勝ちを譲った。
「最終コーナー手前でシフトミスをし、エンジン回転が落ちてリズムを乱しました。そのまま最終コーナーを迎え、余裕がなかったのもあったんですが、最終を立ち上がりで滑って向きが変わらず、ストレートに入ったところで思っていた以上に路面が食う状態で、本当なら斜めに出て、右リヤから着地させなければいけないところを、左リヤから着地してバウンドさせてしまったせいで、カウンターを当てているから大きくアウト側に寄っていき、そのまま壁に接触した感じです。路面コンディションについては太吾も同じだから、仕方ないです。こちらのミスです。クルマを壊してしまったショックが大きいですね。残念です。でも、富士まで時間がありますから、気持ちを切り替えてチャンピオンを獲りに行きますよ」(今村選手)

■藤岡和広監督(TEAM BOSS)のコメント
「見たところ、マシンは直らないような状態ではないようです。ドライバーの今日の走りはすごく安定していましたから残念ですね。最後は全員のミスです。ウエットのセットのままで行きましたから。スタートでグリップしすぎて、そこからリズムを乱したんでしょうね。タイヤを交換する時間もあったんですが、上(スタート地点)から見ているとウエットに見えましたから。読み間違いです。チームの責任ですね。マシンを直して富士は全力で戦いに行きますよ」

マシンを降りたあとで天を仰ぐ今村選手。しかし、エビスのデュアルファイナルズはダンロップ勢が奮闘したのも事実。この勢いで最終戦も見せてくれるだろう

今村選手がまさかのクラッシュで決勝戦を終えた第7戦。しかし、前日に古口選手が総合優勝し、日比野選手も単走で優勝するなどダンロップ勢の健闘が目立った戦いだった。今村選手は追走での優勝こそ逃してしまったものの、ランキング争いでは2位にとどまり、最終戦の富士スピードウェイを決着の時を迎える。果たして3年連続のチャンピオンはあるのか。最終戦に注目だ。
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ニュルブルクリンク2014