D1グランプリ第6戦 8月8日(日) エビスサーキット(福島県)
今村陽一が今期3勝目をあげる快挙
最終戦を待たず2年連続のシリーズチャンピオンを獲得!!
今期3勝目と圧倒的な強さを見せる今村陽一選手がシリーズチャンピオンもきめた。3度目のシリーズチャンピオン今村選手に死角なし!!
昨日に引き続き、エビスサーキット上空は晴れ渡り、朝から厳しい暑さのなかで第6戦を迎えた。第5戦を優勝、準優勝のワンツーフィニッシュで飾ったダンロップ勢。この勢いのまま第6戦へ挑み、結果からお伝えすると、今村陽一選手が今期3回目の優勝を飾り、シリーズポイントを118点まで積み上げた。これにより、2番手につける末永正雄選手の87点に対して31点差とした。これは1戦の優勝で獲得する25点(1回戦が100点の走りだとさらに1点加点される)を上回り、最終戦を待たずに今村選手が、2010年のD1グランプリシリーズのシリーズチャンピオンに輝いた。昨シーズンに続き、2年連続のシリーズチャンピオンとなる快挙であり、2003年、2009年、2010年と3回のタイトル獲得はD1ドライバーのなかで最多である。同時に、D1グランプリシリーズにおけるダンロップタイヤのマシンが、ついにその頂点へ立った瞬間でもあった。
それでは、第6戦を戦ったダンロップ勢を見ていこう。
第5戦ではベスト16へ残り、調子のよさを見せていた箕輪慎治選手は残念ながら1回戦で敗退。しかし、調子のよさは上向きといっていいだろう
通常、D1グランプリは、決勝の前日に予選をおこない、本戦へ出場する20名のドライバーを決めるが、2日連続のシリーズ戦となった今回のデュアルファナルズでは、第6戦の予選がなく、追走トーナメントへ出場するための16名を決める1回戦からおこなわれた。
ダンロップ勢は、まず、福田浩司選手が登場した。前日からパワー不足という不調に見舞われていたようだが、単走の1本目でとうとうエンジンが吹き上がらなくなり、満足にドリフトすることができず、この連戦を終えた。原因は応急処置では直せないエンジン内部のトラブルにあったようだ。
SC430の松川和也選手は、2本目で勢いを感じさせるドリフトを見せて99.3点をマークした。しかし、わずかに届かず、なんと17番手で悔し涙を飲んだ。この鬱憤を最終戦の富士で晴らしてほしいものだ。
いっぽう、前日の第5戦で追走トーナメントへ進出し、12位の成績を残した箕輪慎治選手は、この日も調子のよさをうかがわせる走りであったが、1本目で2コーナーのバリサイド(サイドブレーキで角度と速度をコントロール)の指摘があり99.03点。2本目は角度のある進入で勢いを見せるも4コーナーの走りにミスが出て、1本目の得点を上回ることができなかった。この結果、箕輪選手は25位にとどまり、3台とも1回戦で第6戦を終えた。
日比野選手がエビスサーキットで得意としているジャンピングドリフト。ここからストレートへとドリフト状態で進入する姿は圧巻だ
シード選手4名は1回戦の最終組に登場した。昨日の第5戦では慣れたエビスでまさかの1回戦敗退を喫した古口美範選手。「明日は何とかします」と、前日にコメントしていたが、そのとおりの気迫あふれる走りを1本目から見せて99.43点。2本目ではより高い進入スピードで角度のあるドリフトをきめた。ラインも完ペキといえるもので、99.66点と伸ばして、9番手で追走トーナメントへの進出をきめた。
つぎに登場したのが日比野哲也選手だ。第5戦をうれしい優勝で飾り、今一番波に乗っている男。第6戦の1回戦も勢いはとまらない。第6戦では最終コーナー(進入)のコース変更があったが、それでも日比野選手は得意のジャンビングドリフトで立ち上がり、深い角度とともに速いドリフトで魅せた。1本目でいきなり99.9点をマーク。2本目では100点狙いで早い段階でさらに角度をつけてくる。しかし、ラインが小さくなってしまった。ここは99.43点であったが、1本目の得点によりトップ通過で追走トーナメントへ進出した。
「気負いなくお客さんが楽しめるドリフトをしたい」と野村選手。しかし、勝つことへの飽くなき執念があることは変わらない
第5戦を価値ある準優勝とし、シリーズランキングを2位へと浮上させた野村謙選手。その1本目は速い進入で、角度をつけてのドリフトだった。ややフラついたところと、クリップ外しなどの減点対象となる部分はあったものの、99.46点を獲得。この時点で追走トーナメント出場の権利を得た。2本目も安定感のあるドリフトをみせたが、1本目に及ばず、結果として14番手での進出となった。
いっぽう、今村選手は、2本とも安定感バツグンなドリフトが印象的だった。とくに1本目は進入、角度、ラインとも見事と評され、これが99.83点の高得点となり、2番手で追走トーナメントへ駒を進めた。
結果、シード組の4名が揃って追走ートーナメントで優勝を争うこととなった。
第6戦も順調に追走トーナメントで勝ちあがっていった日比野選手。この日、絶好調だった末永選手を抑えて、ついには決勝まで!! 勢いがとまらない
木陰へ入れば涼しさも感じるが、日向では太陽がジリジリと照りつける。人間にも、D1マシンにも過酷な厳しい暑さが続いた。出場マシンのなかにもこの暑さが災いしてか、エンジントラブルを抱え、満足に走れないのが数台いたようだ。
そんな状況ではじまった第6戦の追走トーナメントは、日比野選手の勢いがとまらない。まず、初戦で西田ラビー選手(ソアラ)と対戦し、互いに接近ドリフトの応酬となり、サドンデスでの決着であったが、ここで後追いの西田選手にインをとらせず先行、また後追いでは西田選手のインに入りこみ、ベスト8へ。ベスト8では、斎藤太吾選手(マークII)との対戦となった。800psをオーバーし、スピード、角度、さらにはジャンピングまでと、手ごわい相手であり、アグレッシブなスタイルは日比野選手と共通のもの。しかし、先行日比野選手ではじまった1本目で斎藤選手が進入から激しい接近ドリを見せて、1コーナーで日比野選手に接触。これで大きなアドバンテージを得た日比野選手は、後追いできっちりと2コーナーで差を詰める走りで、準決勝へと順調に勝ちあがった。
準決勝での対戦相手は末永直登選手(ランサーエボリューション)で、この対戦はインを取ったら取り返すビタビタの接近ドリフトで両者譲らず、日比野選手はふたたびサドンデスを戦うことに。その結果、先行をイーブンで迎えた後追いの日比野選手が、進入から4コーナーまで末永選手に合わせていき、この走りが決め手となって、第5戦に続いて決勝へ駒を進めた。
果敢に攻めの走りも見せるも、古口選手は斎藤選手に敗れた
古口選手は、初戦で斎藤選手と対戦して敗れてしまった。後追いの1本目、1コーナーでドリフトを合わせるもコースアウトしてタイヤバリアへヒット。斎藤選手に大きなアドバンテージを与えてしまい、先行で逃げ切ろうとするも万事休す。アドバンテージを覆すことができずに第6戦を終えた。
野村選手、まさかのクラッシュ。フロント部分に大きなダメージを負ってしまったブリッツスカイライン。エビスサーキットの怖さを物語っている
野村選手の初戦の相手は今村隆弘選手(RX-7)だった。今村(隆)選手は、1回戦を3位で通過し、調子のよさを見せていた。その1本目は野村選手の後追いではじまった。勢いよく最終コーナーを立ち上がってくる今村(隆)選手。それに対して同様のスピード、角度で合わせるべく飛び出してきた野村選手。ホームストレートから1コーナーを目指していたそのとき、野村選手のマシンがドリフトから戻った状態となり、リカバリーする間もなく1コーナーアウト側のタイヤバリアへ正面から衝突。マシンであるスカイラインはフロント部分を大破する事態となってしまった。これでリタイヤとなり、野村選手の第6戦は16位という結果で幕を閉じた。
シリーズチャンピオンがかかった準決勝で高山選手を征した今村選手。みごとにそれを手中に収めた歴史的な瞬間だ
今村選手の初戦はチェイサーに乗る高橋邦明選手。先行の今村選手ではじまった1本目、今村選手は高橋選手に対してインに入らせないアグレッシブさを見せた。アドバンテージを獲得しての後追いでは、進入からビタビタに接近したドリフトで合わせて勝負をきめた。
ベスト8は川畑真人選手とのチャンピオン対決が待っていた。この第6戦の成り行きでシリーズチャンピオンが決まってしまうとあって「ストップ・ザ・今村」を合言葉に今村選手に襲いかかる。しかも強豪の川畑選手だ。簡単には勝てないだろうと思われたが、先行今村選手の2本目で、川畑選手が進入のラインを乱してしまい、これが決め手となってすぐに決着がついた。
これで準決勝へ駒を進めた今村選手。末永正雄選手がベスト8で敗れており、ここで今村選手が勝てばシリーズチャンピオンが決定する。対戦相手は高山健司選手(RX-7)。
調子のよさを見せていた高山選手だけに、さすがにすぐには決着がつかない。今村選手の後追いではじまった1本目で、進入から4コーナーまですべてインに入ってアドバンテージを得るも、先行では高山選手が食らいつき、サドンデスへ突入。ふたたび今村選手が進入からビタビタの接近ドリフトを見せて、こんどは決着のつくアドバンテージとなる1.5の差を得た。入れ替わった先行では、後追いの高山選手もさすがで、進入からビタビタに接近。勝負がつかないと思われたが、今村選手が4コーナーで高山選手を引き離した。ノーミスで走り終えた今村選手。ここで決着がついた。この瞬間、決勝進出と、シリーズチャンピオンが決まった。さらに、決勝の対戦相手は日比野選手。今期4度目のダンロップ勢ワンツーフィニッシュの確定だ。
日比野選手はマシンの不調でパワーを得られない苦しい戦いを強いられた。今村選手はこの同門対決を征して今期3勝目をあげた
2連戦でおこなわれた福島決戦は、ダンロップ勢の好調さを物語る展開となった。今村選手がシリーズチャンピオンを決め、日比野選手が第5戦で待望のエビス初優勝を遂げた。引き出しのデパートと称されるほどの今村選手の長けた戦術。それに対して、ハチロクというマシンを武器にありえないほどの角度とコーナリングスピードで見せる日比野選手のアグレッシブな走り。この両選手による決勝は、どちらが勝っても不思議ではない。しかし、2度のサドンデスを戦った日比野選手のマシンにここでトラブルが発生する。搭載のNAエンジンのパワーを効果的にアップするNOS(ナイトラスオキサイドシステム)が機能していないことがわかった。出走までの時間、メカニックによる懸命な修復作業がおこなわれたが、修復できず、NOSのパワーを生かせないままでの追走となってしまった。
先行日比野選手ではじまったものの、さすがにこれまでの勢いがない。いっぽうの今村選手は確実に合わせてゆき、さらに入れ替わっての今村選手の先行で、日比野選手を大きく引き離し、決着がついた。
「そんなに気負いはなかったんですが、昨日(第5戦)が6位だったので、今日は絶対にチャンピオンを決めるんだと思って走りました。クルマのコンディションもとてもよかったですね。それに最終戦を待たずにシリーズチャンピオンを決めたれたのはタイヤのおかげです。楽に勝てるようになったんです。だからこんなに早く決まったんじゃないでしょうか。うれしいです」(今村選手)
「最後に壊れました。悔しいですね。NOSのスイッチを入れても動かず、バルブが壊れたみたいです。次は富士なので、勝負にならないかもしれませんが、チーム力が上がっているので、がんばりたいですね」(日比野選手)
■藤岡和広監督のコメント
「シリーズチャンピオンを獲得できてうれしいですね。ドライバーには暑いから集中を切らさないようにと、これだけ伝えました。ドライバーが乗ってしまえば、うちらの仕事は終わりですから。ドライバーががんばってくれるし、ちょっと熱ダレはありましたが、クルマが100%の性能を今回も維持することができました。これが勝因だと思っています。最終戦も、チャンピオンチームとして恥ずかしくない走りをしたいですね」