ドライバー
第8戦 9月16日(日) とびうめジムカーナフェスティバル in 九州
天気に翻弄された全日本ジムカーナ第8戦
SCクラス牧野タイソンがチャンプ確定!


ドライコンディションの中で行われた練習走行だったが、決勝は雨の降りしきる中で行われるウェットに。台風16号に翻弄された全日本ジムカーナ第8戦となった。

第8戦と大詰めを迎えた2012年の全日本ジムカーナ選手権。今回は戦いの舞台を九州の大牟田市にあるモビリティおおむたに移して開催された。各クラスで熾烈なチャンピオン争いが展開。さらに今回は大型の台風16号が北上する途上に開催場所があり、ウェットコンディションでのイベントとも予測されていた。土曜日に行われた公式練習は、雲が多いながらもドライコンディション。その結果を踏まえて雨を望む者、このままドライで走りたい者……。選手それぞれの思惑が交差するなか、夜が明けて決勝の日曜日に。小ぶりだった雨が本格的に降りだしたのが1号車スタート直前。あちらこちらでみるみる水たまりができてくる。有明海に面するモビリティおおむた。尖った骨材からタイヤへの攻撃性が強いといわれていたコース。だがここ数年でレコードライン上の路面は削れ、今までとは異なり雨が降ると滑りやすいコンディションとなっていたようだ。雨は止むのか?それとも降り続けるのか? 気温は? 路面温度は?さまざまなファクターが絡み合うなか、各クラスで活躍したダンロップユーザーたちの活躍をお届けしよう。

BRZが得意とするセクションを明確に捉えていた松本敏。シビックでのメリットを活かすべくクルマをきっちりと転がす走りを見せ、2008年以来3年ぶりの優勝を飾った。

雨の中での決戦となったPN2クラスの戦い。前戦のもてぎでチャンピオンを決めた河本晃一が仕事の都合で不参加もあり、8台のエントリーとなったものの熱い戦いは健在。戦前の予想では、常にGのかかるおおむたではBRZ有利?と見られていた。土曜日の公式練習では山野哲也(BRZ)がトップにたち、コンマ4秒遅れて松本敏(シビック)がつける。そこから一転して、大粒の雨が降りしきるレイン路面での決勝1本目。トップゼッケンで松本がスタートする。「自分でも乗っているから実感しているんだけど、クランクやシケインのようなセクションで86のバランスの良さはズバ抜けている。さらに山野さんのドライビングを組み合わせると負けるポイントは最初から明確に分かってました。シビックでは進入でしっかり落として、いかに早くハンドルを真っ直ぐにして立ち上がるか?クルマを転がすか?それだけを考えて走ってました」と松本。スムーズな走りを心がけた松本のタイムは1分41秒308。ウェット路面上でのトラクション不足を補い、ギリギリのラインを攻める山野だったが、タイムは1分44秒513と松本に3秒のビハインドを背負う。1本目後半のクラスが始まる頃から弱くなり始めた雨脚は、昼前には上がり遠く雲の切れ目に青空が顔をのぞかせる。人によっては長袖が恋しくなるくらいの気温だった午前中。昼休みを挟んで慣熟歩行が終わる頃には、気温とともに路面温度もドンドンと上がっていった。

ウェット路面というFF車両には絶対的有利を予想された中だったが、僅差の戦いに思わず松本敏の口から「キッチリ勝つのって難しいね」というコメントが漏れた。

逆転もありうる? そんな予感を漂わせながら2本目がスタート。PN1クラスで微妙に更新頻度が増えていったトップタイム。松本がPN2クラスファーストゼッケンでスタート。1本目同様に基本に忠実な走りを実践する松本だったが……。期待したほどの時計は出せなかったものの、1分41秒111とわずかにタイムアップ。クルマを降りた松本は山野の走りを食い入るように見つめる。BRZのポテンシャルを絞り出しきるまで絞る山野。1本目と比べ明らかに速いスピードで各コーナーをクリアしてゆくが……。ゴールするとタイムは1分41秒423!3秒以上のタイムアップを果たしたものの、松本のタイムに約コンマ3秒追いつけない!!「キッチリ勝つって難しいね」優勝が決まった瞬間、松本はポツリとつぶやいた。最新車両で争うPNクラスへの注目は、今シーズン選手たちの間でも高まっている。FF、FRの2輪駆動車が大排気量、小排気量で入り乱れて戦う無差別級バトル。各車両ともコース設定によって得手不得手のセクションが明らかに分かれている。それが結果的にコンマ差の争いを繰り返す。ドライバーの腕やコース戦略がタイムに直結する。ジムカーナ本来の楽しさを感じている選手たちも多い。「今回は河本が仕事の都合でいなかったけど、今日の走りなら勝てたと思う。それとチャンピオンは決まっちゃったけど、最終戦のイオックスでは山野さんと3人の勝負ができる。イオックスは、お客さんも一番盛り上がれるコースなので、観ていても面白い勝負ができるといいですね」と松本はコメント。2013年から全日本ジムカーナでは、気筒容積1600ccを超える2輪駆動(FF、FR)のPN車両のうち、FIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2012年1月1日以降の車両でくくられるPN3クラスが新設される(現在のPN3クラスはPN4クラスへと名称が変更)。そのため軽量のFFやFR、大排気量の2輪駆動の無差別級バトルが展開されるPN2クラスの戦いが見られるのもことしで最後。富山県のイオックスアローザで行われる最終戦の戦いにも注目が集まる。

混迷を極めるSA3クラスのチャンピオン争い。ダンロップ勢では茅野成樹が最上位の3位に入り、最終戦4人でのチャンピオン争いが展開されることとなった。

後半戦に入ってさらに星が割れ始め、残り2戦となっても未だチャンピオンシップの行方が見えないSA3クラス。今シーズン3勝を挙げているものの、残り3戦で上位を外している茅野成樹。安定して表彰台をゲットして2勝を挙げたもののだ、有効6戦の捨てポイントの関係で2位以上でないとポイントを加算できない津川信次。前戦のもてぎで優勝を飾りシーズン2勝の争いに顔を出してきた天満清。そして昨年のイベントでも優勝を飾り、おおむたを得意としている西原正樹。4者それぞれの意地が激突し、毎戦ハイレベルな戦いが展開されている。戦前の予想どおり、土曜日の公開練習からおおむたを得意とする西原(インプレッサ)がトップタイムを刻む。「金曜日からドライコンディションでは、西原が速いよね。正直あそこまでのタイムが見えない。明日は雨が降ってくれたほうがチャンスはあるかも」と茅野は西原の速さに舌を巻く。開けて雨の決勝。レースウィークで検証してきたドライ路面でのデータは、すべてご破算されまったく手探りの中での争いが始まる。ヘビーレインのなかスタートした1本目1分29秒158を叩き出してトップに立ったのは西原。次いで1分29秒812で茅野が続く。イチかバチかの走りで上位ふたりと同じく1分29秒台を叩きだした津川だったが、最後に悔しいパイロンタッチで5秒加算となり下位に沈む。
雨があがり、路面状況が好転した2本目。西原はさらにタイムアップしトップタイムはなんと1分26秒331! このタイムを聞いてスタートした茅野。「正直、西原のタイムには届かないと思って2番狙いに切り替えたんだけど……」ポイント取りこぼしの一因となっているパイロンタッチを犯してしまい、1本目のタイムで3位に終わる。最終ゼッケンの津川もデッドな走りで前半セクションを攻めたもののパイロンタッチを犯してしまい、その時点で走行をストップ。シリーズリーダーは変わらず津川の97ポイント。次いで2位には91ポイントで天満、3位には今回4ポイントを加算した茅野、そして4位に今回優勝の西原。最終戦ではこの上位4名ともにチャンピオンの可能性がある。順位次第ではあるものの、津川は2位以上でチャンピオン。他の3選手は優勝が絶対条件で、津川の順位次第で栄冠を獲得する可能性を残した。ドライビングテクニック、マシンの仕上がりともに最高峰のチャンピオン争いが最終戦のイオックスアローザで展開されることとなった。

相性の良いおおむたでキッチリと走りきり、2本ともトップタイムのパーフェクトな優勝を飾った牧野タイソン。今シーズン4勝目を挙げ初の全日本タイトルを確定させた。

初の全日本チャンピオンに王手をかけて九州に乗り込んできた牧野タイソンだったが……。会場に乗り込む段階から事件は発生していた。おおむたへの往路、フェリーでの移動を選んだタイソンだったが高速道路で2件の事故渋滞に遭遇。港に到着した時に目指す船は見えたものの、目の前で出港を見送る形となってしまった。「実は以前もJAFカップの帰りのフェリーに乗り遅れたことがありましたが、目の前で出港を見送ったのは始めてでした。そこからは自走で九州を目指して走って来ましたが、かえって早く着いたくらいで集中する時間を取れました(笑)」と牧野。2010年のJAFカップジムカーナでも優勝を飾るなど、相性の良い会場でベストな走りを目指す。雨は小降りなっていたものの、まだあちらこちらに水たまりが残るなかスタートした1本目。SCクラス最終ゼッケンの牧野は、それまでのトップタイムを1.5秒以上更新する1分31秒518を叩きだしてトップに立つ。2本目に入り好転してきた路面状況にライバル勢もタイムアップ。1分28秒台まで更新された時計にも、焦ることなくきっちりと走り切り1分26秒040までタイムアップして逆転優勝を飾る。今シーズン4勝目を挙げてシリーズポイントは110をゲット。初の全日本チャンピオンを獲得した。

SA3クラスを上回る、2本目の1分26秒040のトップタイム。改造車乗りとしては絶対に超えたい大きな壁を乗り越え、その勝利がチャンピオン獲得につながった。

「おおむたでは、(コースから)はみ出たりこぼれたりすることが多いんですが何故かゲンがいいんですよ。JAFCUPでも大変でしたけど優勝できたし、精神的に余裕を持って挑むことができました。だから今日で大好きになりました!今回はタイヤマネジメントが最高で、(出走)5台前くらい前のギリギリまでタイヤを温めてくれたのでスタートしてバッチリトラクションがかかりました。今シーズンもいろいろやらかしてきましたが、自分一人でやれたことなんかほとんどなくて……。仲間が一生懸命やってくれたからこそ獲得できたチャンピオンだと思ってます」と牧野。明るい性格と楽しい仲間に囲まれて獲得したチャンピオンには格別の感慨もあるだろう。だがそれと同じくらいうれしいことが今回あった。それは?「実はことし初めてSA3クラスのタイムを上回れたんですよ。自分でもうまく走れたなと思います」楽しい話題だけでなく、走りの実力もキッチリと見せてくれた牧野。初のチャンピオンに最高の笑顔でコメントしてくれた。
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Motercycle
ニュルブルクリンク2014