D1グランプリシリーズ第6戦 8月6日(土) エビスサーキット(福島県)
古口美範選手が初の総合優勝をエビスで飾る!!
今村陽一選手が単走で優勝、チャンピオン争いに踏みとどまる


優勝カップを手に喜びの表情を見せる古口美範選手。総合優勝、さらにはエビスサーキットでのD1グランプリ優勝は初であり記念すべきラウンドとなった

2011年のD1グランプリシリーズも終盤へ突入。第6、7戦は恒例となった福島県のエビスサーキットでの連戦=デュアルファイナルズだ。昨シーズンと同様、エビスのデュアルファイナルズを終えると、最終戦・富士スピードウェイを残すのみとなる。昨シーズンは、ポイントランキング1位でディアルファイナルズに挑んだ今村陽一選手が、第7戦で優勝。同時に最終戦を待たずに通算3度目、2年連続のシリーズチャンピオンに輝くという金字塔を打ち立てた。また、日比野哲也選手は第6戦で優勝を飾り、第7戦も準優勝するという最高の形で終えており、野村謙選手も第6戦で準優勝し、終わってみれば連日“ダンロップデー”であった。しかし、第7戦の追走トーナメントでは、野村選手がストレートのアウト側コンクリートウォールへリヤを接触させ、弾みでマシンの向きが変わってしまい、1コーナー側壁へ激突するアクシデントが起きた。ポイント争いで1位の今村選手を背中まで追い詰め、望みをつないだ野村選手であったが、ここで無念にも潰えてしまった。エビスのデュアルファイナルズは、まさにダンロップ勢にとって因縁の大会といえるのだ。
さて、そんなエビスの第6戦だが、結果からお伝えすると、古口美範選手が単走で5位、追走で準優勝し、総合で優勝を決めた。今季初、さらにエビスでのD1グランプリ優勝は自身初である。これで総合ランキング4位に浮上した。

朝の練習走行でパワステのトラブルに見舞われたものの、急ピッチで直して単走に挑んだ今村陽一選手。今シーズン初の単走優勝をエビスの初戦で決めた

第6戦の予選は前日の8月5日(金)に行なわれた。予選に出場したのは箕輪慎治選手、河上善計選手。前戦の岡山では予選を通過し、ベスト16に残る健闘を見せた箕輪選手は、今回の練習走行でもエビスとの相性のよさを匂わす迫力あるドリフトを幾度となく決めていた。結果として、堂々の2位となる98.85点をマークした。単走2本ともミスがなく、圧巻は2本目で、スピードに乗せて最終コーナーをドリフトで立ち上がり、下りのストレートを躊躇なくアクセルを踏みつけて、壁ギリギリを通過。審査員席まで「ぶっ飛んでくる」という理想のラインを描き、見事なドリフトを決めた。終始アグレッシブな走りは明日の単走ファイナルでの期待が高まる。
河上選手は2本とも攻めきれず予選通過ならず。第7戦に期待したい。また、ダンロップユーザーの北芝倫之選手も残念ながら予選不通過となってしまった。
そして迎えた決勝日。雲はあったものの、朝から晴れ間が広がって前日と同様にコースは良好なコンディション。昨年より気温は低めだったものの真夏の日差しであり、風がなく蒸し暑く感じられた。オープニングセレモニーでは、東日本大震災の犠牲者を悼む1分間の黙とうが行なわれたのち、D1グランプリの第6戦が始まった。
まずは単走ファイナル。
昨日の予選を通過した箕輪選手がコースに出てきた。予選を2位で通過し、この日も調子のよさを伺わせる走り。その1本目はスピード感溢れるドリフトで98.53点をマーク。12位につけた。
岡山での戦績は揮わなかったものの、着実にランクアップをはかっている松川和也選手は1本目を決めて19位。
昨シーズン、第6戦・エビスの単走を1位通過した日比野選手。第5戦では優勝しており、今シーズンもマシンの特性を生かしやすいエビスに照準を合わせてきた。しかし、エビス入りしてマシンの不調が判明。ハイパワーなニューエンジンに対し、駆動系が対応しきれない状態のようで、様子を探りながらの単走ファイナルとなってしまったようだ。1本目は2コーナーで失速してスピンとなり失敗。2本目を辛うじて成功させて98.13点。単走14位の結果に終わった。
反対に調子のよさを見せていたのが古口選手。全体的な車速の高さが評価された攻めの走りで2本目に99.23点をマークして5位の成績を収めた。
野村選手は、2本ともドリフトを成功させたものの、苦手意識が働いてしまった様子で得点を伸ばすことができず、2本目で出した98.68点で10位の成績だった。
ダンロップ勢で最後に登場した今村選手。第5戦・岡山国際サーキットを終えて、ランキングは単走が5位、追走が1位で、総合で2位となり、総合1位の選手との差はわずかに0.5ポイント。チャンピオンを賭けた戦いであり、まずは初戦の単走に注目が集まった。そして、みごとにやってのけた。スピードで勝る最終コーナーの飛び出しから、角度、ラインとも「パーフェクト」と審査席で評される走りで、この日の最高得点となる99.83点をマーク。結果、逆転されることなく、第6戦の単走優勝を飾った。

エンジン系の不調により第6戦は追走1stステージで惜しくも敗退となった箕輪慎治選手。相性がよいエビスサーキットだけに第7戦にも期待したい

追走トーナメントに残ったダンロップ勢は6名。追走1stステージに挑んだのはシード(今村選手、野村選手、古口選手)を除く3名で、まずは日比野選手がベスト16を賭けて挑んだ。対戦相手は時田雅義選手(クラウン)で、日比野選手が先行した1本目は、時田選手にインを与えることなく逃げ切りアドバンテージを得た。入れ替わって後追いは1コーナーから徐々に車間を詰めていき、3コーナーできっちりとインに入って勝負を決めた。
松川選手はたかやまけんじ選手(RX-7)との初対決となったが、後追いの1本目でたかやま選手を捉えることができずアドバンテージを奪われ、先行の2本目では1コーナーから角度をつけたドリフトを見せたが逃げ切れず、敗退が決まった。
箕輪選手は初の顔合わせとなった田中裕司選手(スープラ)と勝負。予選、単走と調子のよさを見せていた箕輪選手は先行の1本目でスピード感、角度に勝るアグレッシブなドリフトを決め、インに入られることなくアドバンテージを得た。しかし、後追いの2コーナーでドリフトを戻してしまうという手痛い状況をつくってしまった。これにより逆転を許してしまい第6戦を終えた。「後追いでは急にエンジンが吹けなくなり、それが原因でドリフトが戻ってしまいました。予選から調子がよかったので残念です。第7戦の予選までに原因を見つけて、直して挑みたいですね」と、追走終了後にコメントしていた。

ベスト16で日比野哲也選手VS今村陽一選手のカード。チャンピオン争いで重要な追走となった今村選手であったが、勝者は日比野選手。今村選手はノーポイントで追走を終えた

ベスト16による追走2ndステージは、日比野選手VS今村選手の同門対決で始まった。単走ファイナルで優勝した今村選手は、第6戦の追走の成績次第でシリーズチャンピオンに王手をかける。一方の日比野選手もエビスで1勝を狙っている。注目のカードは、日比野選手に軍配が上がった。先行の日比野選手に対してビタビタ状態で合わせる今村選手であったが、2本目の先行では2コーナーで流されてしまいラインを乱すミスが出た。追走はノーポイントの結果で終わった。

先行でアドバンテージを得たものの、後追いでまさかのシフトノブが折れるトラブルで姿勢を乱してしまった日比野哲也選手。第6戦はベスト8止まりの結果に……

今村選手に勝利して、ベスト8へ進出した日比野選手。熊久保信重選手(ローレル)が対戦相手となった。先行で始まった1本目、最終コーナーから勢いよく飛び出し、豪快に角度を付けて1コーナーを目指す日比野選手は、3コーナーまで熊久保選手にインを与えないドリフトを見せ、アドバンテージを得た。このまま逃げ切りかと思われた後追いの2本目、なんと2コーナーでドリフトを戻してしまうという手痛い状況となった。ここで敗退。じつはこの時、金属疲労が原因でシフトノブが折れるというアクシデントに見舞われていたのだった。
「練習走行からトラブル続きで、明日もありますから、抑えて走っていたんですけど。まさかシフトノブが折れるとは思いませんでした。悔しいですけど、そのぶん、明日は思いっ切り走りますよ」(日比野選手)

第6戦はベスト8に甘んじた野村謙選手。総合ランキングも一歩後退したが、第7戦の奮起に期待。今季の1勝が欲しいところだ

第5戦を終えた時点で単走が3位、追走が5位、総合で4位につけた野村選手。1位の選手とのポイント差は30ポイント以上あるものの、逆転できる可能性もじゅうぶんある。是が非でも好成績を残したいところ。追走2ndステージ初戦の対戦相手は内海彰乃選手(シルビア)で、野村選手が先行で始まった。終始安定感のあるドリフトを見せた野村選手に対し、内海選手もノーミスで終えた。わずかに野村選手がアドバンテージを得て、入れ替わった後追いでも両者ともミスなく、野村選手は果敢にインを狙うも差がつかず、この勝負はサドンデスで決着することになった。先行の1本目は2コーナーから徐々に引き離しにかかった野村選手であったがジャッジはイーブン。後追いで野村選手は1コーナーからビタビタに合わせていく。これで勝負を決め、ベスト8へ駒を進めた。
ベスト8の対戦相手は高橋邦明選手(マークX)。後追いでスタートした野村選手は、ストレートでいったんつけた角度を戻してしまう。すぐに立て直して高橋選手を追い、3コーナーでインに入る。入れ替わった先行では、2、3コーナーで引き離しにかかる。ミスなく終えたものの、1本目の走りが影響した模様で高橋選手が勝利した。ベスト8止まりとなった野村選手は、総合ランキング8位と一歩後退してしまう残念な結果となってしまった。
「去年クラッシュしたトラウマですね。ヘタレな走りになってしもうたとですよ。ファンの皆さん、申し訳なかです。でも、何か見えてきました。明日は恐怖感をしっかり消していい走りをするばい。応援してください」(野村選手)

単走、追走ともスピード感と角度に勝っていた古口選手。最後は角度があだとなってしまったかたちだが、追走を準優勝して第6戦を終えた。総合優勝の勢いに乗った明日の戦いにも注目!!

単走5位となり、調子のよさを見せる古口選手は、追走トーナメントへ入ってもアグレッシブな走りは変わらず、ファンを魅了した。ベスト16での末永直登選手(ランサーエボリューション9)との対戦では、先行で角度に勝るドリフトを披露。2コーナーから末永選手が果敢に合わせてくるも手綱を緩めることなく終始攻めの姿勢で1本目を終えた。入れ替わっての後追いではまたしても角度をつけて進入。2コーナーからキッチリとドリフトで合わせていく。ジャッジは古口選手の勝利を告げた。
ベスト8は佐久間達也選手(シルビア)との対戦で、ここでは後追いでスタート、2コーナーで佐久間選手にドリフトで合わせた古口選手は3コーナーでビタビタ状態をつくり出す。アドバンテージを得た古口選手は、先行の2本目で逃げ切って勝負を決めた。エビスでのベスト4への進出はD1グランプリでは自身初となった。
ベスト4では熊久保選手(ローレル)とのカード。岡山でも対戦し、この時は敗退したが、今回は古口選手が勝利した。1本目の後追いでは角度で勝る進入を見せ、2、3コーナーでインに入り切れなかったもののアドバンテージを得て、先行の2本目も変わらず深い角度で進入し、熊久保選手に1コーナーから果敢に攻められるもミスなしで終えての勝利だった。
ついに決勝戦。対戦相手は川畑真人選手。同じ180SXの名手であり、180SX頂上決戦となった。川畑選手は今回の単走では伸び悩んだものの、お台場では最後にパーフェクト勝利を飾っている。今回も同様に回を重ねるごとにコースに合わせ、誤差を縮めている様子で、手強い存在。しかし、絶好調の古口選手はスピードと進入からの角度が武器だ。まさに決勝戦に相応しいこのカード、インを奪われれば奪い返すという拮抗した戦いとなり、1回では勝負が決まらずサドンデスへ突入。最後は、後追い2本目の古口選手が進入で角度をつけ過ぎてしまい、ストレートでやや戻すミスを犯し、ここで勝負がついた。追走は準優勝となってしまったものの、単走との総合得点で、第6戦の覇者となった。
「もう、川畑選手についていくのがやっとでした。準優勝は悔しいですけど、総合優勝となりましたから嬉しいです。スポッター、アドバイザーからいろいろと意見され、それを確実にこなすのが僕の仕事なんですが、ちゃんとできないから怒られました(笑)。まだまだですね。ただ、今日はよい感覚を得られましたから、明日もこの調子で挑みたいです」(古口選手)

エース野村謙選手の奮戦に期待!!

第6戦の結果、古口選手が躍進して総合で4位のランキングとなった。今村選手は単走ファイナルで優勝したものの、総合ランキングは2位。野村選手は8位で第7戦を迎える。ダンロップ勢の勝利で最終戦に臨みたいところだ。

■阿部成人監督(BLITZ DFellow)のコメント
「朝、ドライブシャフトが折れる事態となりましたが、交換で事なきを得られたのが幸いでした。今回は単走の結果がよくなかったので、明日はいつもの野村さんらしい走りに期待したいですね」
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ニュルブルクリンク2014