第7戦 9月18日(日) モビリティおおむた
やったぜアニキ! 川脇一晃が
3回目の全日本チャンピオン!


台風15、16号が日本に接近した週末。モビリティおおむたで行われた全日本ジムカーナ第7戦は激しい天候の変化が勝負の行方に大きな影響をもたらした。

2011年の全日本ジムカーナも残すところあと2戦。チャンピオン争いも佳境を迎え、各クラスで激しい戦いが繰り広げられることに。会場となったのは福岡県大牟田市にあるモビリティおおむた。そして選手を大きく悩ませたのは天気。週末にかけて日本に近づいてきた15、16号のふたつの台風の影響で大気の動きは不安定になっていた。決勝となる日曜日も夜半から降り続いた雨で路面はウエット。どんよりとした曇り空はいつ降り始めてもおかしくない状況で、N2クラスがスタートする頃には雨も本降りに。一瞬たりとも気を抜けない第7戦が幕を開けた。

チャンピオン獲得を目指す中での極限の駆け引き。全日本ジムカーナの最激戦区といわれるSA3クラスで川脇一晃は、通算3回目のチャンピオンを確定させた。

 降りしきる雨のなか、N4クラスの走りを見ながら川脇一晃は悩んでいた。事前走行の木曜日からおおむた入りしていたが、土曜日の練習走行まで雨は一切無し。トップタイムを叩き出し続けていたのはインプレッサに乗る西原正樹だった。タイヤへの攻撃性の高いおおむたの路面。雨が降っているとはいえS2コンパウンドを選択した場合、2本目勝負がつらくなる。かといって雨がやむ気配のない中で、2本ともM2コンパウンドで走ってコースに残っていられるか?「今回は西原が先行しとるし、津川(信次)と天満(清)を押さえることだけを考えていればいいのかなと。確実にタイムを残す方法を考えないといかんなと思とったね」と川脇。目の前ではM2コンパウンドを選択した茅野成樹がパイロンタッチを犯し、下位に低迷していた。そして迎えたSA2クラスの1本目、チャンピオンを争う川脇、津川、天満は3人そろってソフトコンパウンドのタイヤを選択していた。北からの風は濃い灰色の雲を上空に運び、雨雲は途切れる気配を見せてはくれない。それを見て川脇は『2本目も雨!』と心に言い聞かせていた。本降りの中で終わった1本目、トップは西原の1分32秒489。次いで津川が34秒290、川脇が34秒343で3位。天満は1分35秒315で4位につけていた。走り終わった川脇は雨のなか2本目どうやってタイムアップするか考えていたのだが……。Dクラスがスタートするころから、雲の量が減り日差しが差し込み始めたのだ。1本走行後のS2コンパウンドでのドライ2本目勝負。川脇を始め上位勢にそんな走行データはなかった。こう着状態で迎えた2本目に天満が動いた。全日本ジムカーナでは1日同じタイヤで走行するのが原則。1本目と2本目でタイヤを変更した場合、2秒のペナルティが加算されるのが規則にうたわれている。一発逆転を狙った天満は、2本目にドライタイヤに変更。タイムアップからペナルティを差し引いても川脇より上位に上がれると踏んだ選択だ。チャンピオンを争う状況の中で、極限の駆け引きが行われていた。川脇は動じない。異様な緊張感が高まる中、SA3クラスの走行がスタート。1分33秒台で推移していたトップタイムを西原が1分30秒295にまで引き上げる。ギャンブルに出た天満だったが、ゴール前に置かれたターンセクションで失速!ほとんど止まるようなスピードとなり大きくタイムロス。タイヤ変更のペナルティを加えたタイムは1分32秒082。続く津川は1分32秒027で天満をかわす。コンマ1秒でも速く!ただそれだけを考えていた川脇のタイムは1分31秒439。2位に入って15ポイントをゲットしたことで、川脇の3度目のチャンピオンが確定した。

今シーズンの川脇の戦いを振りかえると2本目逆転で優勝というパターンがすべてあてはまる。それだけに3度目のチャンピオン確定で、今までと違う感覚を味わった。

「いや~、疲れたね。でも楽しかった(笑)。今回はとにかく津川、天満を押さえることしか頭になくて、それだけやった。今までチャンピオン獲得した感覚と大分違うね。ことしは運がよかったんだと思うよ。なにせ今年勝ったのは、すべて2本目逆転やからね。印象的だったのは名阪での優勝。ビデオで走りを見返してみても、よく走り切れたなというくらいアグレッシブに走ってる。これで勢いがついた感じやね」そう振り返る川脇。歴代のチャンピオンが集まり、全日本ジムカーナの中でも最激戦区といわれるSA3クラス。その戦いはチャンピオンが決まる最後の最後まで激しかった。「チームで戦うということを含め、総合力で勝ち取ったチャンピオンやと思うね。シーズンオフにもいろんなことテストしてきたし、走り方も少し変わってきたんとちゃうかな?重たいクルマを速く走らせるには、コーナーでの突っ込みすぎは厳禁やね。今日は勝てなかったんで、表彰式でおもろいこと言えへんかったけど本庄では言いたいわ、とびっきりのやつを(笑)」と笑わせた川脇。最終戦結果いかんではSA3クラスでダンロップ勢のワン・ツーフィニッシュの可能性もある。本庄での1戦は、川脇にとっても僚友津川にとっても非常に大事な1戦になるに違いない。

19台という一大勢力に拡大したPN1クラス。そんな中で2本目にスーパータイムを叩き出した野口泰通が全日本参戦16年目にして逆転で初優勝を飾る。

全国で車両が増えつつあるPN1クラスの車両。デミオ、フィット、スイフトにCRZと現在主流といえるコンパクトカーで争われるクラスだ。Nクラスからの転向組も多く、今回集まったのはなんと19台。今シーズンを通じて、全日本ジムカーナのなかでも一大勢力として数えられることになった。ランキングトップはフィットに乗る中島聡。今季3勝で84ポイントを挙げシリーズをリードする。2位には2勝の西野洋平、そして3位に2位3回の野口泰通がつける。雨が降り始める前に終了した1本目。1分47秒914を叩き出した中島がトップに立つ。完全ドライとなった2本目、1分43秒台で推移していたトップタイムをクラス後半ゼッケンになって一気に42秒台に上げた選手がいた。1本目に脱輪で下位に沈んだシリーズ3位につける野口だ。1分42秒931のタイムは残るふたりに破られることなくフィニッシュ。1995年の初参戦以来16年、全日本初優勝を飾った。今回の優勝で20ポイントを加えた野口のポイントは73。わずかながらだが最終戦に、シリーズチャンピオン獲得の可能性を残した。本庄で行われる最終戦にも注目が集まるところだ。

今回は3位に終わった茅野成樹。だが次戦本庄サーキットでは2年連続優勝を飾っている。一矢を報いたい!という茅野の思いが最終戦で爆発するか?

N4クラスはウエット路面のなか、1本目トップに立った竹田宏太郎。だがドライ勝負となった2本目に入ると思ったようにタイムが伸びず6位に順位を落としてしまう。1分30秒183を叩き出して優勝したのは、チャンピオンを確定させた菱井将文。同じく30秒台に入れたのは2位につけた喜勢竜一。ダンロップ勢でこれに迫ったのは茅野成樹が2本目に出した1分31秒235。完敗してしまったものの、次戦の本庄にかける茅野への期待は高い。2年連続で優勝を果たし、今年に同一イベント3連覇がかかっているのだ。それだけに茅野が口にする『一矢を報いたい』という言葉も現実味を帯びてくる。最終戦こそ茅野の走りに注目して欲しい。

雨の1本目から大幅タイムアップでの争いとなったDクラス。村上仁は1分26秒616を叩き出して2位に入り、シリーズでも2位が確定した。

地元九州の選手も含め6台が参加したDクラス。シリーズリーダー小林キュウテンが今シーズン3勝目でチャンピオン決定。2本目のアタックで1分26秒616を出してこれに続いたのが村上仁。ことし3回目の2位表彰台となりシリーズポイントも65ポイントまで伸ばしシリーズ2位を確定させた。本庄サーキットで行われる最終戦は、高速ストレートからのフルターンやストップ・アンド・ゴーのフル加速などDクラスマシンの真骨頂ともいえる走りが観られるコース。村上のその走りを、ぜひその目で確認してみてほしい。全日本ジムカーナ最終戦は10月8~9日に本庄サーキットで行われる。
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Motercycle
ニュルブルクリンク2014