第6戦 8月30日(土)~31日(日) エビスサーキット
Rd.6 Report
ダンロップのエース野村謙
オートポリスでの死闘を終えてから4週間後、D1グランプリ第6戦がエビスサーキットで開催された。ダンロップワークスはランキング2位の野村謙を筆頭に、古口美範、日比野哲也、猪瀬徹、一柳和人、林渡が予選前日から入念に走り込む。東北地方の天候は1週間以上も長雨が続いており、予選が始まる頃は路面こそ乾いていたものの、いつ雨が降り出しても不思議じゃない空模様だった。
予選4位の猪瀬徹
前回のラウンドで準優勝した野村はシード権を獲得しているため、予選が免除。まずはAグループの古口、日比野、猪瀬からコースインする。いずれもベテランらしい無難な走りを見せるが、後のBグループが出走する直前になり、コースはスコールのような土砂降りに見舞われる。その状況下で、まさに“水を得た魚”となったのがB・Cグループ。適度なパワーゆえにマシンをコントロールしやすいのか、1~3位をBグループが独占。ダンロップ勢は猪瀬が5位、日比野が7位、古口が8位、一柳がリザーブの21位、林が25位という結果となった。さらに、ダンロップユーザーの中村直樹が2位に食い込む大健闘。
1回戦の古口美範
決勝日の朝は大雨。練習走行が一時中断するほどの降水量だったが、1回戦がスタートする頃には太陽が顔をのぞかせる。ダンロップワークスの先鋒は野村。ドライとウエットが入り交じった難しい路面のなか、抜群のコントロール性を見せつけ、あっさりと高得点を叩き出す。続く猪瀬と日比野も無難にまとめ、ベスト16を決めた。しかし古口は1本目と2本目にスピンを喫し、3本目もまさかのシフトミスで失速。予想外の1回戦敗退となってしまう。後半になるにつれ路面は急速に乾き、シードに続くAグループが続々と上位に食い込んでくる。そのため野村は16位とポジションを落とし、前回のオートポリスと同じ順位で追走に臨むこととなった。予選2位の中村も、11位で第4戦・岡山国際に続いて2回目の決勝トーナメント進出!
野村vs斉藤
ベスト16、最初の対戦は野村vs斉藤太吾だ。前回のオートポリスでは決勝を争っており、シリーズランキングも1位と2位の両ドライバー。緊張した雰囲気のなか、斉藤の先行でバトルがスタートする。1本目は野村が1コーナーから激しい食い込みをみせるものの、2コーナー以降でわずかに振られ4:6とアドバンテージを奪われる。先行の2本目は1コーナーに進入する角度が小さく、またもポイントは斉藤。野村をもってしても、勢いに乗る斉藤を破ることはできなかった。
日比野vs上野
続いての対戦は猪瀬vs佐久間達也。1本目は猪瀬の先行だが、2コーナーで食い込まれ採点は4:6となる。2本目で逆転を狙う猪瀬は、勢い余り2コーナーの進入で佐久間のリヤに接触してしまう。それが決め手となって、猪瀬はベスト16で姿を消した。日比野vs上野高広は、1本目に日比野が後追いの上野を引き離し、6:4でリード。しかし2本目の終盤で駆動系にトラブルが発生。失速したため3:7とポイントで逆転される。予選が7位、1回戦も4位と今回はいつも以上に好調だっただけに、悔やまれる結果だった。
中村vs吉岡
ひとり気を吐いたのは、予選Bグループから勝ち上がった中村直樹だ。ベスト16は同じ予選突破組の野沢巧と対戦し、1本目に1コーナーを真っ直ぐ入り減点されるが、2本目で相手の懐に深く入り込んでミスを帳消しに。ポイントでも逆転し、自身も初となるベスト8へ駒を進めた。ベスト8の相手は、今シーズン途中からレクサスSCを投入した吉岡稔記。まだセッティングも煮詰まっていない状態ながら、ランキング10位でシード権も保持している。1本目は中村が後追い。強敵を相手にしても怯むことなく、1コーナーから果敢に攻めていく。ポイントこそ奪われたが、2本目の先行では吉岡を完璧に引き離す。シード選手を破って、準決勝に進出!
中村vs熊久保
快進撃を続ける中村は、準決勝でかつてのシリーズチャンピオン、熊久保信重と対戦する。今シーズンは不調だが、追走となると圧倒的な強さを発揮する大ベテランだ。バトルはまず中村が先行。“追走王”の異名を持つ熊久保、1コーナーから最後まで接触せんばかりの接近戦を挑んでくる。なす術もなくポイントは4.5:6.5。2本目で起死回生を計る中村は、なんとか熊久保に食らい付こうとするが、やはり経験の差はそうカンタンに埋められず、イーブンに持ち込むのがやっと。敗れはしたが、またもやD1グランプリに新たなヒーローが誕生した瞬間だった。
コースインする日比野選手
今回は中村を除き、ベスト16止まりに終わってしまったダンロップワークス。シリーズチャンピオン争いも厳しさを増したが、ランキング首位の斉藤もベスト8で姿を消しているため、まだまだ逆転が可能な範囲だ。最終戦は10月25日~26日、富士スピードウェイで行なわれる。ひとつでも上のシリーズランキングを目指すことはモチロン、来シーズンを占ううえでも大事な一戦。総力を結集し、最高の形で2008年を締めくくりたい!
雨を得意とする中村直樹
「昔からウエット路面は得意中の得意なんです。予選日はずっと雨、決勝でもベスト8の直前に一瞬だけ雨が降ったんで、もう勢いよくいくしかないと思いました。準決勝は熊久保さんとの対戦でしたが、もう当たって砕けろの意気込みで。ベスト16より先に進んだのは初めてなので緊張しましたが、ベテランの方々が本気になってくれたので嬉しかったです。また、『ディレッツァZ1スタースペック』のおかげもあります。雨にめっぽう強いうえ、目まぐるしく変わる路面コンディションにも、空気圧をちょっと変更するだけで対応できる。ストリートリーガルもシリーズ争いをしており、そちらも頑張りますので引き続き応援をよろしくお願いします!」
ファンに応える野村選手
「今回はエアロパーツ、あとは昨年より高くなった路面グリップに合わせてタービンの仕様も小変更しました。1回戦が16位に沈んだのは、ウエット路面でのスピードを優先されたため。そのため決勝では最初から強敵と対戦し、ちょっと残念な結果に終わりましたが、最終戦ではパワー重視のエンジンを製作して、チーム一丸で優勝を目指します!」(阿部監督)
「正直な話、1回戦からベスト16まで何も覚えていないんです。何速のギヤを使っていたのか、どんなラインを走ったのかすら記憶にない状態で、こんなのは今までの人生で初めてかも。集中していたのか、焦っていたのかも分かりません。雨のなか大勢のお客さんが集まってくれたのに、いい結果を残せなくて申し訳なく思っています。最終戦ではエンジョイ・ドリフトを忘れずに頑張ります!」(野村謙)