DUNLOP MOTORSPORT
チーム紹介
第3戦 6月9日(土)~6月10日(日)  マレーシア・セパンインターナショナルサーキット
Epson HSV-010、攻めた結果が裏目に出るも
素晴らしいファイティングスピリットを発揮!

恒例の海外ラウンドに臨むEpson HSV-010

 6月9日~6月10日、2012年スーパーGTシリーズ第3戦「SUPER GT INTERNATIONAL SERIES MALAYSIA」が開催された。マレーシア大会は、首都クアラルンプール近郊に開設された新国際空港に程近いエリアに造られたセパンインターナショナルサーキット(SIC)が舞台。2000年に特別戦として初開催され、翌01年も特別戦として開催された後、02年からはシリーズ戦に昇格。03年は諸般の都合により中止されたが、初開催から10年以上を経過した今では、年に一度の海外遠征として恒例のイベントとなっている。
 開幕戦の舞台となった岡山では、開幕前の公式テストが実施されたが、レースウィークに入ってからは通常の2デイスケジュールに戻り、土曜日に公式練習と公式予選、日曜日は朝のウォームアップ(フリー走行)と午後の決勝レースが行われる。舞台となるセパンインターナショナルサーキットは全般的にフラットで、まわり込んだ中高速コーナーが組み合わされている。前回の富士は、トップスピードの高さが要求される超高速レイアウトだったが、今回はコーナリングスピードが必須案件。今季のレース距離は本来の300kmに戻された。
 GT500クラスは、ダンロップユーザーとして8年目を迎える「NAKAJIMA RACING」が、デビューから3シーズン目を迎えたホンダのHSV-010 GTの「Epson HSV-010」で参戦する。HSV-010 GTは、2年前のデビュー時からコーナリングスピードの速さが目立っていたが、開発を続けた結果、当初課題とされていたストレートスピードもライバルに引けをとらなくなり、トータルでの競争力が大幅にアップしている。
 一方のGT300クラスには、ダンロップユーザーとして3回目のシーズンを迎え、昨年までの「JIMGAINER」(ジェイアイエムゲイナー)から、チーム名を旧来からのものに戻した「GAINER」(ゲイナー)。昨年のFIA GT耐久仕様(LM-GTE)のフェラーリF458 GTCから、今年はFIA GT3仕様の最新モデル、Audi R8 LMS Ultraの「GAINER DIXCEL R8 LMS」にマシンをスイッチし、昨年、惜しくも逃したタイトル獲得をねらう。
 今回持ち込んだタイヤは、GT500用、GT300用ともに、晴れ用のスリックと雨用のレイン、そしてレインの溝を浅目に設定した小雨時用のインターミディエイトの3タイプで、そのそれぞれのトレッド面に柔らかめのコンパウンド(表面ゴム)を用いたミディアムと、より固めのコンパウンドを使用したハードの2種類を用意。予想ほどには気温/路面温度が上昇しなかった公式予選では、GT500、GT300ともにミディアムを選択して出走した。

Q1を担当した道上 龍選手

【GT500】
「NAKAJIMA RACING」は昨シーズンに引き続き、チーム加入3年目となるベテランの道上 龍選手と、3年前に同チームからスーパーGTにステップアップを果たし、今やルーキーから期待される中堅へと成長してきた中山友貴選手のコンビがドライブする。マシンは昨年と同様にHonda HSV-010 GTを使用する。デビューシーズンの2010年に、ホンダ陣営にダブルタイトルをもたらす原動力となったHSV-010 GTは、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ昨シーズンも、コーナリング性能の引き上げをねらってラジエターをフロントからサイドマウントにコンバートするなどチャレンジングなところを見せていたが、デビュー3シーズン目となる今年は、昨年仕様をきめ細かくチェックしてアップデートしている。
 セパンインターナショナルサーキットは、そんなコーナリングマシンに進化したHSV-010 GTが得意とするコースのひとつ。それは昨年、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ18号車が、見事なポール・トゥ・ウィンを飾ったことでも、改めて証明された格好だ。
 いつものように土曜日午前の公式練習が、このレースウィークの走り始めとなった。空は厚い雲に覆われ、湿度は高いが気温は思ったほど高くはならない。そして日差しが雲で遮られたためか、路面温度も40度をわずかに超えたあたりに留まっていた。当然、タイヤ選択は、より柔らかめのミディアムということになる。ただしそのミディアムコンパウンドのタイヤでも、期待したほどにはグリップが得られず、タイムは伸び悩んでしまう。その対策を施して午後の公式予選に臨んだ「NAKAJIMA RACING」だったが、今度はコンディションが変わっていた。正午前後に雲が切れて青空が顔を見せ、強烈な陽射しにさらされた結果、路面温度が5度ほど上昇。タイヤも含めたマシンのセットはそれほどにデリケート。
 前回、久々のポールにチームも大いに盛り上がった富士と同様、ベテランの道上 龍選手がQ1を担当し、それを引き継いで若手の中山友貴選手がスーパーラップでのスーパーアタックをと目論んでいた。だが、Q1では終盤での赤旗中断もあり、タイムが伸びずに14番手に終わり、Q1でのトップ10に権利があるスーパーラップで中山友貴選手はアタックすることなく終了。Epson HSV-010は、決勝レースを14番手グリッドから追い上げることになった。
「予選ではフリー走行(午前中の公式練習)の時ほどグリップが上がりませんでした」と状況を分析した道上 龍選手は「ただし磨耗に関しては悪くないので、決勝ではひとつでもポジションを上げていけるよう、セットアップをもう一度考えて見ます」と力強くコメント。

健闘したEpson HSV-010

 決勝当日は、朝から青空が広がる好天で、セパンラウンドらしく早々と気温&路面温度が上昇していった。グリッド後方からスタートするEpson HSV-010だが、朝のフリー走行で手応えを確認していたこともあり、チームはタイヤエンジニアと相談して攻めの作戦をとることになった。それは内圧の調整だ。一般的に内圧を下げるとグリップがアップするのだが、下げ過ぎるとタイヤを壊してしまう危険性が高まってくる。だからタイヤのセッティングは、グリップと安全率のトレードオフの関係にあるのだが、その安全率を少し下げてでもグリップを高めていこう、という作戦だった。
 決勝レース、前半のスティントを担当した道上 龍選手は、「グリップだけでなくフィーリングもよかったから、昨日からのセット変更は正解だったかな、と思っていました。ペースも悪くなかったですから」と、スタートからしばらくは安定したペースで周回を続けていた。ところが、攻めの作戦が裏目に出てしまった。ドライバーが突然、振動を感じて、7周目に予定外のピットイン。内圧を下げたことによってタイヤライフが短くなることは計算していたのだが、予想以上にタイヤにとってはタフなコンディションだったことが災いしたのだろうか。
 いずれにしてもタイヤを交換してレースに送り出すしかなく、それ以降も短くスティントを刻んでいくしか手はなかった。だが、道上 龍選手も、後半を担当した中山友貴選手も、「バランスは悪くなかった」と土曜から変更したセットの方向性には満足しているようだった。

予定外のピットインが続いたEpson HSV-010

 レースは、予定外のピットインを強いられたために、トップから2周遅れとなってしまったが、それでも最後まで力強く走りきって11番手で中山選手がチェッカーを受けた。残念ながら、トップ10に入って入賞を決めてポイントを手にすることはできなかった。一方では今後につながる大きな手応えを得た一戦となったのも事実である。
「エアのプレッシャーも含めて性能を追求して攻めた結果。それが裏目に出てしまいました。次戦の菅生で巻き返せるようにがんばります」と中嶋悟総監督は、悔しさをかみ締めながらコメントした。

Epson HSV-010の反撃に期待したい

 次回、第4戦(7月28~29日)は、杜の都、仙台のスポーツランドSUGOが舞台。アップダウンに富み、そして中高速コーナーがほどよく組み合わされたテクニカルコース。猛烈に暑かったり、極度に寒かったりと、天候次第ではコンディションが読みづらいことでも知られている。だがチームと相性のいいことでは、シリーズ戦が行われるサーキットの中でも屈指の存在。
 開幕から3戦続けて苦戦を強いられたEpson HSV-010だが、中嶋総監督以下チーム全員が感じていたその悔しさをバネに、そしてドライバーが感じ取った“手応え”が、一筋の光明に繋がることを期待せずにはいられない。





Global Race Category
Domestic Race Category
Motercycle
ニュルブルクリンク2014