D1グランプリ第5戦 8月7日(土) エビスサーキット(福島県)
ハチロクの日比野哲也が価値ある一勝
野村謙が準優勝でダンロップ勢がワンツーフィニッシュ!!


気温が30度を優に上回る暑さのなかではじまったデュアルファイナルズ。今シーズン唯一の2日間の連戦だ。

いよいよ、福島決戦を迎え、2010年のD1グランプリシリーズも後半戦へ突入した。しかし、考えてみれば、残り3戦のうち、今回のディアルファイナルズがおこなわれるエビスサーキットと、富士スピードウェイを残すのみであり、事実上、終盤を迎えたともいえる。
前回の岡山国際サーキットで、今村陽一選手が3位に入賞したことで、シリーズポイントは2位の末永正雄選手(RX-7)を、24点差で大きく引き離し、81点まで積み上げた。これは1戦を優勝したときの獲得ポイント(25点)に近い。今期ここまでの今村選手の戦いぶりを見ると、追走トーナメントへ出場する確率は100%で、4戦中2回を優勝で飾り、第2戦のオートポリスを除いてすべてベスト8以上へ進出している。シリーズチャンピオンに一番近い男、それが今村選手だ。しかも、今シーズンの天王山となる気配が濃厚なデュアルファイナルズの2連戦は、今村が過去に優勝を経験し、得意としているエビスサーキット・南コース。ドリフトを始めた当初からエビスサーキットで走っている今村選手の、いわばホームコースのひとつといっても過言ではない。今シーズン、ここまで安定した強さを見せているだけに、順当に考えれば優勝も充分あり得る。つまり、マシンやドライバーのコンディション不良といった突発的なアクシデントがない限り、まず高ポイントを得るポジションに“常駐”しているのだ。
同じダンロップで今村選手を追うのが、野村謙選手。末永選手と1点差の56点で3位につけて、今村選手との差が25点。残りは3戦。両選手の走りを期待したい。

予選では消化不良という走りで終わってしまった感のある松川和也選手。第6戦の走りに期待したい。

第5戦の予戦は、8月6日(金)の午後からおこなわれた。総勢33名がエントリーし、うちダンロップ勢は松川和也選手、福田浩司選手、箕輪慎治選手の3名が出場。なお、エントリーを予定していた加藤貴也選手が欠場した。
今年の猛暑は、東北のエビスサーキットといえども例外ではなく、風があったものの、気温を30度を優に越し、うだるような暑さとなった。
D1グランプリが開催されているエビスサーキット・南コースは、ドリフト専用に作られたコースで、最終コーナーの飛び出しから審査が始まり、1コーナー~4コーナーを立ち上がって終了となる。1コーナー~3コーナーは左の大きな複合コーナーで、奥へ行くほどアールがきつくなる。また、最終コーナー~2コーナーまでは下り勾配の減速区間であり、最終コーナーを立ち上がる速度、ラインによっては、アウト側にあるホームストレートのコンクリートウォールへの接触や、車速を落としきれずに1コーナーアウト側のタイヤバリアへ突っ込んでしまう可能性が高い、ワンミス即クラッシュのデンジャラスなコースレイアウトだ。事実、練習走行でもクラッシュするマシンが続出。つまり、高い車速で最終コーナーへ飛び込み、なおかつギリギリでコントロールされたレベルの高いドリフトが要求される。富士などの高速コースとは、また違った難しさがある。
今回は、今までとは違い、最終コーナーの飛び込み速度、通過ラインとも特に規定がなかった。また、コースの改修もあり、そんな部分が選手にどのように影響するのだろうか。

さて、予選に出場した3選手のなかで、本戦へと駒を進めたのは、箕輪選手、福田選手の2名だった。箕輪選手は2本とも99点台をマーク。最終コーナーの飛び込みから安定感が高く、全体にキレイにまとめた走りで15番手で通過。福田選手は2本目の2コーナーでやや流される場面があったものの、ベテランを思わせる安定感のあるドリフトを見せ、18番手で予選を通過した。
これに対して、最後まで攻め切れなかったのが松川選手。1本目は進入こそ決めたものの、角度をつけすぎたのか1コーナー付近で失速し、2本目は進入で引っかかりドリフト態勢を崩してしまった。29位の不本意な結果となったが、この悔しさをバネに翌日の第6戦を戦ってほしいところ。
結果、第5戦は6名が単走の1回戦へ挑むこととなった。

第2戦以降、今シーズンは確実に予選を突破して1回戦へ駒を進めている福田浩司選手。またオートポリスで見せたベスト16入りするほどの奮戦を見せてくれるだろう。

翌日もエビスサーキットは昨日と同様、朝から晴れ渡り、気温がグングンと上がって、日向に立っているだけで汗が噴き出すような厳しい暑さとなった(エビスサーキットがある二本松市は34.9度を記録した)。
予選を通過した20名を加えた、31名(外人招待選手を1名追加)が1回戦へ挑んだ。予選と同じく2本走ったうちの高い得点が比較され、追走トーナメントへ出場する16名が決定する。
650psのマークIIがマシンの箕輪選手は、高い進入速度が圧巻だった。その1本目は進入から4コーナーまでのラインを完ペキだと評され、2本目ではさらに車速を高めての進入から角度をつけて豪快なドリフトを成功させた。一時はトップとなる99.56点をマーク。堂々の9位で追走トーナメントへの進出を決めた。
一方、惜しくも1回戦敗退となったのが福田選手。その1本目は高い車速から進入を上手にきめ、2コーナー手前でサイドブレーキの調整が入ったものの、ラインも外さず、99.13点をマーク。さらに高得点としたい2本目だったが、2コーナーで流されてしまい得点が伸びなかった。結局、福田選手の得点はベスト16入りには届かず、第5戦は23位で終えることになった。

南コースを知り尽くしている男、古口選手の1回戦敗退は予想外と思えるほど。第5戦はノーポイントで終わったが、シード選手として第6戦の踏ん張りに期待したい

最後の組で登場した、シードの4選手。野村選手、今村選手ともに、進入からキレイなドリフトでまとめて、野村選手が5位通過、今村選手が4位通過となった。
そして、この1回戦で魅せたのが日比野選手だった。2004年のD1グランプリで“ジャンピングドリフト”をきめて、一躍その名を全国区へと轟かせた場所が、この南コースだ。第5戦では、最終コーナーがフリーとあって、日比野選手の得意ワザが光った。南コースの最終コーナーは、改修されたとはいえ、ホームストレートにかけてイン側の下り勾配が急激に変わる。ここを勢いよく通過すると、車体が浮き上がって姿勢を崩しやすい。それを逆手に取ったのが日比野選手のワザで、ジャンピングによってドリフト進入に迫力を倍増する。1本目で、高い車速からジャンピング、さらには4コーナーまでハチロクならではの角度と迫力あるドリフトをきめ、99.96点を獲得した。この走りには100点もついていたほどで、シリーズポイントに1点が加点されている。2本目は、ホームストレートの側壁にリヤをタッチさせてしまったものの、3位で追走トーナメントへ駒を進めた。

シリーズランキング7位で第5戦を迎えた古口選手。前回の岡山ではベスト16で敗退と、ここ2戦ほど古口選手らしい対戦相手を圧倒するキレのある走りが影を潜めており、ホームコースともいえるエビスでの奮闘を期待したが、あろうことか、1回戦での敗退を喫してしまった。その1本目は車速を乗せた進入だったが、2コーナーで惜しくもスピン。この失敗で後がなくなってしまった2本目、進入をうまくきめたものの、2コーナーで流されてしまう。97.8点の得点で万事休す。
「1本目が進入から攻めきれませんでした。進入のスピードが足りず、そこから先でいつもと同じリズムで走ったのでスピンになりました。2本目は、ストレートのスピードに気を取られ、思うような走りができませんでした。でも、明日もあります。よい結果を残しますよ」(古口選手)

惜しくも末永直登選手に敗れたものの、安定感が出はじめた箕輪選手。単走の1回戦ではよい走りを見せていただけに、第6戦でいよいよ追走トーナメントの上位進出なるか。大いに楽しみだ

相変わらず、うだるような暑さのなかで追走トーナメントが始まった。エビスサーキット・南コースはエスケープゾーンが皆無に等しく、ワンミス即クラッシュ必至。今回の追走トーナメントでは進入時の車速の高さも手伝い、クラッシュが続発。コースにオイルが流れ、コース清掃のために一時中断も何度かあった。
追走トーナメントは、上位と下位が対戦するかたちでベスト16が組まれるが、進出したダンロップ勢4名のうち、日比野選手を除いて、3選手が左のブロックに集まってしまった。順当に勝てばベスト8で野村選手と今村選手が当たり、さらにベスト4では野村選手VS箕輪選手が当たる組み合わせだ。同門対決のブロックが、どのように勝敗を左右するだろうか。
まずは、箕輪選手VS末永直登選手。箕輪選手は今シーズン2回目の追走トーナメント出場となり、安定感を出しはじめている。後追いの箕輪選手で始まった1本目、2コーナーで末永選手との距離を詰めるも、インに入り切れず、4コーナーにかけてドリフトを戻してしまった。これで大きなアドバンテージを与えてしまい、先行では末永選手がビタビタに合わせられ、残念ながらベスト8進出は叶わず。しかし、第6戦の組み立てにつながる対戦であったに違いない。

ディフェンディングチャンピオンらしく、1回戦から余裕のドリフトを見せていた今村選手。野村選手に敗れて第5戦はベスト8に甘んじてしまった。第6戦の行方は!? ますます目が離せなくなってきた。

野村選手の対戦相手はシルビア(S15)がマシンの水畑力選手。先行の野村選手は、1回戦を上回るかと思われるほどの高い車速から豪快な進入をきめた。水畑選手が3コーナーで流されるというミスもあり、大きなアドバンテージを得た野村選手。2本目の後追いでは水畑選手に対して進入からビタビタに接近して圧倒。貫禄たっぷりの走りを見せた。
今村選手は手塚強選手との対戦カードとなった。先行が今村選手の1本目、安定した走りの今村選手に対してインに食い込もうとする手塚選手が3コーナーで流されるミスをおかす。これでアドバンテージを得た今村選手は後追いで手塚選手に対して2~3コーナーでインにしっかりと入る。今村選手が勝ちをきめてベスト8へ進出。ここでは野村選手との同門による対決が待っていた。
シリーズポイントをトップで逃げる今村選手に対して、野村選手は今村選手より上位で第5戦を終えたいところ。先行が野村選手ではじまった1本目、今まで以上に車速が高く、気迫のドリフトで最終コーナーから飛び出してきた野村選手に対し、今村選手が食らいついていこうとするが、2コーナーで流されてしまった。これでアドバンテージを得たのが野村選手。先行が今村選手の2本目では両者にミスがなく、結果、野村選手の準決勝進出がきまった。
「路面の読み違いですね。オイルがまだ残って滑りやすいラインを通ってしまいました。完全に滑ってしまったので仕方ないですよ。でも、大事に至らなくてよかったです。これが幸いでしたね。明日もありますし、最終戦の富士も残っている。焦りはありません。がんばりますよ!!」(今村選手)

回を追うごとに調子が上向き、豪快でキレのあるドリフトを見せた野村選手。ついに決勝まで進出した

野村選手は、準決勝では斎藤太吾選手との対戦カードが待っていた。斎藤選手は1回戦から調子よく、その進入は他を圧倒する131.5km/hをマークしていた。まさに乗りに乗った強豪を相手に、どんな戦いを挑むか。注目の1本目は斎藤選手の先行。豪快に最終コーナーへ飛び込んできた斎藤選手に対して、野村選手も負けじと後追いから豪快なドリフトできめる。そして2コーナーでしっかり距離をつめる。両者ミスなしでここはイーブン。入れ替わって先行は野村選手。ここでも豪快なドリフトで飛び込んできた野村選手に対して斎藤選手が進入からドリフトで合わせてくる。しかし、2コーナーで斎藤選手のラインが流れてミスが出た。さらに4コーナーのインカットもあり、2本ともミスなしで終えた野村選手が文句なしで決勝戦へと駒を進めた。

末永正雄選手を準決勝で下し、さらに勢いづく日比野選手。

今シーズンの特徴だった、ハイスピードコース3連戦は、ハチロクに乗る日比野選手にとっては、やはり厳しいものになったようだ。オートポリスこそ6位と健闘したものの、富士は16位、岡山では1回戦敗退のノーポイントで終わった。
それを一気に憂さ晴らしするかのように、第5戦の日比野選手は違っていた。得意のエビスサーキット・南コースは軽量なハチロクこそ有利。まさに水を得た魚だ。単走の1回戦から迷いはない。ジャンピング進入を加えた、深い角度と高いスピードによるドリフトで、大勢の観客を魅了し続けた。
ベスト16の対戦相手はシルビア(S15)の佐久間達也選手であったが、先行の日比野選手はスピード、角度ともに充分で、3コーナーまで佐久間選手に対してインをとらせない。大きなアドバンテージを得た日比野選手は、後追いで佐久間選手のインに入る走りを見せ、手堅くベスト8へ進出した。
ベスト8の対戦相手は、180SXの川畑真人選手。この強豪を相手に、先行の日比野選手は相変わらず速い進入で1コーナーを目指す。川畑選手はインに入ろうとするも2コーナーで流されてしまい、4コーナーの立ち上がりでもミスが出た。大きなアドバンテージを得て、後追いでは日比野選手にミスがなく、勝負を決めた。
準決勝は末永正雄選手との対戦カードとなった。末永選手は、昨年のエビスで2連勝しており、ともにげんがいい。それだけに負けられない。先行は日比野選手。勢いよく最終コーナーを飛び出してきた日比野選手に対して、2コーナーでビタビタに寄せる末永選手はさすがにうまい。進入の角度で、わずかにアドバンテージをもらった日比野選手が今度は後追い。2コーナーでインに入るも4コーナーで末永選手に離されてしまう。甲乙つかず、サドンデスへと突入した。再び先行の日比野選手は車速、角度とも文句なしの進入を見せた。しかし、2コーナーで再び詰められる。甲乙つけがたい勝負かと思われたが、後追いで日比野選手がついにきめた。末永選手に対して進入からビタビタに寄せる気迫のドリフトだ。お台場に続き、今シーズン2回目となる決勝戦へと進出した。


ついにエビスサーキットで初優勝を遂げた日比野選手。ポイントランキングも5位につけた。第6戦も大暴れ必至!!

決勝のカードは野村選手VS日比野選手。お台場、富士に続いて、三度ダンロップ勢が決勝で対戦するという絶好の展開となった。野村選手は今期の初優勝がかかり、日比野選手は今期、さらにはエビスでの初優勝がかかっている。
先行は野村選手。どちらも絶好調で決勝戦を迎えただけあり、一歩も譲らず、日比野選手に2コーナーでわずかなミスがあったとの指摘もあったがほぼイーブンの戦い。こんどは日比野選手が先行。ここで野村選手のラインが小さくなった。そこから日比野選手のインに入り込もうとするも、入りきれない。結果、日比野選手が今期の初優勝を遂げた。
「エビスサーキットこそ、僕が唯一勝負できる場所なんです。ここに照準を合わせていました。今までトラブルもあり、岡山ではついにベスト16にも残れなかったので、クルマを大幅に見直してもらいました。壊れないようにしようって。今日は、進入のフリースタイルも追い風になりました。とにかく自分らしい走りで、あまり追走も意識せずに走れたことが、勝因じゃないかなと思っています」(日比野選手)

「今回は山ばっかりでした。今村選手とはサドンデスまでやるつもりでおったとです。しかし、路面が滑りやすい状態で、陽一が滑ってしまったという感じですね。斎藤選手は速く、進入からラインが違うので、離されてもしかたなか、と思っていましたが、何とか勝つことができました。日比野は速さもあり、とくに4速に入れたときに離されるから、後追いでは最終コーナーを3速で引っ張って、着地してから4速に入れようと。先行もイーブンで、後追いもイーブンで行きたいなと。そしたら、着地してから4速に入れるのをすっかり忘れてしまったとです。これでラインが乱れました。まだまだ修行が足らんばい。明日もお客さんを楽しませる走りをするとですよ」(野村選手)

■松岡スポッターのコメント
「今日は日比野が終始冷静で。えー、こんな子じゃなかったのにって(笑)。あの進入はサブイボですね。カッコイイ。岡山を終えて、いろいろ変更しています。3連戦がキツかったですから。一番はパワーアップで、プラス15馬力ぐらいです。このクルマの限界を探りながらやっています。勝てて本当にうれしいです。ダンロップ祭りは最高ですね。毎回やりましょう!!」

■藤岡和広監督のコメント
「デュアルファイナルズということで、ドライバーがクルマを労わる走りをしてくれたのでありがたかったですね。対戦相手を見て、1回戦はなるべく順位を上げていこうと指示を出しました。追走はドライバーに任せました。まわりのドライバーが速くなってきたのと、オイルで滑っちゃったことで、結局負けてしまいましたが、仕方ないですね。明日はマシン、ドライバーとも100%の力で挑みます」

■阿部成人監督のコメント
「今回はデュアルファイナルズなので、耐久性を考えてエンジンをオーバーホールしています。リヤウイングを変更し、リヤのトーを変えて振り出しやすいセッティングにしました。そうしたらまっすぐのラインだったので予想外でしたが、どちらにも対応できるようにはしておきました。単走は、1本目でアウト側を狙い過ぎて、得点的にまずいなぁということになったんですが、それでも守らずに攻めましょうと野村さんと話し、結果としてよい流れになりました。今村選手との対戦では運もありましたね。明日はコース変更になりますが、トントン拍子でいかせてもらいます」
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ニュルブルクリンク2014