D1グランプリ第1戦 6月4日(土) お台場特設コース(東京都)
サドンデスの連戦を征して今村陽一が今季初優勝!!
代替日程でついに開催されたお台場。ラウンド1、2が連戦となる初日は快晴のなかで行なわれた。そして今村選手が激闘を戦い抜いた
震災の影響でお預けだった“首都湾岸ドリフトバトル”がついに開幕した。昨シーズンと同様、本来ならば今シーズンの初戦を飾る予定が、事実上の前半戦を締めくくる3、4戦目の大会となった。ダンロップ勢は、エースの野村謙選手をはじめとするトップ4選手が鈴鹿で善戦し、総合ランキングで3位~6位までを連なる格好で、揃ってシード入りを果たした。なかでも今村陽一選手と日比野哲也選手は予選から勝ち抜いてポジションを奪取。いよいよ“エンジンがかかった”といえる。また、オートポリスから好調の松川和也選手は総合ランキング12位で単走予選を免除され、単走ファイナル(決勝)から出場する。昨年は予選を経て追走トーナメントまで進出しており、相性のよさも見せている。今年は好調さを背景にさらに上位を目指してほしいものだ。
「TOKYO DRIFT IN ODAIBA」のサブタイトルがついた今大会は、サーキットによる通常の大会とは異なり、東京・お台場の船の科学館駅前の駐車場等に使われている敷地を利用した特設コースで行なわれる。当然ギャラリーも特設スタンドからの観戦となり、限られたスペースにコースが設けられるため、富士スピードウェイやオートポリスといったハイスピードステージとは一転し、ミニマム&タイトなコースレイアウトが特徴。また、エスケープゾーンが皆無であり、ワンミス即クラッシュにつながる、ドライバーにとって過酷なステージとなる。しかし、サーキットと違って、ギャラリーの間近でドリフトバトルが繰り広げられるゆえに見る者にとっては迫力満点。今シーズンも初日から多くの観客が会場へ足を運んだ。さらに、今シーズンのお台場は第1、2戦の2連戦であり、後半を占ううえで重要な戦いとなりそうだ。
今シーズン初エントリーの箕輪選手だったが惜しくも予選不通過となった。次戦以降に期待したい
今シーズンの第1戦としてカウントされるお台場の1日目、その予選は前日の6月3日に非公開で行なわれた。
ダンロップ勢で単走予選にエントリーしたのは、河上善計選手と、箕輪慎治選手。また、北芝倫之選手、村田郁雄選手のダンロップユーザーの姿もあった。河上選手はオートポリスと鈴鹿で予選落ちが続いており、ここでの奮起を期待したい。また、箕輪選手は欠場が続き、今大会が初参戦となっている。久しぶりのD1グランプリで実力を出し切れるかに注目。北芝選手は鈴鹿を終えた時点で総合19位と健闘を続けている。お台場での活躍を見たいところだ。
その予選は梅雨の合間のよい天候に恵まれ、風が心地よい、さわやかな日差しのなかで始まった。最高気温は24℃と、会場は汗ばむほどの陽気となった。
お台場特設コースは200mほどの直線があり、そこから右の1コーナーへ進入し、審査員席を目がけて直線的に通過するラインをとり、アウト側からそのまま2コーナーまで右コーナーが続き、2コーナーを立ち上がってから振り返して今度は左の3コーナーへ向かう。そして、左の4コーナーへとつながる。それは、ちょうどローマ字のRを一筆書きしたようなコースレイアウトだ。審査区間は1コーナー~4コーナーの進入あたりまでとなる。
単走予選は午後に行なわれた。2本走ったなかの得点の高いほうを抽出して順位づけされる。出場の4名の選手は、結果として残念ながら4選手とも予選不通過だった。箕輪選手は久しぶりのD1グランプリ参戦であったが、練習走行ではブランクを感じさせないスムーズな走りが印象的だった。ただ、春に右手を負傷し、完治していないことが判明。無理を押しての出場であった。そんな理由もあって、1本目は振り出し遅れと角度不足で95.5点を伸ばせない。2本目はミスなくドリフトでまとめたもののメリハリがないとの指摘があった。1本目より得点を伸ばす97.17点を獲得したが残念ながら予選通過ラインには届かなかった。河上選手も同様に1コーナーへ進入する際のミスが響いたようだ。うまくまとめた2本目の得点が96.63点と1本目より高かったもののあと一歩及ばず。しかし、お台場は2連戦となるため、まだ第2戦が残っている。その予選はコース慣れしたタイミングとなる1戦目に行なわれる。気を取り直して挑んでもらいたい。
単走1本目で高い得点をマークした野村謙選手。ベテランらしい安定感+攻撃的な要素を加えたドリフトでファンを魅了
決勝日は朝から晴天となり、まさにイベント日和となった。太陽が地表を照り付け、気温もグングンと上昇、夏本番という暑さのなかで始まった。お台場での走りを見ようと大勢の観客が会場へ詰めかけた。
午前8時30分から練習走行が開始され、オープニングセレモニー後に単走ファイナルが始まった。単走ファイナルも予選と同様、2本のなかの高得点を抽出して順位が決まる。シード選手以外は単走のチャンピオンシップと追走1stステージへの進出をかけた戦いだ。
ダンロップ勢でトップに登場したのは、予選免除の松川選手。その1本目はスピードに乗せて1コーナーへ進入。振り出しから角度をしっかりつけて、ドリフトを維持したまま3コーナー立ち上がりまでのラインもミスなしで終える。99.13点をマークした。これは追走1stステージへの進出をほぼ決めた格好だ。2本目はさらにスピード感を増した走りとなり、角度、ラインともに申し分のないドリフトを決めて見せた。得点は1本目には及ばなかったものの、99.07点。結果、単走チャンピオンシップは12位であったものの、2本を99点台に揃えての走りは安定感のよさを証明しているようなもの。この勢いで追走を勝ち上がっていってもらいたいところだ。
シード組は、日比野選手からスタート。じつは朝の練習走行でスポンジバリアへ接触するアクシデントがあり、マシンへのダメージが心配されたものの、その1本目は進入の車速が高く、ミスのない走りでシードの貫禄を伺わせるものだった。得点は99.17点。2本目はさらに車速をアップし、角度も豪快についた日比野選手らしいアグレッシブなドリフトを披露。99.5点と得点を伸ばし、単走5位の戦績となった。
続いて、今村選手が登場。スムーズな振り出しから角度をつけて、理想的なラインを通過するこちらもミスがなく、安定感が光る。いきなり99.5点を獲得した。2本目は1コーナーの進入でドリフトアングルがやや浅くなったところを減点された。しかし、それでも99.07点の高得点をマーク。4位で初日の単走を終えた。
古口選手は今村選手に続いて単走ファイナルに出場した。マシンはお台場に合わせて仕上げたニューエンジンを搭載。低速側のトルクが増大しているのが特徴で、ドリフトでいっそう扱いやすい特性となっている様子だ。単走の1本目は1コーナーの進入で若干のフラつきがあり99.17点。2本目は2コーナーでやや失速状態となって得点を伸ばせなかった。それでも1本目の得点は単走ファイナルを10位で終える結果だった。
ダンロップ勢の最後に登場したのが野村選手。スピード感に優る進入からスムーズに角度をつけていき、ライン取りも審査員が要求する理想的なものとなり、99.43点の高得点をマークした。さらに得点を伸ばしたい2本目だったが、角度をつけすぎてスピン状態に……。結果、6位で単走を終えた。
ダンロップ勢で唯一ベスト24から進出した松川和也選手が廣田友和選手を破ってベスト16へ進出。今回も好調ぶりをアピールする
単走ファイナルの結果を反映し、シード選手を除く上位16名が次に挑んだのがベスト16をかけての追走1stステージ。ダンロップ勢で出場したのは松川選手。シード選手以外では単走4番手の順位だった松川選手はまさに好調そのもの。対戦相手は廣田友和選手。マシンはGS350で、このカードはSC430 VS GS350のレクサス対決となった。
松川選手が先行の1本目、高い車速から振り出して角度をつけて1コーナーへ進入。その後のライン、2~3コーナーもミスなしで終わる。対して廣田選手も1コーナーから合わせようとする走りであったが、角度が浅くなったとの指摘があり、松川選手がアドバンテージを得た。入れ替わって後追いでは、先振り状態で1コーナーから合わせようとする松川選手だったが、1コーナーで若干ドリフトを戻してしまった。しかし、アドバンテージを覆されることなくベスト16への進出を決めた。
ベスト16では日比野選手と松川選手の同チーム対決が組まれた。後追いの1本目で松川選手に大きなミスが出て日比野選手が勝利した
午後になってもお台場特設コースは快晴。多少の風はあったものの汗ばむほどの陽気のなか、ベスト24の追走1stステージを勝ち上がった選手VSシード選手による追走2ndステージが始まった。ダンロップ勢は5名がこのステージに進出した。しかし、トーナメント表を見ると、日比野選手VS松川選手の同チーム対決があり、となりの組には今村選手が入っており、結果次第ではベスト8も同門対決となる組み合わせで、それが現実となった。
まず、日比野選手VS松川選手は、その1本目で後追いの松川選手に1コーナーを過ぎたあたりでスポンジバリアへヒットさせるミスが出る。大きなアドバンテージを得た日比野選手は終始安定した走りで、後追いでは松川選手にドリフトできっちりと合わせる。日比野選手がベスト8へ進出した。「日比野さんをやっつけられるチャンスだったんですけど、後追いの直線で離されたので追いつこうとしたらクラッシュパットに行っちゃいました(笑)。でも、単走も調子がよかったですし、乗れているなぁと感じています。この調子で明日もがんばります」と、追走を終えて松川選手はコメントしていた。
まさかの駆動系トラブルでベスト16敗退となってしまったダンロップのエース、野村謙選手。急ピッチでマシンの修理を行なって第2戦を迎える
野村選手はベスト24を勝ち上がってきた熊久保信重選手(ローレル)と追走2ndステージで対戦。熊久保選手とのカードは久しぶりであり、野村選手は競技前に大いに楽しみだと語っていたようだが、なんと、1本目の先行で、野村選手にマシントラブルが発生してしまう。1コーナーを過ぎたところで野村選手と熊久保選手の接触があったが、この時点ですでに野村選手のマシンに駆動系トラブルが発生していたようだ。結果、野村選手はリタイアとなり、初日はベスト16 で終える悔しい結果となった。
「このところマシントラブルが続いておりますよ。プロペラシャフトですよ。あんなところ、15年に一度壊れるかどうかという珍しいところです。(熊久保選手とは)年寄対決でけっこう楽しめるなとワクワクしとったんですが、残念です。でも、明日もありますから頑張るとです」(野村選手)
■阿部成人監督のコメント
「単走は1本目が成功し、2本目でさらに上を狙いましたが角度がつきすぎてしまったみたいです。追走はよく戦う熊さんと当たり、野村さんも楽しみにしていたんですが、ミッションのアウトプットシャフトが抜けてしまいました。でも、スペアがありますし、もちろん明日は戦いますよ」
エンジンを載せ換えてパワー&トルクアップ。追走で4位に甘んじたものの、虎視眈々と続く第2戦での勝利を狙っている古口美範選手
古口選手は田中祐司選手(スープラ)とのベスト16をまずは征した。古口選手の先行で始まった1本目、高い車速から豪快に角度をつけて1コーナーへ進入し、ミスなく走り終える。田中選手が2コーナーで車間を詰めていくも3コーナーでややインカットとなる場面があり、古口選手がアドバンテージを得た。後追いでは同時振りからドリフトで合わせていく古口選手。2~3コーナーはビタビタという表現がぴったりな超接近戦に持ち込んで勝負を決めた。
ベスト8では末永正雄選手(RX-8)と対戦。この勝負も1本目の先行は古口選手で、ミスなしで走るも末永選手に1コーナーからドリフトで合わせられて、0.5ポイントのビハインドとなってしまう。入れ替わった後追いでは仕返しとばかりに1コーナーから果敢に末永選手に合わせる走り。勝敗がつかず、この勝負はサドンデスとなった。その1本目、末永選手が1コーナーから接触スレスレという車間でビタビタに合わせてくる。先行の古口選手がノーミスでもここは再度末永選手のアドバンテージとなった。決勝以外はサドンデスが1回のみというルールがあるため、もう後がない古口選手であったが、この後追いでも「やられたらやり返す」という1コーナーの進入から果敢に合わせていく。甲乙つけがたい勝負となったが、わずか0.5ポイントの差で軍配は古口選手に上がった。
鈴鹿ではベスト8止まりだった古口選手。お台場の初日はベスト4へ進出。一昨年のエキシビジョンでは手負いでありながら優勝を果たしている。勢いを保ってほしいところ。ベスト4の対戦は、野村選手を破って勝ち上がってきた熊久保選手とのカードとなった。このベテラン同士の戦いは、両者の1コーナー進入からのドリフトでの接近対決となり、後追いで振り出し直後からインへ飛び込んで合わせてきた熊久保が決勝進出を決めた。
この結果、古口選手は3位決定戦に出場した。対戦相手は佐久間達也選手(シルビア)。この勝負も1コーナーからドリフトで合わせていく対決となり、勝敗つかずサドンデスへ突入した。しかし、2コーナー手前で後追いの古口選手にスピン状態の大きなミスが出て、これで勝敗がつき、古口選手は追走4位で初日を終えた。「昨日の練習からやり過ぎ系で、クラッシュパットに何度か接触していたので軌道修正していたんですが、戻しすぎましたね。最後は集中力を切らした状態になっちゃいましたね。ただ、今日はお客さんに感謝したいです。落ちていたテンションを声援によって上げることができたんですから。エンジンも新しくなり、とても乗りやすいので、今日の反省点を踏まえて、明日もよい走りを見せたいですね」(古口選手)
昨日の練習走行でマシンにトラブルを抱えてしまった日比野選手。それでも単走で5位、追走ベスト8という戦績で第1戦を終えている
松川選手をベスト16で下した日比野選手は、今村選手とベスト8で顔を合わせた。この同門対決は先行、後追いで両者ともミスがなく、決着がつかずサドンデスで勝敗を決めることになった。日比野選手が先行の1本目、進入から角度をつける日比野選手に対して今村選手は1コーナーからドリフトで合わせていく。しかし、アドバンテージは日比野選手がとった。入れ替わって後追いとなった2本目は、1コーナーからドリフトで合わせていった日比野選手であったが2コーナーでわずかに失速してインに入ることができない。これで勝負が決まり、日比野選手はベスト8で初戦を終えた。「昨日の練習でクラッシュして、タイヤがフレームに引っかかる状態になっていて、それで操作不能になって今日は朝イチでクルマを壊しました。アライメントをちゃんと取れないような状態なんですよ、今も。でも、今村選手との対戦ではリズムを合わせられなかったという感じがします。自分のやりたいことが何もできないで終わったので、明日はこのあたりでも自分らしさを出して挑みたいですね」と、日比野選手の走行後のコメント。マシンに不安材料を抱えたままでの第2戦に期待したい。
今村陽一選手の追走トーナメントはベスト16~決勝まですべてサドンデスとなる接戦だった。それをみごとに征して今季1勝目をマークした
鈴鹿で総合ランキング5位となり、シードへ返り咲いた今村選手。単走を4位で終え、さらなるポジションアップを狙い、そして、ついに今シーズン初の追走トーナメントの頂点にたどり着いた。ベスト16の追走2ndステージから強豪を当たり、決勝まですべての対戦がサドンデスとなった。それだけ接戦の見ごたえある勝負が続いたわけだが、サドンデスを重ねるぶんだけマシンにもドライバーにも負担増は必至。しかし、今村選手は集中力を切らさず、マシンもそれに応えるかのように粘り強く戦い、この死闘ともいえる激戦を征して掴んだ優勝だった。
まず、追走2ndステージではオートポリスで単走優勝した、勢いのある織戸学選手(スープラ)との対戦となった。先行が今村選手で始まった1本目は、織戸選手が2コーナー付近で流される状態となり1ポイント今村選手がリードする。入れ替わっての後追いでは2コーナーで詰めるもほぼイーブンとなりサドンデスへ。サドンデスでの先行では、織戸選手に対してインを与えず、0.5ポイントリードして迎えた後追いで、今度は進入から果敢にドリフトで合わせていく走りで勝負を決めた。
先述のとおり、ベスト8で日比野選手を下した今村選手は、佐久間達也選手と準決勝で顔を合わせた。同じシルビア同士の対戦は、後追いの1本目で佐久間選手のインに飛び込むも、佐久間選手がポイントをリード。入れ替わった後追いでは、進入からドリフトで合わせられるが、2~3コーナーでインに入らせない気迫の走りでサドンデスへ持ち込む。その1本目も1コーナーから合わせていくも角度のある佐久間選手が最後までミスなしで走り、またしてもポイントをリード。後がない2本目、今村選手の逃げに対して、またしても1コーナーの進入から合わせてくる佐久間選手であったが、わずかに1コーナーでインカット気味のラインとなり、この接戦を今村選手が征した。
決勝の対戦相手は熊久保選手。このカードは幾度も対戦しており互いに手の内を知っているゆえに駆け引きのない見ごたえのあるものとなった。先行が今村選手の1本目、進入からビタビタという状態で熊久保選手が合わせてくる。アドバンテージは熊久保選手となり、入れ替わって後追いで、今度は今村選手が仕返しとばかりに同様に合わせる走り。そしてサドンデスの1本目、後追いの熊久保選手が2コーナーの手前でアウト側へはらんでスポンジバリアへ接触するというミスをおかし、今村選手が大きなアドバンテージを得る。入れ替わって後追いでは先行の熊久保選手が振り出しで角度のつけすぎによるスピンを喫してしまう。この瞬間、今村選手の今シーズン初の優勝が決まった。
「今回のお台場は優勝する気でいましたし、そのつもりで準備してきました。うまく事が運びました。サドンデスを繰り返しましたが、それだけ追走のレベルが上がっているのだと思います。互いにミスしても、僕のほうのミスが小さかったのも要因だったと思います。単走はたまたま運よく高得点を出せた感じですかね。オートポリスを終わって22位のポジションからスタートして、ようやく戻ってこれたという感じがします。明日、さらに岡山と気を引き締めてよいポジションのままエビスを迎えたいです。明日も当然勝ちを狙いますよ!!」(今村選手)
■藤岡和広監督のコメント
「鈴鹿も2位だったし、今回もスタッフ全員がよくがんばってくれました。マシンは今回からニューエンジンになりました。圧縮比をやや高くして、低速側のトルクも以前より太くなっていますから、扱いやすくなっていると思いますよ。明日もよい成績が残せるように頑張ります」