D1 CHAMPIONS IN CENTRAIR(エキシビジョンマッチ) 9月24(土)・25日(日) 中部国際空港・特設コース(愛知県)
今村陽一が追走トーナメントで両日2位に入るなどダンロップ勢が躍進!!
野村謙がR35GTRのデモランを披露して会場を盛り上げる!!
ブリッツR35GTRのドリフトを大勢の観客の前で披露した野村謙選手。D1マシンの4ドアスカイラインとはまた違ったカッコよさで魅了した
D1グランプリのシリーズ戦は、その多くがサーキットで開催されている。しかし、今シーズンの第1、2戦がお台場の特設コースだったように、サーキットではなく、駐車場などを利用したスタジアム型の会場でも楽しめる。周回レースではなく、コースの一定区間を使って競技を行なうD1グランプリならでは特色のひとつだ。
今シーズン初のエキシビジョンマッチである、D1チャンピオンズ・イン・セントレアが、9月24日、25日の2日間にわたって中部国際空港(セントレア)で開催された。お台場以外の国内のエキシビジョンマッチ開催場所として初であり、エキシビジョンマッチの地方開催も今回が初となった。
D1チャンピオンズ・イン・セントレアは、最近チャンピオンになったドライバーから、過去の優勝回数が多いドライバー、今シーズンのシリーズポイントランキング上位のドライバーなどの18名が選抜された。単走、追走、ポイントランキング争いでD1グランプリを盛り上げている精鋭が揃というわけだ。このなかで、ダンロップ勢は野村謙選手、今村陽一選手、古口美範選手、日比野哲也選手の4名が選ばれた。
競技は初日と2日目で内容が若干異なった。まず、初日は単走が行なわれ、18名から2名を振り落として追走トーナメントへ出場する16名を決め、そのあとで追走によって初日のチャンピオンを決定した。2日目は、単走チャンピオン決定戦、歴代チャンピオン4名を除いた14名の追走トーナメント14と、歴代チャンピオン4名が真のチャンピオンを決めるバトル4(追走)、さらには追走トーナメント14の勝者とバトル4の勝者で競うチャンピオン・オブ・チャンピオンで、2日目の追走王者を決めた。追走は両日とも途中からナイトセッションとなり、夜間照明のなかでドリフトバトルが繰り広げられた。これもシリーズ戦にない特色のひとつであり、夜間照明に照らされたコースを、ヘッドライトを点灯しつつ疾走するドリフトマシンは日中とはひと味違う迫力と美しさを醸し出していた。また、前夜祭が23日にあり、選手紹介、夜間のデモランなどでお祭りムードを盛り上げた。
そして、FR化したブリッツR35GTRのデモランもあった。ドライバーはもちろん野村選手。「ぶつけないように、ヒヤヒヤドキドキで走らせたとですが、緑号とはまた違った雰囲気で楽しかったとですよ」と。この走りを目撃した観客はじつにラッキーだったに違いない。これもエキシビジョンならでは。
単走が好調だった今村陽一選手。エビスでの大波乱ののち、マシンは完全修復され、足まわりを中心にリフレッシュしたこともあり、実戦を通したチェックが行なわれた模様。100点を連発し、まさに上々の結果だった
【初日】
初日は朝から晴天に恵まれ、風が心地よい絶好のイベント日和となった。
中部国際空港の駐車場に設営されたコースは、全5コーナーのレイアウト。1コーナーは緩やかな右コーナーであり、そこから奥でアールがきつくなる左の複合コーナーの2、3コーナーへと続き、振り返して右の4コーナー、5コーナーでフィニッシュだ。これをすべてドリフトでつなぐ。タイトで素早い振り返しが求められるテクニカルなコースとなった。また、今回は審査席を1コーナー、2~3コーナー、5コーナーの3つに分けて設けた。さらに車速やドリフト角度などをセンサーで検出する機器を車両に取り付けて採点を行なうDOSS(D1・オリジナル・スコアリング・システム)も試験的に導入。5区間で審査され、より厳密な判定を目指したという特徴もあった。
さて、初日の単走は事実上、追走トーナメント出場をかけた順位決定戦。2本を走り、高い得点を抽出、比較して順位決めした。結果、今村選手がディフェンディングチャンピオンらしく、ミスのない走りで2本とも100点をマーク。また、古口選手も好調だったエビスの余韻を残すアグレッシブでキレのある走りで100点を連発した。結果、同点の場合は若いゼッケンが上位ポジションを得る規定により、今村選手が1位、古口選手が3位となった。日比野選手は1本目で99点台を得たものの、2本目でドリフトを戻してしまい得点を伸ばすことができず8位。マシンの仕様変更もあり、様子を見ながらの走りとなった模様。野村選手は1本目でドリフトを戻すミスがあり、2本目で辛うじて98点台をマークして10位のポジション。4名とも追走トーナメントへの出場を決めた。
単走100点を連発する好調な走りを追走でも見せた古口選手。佐久間達也選手との対戦を勝ち抜いてベスト4へ進出。チャンピオンを決めるバトル4に挑んだ
追走トーナメントは、単走で好調だった今村選手と古口選手がやはり魅せた。今村選手は初戦で廣田友和選手(GS350)と対戦し、先行で逃げ切り、後追いでは確実にインに食い込む走りで勝利。ベスト8では織戸学選手(スープラ)を下した日比野選手と戦い、1本目の4コーナーで日比野選手が今村選手のリヤに接触してスピン状態で停止したことにより大きなアドバンテージを得てベスト4へと進んだ。
古口選手は、田所義文選手(スプリンタートレノ)と対戦。先行の1本目で2コーナーのスポンジバリアに両者とも接触する波乱となったが、後追いで1コーナーから合わせて2コーナーでインに入った古口選手が勝利した。ベスト8では佐久間達也選手(シルビア)と対戦し、先行の1本目で佐久間選手のミスから大きなアドバンテージを得て、そのままベスト4へと進出した。
一方、野村選手は初戦で川畑真人選手(180SX)とのベテランVS元チャンピオンのカード。両者とも後追いでハーフスピンするミスがあったが、1本目で大きなビハインドを背負った野村選手が先行の2本目でこれを覆すことができず敗退が決まった。
ナイトセッションとなったバトル4。この決勝戦で川畑真人選手に惜しくも敗れ2位の戦績だった今村陽一選手。エビスでダメージを受けたマシンは完全に修復され、さらに戦闘力が高まった模様。チェックを兼ねた実戦で結果を残した
上位4名のバトル4はナイトセッションで始まった。この追走トーナメントは、まず対戦カードを決める4名による単走が行なわれ、今村選手が3位、古口選手が4位となり、対戦相手は今村選手が単走2位の手塚強選手(スカイラインGT-R)、古口選手が単走1位の川畑選手と決まった。
川畑選手に対して後追いでスタートした古口選手は1コーナーを同時振りで進入し、0.5のアドバンテージを得た。しかし、先行で川畑選手にインを許してアドバンテージを奪い返され、サドンデスで決着をつけることに。しかし、この後追いの1本目で古口選手は1コーナーの進入でドリフトの姿勢を作れないミスを犯して大きなビハインドを背負ってしまう。先行では川畑選手にビタビタに合わされて、ここで敗退が決まり、3位決定戦へ挑むことになった。3位決定戦は手塚選手とのカード。先行の古口選手は手塚選手に対してインを与えなかったものの両者にミスがありイーブン。しかし、後追いで1コーナーからインに食らいついた古口選手は角度でも負けず、2コーナーから先で超接近戦に持ち込んだ。見事3位を獲得した。
今村選手は、手塚選手に先行で1コーナーから合わせていき、大きなアドバンテージを得て、後追いでそのアドバンテージを覆されることなく決勝戦へ進出。今シーズンはお台場の決勝戦でこのカードがあり、同じ特設コースでの対戦を今回は優勝で飾りたいところであったが、後追いでイーブンとしたものの、先行では1コーナーから川畑選手にインに食い込まれてしまった。結果は2位。しかし、ステージを問わず確実に上位へ進出する今村選手ならではの安定感を見せつけた初日の内容であった。
初日は走りに元気のない日比野哲也選手であったが、2日目は単走から本来のアグレッシブで角度のあるぶっ飛ぶようなドリフトを披露。単走ノックダウンで2位となり実力を見せつけた
【2日目】
D1チャンピオンズ2日目も天候に恵まれ、入場ゲートでは初日以上に観客が列を作り、ゲートオープンを待っていた。
2日目は単走チャンピオンを決める、単走ノックダウンが行なわれた。これは、ステージ1で18名、ステージ2で8名、ステージ3で4名、ファイナルステージで2名となって勝者が決まる。まず18名で単走1本を行ない、この順位の上位4名がそのまま無条件でステージ2へと進出。残りの14名がステージ2を賭けて再び走るが、ステージ1の5~8位の4名はウェイティングとなり、それ以下の選手が5~8位の選手の得点を上回るとバンプアウト(弾き出す)するというユニークなルールを採用していた。単に順位を決めるだけではなく、バンプアウトするか、されるかというハラハラドキドキ感で会場は大いに沸いた。
ここで、初日に元気がなかった日比野選手が本来の動きを取り戻した走りで、ステージ1で98.92点の高得点をマークして4番手で進出。今村選手は初日に引き続き、見事100点を叩き出す。野村選手は96.76点、古口選手は97.93点となり、2本目のグループでバンプアウトを目指した。結果、古口選手が2本目で100点をマークして5番手通過。野村選手は進入の車速が高すぎた影響で2コーナーではアクセルを踏めなくなる手痛いミスが出て得点を伸ばせず、ここで敗退した。
ステージ2では、古口選手と日比野選手が100点をマーク。ともにステージ3へと進出した。今村選手は2コーナーをアウト側へとはらむラインとなり減点され、97.84点でステージ2止まりの結果だった。
ステージ3では古口選手が2コーナーでスピン状態となって失敗し、敗退が決定。反対に好調さを取り戻した日比野選手が再び見せ、4名に絞られたなかで最高得点となる99.88点をマークしてファイナルのステージ4へ挑んだ。
ステージ4の単走は上野高広選手(BMW)。両者ともに無事に走り終えたが、日比野選手は進入スピードが高く、角度も深かったものの2コーナーでフロントがやや逃げる状態となり、カウンターステアの修正が入った。これが決め手となり、惜しくも2位という結果だった。
この2日間を通して本調子ではない走りという印象であった野村選手。しかし、観客を盛り上げるエキシビジョンの華として大活躍した
追走トーナメントは夕方近くから始まった。まずは歴代チャンピオン4人を除く14台での追走トーナメント14が行なわれた。優勝すれば歴代チャンピオンの勝者との一騎打ちが待っている。ダンロップ勢は今村選手以外の3名で、野村選手はシードで、ベスト8から戦った。
その野村選手は佐久間選手と対戦。先行した野村選手は佐久間選手にインを与えず0.5のアドバンテージを得た。入れ替わった後追いでは1コーナーでやや引き離されるも2~3コーナーで追いつく。しかし、4コーナーでインカットしてしまい、この勝負はサドンデスで決めることになった。その先行では佐久間選手に1.5のアドバンテージを奪われてしまい、後追いでは2コーナーで接触、大きな減点となって敗退が決まった。
「完全な練習不足を感じました。でも、スタジアムに突っ込むようなコースレイアウトで、こりゃ盛り上がる!! と、熊久保支配人といっしょにあれこれと提案していました。でも、コースをつくったはいいけど、なかなか走るのが難しかったです。機械の採点にはなかなか馴染めず、機械の特性をすぐに掴めるチームがあれば、うちみたいなNPO(ノープランなおじさん)法人もあって悪戦苦闘ですよ。でも、楽しい3日間でした。もっと走りたかったとです!!」(野村選手)
■阿部成人監督のコメント
「他のチームもそうですが、DOSSに合わせた走りをするのに時間がかかったという感じです。練習走行の時間が足りないという印象でしたねぇ。でも、2日間とも盛り上がったのでよかったです。マシンは、2日目の朝になってドライブシャフトが折れるというトラブルがありましたが、そのほかのコンディションは問題なく終えることができました。富士も盛り上げますから応援をよろしくお願いします」
追走トーナメント14で末永直登選手に惜しくも敗れた古口美範選手。しかし、単走で100点を連発するなどつねに攻めの走りを見せて会場を大いに沸かせた
古口選手は廣田選手とベスト14で対戦。先行で廣田選手にインを与えず、アドバンテージを得て、入れ替わった後追いでは2コーナーで古口選手にフラツキが見られたものの、アドバンテージを保ってベスト8へ進出した。ここで末永直登選手(ランサーエボリューションX)と対戦したが、古口選手が先行の1本目は両者ともミスなしで終えてイーブンとなり、後追いで1コーナーから合わせていくも角度が付き過ぎ姿勢を崩してしまった。ここで敗退が決定。
「単走は100点を出すことができましたが、追走は課題が残る内容でした。エキシビジョンとはいえ優勝したいです。でも、見えてきたもののありますので、最終戦の富士はやりますよ!!」(古口選手)
2日目になってスピード、角度にキレが戻ってきた日比野哲也選手。いつもの"ぶっ飛ぶ走り"は健在。ギャラリーを魅了した
単走で好調さを取り戻した日比野選手は、田所選手とのハチロク対決。日比野選手の先行でスタートした1本目、進入から田所選手を離しにかかり、逃げ切って大きなアドバンテージを得た。入れ替わった後追いでは1~2コーナーでラインを乱した日比野選手であったが、その後はミスがなく、アドバンテージを保ってベスト8へ進出した。ベスト8では強豪の手塚選手とのカード。どちらもアグレッシブなスタイルで共通しており、見ごたえあるこの勝負、先行の日比野選手にミスがなく、手塚選手に2コーナーでハーフスピンのミスが出た。大きなアドバンテージを得て、後追いではそれを覆されることなく、みごと準決勝へと駒を進めた。準決勝の対戦相手は、末永正雄選手(RX-8)。後追いでスタートした日比野選手は果敢に攻める。末永選手に対してインに入り切れなかったものの、0.5のアドバンテージを奪った。先行では角度で勝り、末永選手にインを与えず勝利、決勝戦へ。対戦相手は野村選手を破った佐久間選手。この勝負の前に佐久間選手はビタビタの追走を見せて会場を大いに沸かせていた。尻上がりで調子を上げる佐久間選手に対して一矢を報いたいところであったが、先行の1本目で両者にミスなくイーブンのジャッジで、入れ替わった後追いの2コーナーで流されたラインとなってしまう。結果、2位で2日目を終えた。
「ホイールを変えたりと、マシンは仕様変更しました。初日はチェックしながらの走行だったので元気がなかった走りだったかも知れませんね。でも、2日目は乗りやすくなりました。パワーもあるし、最終戦へのよい感触を掴めました」(日比野選手)
■松岡歩代表(DROO-P)のコメント
「仕様が変わったのもあり、いろいろと走りを試したりしていました。ケツから進入できるようになればいいなと、ドライバーとやっていました。クルマがずいぶんよくなりました。ドライバーも発見が多かったんじゃないでしょうか。楽しめました。この調子で富士もがんばります。究極の苦手コースですが。まさかの単走優勝なんていいですね」
2日目も好調さを見せた今村陽一選手。最後のバトル4(追走)では川畑選手に敗れてしまったものの、マシンの良好なコンディション、調子のよいドライビングは富士への布石といったところだ
歴代最多の3度のシリーズチャンピオンを成し遂げている今村選手は、バトル4から追走をスタートした。
まず、トーナメント組み合わせの単走が行なわれ、1本のみのこの単走で、今村選手は100点の走り。ディフェンディングチャンピオンのカンロクを見せつけた。
初戦の対戦相手は熊久保信重選手(ローレル)。ビタビタの応酬かと思われたこの対戦は、今村選手が先行の1本目で、後追いの熊久保選手が接触する場面があり、大きなアドバンテージを得て、そのまま後追いでもミスなく走り終えた今村選手が、決勝へと進んだ。
決勝の対戦相手はまたしても川畑選手。初日に負けているだけに一矢を報いておきたいところ。しかし、強豪同士のカードは、先行でミスなく終えるも0.5のアドバンテージを奪われてしまう。僅差ゆえに後追いでひっくり返したいところであったが、1コーナーから果敢に攻め、2、3コーナーではしっかりインに入り込むも、4コーナーでまさかの失速状態。そのままショートカットとなって、ここで勝負あり。2位の結果でセントレアのエキシビジョンを終えた。
「負けた悔しさはありますけど、いつも高いレベルでやることを心がけていますし、それを出して盛り上げることができたと思います。2日目の最後は4コーナーで失速してしまいました。1コーナーから捉えていい感じで走っていたんですが、気が抜けたというか、減速状態となってしまいました。でも、内容には満足していますし、クルマの仕上がりがとてもよく、この調子で富士に挑んで勝ちますよ」(今村選手)
■藤岡和広監督のコメント
「最後は負けてしまいましたが、2日目の内容がとてもよかったです。エビスを終えて、マシンを完全に直して、足まわりも新しいパーツを導入しましたし、そのチェックもできました。よい流れで最終戦に挑むことができますね」
夜間照明に照らされた特設コース。2日間のイベントは大いに盛り上がった
2日間を終え、優勝こそは逃したものの、ダンロップ勢の躍進が顕著だったエキシビジョンマッチ。今シーズンも残すは富士スピードウェイのみ。今シーズン初でありラストを締めくくる戦い。チャンピオン争いで今村選手の逆転勝利、さらにはダンロップの活躍に期待したい。