レースレポート
第4戦 6月28日(土)~29日(日) 岡山国際サーキット

Rd.4 Report

日比野哲也が3位入賞!


D1グランプリ初開催岡山国際サーキット

D1グランプリ第4戦は、初開催となる岡山国際サーキットが舞台となった。フォーミュラニッポンやスーパーGTといったトップカテゴリーのレースが開催されている、全長3.7kmの国際レーシングコースで、D1グランプリはホームストレートからスタートして1コーナー~2コーナー(通称ウィリアムズコーナー)の立ち上がりまでが審査区間となった。
1コーナーへ向かうホームストレートは約600mの下り勾配(1.08%)。そこから前半45R/後半100Rの複合となった右の1コーナーを過ぎて、短いストレート区間を挟み、今度は80Rの左の2コーナーへと続くコースレイアウトだ。下り勾配でスピードが乗り、1コーナーは後半でアールが緩くなるため、立ち上がりでスピードに乗りやすく、勢いそのままに振りっかえして2コーナーへと向かうため、ハイスピードのなかで巧みなマシンコントロールが要求される。それはハイパワーな今のD1グランプリマシンの性能をいかんなく発揮できるコースといえる。
しかし、結果的に予選、本戦とも生憎の天気となってしまい、ウェットコンディションでの戦いとなった。

ハチロクの利を生かす走りで存在感をアピールした日比野選手

さて、ダンロップワークスは、野村謙、古口美範、日比野哲也、一柳和人の4選手と、新たに林渡選手(S15型シルビア)を迎えて大会に挑んだ。なお、猪瀬徹選手は今回はリタイヤとなった。
野村選手をはじめ、選手全員がこのコースでドリフトするのはもちろん初めてだ。しかもコンディションがドライだった練習日とは打って変わってのウェット。滑りやすい路面をどんなワザで征するのか。各選手の奮闘が期待される。
予選は、単走を3本走ったなかで各々の一番の得点により順位が決定する。出場は38名、このうちの上位19台が本戦へとコマを進める。野村、古口の2選手はシードとなっているため予選は免除。日比野、一柳、林の3選手が予選に出場した。
朝から降ったり止んだりでスッキリしない天候のなか、予選が始まった。
まず、Aグループで登場した日比野選手、一柳選手ともに、1本目からスピードと角度のある1コーナーの進入から、立ち上がりのライン、振りっかえしてからの2コーナーのクリップ、ライン、角度ともにうまくまとめて、揃って予選通過。日比野選手はウェットコンディションのなか、軽量&ターボでパワーのあるハチロクの利を生かすキレのあるドリフトを披露し、余裕の2番手で予選を通過した。

第3戦の鈴鹿から調子を上げる一柳選手は安定した走りが光る

一柳選手も鈴鹿で初のベスト16進出の余韻を感じさせるスピードと安定感のあるドリフトが光り、堂々の3位通過となった。じつは、好調の要因は、今シーズンになっておこなったS13型シルビアの箱替えと、ディレッツァスポーツZ1スタースペックにあるとか。シルビアは以前と比べて160kgもの軽量化をおこなっており、コントロール性がバツグンだとコメントする。そのうえで期待を裏切らないコントロール性に優れたタイヤとのマッチングで、ジワジワと本領を発揮しはじめたという状況なのだった。

新たにダンロップワークスに加わった林選手のシルビアでの走り

いっぽう、Cグループに登場した林選手はこれまでD1グランプリでは“ハチロク乗り”のひとりとして知られた存在。それが今回からシルビアにスイッチしたのだった。惜しくも予選で岡山の大会を終えた。まだまだマシンに不慣れな面もあり、そこへきて初のコースも影響し、本来の実力を発揮できずに終わった感がある。しかし、過去には5位の成績も残している選手だけに、今後に期待がかかる。

ウェットでも豪快な角度は健在! 野村選手の走り

本戦がおこなわれた29日。岡山国際サーキットには初の岡山大会の目撃者にならんべく、1万人以上の観客が集まった。しかし、前日からの雨模様は相変わらずで、それは時おり雨足が強まるほどだった。
コースは完全にウェット。進入でオーバースピードや、角度をつけすぎると簡単にコースアウト、スピンを喫する。シビアにマシンコントロールしなければ失敗となり点数につながらない。そこで、D1らしいスピード重視と、今回はウェット戦術として、サイドブレーキを使って飛距離を稼ぐスーパーロングサイドのスタイルも見受けられた。1回戦の単走による審査ではホームストレートの100m看板でリヤを振り出していることが要件として加えられた。また、今回は1コーナーへの進入速度は審査対象外となった。いかに安定した迫力あるドリフトで審査員にアピールできるか。これが勝負の決め手となったようだ。
さあ、はじまった1回戦。ウェットコンディションゆえにコースアウト、スピンする選手が続出。そんななか、シードグループで最初に現れたのが野村謙選手だ。その1本目。100m看板のはるか手前からロングサイドでドリフトをきめる。2本目はさらに進入速度を高めて1コーナーへ! が、惜しくもコースアウト。3本目も2コーナーでスピンとなるが、1本目が高得点をマークして10番手でベスト16への進出を果たした。

180SXとリンクしたドリフトで魅了した古口選手

古口選手は、さすがに引き出しが多くあり、ロングサイドでもバツグンなコントロールを見せる。その1本目はロングサイドで進入。2コーナーでクリップを外したしまったものの、あとは文句なしのドリフトできめて、13番手でトーナメントへとコマを進めた。好調さは相変わらずのようだ。
ウェットコンディションでハチロクの利を生かして切れ味鋭いドリフトで観客を魅了していた日比野選手。その1本目は速度重視のドリフトで1コーナーへ進入するも、コースアウトしてしまい失敗。2本目は振り出しで勢いよく角度をつける。しかし、角度がつきすぎてしまいスピンして惜しくもコースアウト。2本ともノーポイントで迎えた3本目。じゃっかん振り出しのポイントが1コーナー寄りとなってしまったものの、スパッとキレイに角度をつけたドリフトで、うまくまとめる。12番手でトーナメントへ出場だ。
17番手となり、1回戦で敗退してしまったのが一柳選手だ。1本目は1コーナーの進入をうまくきめるも1コーナー立ち上がりのアウトクリップから2コーナーへと角度が浅くなってしまう。2本目では1コーナーの進入以降はキレイにまとめたが、肝心の進入で挙動をやや乱した。3本目でまとまった走りを見せるも、さらなる高得点には結びつかず、結果、16位の選手と同点のすえに、惜しくも涙を呑んだかたちだ。
ところで、今回のD1グランプリでは、予選がおこなわれた28日に、D1グランプリ・ストリートリーガルシリーズ第3戦も同時開催された。優勝はS15型シルビアに乗る中村直樹選手。シリーズチャンピオンを狙える位置につけている。その中村選手が今回のD1グランプリにもエントリーした(タイヤはディレッツァスポーツZ1スタースペック)。予選を17番手で通過し、本戦の1回戦では強豪を抑えて堂々の8位通過でベスト16へ進出。難しいコンディションのなかで実力を思う存分に発揮していた。決勝トーナメントで末永正雄選手に一歩及ばず敗退となってしまったが、今後の活躍に期待がかかる注目のドライバーだ。

野村選手VS上野選手

ベスト16による追走トーナメント。
ダンロップワークスのエース野村選手は、上野高広選手とのカード。1本目は野村選手が後追いでスタート。先行する上野選手と同時に振り出して1コーナーへさしかかったところで上野選手がスピン。これをかわすかたちで野村選手もスピン。じゃっかんのアドバンテージをもらった。こんどは野村選手が先行。上野選手がインに入ってくるも抑えようと果敢にドリフトする。が、1コーナー途中でドリフトをやや戻してしまう。イーブンとなり、サドンデスへ突入した。
その1本目。後追いで上野選手のインをつくドリフトで野村選手にじゃっかんのアドバンテージとなる。2本目では後追いの上野選手が1コーナー進入で野村選手にわずかに接触。これで野村選手が大きくアドバンテージをもらいベスト8への進出を決めた。
ベスト8の対戦相手は今村陽一選手。お台場で優勝して波に乗っている強豪だ。この2大スター対決に会場内の歓声もひと際大きくなる。先行は野村選手。野村選手が逃げようとするも1コーナーの進入からさすがにインをついてくる今村選手。じゃっかんドリフトを戻すシーンもあったがわずかに今村選手のアドバンテージとなった。今度は野村選手の後追い。ところが、1コーナーの飛び込みで、今村選手に負けじとばかりにインに食いこんで勝負をかけた野村選手だったが、マシンが接触する場面もあり、ここで敗退が決まった。

古口選手VS川畑選手

古口選手は川畑真人選手との対戦だ。前回おこなわれたお台場のエキシビジョンマッチと同じ180SXスペシャリスト同士のこのカード、そのときは惜しくも川畑選手に軍配が上がった。ここはぜひとも一矢を報いておきたいところ。1本目は古口選手が後追い。振り出しはほぼ同じ。と、ここで古口選手がリヤバンパーをコースサイドに引っかけて飛ばすというハプニングが起こる。しかし、マシンに影響がなくそのまま川端選手に合わせるべく果敢に詰め寄る。対して川畑選手が1コーナーの進入でドリフトをやや戻してしまう。古口選手も角度がやや浅い。1本目はイーブンとなった。今度は、古口選手が先行する2本目。勢いよく振り出す古口選手。角度をつけたまま1コーナーへ進入。ここで、後追いの川畑選手がインに入ろうとするがドリフトを戻してしまう。間隔が広がり、古口選手優勢のまま2コーナーへ。そのままミスなくフィニッシュ。古口選手がベスト8進出を決め、お台場の雪辱を果たした。

日比野選手VS熊久保

日比野選手は熊久保信重選手との戦いだ。予選から勢いよく角度をつけたドリフトが光る。ウェットコンディションも軽量な日比野選手のハチロクに味方している! と、そんなことまでイメージさせる走りの日比野選手はベスト16でも見せてくれた。後追いでスタートした日比野選手は先行の熊久保選手と同時に振り出す。1コーナーの進入で熊久保選手がドリフトを戻してしまい、ウェット路面につかまってコースアウト。9:1で日比野選手が大きなアドバンテージをもらう。日比野選手先行の2本目で、後追いの熊久保選手が痛恨のスピン。日比野選手に接触してコースアウト。これにより日比野選手のベスト8進出が決定した。

見事3位を決めた日比野選手

初の岡山国際でベスト8進出となった古口&日比野選手。しかし、ベスト8はこのふたりによる同門対決となった。しかもこのカードは初。が、残念なことに、ウォーミングアップランで古口選手のマシンにトラブルが発生。左リヤの足まわりが破損していることが判明。走行不能という状態で、これにより日比野選手の不戦勝が決まった。「アーム類の何かが折れたみたいですね。自分なりに対戦の組み立てとかしっかりやって調子もよく“まだまだいけるぞ”という状態だったので悔しいです。でも、対戦相手が同じダンロップタイヤを履く日比野選手ですから、そこが救いでした」(古口選手)

さて、久々にベスト4進出を果たした日比野選手。対戦相手は廣田友和。軽量なコンパクトなハチロクVS重量級ハイパワーなヴェロッサの戦いはし烈を極めた。まず、先行廣田選手で始まった1本目で日比野選手がインに入りきれず、入れ替わって日比野選手の先行では廣田選手がインに入ろうとしてミスをおかして失速。両者痛み分けでサドンデスへ突入した。
先行する廣田選手に離される日比野選手。しかし、2コーナーで廣田選手がドリフトを戻して5:5。続いて先行の日比野選手は逃げようとするも1コーナーで廣田選手にピタリと合わされる。しかし、2コーナーで日比野選手が差を広げて5:5となり勝負がつかない。
再びサドンデスとなり、ここで日比野選手はリヤサスを調整。素早く作業を完了させてスタート位置へ。後追いで廣田選手の懐へ飛び込もうとするが、2コーナーで手痛いスピンを喫してしまう。結果、廣田選手が決勝へと進んだ。

ベスト16へ3選手が進出。優勝こそ逃したものの、日比野選手が堂々の3位となった。「外からだと単調に見えるコースなんですが、走るとけっこう難しかったですね。初めてのサーキットでコンディションも大きく変化しましたが、タイヤがドライ、ウェットに関係なくかなりねばってくれますから、安心してドリフトできました。ベスト16の1回戦はタイヤのおかげもあって勝てました」とは野村選手。
この好調さをキープしたままダンロップタイヤ勢は第5戦のオートポリスへ挑む。

阿部成人監督のコメント
「ベスト16の1回戦は僕らの作戦がうまく効いて勝つことができました。ベスト8では悔しい思いをしましたが、これを踏み台に次戦もがんばります」

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Motercycle
ニュルブルクリンク2014